女性審神者の名前です。
撫子 太陽の当たる場所
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~紫side~
「よしっ…」
次の日、小さく気合いを入れて鍛刀部屋に向かいました。特に決まりはないのですが、新しく顕現させる時は、遥さんからのアドバイスで“始まりの一振り”である歌仙さんに立ち会ってもらっています。共に本丸を立ち上げた“始まりの一振り”だからこそ、誰が顕現するのか見守ってほしいのもありますし、傍にいてくれると安心出来るんです。
「それで、今回はどの刀種を顕現させるんだい?」
「太刀を2振りです」
「分かった。僕はちゃんとここにいるから、主は顕現に集中しておくれ」
「はいっ」
鍛刀用の刀剣の上に式札を置いて、目を閉じました。
どうか、ゆかりのある男士が顕現しますように…。
式札が輝いて、その輝きが次第に人型になっていきます。そうして顕現したのは…
「僕は、燭台切光忠。青銅の燭台だって切れるんだよ」
「…江雪左文字と申します」
「っ…!」
思わぬ男士の顕現に、わたしも歌仙さんも息を吞みました。
「…うーん、やっぱり格好つかないな」
「…私がこうして顕現したということは、戦いがこの世から消えることは難しいのでしょうね…」
「…えっと」
「君が新しい主かい?」
「はい、紫と申します」
「よろしくね」と笑顔を見せてくれた燭台切さんの隣では、江雪さんは悲しみに満ちた目で俯いています。
「歌仙さん、鶴丸さんと小夜くんを呼んで来て下さい…!」
「分かった」
燭台切さんにはゆかりの男士が顕現している喜びを、そして江雪さんには弟が顕現していて少しでも悲しみを和らげたい思いで2振りを呼んでもらいました。
「鶴さんもいるのかい?」
「お小夜が…?」
「はい、いますよ」
憂いの目で俯いていた江雪さんが顔を上げてそっと微笑みました。燭台切さんは察しが良いみたいです。「良かったね」と声を掛けて、2振りがやって来るのを待ちます。
「久しぶりだな、光坊!」
「また会えて嬉しいよ」
「江雪兄様…!」
「お小夜…!」
それぞれが再会を喜び、ほっとした表情で歌仙さんを見ると、歌仙さんはにっこりと笑って頭を撫でてくれました。
「本丸の案内は俺がするぜ。小夜も一緒に来るか?」
「…はい」
「じゃあ4振りで周るってことでいいかな?」
江雪さんも頷いて、話がまとまりました。早速4振りが鍛刀部屋を出て行き、歌仙さんとそれを見送ります。
「厨に来るのは、執務が終わってからで良いかい?」
「はい。今日は顕現した男士を記録に残して歴防本部に報告するだけなので、すぐに向かいます」
わたしには決めていることがあります。それは、顕現した男士の最初の食事はわたしが作ることです。
人の身を得たばかりの男士の食事は、数日間は体…特に胃に負担の掛からないものから摂り始めなければなりません。
すぐに執務を終えて、早速厨に向かいました。
「あっ、あるじさまだ!」
この日は今剣くんも少し高めの台に立って、食事の準備を手伝ってくれていました。この時はみんなの分も作るものがあります。それは消化の良いデザートです。この時間から作ればちょうど良い時間に出来上がるはずだと、たすきを掛けて早速作業に取り掛かりました。
「こんかいはなにをつくるんですか?」
「牛乳寒天にするよ。今剣くんも大好きだもんね」
「やったー!」
牛乳寒天はわたしにとっても思い出深いもので、おばあちゃんがおやつに良く作ってくれていました。今でも帰省すると作ってくれて、楽しみの1つでもあります。レシピは教わっているので、この味が恋しくなると、男士が顕現した時以外にも時々作ります。
「作り終わったら夕飯のお手伝いもしますね」
「ありがとうございます」
