女性審神者の名前です。
桜「僕たちって色んな逸話があったりするんだな」
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~薙side~
今日、主様はいない。私がこうなってしまう前から連合について話し合う為に歴防本部に行くのは決まっていて、いつもより多い執務に追われていたのはそれもあると話していた。今は長谷部さんと今週の近侍の鳴狐さんを中心にして色々と動いているみたいだ。
私も何か手伝えることがあったはずなのに…。
柱に背を預けて膝を抱く。耳を澄ませてみると手合わせをする鯰尾くんと和泉守さんの声が聞こえてきた。珍しい組み合わせだと思いながら、もふ丸のベッドを見た。
もふ丸には気分転換をしてほしくて外で過ごしてもらっている。粟田口のみんなと遊んだり、手合わせを見学したり、三日月や鶯丸さんたちとお茶をしたり、過ごし方は色々。今日は何をして過ごしているんだろう。こんな私を見ているのだから心から楽しめていないんだろうけど、それでももふ丸には外の空気を吸ってきてほしかった。戻って来てお土産話を聞くのが今の私には唯一の楽しみだ。
そこに、控えめな足音の後に障子にシルエットが映る。
「薙さん、入ってもいい?」
乱ちゃんだった。慌てて香道の本を読む振りをしながら返事をすると、美味しそうなプリンを持って来てくれた。
「みんなでプリン作ったんだ。一緒に食べよう?」
「ありがとう」
「歌仙さんからアドバイスもらって、抹茶味も作ったんだ。薙さん抹茶味も好きだからきっと気に入ってくれると思う!」
「うん、抹茶のお菓子はみんな好き」
私の穏やかな表情に「久しぶりに薙さんの顔を見れた」と喜んでくれた乱ちゃん。事情を知っているとはいえ、この数日間は主様や清光くん、長谷部さんとしか話していなかった。
「せっかくだし、縁側で食べたいな」
「うん、そうしよう。今日はお天気もいいし風も気持ちいいよ」
そろそろ昼間の空気を吸いたい。みんなが寝た頃に夜風を浴びたことはあっても、やっぱりお日様に当たらないのは体に悪いと思う。回復に時間が掛かっているのはこのせいでもあるかもしれないし。
「やっと晴れたね」
昨日は曇りで、一昨日は雨だった。普段だったら恵みの雨だと喜べるのに、まるで私の心情を表しているようで辛かった。
障子を開ければ暖かい空気に包まれて、少し眩しく感じたぐらい私は太陽の日差しを浴びていなかったんだと気付く。
「いただきます」
本格的な抹茶の香りに一気に食欲が沸いた。なめらかでいくらでも食べられるぐらい本当に美味しい。乱ちゃんが、みんなが抹茶味のお菓子が好きなのを覚えていれくれたのも嬉しかった。
「すっごく美味しいよ。…はい」
「わーい!」
一口サイズにすくったプリンを乱ちゃんの口に差し出して、その美味しさを共有してみる。乱ちゃんはプレーンのプリンを食べていて食べさせあいっこをした。
縁側で美味しく食べられているのも、楽しめているのも嬉しいと思えたのも束の間、手の震えが始まってしまった。
まただ…。
手の震えは少しずつ落ち着きつつある。けれどその度に“何故”、“どうして”と言われた声が頭を過ってしまうのだ。
「ボクが食べさせてあげるね」
「…ありがとう」
兄弟たちにも食べさせることがあるのか、タイミングも一口のサイズもちょうど良く食べさせてくれた。
「ごめんね…」
「薙さん、謝らないで。ボクは楽しいことも辛いことも分かち合いたいんだ。ボク、薙さんのことはお姉ちゃんって思ってるし」
「…ありがとう」
現世遠征に行った時のように私を抱きしめてくれて、その温もりの心地良さに目を閉じる。
落ち着く…。
手の震えが止まった。これならもっと外に出ていた方がいいのかもしれない。ただ、厨と聞くと心の中に鉛のようなものが圧し掛かるような感覚になるからまだそこには行けそうにない。
「もふ丸が何処にいるか知ってる?」
「茶々丸と遊んでるんじゃないかな」
茶々丸は現世遠征で小夜くんが飼うと決めたミニウサギのこと。主様が小夜くんたちの部屋の近くに茶々丸専用の部屋を用意して、出来るだけストレスが掛からない環境を作っていた。
元々ミニウサギは人懐っこくて、茶々丸も同じ。毎日のブラッシングだったり、ご飯の時に名前を呼べばすぐに駆け寄ってくる。もふ丸もその性格もあってか虎くんたちの時と違ってすぐに慣れていた。
「もふ丸がいるなら小夜くんたちもいるはずだよ」
「…行ってみようかな」
「じゃあ、一緒に行こう!」
すぐに片付けてくれた乱ちゃんに手を引かれて行く。
「…あ、薙さん」
「具合は良くなっているようですね」
「はい」
茶々丸と追いかけっこをしていたもふ丸が嬉しそうに肩によじ登ってきた。
