女性審神者の名前です。
桜「僕たちって色んな逸話があったりするんだな」
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~薙side~
ほぼいつも通りの生活に戻れた私は、手合わせやみんなと遊んで体力を戻したり、内番を手伝ったりと色々と動き回れるようになった。
…ダメだ、上手くいかない。
楽しい日を過ごす中でも、何か手掛かりになるような記憶が戻らないか試している。
思い出したのは、姫様が大事にされていた短刀が離婚で生き別れとなった実母が姫様の為に残していったものであること、2人の妹君とは腹違いの姉妹であること。姫様の父君が妻として迎え入れたのが2人であれば、亡くなられたのは妹君の実母。妹君たちとは仲良く過ごしていたし、継母が亡くなった時はしっかりと弔っていたのだから、関係は悪くなかったんじゃないかと思う。
姫様のことをまた思い出せたのはいいんだけど…。
今の私が1番思い出したいのは刀工のこと。
姫様のお考えに背くことはしたくない気持ちと、刀工を調べたい気持ち。ずっと葛藤している。そのせいで思い出せない気もしてきた。
「薙、ちょっと休憩しませんか?」
「胡桃が食べたいです」と、珍しくもふ丸からリクエストされてお菓子が入った籠から袋を取り出すと、入っていたのはほんの小さな欠片ばかり。それなら買いに行こうと、気分転換も兼ねて万屋へ行くことにした。
他には何を買おうか色々話しながら万屋に入ると、次郎太刀さんの鼻声が聞こえてきた。たくさんのおつまみを抱えている。
「おぉ、薙じゃないか。何を買いに来たんだい?」
「おやつです。もふ丸の分もなくなっちゃったので」
あまりの量を抱えているものだから籠を差し出した。「ありがと~」と、がさっとつまみをそれに入れて更にあれこれ見ている。
「もふ丸のおやつは何を買ってるんだい?」
「私と同じものを食べる時もあれば、動物用のおやつを食べることもありますよ」
「今日は胡桃を買いに来ました」と伝えると、「ふーん」と暫し考えた後、にっこりと笑った。
「なら次郎さんが買っちゃう!」
「へっ?!いや悪いですよ!」
「いつもアタシたちの為に頑張ってるんだ、これくらいさせておくれよ」
「ですがー…」とおろおろとする私をよそに、動物用のおやつが並んでいる場所に行って籠に胡桃を入れた。しかも3つ。
「次郎太刀さーん?!」
「あるに越したことはないさね」
「確かにそうですが!」
「さっ、あとは薙のおやつだ!」
「?!」
約10分後、私の腕の中には次郎太刀さんに買ってもらった大量のおやつが入った紙袋があった。次郎太刀さんはさっとお会計を済ませて「じゃあね~」と本丸に戻ってしまって、まともにお礼を伝えられないままその場に立ち尽くす。
「…もふ丸、私どうしたらいい?」
「…僕も考えてます」
ふたりで考えに考えた結果、今夜はおつまみを作って次郎太刀さんのお店に行くことにした。
「こんばんは~…」
そして夜。燭台切さんからアドバイスをもらって、おつまみを2種類作って次郎太刀さんのお店に顔を出してみると、太郎太刀さんに不動くん(常連客?らしい)、今夜は長曽祢さんと和泉守さんがいた。
「お、薙も飲みに来たのか?」
「お礼でおつまみを作って来たんですけど…」
「なんだい、気にしなくて良かったのに。悪いね」
「まぁ座りなよ」と不動くんに席を勧められて端っこに座る。
おつまみは好評で、お酒が進んだ和泉守さんはご機嫌だ。長曽祢さんに「ペースを落とせ」と注意されつつも飲み続けている。和泉守さんは宴の時に飲みすぎて運ばれていただけに、こういった場で飲むなら誰かが同行しないと危険と判断されたのか長曽祢さんもいる、ということらしい。
