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あの日からずっと【第1話】完

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 庭のテラスにバーベキューコンロをセットして、折りたたみテーブルを設置する。

 今日は花火大会。
 毎年、お盆になると、花村家と青井家はバーベキューしながら花火を鑑賞するために集まる。

 そして、花村雅道(はなむら まさみち)と私、青井凪沙(あおい なぎさ)は、倉庫とテラスを往復してセッティングに追われている。

「炭、炭って出したっけ?」
「うん、あるよ」
「おー、ありがとな」

 炭の入った袋を雅道に渡す。彼はすぐに慣れた様子で炭をコンロに並べていく。

「凪沙はちょっと座ってろよ」
「麦茶いれるね」

 クーラーボックスから2リットルのペットボトルを出して、紙コップに注ぐ。雅道のご両親が買い出しに出かけてるから、今あるのは麦茶だけ。

「凪沙は気が利くよなー。モテるだろ」
「全然だよ、全然。あんまり男の人と話すの得意じゃないし」
「あー、そっか。凪沙がこうやってしゃべるのは俺と博道(ひろみち)だけか」
「博道くんともあんまりしゃべらないよ」

 雅道と博道は同い年の幼馴染。二人はふたごで、小さな頃から家族ぐるみで仲良くしてるご近所さん。
 24歳になった今でも、高校も大学も同じだった雅道とは、とりわけ仲良くしてる。

「博道と連絡とってない?」

 タオルで汗をぬぐいながら、雅道は麦茶を一気に飲み干す。

「たまに博道くんが連絡くれるぐらい」
「へえー。あの無口な博道から連絡ねぇ」

 博道は小学生の時からズバ抜けて優秀だった。中学では常にトップ。別格の存在だった彼とは次第に距離が空いた。

 それでも私がいまだに博道と連絡が取れているのは、雅道のおかげ。高校生になってスマホを買ってもらった私と博道をメールでつないでくれたのは雅道だった。
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