今夜は鯖の竜田揚げのようです。副菜は蓮根のきんぴらと、歌仙さん特製のかぶの浅漬け。かぶの浅漬けは良く作っているので、余った葉っぱをとじゃこをふりかけ風に味付けをして、それを入れたおかゆにすることにしました。
口に合うといいな。
色々な気持ちを込めて調理を進めていきます。今剣くんから聞いたのでしょう。短刀の子たちが大喜びでやって来て、輝いた目でわたしを見守ってくれました。
嬉しいことに牛乳寒天はみんなの好物の1つになっています。
「村正、嬉しいからって脱がないでよねー!」
どこか遠くから清光くんの大声が聞こえてきました。安定くんと陸奥守さんの声も聞こえたので、恐らく3振りで脱ぐのを止めてくれているんだと思います。
…牛乳寒天に関係なく、脱ぐ時は脱ぎますが。
「喜びの舞を披露する時デス!」
「だから脱がないでってば!」
手を止めて、「わたしも行った方がいいのかな」と声がする方を見やると、蓮根を切っていた歌仙さんがため息交じりに同じ方向を見ました。わたしの作業を見ていた短刀たちも大騒ぎになる前に止めに行かなければとそちらへ向かって行きます。厨には歌仙さんとわたしだけになりました。
「主、村正のことは諦めてくれて構わないよ」
「そういうわけには…」
「主はああいったことに免疫力はないのだから、無理しなくていい」
恥ずかしいお話ですが、事実です。想いを伝えてくれた方は数人いましたが、これまで男性とお付き合いをする経験がないまま審神者になったからです。
「それに…」
歌仙さんは顔を赤くして俯いてしまったわたしの隣にすっと寄って来て、耳元でぽそりと呟きます。
「男の体を見るのは、僕だけで良いのだからね」
髪に優しくキスを落として調理に戻って行った歌仙さんを、わたしは暫く見ることが出来ませんでした。
審神者としてまだまだ頼りないことが多いわたしですが、このように時々甘い時間もあります。
小さい本丸ですが、何があってもわたしを支えてくれて、そして見守ってくれるみんなのことが大好きです。
「よしっ…」
次の日、小さく気合いを入れて鍛刀部屋に向かいました。特に決まりはないのですが、新しく顕現させる時は、遥さんからのアドバイスで“始まりの一振り”である歌仙さんに立ち会ってもらっています。共に本丸を立ち上げた“始まりの一振り”だからこそ、誰が顕現するのか見守ってほしいのもありますし、傍にいてくれると安心出来るんです。
「それで、今回はどの刀種を顕現させるんだい?」
「太刀を2振りです」
「分かった。僕はちゃんとここにいるから、主は顕現に集中しておくれ」
「はいっ」
鍛刀用の刀剣の上に式札を置いて、目を閉じました。
どうか、ゆかりのある男士が顕現しますように…。
式札が輝いて、その輝きが次第に人型になっていきます。そうして顕現したのは…
「僕は、燭台切光忠。青銅の燭台だって切れるんだよ」
「…江雪左文字と申します」
「っ…!」
思わぬ男士の顕現に、わたしも歌仙さんも息を吞みました。
「…うーん、やっぱり格好つかないな」
「…私がこうして顕現したということは、戦いがこの世から消えることは難しいのでしょうね…」
「…えっと」
「君が新しい主かい?」
「はい、紫と申します」
「よろしくね」と笑顔を見せてくれた燭台切さんの隣では、江雪さんは悲しみに満ちた目で俯いています。
「歌仙さん、鶴丸さんと小夜くんを呼んで来て下さい…!」
「分かった」
燭台切さんにはゆかりの男士が顕現している喜びを、そして江雪さんには弟が顕現していて少しでも悲しみを和らげたい思いで2振りを呼んでもらいました。
「鶴さんもいるのかい?」
「お小夜が…?」
「はい、いますよ」
憂いの目で俯いていた江雪さんが顔を上げてそっと微笑みました。燭台切さんは察しが良いみたいです。「良かったね」と声を掛けて、2振りがやって来るのを待ちます。
「久しぶりだな、光坊!」
「また会えて嬉しいよ」