あっという間に肩にはもふ丸、膝の上には茶々丸と、現世遠征で習った“アニマルセラピー”の効果を改めて実感した。
今日、主様はいない。私がこうなってしまう前から連合について話し合う為に歴防本部に行くのは決まっていて、いつもより多い執務に追われていたのはそれもあると話していた。今は長谷部さんと今週の近侍の鳴狐さんを中心にして色々と動いているみたいだ。
私も何か手伝えることがあったはずなのに…。
柱に背を預けて膝を抱く。耳を澄ませてみると手合わせをする鯰尾くんと和泉守さんの声が聞こえてきた。珍しい組み合わせだと思いながら、もふ丸のベッドを見た。
もふ丸には気分転換をしてほしくて外で過ごしてもらっている。粟田口のみんなと遊んだり、手合わせを見学したり、三日月や鶯丸さんたちとお茶をしたり、過ごし方は色々。今日は何をして過ごしているんだろう。こんな私を見ているのだから心から楽しめていないんだろうけど、それでももふ丸には外の空気を吸ってきてほしかった。戻って来てお土産話を聞くのが今の私には唯一の楽しみだ。
そこに、控えめな足音の後に障子にシルエットが映る。
「薙さん、入ってもいい?」
乱ちゃんだった。慌てて香道の本を読む振りをしながら返事をすると、美味しそうなプリンを持って来てくれた。
「みんなでプリン作ったんだ。一緒に食べよう?」
「ありがとう」
「歌仙さんからアドバイスもらって、抹茶味も作ったんだ。薙さん抹茶味も好きだからきっと気に入ってくれると思う!」
「うん、抹茶のお菓子はみんな好き」
私の穏やかな表情に「久しぶりに薙さんの顔を見れた」と喜んでくれた乱ちゃん。事情を知っているとはいえ、この数日間は主様や清光くん、長谷部さんとしか話していなかった。
「せっかくだし、縁側で食べたいな」
「うん、そうしよう。今日はお天気もいいし風も気持ちいいよ」
そろそろ昼間の空気を吸いたい。みんなが寝た頃に夜風を浴びたことはあっても、やっぱりお日様に当たらないのは体に悪いと思う。回復に時間が掛かっているのはこのせいでもあるかもしれないし。
「やっと晴れたね」
昨日は曇りで、一昨日は雨だった。普段だったら恵みの雨だと喜べるのに、まるで私の心情を表しているようで辛かった。
障子を開ければ暖かい空気に包まれて、少し眩しく感じたぐらい私は太陽の日差しを浴びていなかったんだと気付く。
「いただきます」
本格的な抹茶の香りに一気に食欲が沸いた。なめらかでいくらでも食べられるぐらい本当に美味しい。乱ちゃんが、みんなが抹茶味のお菓子が好きなのを覚えていれくれたのも嬉しかった。
「すっごく美味しいよ。…はい」
「わーい!」
一口サイズにすくったプリンを乱ちゃんの口に差し出して、その美味しさを共有してみる。乱ちゃんはプレーンのプリンを食べていて食べさせあいっこをした。
縁側で美味しく食べられているのも、楽しめているのも嬉しいと思えたのも束の間、手の震えが始まってしまった。
まただ…。
手の震えは少しずつ落ち着きつつある。けれどその度に“何故”、“どうして”と言われた声が頭を過ってしまうのだ。
「ボクが食べさせてあげるね」
「…ありがとう」
兄弟たちにも食べさせることがあるのか、タイミングも一口のサイズもちょうど良く食べさせてくれた。
「ごめんね…」
「薙さん、謝らないで。ボクは楽しいことも辛いことも分かち合いたいんだ。ボク、薙さんのことはお姉ちゃんって思ってるし」
「…ありがとう」
現世遠征に行った時のように私を抱きしめてくれて、その温もりの心地良さに目を閉じる。
落ち着く…。
手の震えが止まった。これならもっと外に出ていた方がいいのかもしれない。ただ、厨と聞くと心の中に鉛のようなものが圧し掛かるような感覚になるからまだそこには行けそうにない。
「もふ丸が何処にいるか知ってる?」
「茶々丸と遊んでるんじゃないかな」
茶々丸は現世遠征で小夜くんが飼うと決めたミニウサギのこと。主様が小夜くんたちの部屋の近くに茶々丸専用の部屋を用意して、出来るだけストレスが掛からない環境を作っていた。
元々ミニウサギは人懐っこくて、茶々丸も同じ。毎日のブラッシングだったり、ご飯の時に名前を呼べばすぐに駆け寄ってくる。もふ丸もその性格もあってか虎くんたちの時と違ってすぐに慣れていた。
「もふ丸がいるなら小夜くんたちもいるはずだよ」
「…行ってみようかな」
「じゃあ、一緒に行こう!」
すぐに片付けてくれた乱ちゃんに手を引かれて行く。
「…あ、薙さん」
「具合は良くなっているようですね」
「はい」
茶々丸と追いかけっこをしていたもふ丸が嬉しそうに肩によじ登ってきた。
あっという間に肩にはもふ丸、膝の上には茶々丸と、現世遠征で習った“アニマルセラピー”の効果を改めて実感した。
