刀さに
平和な昼下がり
(私は…どうして…。)
審神者は1人部屋で悩んでいた。
「せっかく誘ってくれたのに…。」
つい先程、昼食を食べるために執務室を出た時に小竜景光と大般若長光、謙信景光の3振りとばったりと出会った。
「良かったら今から長船の皆で花見に行くんだが、一緒に行かないかい?」
大般若長光は思いついたように審神者に問いかけた。
「あ…ごめんなさい。今日はちょっと…。」
審神者が申し訳なさそうに断ると、謙信景光が残念そうに肩を落とした。
「用があるなら仕方ないさ。急に誘ったのはこっちだから気にしないでくれ。」
大般若長光は軽く手を振ると謙信景光を伴って歩き出した。
(せっかく誘ってくれたのに…。つい断っちゃった…。)
審神者は自分から断っておきながら少し肩を落として歩き出した。そんな様子を後ろから小竜景光に見られているとは知らずに…。
そして昼食後、自室にこもって1人項垂れているのである。審神者の自室は和室で冬は炬燵、夏は机として使っている机があり、座布団をひいていつでも過ごせるようにしている。その炬燵机にしなだれかかっているのだ。
「本当は予定なんてないのに…。誘ってくれて嬉しかったのに…。」
この審神者、実は己の本丸の刀剣男士にすら人見知りを発揮しているのである。そして、己に自信がないものだから自分がいても迷惑ではないか、と鬱々考え出しつい断わってしまう…ということを既に何度も繰り返している。
(断わっても皆、気にせずに誘ってくれるけど…。申し訳ないなぁ。)
審神者が机にへばりついていると、部屋の外から声をかけられた。
「主、いるかい?…失礼するよ。」
そう言って入室してきたのは小竜景光だった。
「小竜…?長船で花見にいったのでは…?」
小竜景光は審神者の様子を見て、にこりと微笑むと審神者の向いの座布団に腰を下ろした。
「キミ、本当は花見に行きたかったんだろ?」
小竜景光は楽しそうに審神者に問いかける。
「え…なんで…。」
審神者は小竜景光に気持ちを見抜かれて動揺した。
「無意識かもしれないけれど、いつも誘いを断った後少し肩を落として去っていくだろう?…で、用事がって断った割に用事がありそうにない時がある。最初は誘われるのが迷惑なのかと思っていたんだけど、それにしては残念そうにしていると思ってね。」
小竜景光に見られていたことに審神者は恥ずかしさが募り顔に熱が集まるのが分かる。そんな審神者の様子を静かに見つめつつ小竜景光は続ける。
「暫くキミを見てて、山姥切国広と話している所を見て、あぁ、俺達に人見知りをしているんだと思ってね。」
審神者は恥ずかしさのあまり顔が上げられなかった。初期刀である山姥切国広は付き合いが長い。付き合いが長いからこそ人見知りも落ち着き、彼とは普通に接することができていた。
「その…ごめんなさい…。」
審神者は消え入りそうな声で謝った。失望されただろうか…。嫌われたのだろうか…。頭の中ではぐるぐると悪い考えが巡り、目にはじわりと涙が溜まり始めた。
「謝ってほしいわけではないんだ。キミが慣れようとしているのは見ていてわかっているさ。」
小竜景光の言葉に審神者はおそるおそる顔をあげた。小竜景光は優しく微笑んでいた。
「ほら、泣いてたら俺が虐めているみたいじゃないか。」
そう言って小竜景光は手を伸ばし、審神者の涙を指で拭った。
「小竜…。」
「人数が多いから中々慣れないんだろ?まずは俺から慣れるっていうのはどうだい?俺でよければ付き合うぜ?」
小竜景光はどうする?と言って審神者に笑いかけた。
「…よろしくお願いします…。」
審神者が意を決して頭を下げると、小竜景光は破顔した。
「よくできました。さて…まずは俺と2人でこのまま花見なんてどうだい?」
小竜景光が立ち上がり、審神者の隣に立ち手を差し出す。審神者は1つ頷くと手を握り返した。
「行きたい。」
「よし、そうと決まれば長船の連中とは別の所へいこうか。…あぁ穴場を教えてあげるよ。」
小竜景光は楽しそうに、審神者をエスコートするかのように手を引き審神者を部屋から連れ出す。
