女性審神者の名前です。
桜「僕たちって色んな逸話があったりするんだな」
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~薙side~
次の日も手伝いをした後に何か思い出せないか、静かな部屋で目を閉じて集中した。もふ丸には外で過ごしてもらっている。
「……」
やっぱり薙刀直しをされた頃のことを思い出せない。浮かんだのは神社で過ごしていた時の記憶。今度は私の心情がはっきりと映った。
“姫様はご無事だろうか”
“姫様は今頃どう過ごされているんだろう”
神社に来て間もない頃だと思う。姫様とは死別していない。それが分かって安心はした。
機械に慣れていなかった頃、私の代わりに主様が私が今まで思い出してきたことを時系列順にまとめてくれたデータがある。そこに今思い出したことを追加して、他にも何か思い出せないか、その画面をじっと見つめて再び集中した。
“感謝する。だが、どうかこのことは内密に”
“あくまでもお主がこしらえたものの1つとしてくれ”
どうして姫様はそう伝えたんだろう。
姫様が嫁入りした時は私はまだ薙刀だった。ということは、側室になった後に薙刀直しをされたことになる。こういった例は他にあったんだろうか。
なかったからこそ秘密にした…?
何となく辻褄が合う。その仮説を立ててそれも入力しておいた。
姫様の言葉を何回も呟く。そうして浮かんだのは歳を重ね、私を撫でる姫様の姿だった。
“薙の出番がないのは良いことだが、少し寂しいものがあるな…”
側室になってもしっかりと私をお傍に置いてくれて、大事にして下さっているのが感覚的に分かった。そこに、私を眺めた誰かが「何故この脇差を大切にしているのか」と尋ねているのが聞こえてくる。
“紅葉薙は幼き頃から共にあった”
“側室になる条件の1つが、この城でも紅葉薙と共に過ごすことだった”
“扱い慣れている武器があれば万が一に対応出来る”
“この城を守れる”
「!!」
断片的に聞こえた姫様のお声は同じ人物との会話ではなさそうだ。刀工に辿り着かなくても、姫様に近付けた充分な記憶。姫様のお声を何度も頭の中で再生させ、急いでデータに追加した。
それでも私の気持ちは重いまま。刀工の手掛かりを得ていないからだ。調べることは出来る。上手くいけば刀工だけではなくて姫様を知る機会にも繋がるかもしれない。…それでも。
…逃げないって決めたのに、その気持ちは何処に行っちゃったんだろ。
主様が私の考えを尊重してくれているとはいえ、あくまでも姫様は“前の主様”。いつ届くか分からない姫様の足取りを見てばかりではいられない。いつか答えは出さなくちゃならない。
「薙、夕餉の時間だよ。行ける?」
頭がごちゃごちゃな中、主様に障子越しに声を掛けられた。私たちが露天風呂に最初に入る日はいつも主様から来てくれる。けれど夕餉で私を呼びに来るのは珍しい。
呼びに来させてしまったことを詫びつつ、「少し思い出せました」とデータの入ったタブレットを見せた。
「大進歩だね」
「これでまた一歩、姫様に近付けたかと」
にっこりと笑ってくれた主様が「ちょっと考えてたことがあってね」と私の本体を見やった。
「今まで薙は刀派に属してないって思ってたんだけど…」
顕現してあまり経っていない頃、刀派に属していれば誰かが反応するはずだがそれがないと聞いていた。白山さんからは、私は巴形薙刀(“女薙刀 ”とも呼ばれていた)から生まれ変わった脇差とも教えてもらっている。
「この本丸にはまだ顕現していない刀派がいくつもあるの。その刀派の可能性もあるかもしれない」
「あ…」
「だとしたら、他の本丸にお邪魔してみるのもいいかなって思ってる。もしかしたら刀工を調べずに済むかもしれないよ」
