刀さに

審神者は困っていた。

(うーん、どうしようかなぁ)

とても、とても困っていた。

(…やっぱり無理かな…)

ー数分前
審神者は本日の予定が落ち着いていたため、通常業務をサクッと終わらせて趣味の読書の為に書庫に籠もっていた。

「…あ。アレしなきゃ」

黙々と、読書好きの為に設置しておいた読書スペースで読書に励んでいた審神者はふと、急ぎではないがいつかは済まさなければならない用事を思い出し本から顔をあげた。

「ん~。せっかく思い出したし、さっさと済ませてこようかな。」

審神者は本を棚に戻すと、部屋を出るために扉に手をかけ、力を込めた…が開かない。

「開かない…。え、なんで?」

審神者がどれだけ頑張っても扉が開くことはない。

ーそして今に戻る

審神者が途方にくれていると、壁の方から音がした。

「えっ…?」

音がしたのは、先程審神者が読書に励んでいた場所とは別の読書スペースである。
審神者が音のした方へそっと近づくと、ソファに誰かが寝ころんでいるのがみえた。

「あー寝ちゃってたか。…あれ、主?」

音の主は伸びをしつつ読みかけであろう本を閉じ、顔を上げた先にいた審神者をみて目を丸くした。

「笹貫…?いつからいたの?」

笹貫は今まで寝ていたであろうソファーから立ち上がり、持っていた本を棚に戻しつつ不思議そうに答える。

「オレ?んー2時間前くらいかな?たまには本でも読もうかなって思って読んでたんだけど、気づいたら寝ちゃってて」

笹貫は少し恥ずかしそうに笑っている。

「そうなんだ…気づかなかったよ。」

笹貫は審神者の顔をみて、首を傾げた

「あれ、何か困ってる?」

笹貫の言葉に審神者はそんなに己は分かりやすいのだろうかと思いつつ、困り事の原因である扉の事を伝える。

「扉が開かなくて。」

笹貫は扉に近づき扉を開けようとして、開かないことを確認すると、引き戸の隙間から外をみた。

「あーこれは開かないわ。何かがつっかえてる」

笹貫の言葉に審神者は困ったように笑う。

「そっか…開かないかぁ」

笹貫は審神者の困った様子に不思議そうに声を掛ける。

「何か急ぎの予定でもあった?」

「特に急ぎではないけど、思い出した用事があったから済ませてしまおうと思ってたいの。開かないなら仕方ないか」

笹貫は少し考えて、審神者を手招きして先程己がいたソファーに誘導すると審神者を座らせ、己はその隣に座る。

「まぁ、誰かが気づいてくれるさ。のんびりいこう…な?」

審神者は笹貫に1つ頷くと、一息ついた。

「…そういえば、笹貫とこうやって2人で過ごすの初めてかもしれないね」

審神者の言葉に笹貫は頷きだけを返す。

「なんだかんだで誰かが側にいることが多いもんね…」

笹貫は審神者の顔を見つめて暫し沈黙した。

「笹貫…?」

審神者が不思議そうに笹貫の顔をのぞき込むと笹貫は嬉しそうに笑みを浮かべた。

「扉が開くまではオレが主を独り占めできるんだな。」

「…え?」

審神者は何を言われたのか理解ができていなかった。

「主は人気者だからねぇ。いつも誰かと一緒にいるだろ?…たまには2人で話をしてみたかったんだよねぇ。…だから、独り占め。…話をする機会を積極的に狙ってはいたんだけど。やっと“2人きり“で話ができる。」

笹貫はゆっくりと審神者に

「”オレ”さ主を独占してみたかったんだよね」

と審神者の目をのぞき込み、ゆっくり告げる。

「…っ笹貫」

審神者は笹貫の瞳から目を離すことができず、名を呼ぶことしかできなかった。

「主。オレを見て?…オレ”だけ”を見て?」

「笹貫…だけを…」

審神者が目をそらせずにいると、笹貫が不意に扉を見た。

「残念、時間切れ。…続きはまた今度、話そうか。主」

笹貫がそう言って立ち上がると、部屋の外から話し声が聞こえてきた。そして、扉が開いた。

「あれ?笹貫と主。…もー誰?こんなとこに箒置いたの!!主閉じ込められてたじゃん!!」

勢いよく話すのは加州清光。

「お、助かった〜ありがとう。…またね。」

笹貫は加州清光にお礼をいうと、ひと言言い残して去っていった。

呆然とした審神者を残して。

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