女性審神者の名前です。
桜「僕たちって色んな逸話があったりするんだな」
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~清光side~
この日の夕餉は親子丼。主も「それなら薙も食べられるはず」と、長谷部と一緒に部屋へと向かう。俺は自分の、長谷部は薙の分。
こうやって食事を持って行くのは俺か長谷部と決めてる。基本的に主が一緒に食べられるようにしてるんだけど、主がやらなきゃならない執務がどうしても終わらないのが確定してるから、今日の昼餉と夕餉は俺と一緒。これで2回目だ。
「あっ、清光くんと長谷部さん。ありがとうございます」
部屋の前にいたもふ丸が俺たちの足音に気付いてこちらにやって来た。すんすんと小さい鼻で匂いをかいで「親子丼でしょうか」と夕餉を当ててみせた。
「良く分かったな」
「出汁と玉ねぎの甘い匂いがしたので」
「入っても平気?」
「大丈夫です」
「薙ー、入るよー」
そっと障子を開けると、薙は本を読んでいた。ただ、これはあくまでも形。これ以上周りに心配をかけまいと何かをしている振りをしているだけ。そうやって俺たちを見る薙の目はそれに集中していたように見えないし、主はもちろん俺も長谷部も気付いてる。
「食べられそうか?」
こくりと頷いた。お礼を言った声は小さくて、顕現してしばらく経って、少しだけ話せるようになったあの頃と似てる。
「さ、食べよ」
初めて薙に食事を持って行く時、主から「薙がちゃんと食べられているか確認してほしい」と言われたから様子を見ていたら、薙が部屋で食べている理由が良く分かった。
もふ丸はいつも通り野菜をかじり始めた一方で、薙の一口は小さくてペースも遅い。最初はそれなりに食べられてるから問題ないと思ってたけど、しばらくすると箸と食器を持つ手が小刻みに震えだす。箸の持ち方もぎこちなくなる。今日みたいに、食事によってはスプーンを持って行くように言われた意味も良く分かった。それでもこの日は普通に食べられるかもしれないから、一応尋ねてみる。
「自分で食べられる?」
「多分…」
視線を落とした。食べられないことはないけど、今回もこの調子だと相当時間が掛かるかもしれない。サラダ用にフォークを取りに行った方がいいかなとも考えたけど、それで待たせるのも気が引けた。元々減っている食欲がその間になくなって食べられなくなるのは体に悪い。
「じゃあ、あーんして」
少しだけ戸惑った後、「お願いします」といった様子で箸とサラダを俺に差し出した。
ここで食べる理由は、香を焚いた部屋から出られないからだけじゃない。この姿をみんなに見せるのは避けた方がいいと、事情を知る俺たちで話して判断したからだ。
「次はパプリカも食べる?」
「…うん」
薙はサラダが出たときはそれから手をつけてる。嫌いだからそうしているわけではなくて、薬研から野菜から先に食べた方が良いと聞いてそうしているだけだ。
「燭台切特製の新作ドレッシングなんだって。美味しい?」
小さく頷く。そしてほんの少しだけ笑んだ。もふ丸も「僕、このドレッシングも好きです」と少しでも場を和ませようと気を遣っているのが伝わってくる。そして、薙がそれを申し訳なく思っていることも。
「親子丼の前にお吸い物飲む?」
「うん」
食器に手を添えて飲ませる。ゆっくり、慎重に。
「あっ、ごめん!」
口から少し垂れてしまった。慌てておしぼりで拭いたら、薙が顔を少し赤くして視線を反らした。
あ、さすがにこれは自分で出来るか…。
「じゃ、じゃあ親子丼いく?」
空気を変えようと明るい声で丼を手にする。視線を反らされたまま小さく頷いて、おずおずと口にした。
「美味しい…」
微笑みを見せてくれて一安心。そうしたら薙がじっと俺が持つ丼を見る。
「お行儀は悪いけど、食器を置いたままなら食べられるよ」
「そっか。じゃあ、そうしてみよっか。食べにくかったらすぐに言ってね」
「ありがとう」
俺も薙を見習ってサラダから食べ始めた。確か、人の体だと血糖値がどうのこうのって言ってたっけ。野菜を残せずに食べられる、とかも聞いた気がする。
それを聞いてみたら頷いてくれた。確かに、野菜を先に食べた方ががっつかないで済む(今剣も見習ってよね)。
俺もゆっくり食べたけど、やっぱり薙の食べるペースは遅い。親子丼がまだ半分くらい残ってる。
「まだ食べられる?」
「…うん」
「じゃあ、俺が食べさせてあげる」
口に含んでいた分を飲み込んでお吸い物を慎重に飲んだ後、再び俺がスプーンで親子丼をすくった。今度は自然に食べさせてあげられた…と思う。こうやって誰かに食べさせるのは薙が初めてだから2回目でも戸惑うし、慣れない。同じ刀剣と言っても薙は女性だし。…いや、慣れちゃダメなんだろうけど。
「ふう、ご馳走様でした」
同じくゆっくり食べてたもふ丸も食べ終えて、小さな手でもふもふしたお腹を撫でる。
「間にあっふぁ?!」
そこに親子丼を持ち、箸をくわえた主がやって来た。どうにか執務を終えて来てくれたんだろうけど、どこから突っ込めばいいのか分からない。とにかく薙を気に掛けているのは伝わってくるけど、このモードは久々に見た。
「もー、薙が食べてるんだからバタバタしないでよねー」
「よし、薙はちゃんと食べられてるね」
手を合わせてから美味しそうに食べ始めた。そのおかげもあってか、薙はちゃんと完食。
