このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

あの日からずっと【第2話】完

 私はちょっと迷って、彼の指に触れる。すると、急くように指がからんでくる。

「まだちょっと信じられなくて」
「何が?」
「博道くんと付き合えるなんて、本当じゃないみたい」
「本当だよ」

 それはそうなんだけど。
 寝起きだからか、いまいち現状をつかみきれないまま、博道に視線を戻す。

「どうして博道くん、ここにいるの?」
「ちょうどご両親が出かけるところで、あげてもらったんだ。そしたら、凪沙、寝てるから」
「そうなの? お母さんも声かけてくれたらよかったのに」

 寝顔を見られてしまうなんて迂闊で、恥ずかしい。
 うつむくと、博道に頭をなでられた。

「明日から出張だから、夕方には帰らないといけなくてさ。その前に凪沙に会っておきたかったんだ」
「出張? お盆なのに、忙しいね」
「来週には帰るよ。帰ってきたら連絡するから」
「うん。待ってる」

 デートはしばらくお預けだ。
 友人だった時もなかなか会えなかったのだ。恋人になったからって会える機会が増えるはずもなく。

「すれ違わないように努力するよ」
「少しでも会える時間があるなら、会いに行くね」
「じゃあ、凪沙に鍵、渡しておく」
「鍵?」

 博道はポケットからキーケースを取り出すと、一本の鍵を外す。

「マンションの鍵。場所はまたメールしておく」
3/7ページ
スキ