女性審神者の名前です。
桜「僕たちって色んな逸話があったりするんだな」
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~薙side~
今まで見聞きしてきたものを整理した後、目を閉じるとあの時に見た、姫様がお城から出て行く光景が流れた。当時の私はまだ薙刀。あの時より広く周りが映り、姫様と私が城に残る家臣たちに見送られていく様子が見えた。その場独特の雰囲気も感じられる。姫様の父君らしき男性は当主としてではなく、1人の父親としての顔をしているように思えた。
そうか、こういうことだったんだ。
その傍には黒い人型のままの声の主も見えた。離れ離れになったのはこの時。
姫様を側室にしたのは誰だろう。
問題はここ。“誰もが知る歴史上の人物”。姫様の名前が思い出せなくとも、その方の名前が分かれば姫様にもっと近付ける。
「同盟関係の為に結婚したとか、逆に関係が悪化して離婚したり、政略結婚は数えきれないぐらいあるからこれも調べても追うのは難しいかな…」
半ば人質ような形で嫁入りをした女性も多かったと教えてくれた。姫様がそれに当てはまるのかは分からないけれど、何かしらの条件があった、と仮説を立てておく。
頑張ったからと、陸奥守が和菓子をくれたのでそれを半分に分け、もふ丸と食べつつ麦茶で喉を潤す。こんな時間帯だけど今日くらいはいいだろう。
暫し結婚する理由について話した後、姫様の境遇や時代について話を戻す。
「戦乱の時代というのは間違いなさそうだね。…と言っても、その時代も長かったから具体的に時代を特定するのも難しいな」
「他に何か思い出せないか意識してみます」
深呼吸をして再び目を閉じる。
その続きが見れれば、姫様を側室にした人物が分かるかもしれない。そうでなかったとしても、何かしら手掛かりはほしいところ。こうして記憶を辿れるようになったのが色々と見せつけてきた声の主の影響だとすれば、皮肉にも思える。
これは…?
次に見えたのは、姫様が私を大事を抱えて何処かを尋ねる光景だった。立派な屋敷の敷地内に鍛冶場がある。
「別の刀工…?」
「ちゅうことは、薙刀直しをされる時の記憶か?」
「そうかもしれない」
姫様は自ら刀工の元へ赴いて薙刀直しを依頼したようだ。どういった鍔が良いのか、どういった鞘が良いのか、刀工と拘りあって話している。刀工が柄の部分は鮫皮を使うと提案していて、くれぐれも私を大事に扱うよう伝えている。それだけ私は姫様に愛されていたのだと知った。
「これは…鍔ですね。姫様は資料のようなものを見て、どういったものがいいのか吟味してます」
そうして私の薙刀直しは始まった。焼身になった時のように熱い感覚に襲われるかと思ったけど、不思議とそれは感じない。
陸奥守に本体を取ってもらい、姫様と同じように抱えて続きに集中した。相変わらずここでも見えるものは飛び飛びだったけれど、この場面を見れて幸せだった。自然と笑みが零れる。
1人の刀工が私を脇差に打ち直し、刀装はもう1人の刀工がこしらえている。
“あぁ、薙。これからもずっと一緒にいられるな…”
慈しむ表情で鞘に頬を寄せ、優しく撫でる姫様の横にそっとしゃがんだ。
姫様、紅葉薙はここにおります。
いつでも、お傍におります。
“不思議じゃな。本当に薙が傍にいるように感じられる”
まさか、と瞼がぴくりと動いた。
“その思いはきっと、この紅葉薙に伝わっております”
“そうだな”
それから何かしらの話をした後、刀工が姫様が見ていた資料のようなものを取り出す。
“今回こしらえた刀装はこちらに記してございます。もし直しが必要であれば、いつでもお越し下さい”
“感謝する。だが、どうかこのことは内密に”
“…はい”
“あくまでもお主がこしらえたものの1つとしてくれ”
意味深なことを言い残し、私を大事そうに抱えて姫様が鍛冶場を去った。ここで映像のように見えた光景が途切れて視界が暗くなる。
“記してある”ということは…?
