あの日からずっと【第1話】完
*
河川敷に向かう途中に、一発目の花火が打ち上がった。
「始まっちゃったね。雅道くん、間に合うかなぁ」
出かける直前、「先に行ってて」と言われて、博道とふたりで出かけてきた。大勢の人波を振り返るが、雅道の姿はとても見つけられそうにない。
「あいつなら大丈夫だよ」
「そうだね。いっつもマイペースでひょうひょうとしてるしね」
「頼りになるっていうのは、雅道みたいな男のこと言うんだろうな」
ため息混じりに言う。心なしか、傷ついてるみたいに。
私にとって博道くんは遠い存在だけど、彼にとっても私たちは遠いのかもしれない。
「そんなことないよ。博道くんだって、すごいんだから」
我ながら、博道くんの博識高さを、すごいなんていう単調な言葉でしか表現できなくて情けなく思う。
それが伝わったのか、博道は苦笑いした。
「すごくはないよ。何をどうがんばったって、雅道には勝てないんだ」
「ほら、そんなこと言わないで。博道くんは博道くんなんだから、雅道くんと比べる必要なんてないんだし」
使い古されたセリフを言ったのに、博道は泣きそうな、でも芯から嬉しそうな笑みを浮かべる。
私が思うより、博道は何かに傷ついてきたのかもしれない。
なんとなく気まずくて、沈黙した。
打ち上がる花火だけを見つめて、しばらく歩いた。
途中、地元の友人数人に出会った。あいさつ程度の会話しかしないけど、雅道がいないことに気づいた友人たちは、意味ありげな表情をした。まるで、私と博道が付き合ってると勘違いしたみたいだ。
「いつも3人だったから違和感があるだけだよ」
私の心を覗き見したみたいに、博道が言う。
「そうだね。ずっと3人一緒だったよね」
河川敷に向かう途中に、一発目の花火が打ち上がった。
「始まっちゃったね。雅道くん、間に合うかなぁ」
出かける直前、「先に行ってて」と言われて、博道とふたりで出かけてきた。大勢の人波を振り返るが、雅道の姿はとても見つけられそうにない。
「あいつなら大丈夫だよ」
「そうだね。いっつもマイペースでひょうひょうとしてるしね」
「頼りになるっていうのは、雅道みたいな男のこと言うんだろうな」
ため息混じりに言う。心なしか、傷ついてるみたいに。
私にとって博道くんは遠い存在だけど、彼にとっても私たちは遠いのかもしれない。
「そんなことないよ。博道くんだって、すごいんだから」
我ながら、博道くんの博識高さを、すごいなんていう単調な言葉でしか表現できなくて情けなく思う。
それが伝わったのか、博道は苦笑いした。
「すごくはないよ。何をどうがんばったって、雅道には勝てないんだ」
「ほら、そんなこと言わないで。博道くんは博道くんなんだから、雅道くんと比べる必要なんてないんだし」
使い古されたセリフを言ったのに、博道は泣きそうな、でも芯から嬉しそうな笑みを浮かべる。
私が思うより、博道は何かに傷ついてきたのかもしれない。
なんとなく気まずくて、沈黙した。
打ち上がる花火だけを見つめて、しばらく歩いた。
途中、地元の友人数人に出会った。あいさつ程度の会話しかしないけど、雅道がいないことに気づいた友人たちは、意味ありげな表情をした。まるで、私と博道が付き合ってると勘違いしたみたいだ。
「いつも3人だったから違和感があるだけだよ」
私の心を覗き見したみたいに、博道が言う。
「そうだね。ずっと3人一緒だったよね」