あの日からずっと【第1話】完
「久しぶり」
そう声をかけてきたのは、博道だった。
もしかしたら雅道との話を聞かれたかもしれない。
「うん、久しぶり」
メールや電話で連絡を取っていても、直接会うのはお正月に花村家へ挨拶に訪れて以来だ。
普段は一人暮らしの私たちも、お正月とお盆だけは帰省して、両家で顔を合わせるのが行事のようになっているのだ。
博道は相変わらずカッコよかった。お堅い佇まいもスマートで、大人になっても別次元の人みたい。ふたごなのに、お調子者の雅道とは似ても似つかない。
「何か手伝う?」
私を素通りして、博道はテラスへ出る。
すっかり準備の整った庭を見て、「もうちょっとはやく来ればよかったな」なんて申し訳なさそうにする。そんな博道に、雅道は笑って話しかける。
「いいって。焼くのは、おまえの仕事な」
「ああ、わかった」
素直にそう言って、博道はベンチに腰かける。その表情はやけに神妙だ。
「なんかあった?」
会話の主導権を握るのは、いつも雅道の方。なんだかんだ、雅道はお兄さんだ。
「ん、まあ」
「言いたいことあるなら言えよ。会って話せるのなんて、そうないからな」
外資系企業に勤務する博道は海外出張も多く、多忙を極めてる。私と雅道はたまに飲みに行くことがあるけど、博道を誘っても断られてばかりいる。
「そうだな。もうそろそろはっきりさせたいって思ってる」
「それで?」
博道はすっと目線をあげた。にやにやする雅道から笑みが消える。それだけ博道が真剣な顔をしてるんだって、彼の後ろにいる私にも伝わってくる。
「いつになったら凪沙と付き合うんだ?」
そう声をかけてきたのは、博道だった。
もしかしたら雅道との話を聞かれたかもしれない。
「うん、久しぶり」
メールや電話で連絡を取っていても、直接会うのはお正月に花村家へ挨拶に訪れて以来だ。
普段は一人暮らしの私たちも、お正月とお盆だけは帰省して、両家で顔を合わせるのが行事のようになっているのだ。
博道は相変わらずカッコよかった。お堅い佇まいもスマートで、大人になっても別次元の人みたい。ふたごなのに、お調子者の雅道とは似ても似つかない。
「何か手伝う?」
私を素通りして、博道はテラスへ出る。
すっかり準備の整った庭を見て、「もうちょっとはやく来ればよかったな」なんて申し訳なさそうにする。そんな博道に、雅道は笑って話しかける。
「いいって。焼くのは、おまえの仕事な」
「ああ、わかった」
素直にそう言って、博道はベンチに腰かける。その表情はやけに神妙だ。
「なんかあった?」
会話の主導権を握るのは、いつも雅道の方。なんだかんだ、雅道はお兄さんだ。
「ん、まあ」
「言いたいことあるなら言えよ。会って話せるのなんて、そうないからな」
外資系企業に勤務する博道は海外出張も多く、多忙を極めてる。私と雅道はたまに飲みに行くことがあるけど、博道を誘っても断られてばかりいる。
「そうだな。もうそろそろはっきりさせたいって思ってる」
「それで?」
博道はすっと目線をあげた。にやにやする雅道から笑みが消える。それだけ博道が真剣な顔をしてるんだって、彼の後ろにいる私にも伝わってくる。
「いつになったら凪沙と付き合うんだ?」