女性審神者の名前です。
梅「審神者として出来ることは全てやらなきゃ」
空欄の場合はデフォルト名になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
~長谷部side~
あの者は一体、何者なのだろうか。
夕餉を終え、風呂の順番を待っている間に考えていた。
“刀剣女士”は聞いたことがない。初めてあの者を見た時は青天の霹靂のようなものだった。人の身を得てからあそこまで驚いたのは初めてだと言ってもいい程だ。
いつの時代に打ち出された?
元薙刀ならば、鯰尾や骨喰などの粟田口が打ち出された時代の刀剣なのだろうか。“薙刀直し”をされる薙刀は価値のある刀剣が多いと聞く。ならば刀剣が良く用いられた時代だろう。刀装も拘りを感じるし、前の主が身分の高い人間なのは間違いないが、主が調べても分からないのであれば、俺が分かるはずもない。
「長谷部、いる?」
そこに障子の向こう側から声を掛けてきたのは加州だった。「入っていいぞ」と声を掛ければ、堀川も一緒だった。周りに誰もいないことを確認してゆっくりと閉める。
「あの人、目を覚ましたよ」
「本当か?!」
「ですが…」
2振りとも俯いている。あの者の塩梅が良くないことはすぐに分かった。
「話せず、自身の名前も分からんか…」
「顕現した時より霊力が落ち着いてるのは確かなんですが…」
「主はきっと一時的なものだと考えてる。主が作ったお香が出来上がればもっと良くなると思うんだよね」
「ふむ…」
薬研から解熱剤を用意してもらったことは聞いている。せめて熱が下がれば動きはあるかもしれないが…。
「あの人、泣いていました。話せなくて、名前も思い出せないなんて、僕だったら…」
「そうだな…。名前を思い出せないということは、記憶も失われている可能性も否めんな」
「考えたくないけど、そうかもしれない」
俺もいっそのこと記憶がなければ良かったと思うことがある、などと言えるはずもなく、明日の朝礼で皆にどこまで話すべきか考え込む。
3振りで話し合った結果、目は覚ましたがまだまだ不安定であること、引き続き主の部屋に出入り出来る者は限られていること、外も含めて主の部屋の近くでは静かに過ごすよう再度周知することで話はまとまった。もしあの者の不調が長引くようであれば、次の近侍も慎重に決めなければならないだろう。そして、いつあの者が女性であるかを伝えるか。そこは主と相談だ。
「主に頼まれたから、燭台切にもあの人が目が覚めたってことは伝えたよ」
「そうか。ならばいつでも人の身の体に優しい食事をあの者に食べさせられるな」
「美味しい食事で少しでも元気になってくれるといいんですけど…」
「きっと大丈夫だろう。人の身を得て、食事が大切なのが良く分かった。あの者もそうなるさ」
「そうですね」
明日、改めて3振りで主のもとに行くこととなって、それぞれが寝るまでの自由時間となった。
そして翌朝。朝礼と朝食の後に主の部屋へと向かうと、こんのすけが廊下の前で待機していた。
「今、主様があの方の体を拭いているところです。少々お待ち下さいね」
「あの人の様子はどう?」
「熱が少し上がっています。記憶も失われていますし、やはり話せません。主様は筆談でのやり取りを考えていらっしゃいます」
「なるほどね、それがいいかも」
「だが、いきなりこの人数で行うのも憚れる。今日は主と堀川で交流をした方が良さそうだな」
「りょうかーい」と軽く返した加州がこんのすけを抱える。今日はあの者が目を覚ました時にこんのすけを優しく撫でたというから、慣れるのは早いかもしれない。
「みんな、入っても大丈夫だよ~」
「失礼します」
あの者を極力驚かせないようにゆっくりと作業部屋へと入る。やはり初めて見る俺に少しだけ目を見開いたが、すぐに俺を見たまま小さく頭を下げた。
それぞれが軽く自己紹介した後、主は先に俺たちには由来があって、前の主が存在している刀剣が多いことなどを掻い摘んで話していたようだ。反応を見る限り、あの者に刀種の知識はあるらしい。
「ひとまず、燭台切に食事の用意を頼んで来ます。準備はしているようですので」
「うん、お願い」
食事と聞いて何か考え込む仕草を見せる。何となくその知識もあるようだ。ただ、鮮明には思い出せない様子だ。
「…あ、長谷部、ちょっと待って」
「いかがなさいましたか?」
「この子はまだ思い出せてないけど、やっぱり名前が必要だと思うの。だから仮の名前を考えたんだ」
「へー、何々?」
「“薙”。元薙刀だから、“薙”。…どうかな?」
小さく微笑んで頷いた。気に入ったようだ。加州も堀川も「いい名前」だと自分のことのように嬉しそうだ。
「薙、改めてヨロシクね」
ぺこりと頭を下げ、俺をじっと見て不思議そうにしている。どうかしたのか尋ねてみても、「何でもない」と小さく首を振るだけだった。少々気になるが、まずは薙に食事を用意しなくては。改めてそれを主たちに伝えて部屋を出た。
あの者は一体、何者なのだろうか。
夕餉を終え、風呂の順番を待っている間に考えていた。
“刀剣女士”は聞いたことがない。初めてあの者を見た時は青天の霹靂のようなものだった。人の身を得てからあそこまで驚いたのは初めてだと言ってもいい程だ。
いつの時代に打ち出された?
