女性審神者の名前です。
桜「僕たちって色んな逸話があったりするんだな」
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~和泉守side~
主の判断で、この日から薙が朝礼に出ることになった。久々に顔を見れたのがよっぽど嬉しかったのか、粟田口の連中が薙を囲んでいる。宥める一期、それを静かに見守る鳴狐。日常に戻りつつある様子にオレも内心安堵した。オレたちが同行するのが条件として、散歩に出たり万屋に行ったりと外に出る許可ももらっている。これで“声”が聞こえなくなれば、見た夢を思い出さなければ、出来ることも戻ってくるだろう。薙だって思うことはたくさんあるはずだ。
「今日はどうしましょうか」
もちろんオレの助手で相棒である国広も一緒だ。この日はオレたち2振りと行動しつつ、皆と段階的に交流することになっている。あれを乗り越えるまでいかに自然に生活するか。
主と国広とは、部屋に籠りきりなのは体に悪いし、ひとまず今日は薙がしたいことをさせて様子を見よう、と話は合わせてある。
「まずは昼餉まで部屋で過ごしたいな、と。本体のお手入れもしたいですし」
「そうだな。んじゃ、オレたちの部屋で手入れするか」
「はい!」
部屋と言っても、何も薙の部屋で過ごすことが全てじゃねぇ。オレたちと過ごせりゃそれでいい。
その提案ににっこりと笑った薙が「準備が出来たらお邪魔しますね」と一旦部屋へと戻った。
しばらくしてお互いの刀装具を見たりしながら手入れを済ませ、長曽祢さんと陸奥守を加えて縁側で談笑しているうちに昼餉の時間が近づいてきた(陸奥守の態度が少しばかし不自然だったが)。
「じゃあ、僕は厨当番のお手伝いに行って来ますね」
「おう、よろしくな」
今日は長曽祢さんが来ることも、国広が途中で抜けるのも打ち合わせ済み。…そして。
「やーっと終わった~」
「もうみんな食べ始めてるみたい。まだ混んでるから、僕たちもちょっと時間をずらして一緒に食べるよ」
こうしてあえて内番をゆっくりこなした加州と大和守が合流するのも、主も一緒に食うのも、皆と時間をずらして大広間で食うことも決まっていた。薙には悪いが、手の震えが出ちまってることを他の奴らに見せなきゃならねぇことも含まれている。
頃合いを見て大広間に向かうと、先に昼餉を済ませた奴らの食器洗いを手伝っていた主と国広が俺たちの分を用意しているところだった。
「お待たせ~」
この日の昼餉は蕎麦。豪快にすする陸奥守の横に座る薙も美味そうに食べ始めた。
主が歌仙から舞をしたと聞いて、巫女服を注文したと自然な会話が生まれる。
「新年度も過ぎて落ち着いたから、すぐに届くはずだよ」
「ありがとうございます」
長曽祢さんも薙に礼を伝えて、大和守も「また見たい」とにこにことしている。
「今度は石切丸と合同でやったらどうやろう?きっとこじゃんと実るぜよ」
「なぁ?」とオレたちを見渡した陸奥守の目つきは「石切丸たちとも話す機会を作ろう」ということだろう。「そうだな」と返して蕎麦に七味をかけてすすった。
「まだ余ってるが、食うか?」
「鶴丸たちの分、ちゃんとある?」
「構わないよ。これから燭台切が僕たちの分を茹でるからね」
「もうちっともろうてもえいか?」
「私も、もうちょっとだけ」
茹でたての蕎麦ととろろを持って来た鶴丸と歌仙に、珍しく薙もおかわりをした。
「ほんならこれを分け合おうか」
「うん」
薙が刻みねぎと刻み海苔が入った器を陸奥守に差し出す中、すっかり食欲が戻った様子に小さく笑んだ。手の震えも出ていない。
頼む、このまま直ってくれ。
事情を知るオレたちは皆そう思っていただろう。だがその願いは届かず、あと2口ほどのところで手の震えが出ちまった。一旦箸を置き、「おかわりしなければ良かった」と目を伏せて手をぎゅっと握る薙。雰囲気が一変した様子に、自分たちの分を用意していた太鼓鐘が何事かとこちらを見た。
「薙さん、大丈夫か?!」
「大丈夫、だよ。…変なとこ見せちゃってごめん」
それでも手の震えはだいぶ落ち着いてると聞いている。食べられるか尋ねてみると、「食べられます」と小刻みに震える手で再び箸と器を持った。普段なら食い終えれば厨に食器を戻しに行くところだが、この調子だとまだ無理だろう。そこに行くこと自体がまだ厳しいらしい。…と思っていたが。
「…私、下げに行って来ます」
何とか食べ終えた薙が、意を決したようにお盆を握った。万が一に備えて、乗せたのは自分の分だけだ。
主がそれに付き添い、オレたちは心配の眼差しで薙の背中を見つめ、加州が「頑張れ」と小さく呟く。燭台切たちが包丁を使っていなければ、薙が何処かに置かれた包丁を見なければ何とかなる、そんな気がした。
「大丈夫、でした」
どれぐらい経っただろうか。薙が戻って来るまでの間が長く感じて、深刻な表情を浮かべていた陸奥守が小さく安堵のため息を零した。仕方ないとはいえ、心が痛む。
「…そうだ!この後みんなで万屋に行きませんか?」