「是非、そうしたいです」
まずは夕餉、と大広間に向かっている途中、長谷部さんと会った。片付けを終えても私がなかなか大広間に来ないから様子を見に来てくれたみたいだ。
主様と話していたことを伝えると「それもあり得ますね」と顎に手を添えた。
過去に堀川くんとそのような話をした時、和泉守さんとは土方歳三と共に過ごしていたから顕現してすぐ分かったと言うけれど、山姥切さんと山伏さんとは顕現してから兄弟だと知ったと教えてくれた。
清光くんと安定くんも同じで、俗に言う“幕末組”は同じ組織に長く共にいたのもあってすぐに分かったって言っていたっけ(長曽祢さんと陸奥守に最初は距離があったのもその理由)。
長谷部さんには織田信長とゆかりのある刀剣…薬研くんや宗三さん、不動くんがいる。長谷部さんには決して良いとは言えない過去が色濃く反映されているので、この場では長谷部さんのことは触れないでおいた。
「主のお考えを否定するつもりはないのですが…」
「?」
「薙は霊力の乱れが強かった時期もありましたが今は安定しています。記憶もある程度戻ったようですし、同じ刀派、ゆかりのある者。それを察知する力が戻っていて、実はこの本丸に繋がりのある刀剣がいる可能性はないでしょうか」
「あぁ、有り得るかも。薙、どうする?」
「…やってみます」
1階で過ごせるようになってからみんなと接する機会は多くなったけれど、ここ数日はそれが出来なかった。特に薙刀直しをされた記憶を取り戻した今なら、誰かと通ずるものを感じられるかもしれない。
「それなら、まずは練習も兼ねて俺を見てみるのはどうだ?俺を打ち出したのは長谷部国重 、南北朝時代から室時時代辺りに活躍した刀工だ。俺は織田信長とゆかりのある打刀として有名ではあるが、刀派はあるからな」
「せっかくだし、そうしてみたら?」
「では、ちょっと失礼しますね」
傍から見たら異様な光景だと理解しつつも、刀剣であった頃に戻った気持ちになってじっと長谷部さんと見つめ合った。
長谷部さんの両肩に手を添えてみたり、腕を擦ってみたり、何か得られないか集中してみる。長谷部さんはまさか私に触れられるとまでは思わなかったようで戸惑っている…ように見える。目の前に主様もいるから尚更。
「うーん…」
「長谷部一派ではなさそうだな」
「すみません、そうみたいです」
「薙が謝ることじゃない。気にするな」
ぽん、と優しく頭を撫でてくれた長谷部さん。ただ…
「それでも分かったことはあります」
「何だ?」
「長谷部さん、すっごく肩凝ってます…」
次の日も手伝いをした後に何か思い出せないか、静かな部屋で目を閉じて集中した。もふ丸には外で過ごしてもらっている。
「……」
やっぱり薙刀直しをされた頃のことを思い出せない。浮かんだのは神社で過ごしていた時の記憶。今度は私の心情がはっきりと映った。
“姫様はご無事だろうか”
“姫様は今頃どう過ごされているんだろう”
神社に来て間もない頃だと思う。姫様とは死別していない。それが分かって安心はした。
機械に慣れていなかった頃、私の代わりに主様が私が今まで思い出してきたことを時系列順にまとめてくれたデータがある。そこに今思い出したことを追加して、他にも何か思い出せないか、その画面をじっと見つめて再び集中した。
“感謝する。だが、どうかこのことは内密に”
“あくまでもお主がこしらえたものの1つとしてくれ”
どうして姫様はそう伝えたんだろう。
姫様が嫁入りした時は私はまだ薙刀だった。ということは、側室になった後に薙刀直しをされたことになる。こういった例は他にあったんだろうか。
なかったからこそ秘密にした…?