元薙刀ならば、鯰尾や骨喰などの粟田口が打ち出された時代の刀剣なのだろうか。“薙刀直し”をされる薙刀は価値のある刀剣が多いと聞く。ならば刀剣が良く用いられた時代だろう。刀装も拘りを感じるし、前の主が身分の高い人間なのは間違いないが、主が調べても分からないのであれば、俺が分かるはずもない。
「長谷部、いる?」
そこに障子の向こう側から声を掛けてきたのは加州だった。「入っていいぞ」と声を掛ければ、堀川も一緒だった。周りに誰もいないことを確認してゆっくりと閉める。
「あの人、目を覚ましたよ」
「本当か?!」
「ですが…」
2振りとも俯いている。あの者の塩梅が良くないことはすぐに分かった。
「話せず、自身の名前も分からんか…」
「顕現した時より霊力が落ち着いてるのは確かなんですが…」
「主はきっと一時的なものだと考えてる。主が作ったお香が出来上がればもっと良くなると思うんだよね」
「ふむ…」
薬研から解熱剤を用意してもらったことは聞いている。せめて熱が下がれば動きはあるかもしれないが…。
「あの人、泣いていました。話せなくて、名前も思い出せないなんて、僕だったら…」
「そうだな…。名前を思い出せないということは、記憶も失われている可能性も否めんな」
「考えたくないけど、そうかもしれない」
俺もいっそのこと記憶がなければ良かったと思うことがある、などと言えるはずもなく、明日の朝礼で皆にどこまで話すべきか考え込む。
3振りで話し合った結果、目は覚ましたがまだまだ不安定であること、引き続き主の部屋に出入り出来る者は限られていること、外も含めて主の部屋の近くでは静かに過ごすよう再度周知することで話はまとまった。もしあの者の不調が長引くようであれば、次の近侍も慎重に決めなければならないだろう。そして、いつあの者が女性であるかを伝えるか。そこは主と相談だ。
「主に頼まれたから、燭台切にもあの人が目が覚めたってことは伝えたよ」
「そうか。ならばいつでも人の身の体に優しい食事をあの者に食べさせられるな」
「美味しい食事で少しでも元気になってくれるといいんですけど…」
「きっと大丈夫だろう。人の身を得て、食事が大切なのが良く分かった。あの者もそうなるさ」
「そうですね」
明日、改めて3振りで主のもとに行くこととなって、それぞれが寝るまでの自由時間となった。
そして翌朝。朝礼と朝食の後に主の部屋へと向かうと、こんのすけが廊下の前で待機していた。
「今、主様があの方の体を拭いているところです。少々お待ち下さいね」
「あの人の様子はどう?」
「熱が少し上がっています。記憶も失われていますし、やはり話せません。主様は筆談でのやり取りを考えていらっしゃいます」
「なるほどね、それがいいかも」
「だが、いきなりこの人数で行うのも憚れる。今日は主と堀川で交流をした方が良さそうだな」
「りょうかーい」と軽く返した加州がこんのすけを抱える。今日はあの者が目を覚ました時にこんのすけを優しく撫でたというから、慣れるのは早いかもしれない。
「みんな、入っても大丈夫だよ~」
「失礼します」
あの者を極力驚かせないようにゆっくりと作業部屋へと入る。やはり初めて見る俺に少しだけ目を見開いたが、すぐに俺を見たまま小さく頭を下げた。
それぞれが軽く自己紹介した後、主は先に俺たちには由来があって、前の主が存在している刀剣が多いことなどを掻い摘んで話していたようだ。反応を見る限り、あの者に刀種の知識はあるらしい。
「ひとまず、燭台切に食事の用意を頼んで来ます。準備はしているようですので」
「うん、お願い」
食事と聞いて何か考え込む仕草を見せる。何となくその知識もあるようだ。ただ、鮮明には思い出せない様子だ。
「…あ、長谷部、ちょっと待って」
「いかがなさいましたか?」
「この子はまだ思い出せてないけど、やっぱり名前が必要だと思うの。だから仮の名前を考えたんだ」
「へー、何々?」
「“薙”。元薙刀だから、“薙”。…どうかな?」
小さく微笑んで頷いた。気に入ったようだ。加州も堀川も「いい名前」だと自分のことのように嬉しそうだ。
「薙、改めてヨロシクね」
ぺこりと頭を下げ、俺をじっと見て不思議そうにしている。どうかしたのか尋ねてみても、「何でもない」と小さく首を振るだけだった。少々気になるが、まずは薙に食事を用意しなくては。改めてそれを主たちに伝えて部屋を出た。