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あの日からずっと【第1話】完

 ほんの少し、空気が凍りつく。
 唐突すぎた。そりゃあ、ちぃちゃんを好きな博道にしてみたら、私と雅道が付き合ったら好都合なんだろうけど。

 一瞬、雅道は不快そうに眉をひそめた。しかし、すぐにいつもの柔和な笑みを浮かべた。

「俺はいつでもいいけどね。なあ、凪沙」
「えっ! ちょっと、雅道くんっ」

 いつもの悪ふざけだ。あわてる私を見て、雅道はますます意地悪そうに唇を歪める。

「まあでも、凪沙は好きな男がいるみたいだしな。俺からはいかねぇよ」

 博道はハッと肩を揺らす。

「博道こそ、どうなんだよ」
「俺は別に……」

 歯切れが悪い。恋愛のこととなると、まるっきりデキない男になってしまうみたい。

「ちぃちゃんちぃちゃんなんて言ってないで、おまえの方こそはっきりしろよ」
「雅道くんっ」

 忘れてって言ったのに。

 これ以上余計なことを言わないようにと、口を塞ぎたい気持ちで雅道に駆け寄る。
 しかし、雅道は腕を伸ばす私をすり抜けて、なんとも言えない奇妙な顔をしたままの博道の肩を叩く。そして、そのままリビングを抜けて姿を消した。

 残された私たちは目を合わせたが、気まずくてすぐにそらす。

 沈黙が苦しい。落ち着かない。博道は普段から無口だから気にならないのかもしれないけど、私には針のむしろ状態。

「あ、あのっ……、博道くん、ごめんなさいっ」

 顔が見れないまま、博道に向かって深く頭を下げる。
 ちらっと目をあげると、彼は無言で私を見つめている。やっぱり落ち着かなくて、早口でまくし立ててしまう。
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