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あの日からずっと【第1話】完

 小さな頃は三人で手をつないで、お互いの両親と一緒に河川敷まで花火を見に行った。私はいつも真ん中で、右には雅道、左には博道がいてくれた。

 今も、博道は左を歩いている。あの頃からのクセが抜けないみたい。

「凪沙の好きな男って、だれ?」

 急に立ち止まった博道が、唐突に、だけど、自然に尋ねてきた。

 メインの花火が打ち上がり、それに気取られる人々が私たちから遠ざかる。
 周囲の人波が次第に途切れていく。

「ずっと雅道が好きなんだと思ってた。凪沙、雅道の話ばっかりだろ?」
「だって、博道くんと共通の話ができるの、雅道くんのことだけ」
「そっか。そうだよな」

 まるで後悔するように、博道は天を仰ぐ。彼の後ろで、大きな花火が打ち上がる。

「私も、知らなかったな。博道くんがちぃちゃんなんて呼ぶ女の子がいたこと」

 お互いになんでも知ってると思ってたのは、小学生までの話。中学の頃から知らないことは増え、今では知らないことの方が多い。

「ずっと、ちぃちゃんって呼んでたからかな。まだ抜けてなかったなんて、恥ずかしいよ」

 照れくさそうに博道は笑う。

 ちぃちゃんってだれ?
 それを聞きたいのに、うまく声が出てこない。でも、そんな呼び方をするんだから、小さな頃からの知り合いのはず。

「好きな男、ほかにいるの?」
「……うん」
「だれ?」

 雅道のほかに好きな人がいるなんてこと、博道には信じられないみたいだった。出会いなんていくらでもあったのに。それは、私だけじゃなく、博道にだって。

「会社の人?」
「博道くんが好きなちぃちゃんって、私の知ってる人?」
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