何となく辻褄が合う。その仮説を立ててそれも入力しておいた。
姫様の言葉を何回も呟く。そうして浮かんだのは歳を重ね、私を撫でる姫様の姿だった。
“薙の出番がないのは良いことだが、少し寂しいものがあるな…”
側室になってもしっかりと私をお傍に置いてくれて、大事にして下さっているのが感覚的に分かった。そこに、私を眺めた誰かが「何故この脇差を大切にしているのか」と尋ねているのが聞こえてくる。
“紅葉薙は幼き頃から共にあった”
“側室になる条件の1つが、この城でも紅葉薙と共に過ごすことだった”
“扱い慣れている武器があれば万が一に対応出来る”
“この城を守れる”
「!!」
断片的に聞こえた姫様のお声は同じ人物との会話ではなさそうだ。刀工に辿り着かなくても、姫様に近付けた充分な記憶。姫様のお声を何度も頭の中で再生させ、急いでデータに追加した。
それでも私の気持ちは重いまま。刀工の手掛かりを得ていないからだ。調べることは出来る。上手くいけば刀工だけではなくて姫様を知る機会にも繋がるかもしれない。…それでも。
…逃げないって決めたのに、その気持ちは何処に行っちゃったんだろ。
主様が私の考えを尊重してくれているとはいえ、あくまでも姫様は“前の主様”。いつ届くか分からない姫様の足取りを見てばかりではいられない。いつか答えは出さなくちゃならない。
「薙、夕餉の時間だよ。行ける?」
頭がごちゃごちゃな中、主様に障子越しに声を掛けられた。私たちが露天風呂に最初に入る日はいつも主様から来てくれる。けれど夕餉で私を呼びに来るのは珍しい。
呼びに来させてしまったことを詫びつつ、「少し思い出せました」とデータの入ったタブレットを見せた。
「大進歩だね」
「これでまた一歩、姫様に近付けたかと」
にっこりと笑ってくれた主様が「ちょっと考えてたことがあってね」と私の本体を見やった。
「今まで薙は刀派に属してないって思ってたんだけど…」
顕現してあまり経っていない頃、刀派に属していれば誰かが反応するはずだがそれがないと聞いていた。白山さんからは、私は巴形薙刀(“
「この本丸にはまだ顕現していない刀派がいくつもあるの。その刀派の可能性もあるかもしれない」
「あ…」
「だとしたら、他の本丸にお邪魔してみるのもいいかなって思ってる。もしかしたら刀工を調べずに済むかもしれないよ」
「是非、そうしたいです」
まずは夕餉、と大広間に向かっている途中、長谷部さんと会った。片付けを終えても私がなかなか大広間に来ないから様子を見に来てくれたみたいだ。
主様と話していたことを伝えると「それもあり得ますね」と顎に手を添えた。
過去に堀川くんとそのような話をした時、和泉守さんとは土方歳三と共に過ごしていたから顕現してすぐ分かったと言うけれど、山姥切さんと山伏さんとは顕現してから兄弟だと知ったと教えてくれた。
清光くんと安定くんも同じで、俗に言う“幕末組”は同じ組織に長く共にいたのもあってすぐに分かったって言っていたっけ(長曽祢さんと陸奥守に最初は距離があったのもその理由)。
長谷部さんには織田信長とゆかりのある刀剣…薬研くんや宗三さん、不動くんがいる。長谷部さんには決して良いとは言えない過去が色濃く反映されているので、この場では長谷部さんのことは触れないでおいた。
「主のお考えを否定するつもりはないのですが…」
「?」
「薙は霊力の乱れが強かった時期もありましたが今は安定しています。記憶もある程度戻ったようですし、同じ刀派、ゆかりのある者。それを察知する力が戻っていて、実はこの本丸に繋がりのある刀剣がいる可能性はないでしょうか」
「あぁ、有り得るかも。薙、どうする?」
「…やってみます」
1階で過ごせるようになってからみんなと接する機会は多くなったけれど、ここ数日はそれが出来なかった。特に薙刀直しをされた記憶を取り戻した今なら、誰かと通ずるものを感じられるかもしれない。
「それなら、まずは練習も兼ねて俺を見てみるのはどうだ?俺を打ち出したのは
「せっかくだし、そうしてみたら?」
「では、ちょっと失礼しますね」
傍から見たら異様な光景だと理解しつつも、刀剣であった頃に戻った気持ちになってじっと長谷部さんと見つめ合った。
長谷部さんの両肩に手を添えてみたり、腕を擦ってみたり、何か得られないか集中してみる。長谷部さんはまさか私に触れられるとまでは思わなかったようで戸惑っている…ように見える。目の前に主様もいるから尚更。
「うーん…」
「長谷部一派ではなさそうだな」
「すみません、そうみたいです」
「薙が謝ることじゃない。気にするな」
ぽん、と優しく頭を撫でてくれた長谷部さん。ただ…
「それでも分かったことはあります」
「何だ?」
「長谷部さん、すっごく肩凝ってます…」