「せっかく来たんだ、ちょいと飲んで行きなよ」
それまで烏龍茶でみんなが飲む姿を見ていた私に瓶ビールが差し出された。「少しだけ」と注いでもらい、次郎太刀さんが作ってくれた出来立ての焼き鳥を頬張る。もふ丸がいればこの美味しさを共有出来ただろうけど、きっと私が飲んで来るだろうからと部屋で留守番だ。
「いつ見てもいい飲みっぷりだねぇ」
「……」
…こんなはずじゃなかった。
気付けば瓶ビールは3本目。和泉守さんに水を飲ませる長曽祢さんに、私の酒の強さを再認識されてしまって少し恥ずかしい。
「薙も飲んどいた方がいいよ」
不動くんが水を渡してくれて一気に飲む。彼も酒の量を減らしたとはいえ、今夜は珍しい面子に酒が進んでいるようだ。
「つまみ持って来たぞー」
しばらくして、鶴丸さんが追加のおつまみを持ってやって来た。出汁巻き卵と和え物だ。
「おっ、待ってたぜ!」
「待っていた」ということは、元々鶴丸さんも来る予定だったらしい。身を乗り出して小皿を受け取った不動くんが、1番離れた席に座る私の分もそれぞれ取り分けてくれて早速いただいた。どちらも美味しくてお酒が進む。
「まずはいつものでいいのかい?」
「あぁ、頼む」
「はいよ~」と冷蔵庫からビールを取り出して鶴丸さんに出した。みんなで改めて乾杯をして、暫しおつまみを堪能した後、長曽祢さんが「ここまでだ」と和泉守さんから徳利を取り上げた。残りは彼のお猪口に注がれ、次郎太刀さんが手際よくそれを受け取る。これが和泉守さんが1振りで歩いて部屋に戻れる量らしい。
「兼さん、そろそろ戻りますよ」
それから更に少し経った後、今度は堀川くんが和泉守さんを迎えにやって来た。タイミングの良さといい、さすが相棒で助手、というだけある。
「仕方ねぇ、行くか」
「皆さんも飲みすぎないように気を付けて下さいね」
ふらりと立ち上がり、念の為と長曽祢さんと堀川くんが横に立つ。そうして私を見たかと思いきや、私の肩をぽん、と叩いて「ご馳走さん」と店を後にした。
ほぼいつも通りの生活に戻れた私は、手合わせやみんなと遊んで体力を戻したり、内番を手伝ったりと色々と動き回れるようになった。
…ダメだ、上手くいかない。
楽しい日を過ごす中でも、何か手掛かりになるような記憶が戻らないか試している。
思い出したのは、姫様が大事にされていた短刀が離婚で生き別れとなった実母が姫様の為に残していったものであること、2人の妹君とは腹違いの姉妹であること。姫様の父君が妻として迎え入れたのが2人であれば、亡くなられたのは妹君の実母。妹君たちとは仲良く過ごしていたし、継母が亡くなった時はしっかりと弔っていたのだから、関係は悪くなかったんじゃないかと思う。
姫様のことをまた思い出せたのはいいんだけど…。
今の私が1番思い出したいのは刀工のこと。
姫様のお考えに背くことはしたくない気持ちと、刀工を調べたい気持ち。ずっと葛藤している。そのせいで思い出せない気もしてきた。
「薙、ちょっと休憩しませんか?」
「胡桃が食べたいです」と、珍しくもふ丸からリクエストされてお菓子が入った籠から袋を取り出すと、入っていたのはほんの小さな欠片ばかり。それなら買いに行こうと、気分転換も兼ねて万屋へ行くことにした。
他には何を買おうか色々話しながら万屋に入ると、次郎太刀さんの鼻声が聞こえてきた。たくさんのおつまみを抱えている。
「おぉ、薙じゃないか。何を買いに来たんだい?」
「おやつです。もふ丸の分もなくなっちゃったので」
あまりの量を抱えているものだから籠を差し出した。「ありがと~」と、がさっとつまみをそれに入れて更にあれこれ見ている。
「もふ丸のおやつは何を買ってるんだい?」
「私と同じものを食べる時もあれば、動物用のおやつを食べることもありますよ」