その途中、「主、ちゃんと食べて下さい!」と長谷部がサラダとお吸い物を持ってすっ飛んで来たのは別の話にしとく。
この日の夕餉は親子丼。主も「それなら薙も食べられるはず」と、長谷部と一緒に部屋へと向かう。俺は自分の、長谷部は薙の分。
こうやって食事を持って行くのは俺か長谷部と決めてる。基本的に主が一緒に食べられるようにしてるんだけど、主がやらなきゃならない執務がどうしても終わらないのが確定してるから、今日の昼餉と夕餉は俺と一緒。これで2回目だ。
「あっ、清光くんと長谷部さん。ありがとうございます」
部屋の前にいたもふ丸が俺たちの足音に気付いてこちらにやって来た。すんすんと小さい鼻で匂いをかいで「親子丼でしょうか」と夕餉を当ててみせた。
「良く分かったな」
「出汁と玉ねぎの甘い匂いがしたので」
「入っても平気?」
「大丈夫です」
「薙ー、入るよー」
そっと障子を開けると、薙は本を読んでいた。ただ、これはあくまでも形。これ以上周りに心配をかけまいと何かをしている振りをしているだけ。そうやって俺たちを見る薙の目はそれに集中していたように見えないし、主はもちろん俺も長谷部も気付いてる。
「食べられそうか?」
こくりと頷いた。お礼を言った声は小さくて、顕現してしばらく経って、少しだけ話せるようになったあの頃と似てる。
「さ、食べよ」
初めて薙に食事を持って行く時、主から「薙がちゃんと食べられているか確認してほしい」と言われたから様子を見ていたら、薙が部屋で食べている理由が良く分かった。
もふ丸はいつも通り野菜をかじり始めた一方で、薙の一口は小さくてペースも遅い。最初はそれなりに食べられてるから問題ないと思ってたけど、しばらくすると箸と食器を持つ手が小刻みに震えだす。箸の持ち方もぎこちなくなる。今日みたいに、食事によってはスプーンを持って行くように言われた意味も良く分かった。それでもこの日は普通に食べられるかもしれないから、一応尋ねてみる。
「自分で食べられる?」
「多分…」
視線を落とした。食べられないことはないけど、今回もこの調子だと相当時間が掛かるかもしれない。サラダ用にフォークを取りに行った方がいいかなとも考えたけど、それで待たせるのも気が引けた。元々減っている食欲がその間になくなって食べられなくなるのは体に悪い。
「じゃあ、あーんして」
少しだけ戸惑った後、「お願いします」といった様子で箸とサラダを俺に差し出した。
ここで食べる理由は、香を焚いた部屋から出られないからだけじゃない。この姿をみんなに見せるのは避けた方がいいと、事情を知る俺たちで話して判断したからだ。
「次はパプリカも食べる?」
「…うん」
薙はサラダが出たときはそれから手をつけてる。嫌いだからそうしているわけではなくて、薬研から野菜から先に食べた方が良いと聞いてそうしているだけだ。
「燭台切特製の新作ドレッシングなんだって。美味しい?」
小さく頷く。そしてほんの少しだけ笑んだ。もふ丸も「僕、このドレッシングも好きです」と少しでも場を和ませようと気を遣っているのが伝わってくる。そして、薙がそれを申し訳なく思っていることも。
「親子丼の前にお吸い物飲む?」
「うん」
食器に手を添えて飲ませる。ゆっくり、慎重に。
「あっ、ごめん!」
口から少し垂れてしまった。慌てておしぼりで拭いたら、薙が顔を少し赤くして視線を反らした。
あ、さすがにこれは自分で出来るか…。
「じゃ、じゃあ親子丼いく?」
空気を変えようと明るい声で丼を手にする。視線を反らされたまま小さく頷いて、おずおずと口にした。
「美味しい…」
微笑みを見せてくれて一安心。そうしたら薙がじっと俺が持つ丼を見る。
「お行儀は悪いけど、食器を置いたままなら食べられるよ」
「そっか。じゃあ、そうしてみよっか。食べにくかったらすぐに言ってね」
「ありがとう」
俺も薙を見習ってサラダから食べ始めた。確か、人の体だと血糖値がどうのこうのって言ってたっけ。野菜を残せずに食べられる、とかも聞いた気がする。
それを聞いてみたら頷いてくれた。確かに、野菜を先に食べた方ががっつかないで済む(今剣も見習ってよね)。
俺もゆっくり食べたけど、やっぱり薙の食べるペースは遅い。親子丼がまだ半分くらい残ってる。
「まだ食べられる?」
「…うん」
「じゃあ、俺が食べさせてあげる」
口に含んでいた分を飲み込んでお吸い物を慎重に飲んだ後、再び俺がスプーンで親子丼をすくった。今度は自然に食べさせてあげられた…と思う。こうやって誰かに食べさせるのは薙が初めてだから2回目でも戸惑うし、慣れない。同じ刀剣と言っても薙は女性だし。…いや、慣れちゃダメなんだろうけど。
「ふう、ご馳走様でした」
同じくゆっくり食べてたもふ丸も食べ終えて、小さな手でもふもふしたお腹を撫でる。
「間にあっふぁ?!」
そこに親子丼を持ち、箸をくわえた主がやって来た。どうにか執務を終えて来てくれたんだろうけど、どこから突っ込めばいいのか分からない。とにかく薙を気に掛けているのは伝わってくるけど、このモードは久々に見た。
「もー、薙が食べてるんだからバタバタしないでよねー」
「よし、薙はちゃんと食べられてるね」
手を合わせてから美味しそうに食べ始めた。そのおかげもあってか、薙はちゃんと完食。
その途中、「主、ちゃんと食べて下さい!」と長谷部がサラダとお吸い物を持ってすっ飛んで来たのは別の話にしとく。