目を開けて柄、鍔、鞘、全ての刀装具をあらゆる角度から見つめた。
「何か分かったがか?」
「刀工は刀装具を記してあると言っていました。もしそれが現存していれば、私を脇差に直した刀工が誰か分かると思います」
主様と陸奥守が顔を見合わせる。
「ただ」と、姫様は自分の名前は残さないように刀工に伝えていたことも合わせて話す。
「前の主にはそれなりの何か考えがあったっちゅうことやね」
「だとしたら、刀工を調べるのは姫様のお考えに背くことになります」
「そうなっちゃうね…。どうする?」
「少しだけ時間を下さい」
「悩むがはしゃあないき、良う考えるとえい」
今度こそ解散となって、1振り残った部屋でしばらく本体を眺めていた。
今まで見聞きしてきたものを整理した後、目を閉じるとあの時に見た、姫様がお城から出て行く光景が流れた。当時の私はまだ薙刀。あの時より広く周りが映り、姫様と私が城に残る家臣たちに見送られていく様子が見えた。その場独特の雰囲気も感じられる。姫様の父君らしき男性は当主としてではなく、1人の父親としての顔をしているように思えた。
そうか、こういうことだったんだ。
その傍には黒い人型のままの声の主も見えた。離れ離れになったのはこの時。
姫様を側室にしたのは誰だろう。
問題はここ。“誰もが知る歴史上の人物”。姫様の名前が思い出せなくとも、その方の名前が分かれば姫様にもっと近付ける。
「同盟関係の為に結婚したとか、逆に関係が悪化して離婚したり、政略結婚は数えきれないぐらいあるからこれも調べても追うのは難しいかな…」
半ば人質ような形で嫁入りをした女性も多かったと教えてくれた。姫様がそれに当てはまるのかは分からないけれど、何かしらの条件があった、と仮説を立てておく。
頑張ったからと、陸奥守が和菓子をくれたのでそれを半分に分け、もふ丸と食べつつ麦茶で喉を潤す。こんな時間帯だけど今日くらいはいいだろう。
暫し結婚する理由について話した後、姫様の境遇や時代について話を戻す。
「戦乱の時代というのは間違いなさそうだね。…と言っても、その時代も長かったから具体的に時代を特定するのも難しいな」
「他に何か思い出せないか意識してみます」
深呼吸をして再び目を閉じる。
その続きが見れれば、姫様を側室にした人物が分かるかもしれない。そうでなかったとしても、何かしら手掛かりはほしいところ。こうして記憶を辿れるようになったのが色々と見せつけてきた声の主の影響だとすれば、皮肉にも思える。
これは…?
次に見えたのは、姫様が私を大事を抱えて何処かを尋ねる光景だった。立派な屋敷の敷地内に鍛冶場がある。
「別の刀工…?」
「ちゅうことは、薙刀直しをされる時の記憶か?」
「そうかもしれない」
姫様は自ら刀工の元へ赴いて薙刀直しを依頼したようだ。どういった鍔が良いのか、どういった鞘が良いのか、刀工と拘りあって話している。刀工が柄の部分は鮫皮を使うと提案していて、くれぐれも私を大事に扱うよう伝えている。それだけ私は姫様に愛されていたのだと知った。
「これは…鍔ですね。姫様は資料のようなものを見て、どういったものがいいのか吟味してます」
そうして私の薙刀直しは始まった。焼身になった時のように熱い感覚に襲われるかと思ったけど、不思議とそれは感じない。
陸奥守に本体を取ってもらい、姫様と同じように抱えて続きに集中した。相変わらずここでも見えるものは飛び飛びだったけれど、この場面を見れて幸せだった。自然と笑みが零れる。
1人の刀工が私を脇差に打ち直し、刀装はもう1人の刀工がこしらえている。
“あぁ、薙。これからもずっと一緒にいられるな…”
慈しむ表情で鞘に頬を寄せ、優しく撫でる姫様の横にそっとしゃがんだ。
姫様、紅葉薙はここにおります。
いつでも、お傍におります。
“不思議じゃな。本当に薙が傍にいるように感じられる”
まさか、と瞼がぴくりと動いた。
“その思いはきっと、この紅葉薙に伝わっております”
“そうだな”
それから何かしらの話をした後、刀工が姫様が見ていた資料のようなものを取り出す。
“今回こしらえた刀装はこちらに記してございます。もし直しが必要であれば、いつでもお越し下さい”
“感謝する。だが、どうかこのことは内密に”
“…はい”
“あくまでもお主がこしらえたものの1つとしてくれ”
意味深なことを言い残し、私を大事そうに抱えて姫様が鍛冶場を去った。ここで映像のように見えた光景が途切れて視界が暗くなる。
“記してある”ということは…?
目を開けて柄、鍔、鞘、全ての刀装具をあらゆる角度から見つめた。
「何か分かったがか?」
「刀工は刀装具を記してあると言っていました。もしそれが現存していれば、私を脇差に直した刀工が誰か分かると思います」
主様と陸奥守が顔を見合わせる。
「ただ」と、姫様は自分の名前は残さないように刀工に伝えていたことも合わせて話す。
「前の主にはそれなりの何か考えがあったっちゅうことやね」
「だとしたら、刀工を調べるのは姫様のお考えに背くことになります」
「そうなっちゃうね…。どうする?」
「少しだけ時間を下さい」
「悩むがはしゃあないき、良う考えるとえい」
今度こそ解散となって、1振り残った部屋でしばらく本体を眺めていた。