「もふ丸と食べるおやつを買いたい」と取り繕うように振舞う薙に、更に心が痛んだ。
主の判断で、この日から薙が朝礼に出ることになった。久々に顔を見れたのがよっぽど嬉しかったのか、粟田口の連中が薙を囲んでいる。宥める一期、それを静かに見守る鳴狐。日常に戻りつつある様子にオレも内心安堵した。オレたちが同行するのが条件として、散歩に出たり万屋に行ったりと外に出る許可ももらっている。これで“声”が聞こえなくなれば、見た夢を思い出さなければ、出来ることも戻ってくるだろう。薙だって思うことはたくさんあるはずだ。
「今日はどうしましょうか」
もちろんオレの助手で相棒である国広も一緒だ。この日はオレたち2振りと行動しつつ、皆と段階的に交流することになっている。あれを乗り越えるまでいかに自然に生活するか。
主と国広とは、部屋に籠りきりなのは体に悪いし、ひとまず今日は薙がしたいことをさせて様子を見よう、と話は合わせてある。
「まずは昼餉まで部屋で過ごしたいな、と。本体のお手入れもしたいですし」
「そうだな。んじゃ、オレたちの部屋で手入れするか」
「はい!」
部屋と言っても、何も薙の部屋で過ごすことが全てじゃねぇ。オレたちと過ごせりゃそれでいい。
その提案ににっこりと笑った薙が「準備が出来たらお邪魔しますね」と一旦部屋へと戻った。
しばらくしてお互いの刀装具を見たりしながら手入れを済ませ、長曽祢さんと陸奥守を加えて縁側で談笑しているうちに昼餉の時間が近づいてきた(陸奥守の態度が少しばかし不自然だったが)。
「じゃあ、僕は厨当番のお手伝いに行って来ますね」
「おう、よろしくな」
今日は長曽祢さんが来ることも、国広が途中で抜けるのも打ち合わせ済み。…そして。
「やーっと終わった~」
「もうみんな食べ始めてるみたい。まだ混んでるから、僕たちもちょっと時間をずらして一緒に食べるよ」
こうしてあえて内番をゆっくりこなした加州と大和守が合流するのも、主も一緒に食うのも、皆と時間をずらして大広間で食うことも決まっていた。薙には悪いが、手の震えが出ちまってることを他の奴らに見せなきゃならねぇことも含まれている。
頃合いを見て大広間に向かうと、先に昼餉を済ませた奴らの食器洗いを手伝っていた主と国広が俺たちの分を用意しているところだった。
「お待たせ~」
この日の昼餉は蕎麦。豪快にすする陸奥守の横に座る薙も美味そうに食べ始めた。
主が歌仙から舞をしたと聞いて、巫女服を注文したと自然な会話が生まれる。
「新年度も過ぎて落ち着いたから、すぐに届くはずだよ」
「ありがとうございます」
長曽祢さんも薙に礼を伝えて、大和守も「また見たい」とにこにことしている。
「今度は石切丸と合同でやったらどうやろう?きっとこじゃんと実るぜよ」
「なぁ?」とオレたちを見渡した陸奥守の目つきは「石切丸たちとも話す機会を作ろう」ということだろう。「そうだな」と返して蕎麦に七味をかけてすすった。
「まだ余ってるが、食うか?」
「鶴丸たちの分、ちゃんとある?」
「構わないよ。これから燭台切が僕たちの分を茹でるからね」
「もうちっともろうてもえいか?」
「私も、もうちょっとだけ」
茹でたての蕎麦ととろろを持って来た鶴丸と歌仙に、珍しく薙もおかわりをした。
「ほんならこれを分け合おうか」
「うん」
薙が刻みねぎと刻み海苔が入った器を陸奥守に差し出す中、すっかり食欲が戻った様子に小さく笑んだ。手の震えも出ていない。
頼む、このまま直ってくれ。
事情を知るオレたちは皆そう思っていただろう。だがその願いは届かず、あと2口ほどのところで手の震えが出ちまった。一旦箸を置き、「おかわりしなければ良かった」と目を伏せて手をぎゅっと握る薙。雰囲気が一変した様子に、自分たちの分を用意していた太鼓鐘が何事かとこちらを見た。
「薙さん、大丈夫か?!」
「大丈夫、だよ。…変なとこ見せちゃってごめん」
それでも手の震えはだいぶ落ち着いてると聞いている。食べられるか尋ねてみると、「食べられます」と小刻みに震える手で再び箸と器を持った。普段なら食い終えれば厨に食器を戻しに行くところだが、この調子だとまだ無理だろう。そこに行くこと自体がまだ厳しいらしい。…と思っていたが。
「…私、下げに行って来ます」
何とか食べ終えた薙が、意を決したようにお盆を握った。万が一に備えて、乗せたのは自分の分だけだ。
主がそれに付き添い、オレたちは心配の眼差しで薙の背中を見つめ、加州が「頑張れ」と小さく呟く。燭台切たちが包丁を使っていなければ、薙が何処かに置かれた包丁を見なければ何とかなる、そんな気がした。
「大丈夫、でした」
どれぐらい経っただろうか。薙が戻って来るまでの間が長く感じて、深刻な表情を浮かべていた陸奥守が小さく安堵のため息を零した。仕方ないとはいえ、心が痛む。
「…そうだ!この後みんなで万屋に行きませんか?」
「もふ丸と食べるおやつを買いたい」と取り繕うように振舞う薙に、更に心が痛んだ。