「江雪兄様…!」
「お小夜…!」
それぞれが再会を喜び、ほっとした表情で歌仙さんを見ると、歌仙さんはにっこりと笑って頭を撫でてくれました。
「本丸の案内は俺がするぜ。小夜も一緒に来るか?」
「…はい」
「じゃあ4振りで周るってことでいいかな?」
江雪さんも頷いて、話がまとまりました。早速4振りが鍛刀部屋を出て行き、歌仙さんとそれを見送ります。
「厨に来るのは、執務が終わってからで良いかい?」
「はい。今日は顕現した男士を記録に残して歴防本部に報告するだけなので、すぐに向かいます」
わたしには決めていることがあります。それは、顕現した男士の最初の食事はわたしが作ることです。
人の身を得たばかりの男士の食事は、数日間は体…特に胃に負担の掛からないものから摂り始めなければなりません。
すぐに執務を終えて、早速厨に向かいました。
「あっ、あるじさまだ!」
この日は今剣くんも少し高めの台に立って、食事の準備を手伝ってくれていました。この時はみんなの分も作るものがあります。それは消化の良いデザートです。この時間から作ればちょうど良い時間に出来上がるはずだと、たすきを掛けて早速作業に取り掛かりました。
「こんかいはなにをつくるんですか?」
「牛乳寒天にするよ。今剣くんも大好きだもんね」
「やったー!」
牛乳寒天はわたしにとっても思い出深いもので、おばあちゃんがおやつに良く作ってくれていました。今でも帰省すると作ってくれて、楽しみの1つでもあります。レシピは教わっているので、この味が恋しくなると、男士が顕現した時以外にも時々作ります。
「作り終わったら夕飯のお手伝いもしますね」
「ありがとうございます」
今夜は鯖の竜田揚げのようです。副菜は蓮根のきんぴらと、歌仙さん特製のかぶの浅漬け。かぶの浅漬けは良く作っているので、余った葉っぱをとじゃこをふりかけ風に味付けをして、それを入れたおかゆにすることにしました。
口に合うといいな。
色々な気持ちを込めて調理を進めていきます。今剣くんから聞いたのでしょう。短刀の子たちが大喜びでやって来て、輝いた目でわたしを見守ってくれました。
嬉しいことに牛乳寒天はみんなの好物の1つになっています。
「村正、嬉しいからって脱がないでよねー!」
どこか遠くから清光くんの大声が聞こえてきました。安定くんと陸奥守さんの声も聞こえたので、恐らく3振りで脱ぐのを止めてくれているんだと思います。
…牛乳寒天に関係なく、脱ぐ時は脱ぎますが。
「喜びの舞を披露する時デス!」
「だから脱がないでってば!」
手を止めて、「わたしも行った方がいいのかな」と声がする方を見やると、蓮根を切っていた歌仙さんがため息交じりに同じ方向を見ました。わたしの作業を見ていた短刀たちも大騒ぎになる前に止めに行かなければとそちらへ向かって行きます。厨には歌仙さんとわたしだけになりました。
「主、村正のことは諦めてくれて構わないよ」
「そういうわけには…」
「主はああいったことに免疫力はないのだから、無理しなくていい」
恥ずかしいお話ですが、事実です。想いを伝えてくれた方は数人いましたが、これまで男性とお付き合いをする経験がないまま審神者になったからです。
「それに…」
歌仙さんは顔を赤くして俯いてしまったわたしの隣にすっと寄って来て、耳元でぽそりと呟きます。
「男の体を見るのは、僕だけで良いのだからね」
髪に優しくキスを落として調理に戻って行った歌仙さんを、わたしは暫く見ることが出来ませんでした。
審神者としてまだまだ頼りないことが多いわたしですが、このように時々甘い時間もあります。
小さい本丸ですが、何があってもわたしを支えてくれて、そして見守ってくれるみんなのことが大好きです。
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