「今日は胡桃を買いに来ました」と伝えると、「ふーん」と暫し考えた後、にっこりと笑った。
「なら次郎さんが買っちゃう!」
「へっ?!いや悪いですよ!」
「いつもアタシたちの為に頑張ってるんだ、これくらいさせておくれよ」
「ですがー…」とおろおろとする私をよそに、動物用のおやつが並んでいる場所に行って籠に胡桃を入れた。しかも3つ。
「次郎太刀さーん?!」
「あるに越したことはないさね」
「確かにそうですが!」
「さっ、あとは薙のおやつだ!」
「?!」
約10分後、私の腕の中には次郎太刀さんに買ってもらった大量のおやつが入った紙袋があった。次郎太刀さんはさっとお会計を済ませて「じゃあね~」と本丸に戻ってしまって、まともにお礼を伝えられないままその場に立ち尽くす。
「…もふ丸、私どうしたらいい?」
「…僕も考えてます」
ふたりで考えに考えた結果、今夜はおつまみを作って次郎太刀さんのお店に行くことにした。
「こんばんは~…」
そして夜。燭台切さんからアドバイスをもらって、おつまみを2種類作って次郎太刀さんのお店に顔を出してみると、太郎太刀さんに不動くん(常連客?らしい)、今夜は長曽祢さんと和泉守さんがいた。
「お、薙も飲みに来たのか?」
「お礼でおつまみを作って来たんですけど…」
「なんだい、気にしなくて良かったのに。悪いね」
「まぁ座りなよ」と不動くんに席を勧められて端っこに座る。
おつまみは好評で、お酒が進んだ和泉守さんはご機嫌だ。長曽祢さんに「ペースを落とせ」と注意されつつも飲み続けている。和泉守さんは宴の時に飲みすぎて運ばれていただけに、こういった場で飲むなら誰かが同行しないと危険と判断されたのか長曽祢さんもいる、ということらしい。
「せっかく来たんだ、ちょいと飲んで行きなよ」
それまで烏龍茶でみんなが飲む姿を見ていた私に瓶ビールが差し出された。「少しだけ」と注いでもらい、次郎太刀さんが作ってくれた出来立ての焼き鳥を頬張る。もふ丸がいればこの美味しさを共有出来ただろうけど、きっと私が飲んで来るだろうからと部屋で留守番だ。
「いつ見てもいい飲みっぷりだねぇ」
「……」
…こんなはずじゃなかった。
気付けば瓶ビールは3本目。和泉守さんに水を飲ませる長曽祢さんに、私の酒の強さを再認識されてしまって少し恥ずかしい。
「薙も飲んどいた方がいいよ」
不動くんが水を渡してくれて一気に飲む。彼も酒の量を減らしたとはいえ、今夜は珍しい面子に酒が進んでいるようだ。
「つまみ持って来たぞー」
しばらくして、鶴丸さんが追加のおつまみを持ってやって来た。出汁巻き卵と和え物だ。
「おっ、待ってたぜ!」
「待っていた」ということは、元々鶴丸さんも来る予定だったらしい。身を乗り出して小皿を受け取った不動くんが、1番離れた席に座る私の分もそれぞれ取り分けてくれて早速いただいた。どちらも美味しくてお酒が進む。
「まずはいつものでいいのかい?」
「あぁ、頼む」
「はいよ~」と冷蔵庫からビールを取り出して鶴丸さんに出した。みんなで改めて乾杯をして、暫しおつまみを堪能した後、長曽祢さんが「ここまでだ」と和泉守さんから徳利を取り上げた。残りは彼のお猪口に注がれ、次郎太刀さんが手際よくそれを受け取る。これが和泉守さんが1振りで歩いて部屋に戻れる量らしい。
「兼さん、そろそろ戻りますよ」
それから更に少し経った後、今度は堀川くんが和泉守さんを迎えにやって来た。タイミングの良さといい、さすが相棒で助手、というだけある。
「仕方ねぇ、行くか」
「皆さんも飲みすぎないように気を付けて下さいね」
ふらりと立ち上がり、念の為と長曽祢さんと堀川くんが横に立つ。そうして私を見たかと思いきや、私の肩をぽん、と叩いて「ご馳走さん」と店を後にした。