そして小竜景光のおすすめする穴場で2人並び団子を食べつつ審神者がふと問いかけた。
「そういえば、よくわかりましたね。」
審神者の問いに小竜景光は微笑みながら首を傾げた。
「なにがだい?」
「私が本当は誘いを受けたかった、とか。人見知りしている…とか。」
審神者の問いに小竜景光は笑みを深め、答えた。
「ずっとキミを見ていたからね。」
「えっ…?」
小竜景光は続ける。
「キミの事が好きだからつい目で追っていたのだけど、ある日気づいたんだ。山姥切国広には態度が違うなってさ。…これからは俺も彼と同じ位置に置いてもらえるように頑張って慣れてくれるんだろう?楽しみにしているよ。…ね?主。」
小竜景光の突然の告白に審神者は暫く呆然としていたが、言葉を飲み込んだ途端一気に顔を赤くした。そんな審神者の様子を見て小竜景光は満足そうに微笑んだ。
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(私は…どうして…。)
審神者は1人部屋で悩んでいた。
「せっかく誘ってくれたのに…。」
つい先程、昼食を食べるために執務室を出た時に小竜景光と大般若長光、謙信景光の3振りとばったりと出会った。
「良かったら今から長船の皆で花見に行くんだが、一緒に行かないかい?」
大般若長光は思いついたように審神者に問いかけた。
「あ…ごめんなさい。今日はちょっと…。」
審神者が申し訳なさそうに断ると、謙信景光が残念そうに肩を落とした。
「用があるなら仕方ないさ。急に誘ったのはこっちだから気にしないでくれ。」
大般若長光は軽く手を振ると謙信景光を伴って歩き出した。
(せっかく誘ってくれたのに…。つい断っちゃった…。)
審神者は自分から断っておきながら少し肩を落として歩き出した。そんな様子を後ろから小竜景光に見られているとは知らずに…。
そして昼食後、自室にこもって1人項垂れているのである。審神者の自室は和室で冬は炬燵、夏は机として使っている机があり、座布団をひいていつでも過ごせるようにしている。その炬燵机にしなだれかかっているのだ。
「本当は予定なんてないのに…。誘ってくれて嬉しかったのに…。」
この審神者、実は己の本丸の刀剣男士にすら人見知りを発揮しているのである。そして、己に自信がないものだから自分がいても迷惑ではないか、と鬱々考え出しつい断わってしまう…ということを既に何度も繰り返している。
(断わっても皆、気にせずに誘ってくれるけど…。申し訳ないなぁ。)
審神者が机にへばりついていると、部屋の外から声をかけられた。
「主、いるかい?…失礼するよ。」
そう言って入室してきたのは小竜景光だった。
「小竜…?長船で花見にいったのでは…?」
小竜景光は審神者の様子を見て、にこりと微笑むと審神者の向いの座布団に腰を下ろした。
「キミ、本当は花見に行きたかったんだろ?」
小竜景光は楽しそうに審神者に問いかける。
「え…なんで…。」
審神者は小竜景光に気持ちを見抜かれて動揺した。
「無意識かもしれないけれど、いつも誘いを断った後少し肩を落として去っていくだろう?…で、用事がって断った割に用事がありそうにない時がある。最初は誘われるのが迷惑なのかと思っていたんだけど、それにしては残念そうにしていると思ってね。」
小竜景光に見られていたことに審神者は恥ずかしさが募り顔に熱が集まるのが分かる。そんな審神者の様子を静かに見つめつつ小竜景光は続ける。
「暫くキミを見てて、山姥切国広と話している所を見て、あぁ、俺達に人見知りをしているんだと思ってね。」
審神者は恥ずかしさのあまり顔が上げられなかった。初期刀である山姥切国広は付き合いが長い。付き合いが長いからこそ人見知りも落ち着き、彼とは普通に接することができていた。
「その…ごめんなさい…。」
審神者は消え入りそうな声で謝った。失望されただろうか…。嫌われたのだろうか…。頭の中ではぐるぐると悪い考えが巡り、目にはじわりと涙が溜まり始めた。
「謝ってほしいわけではないんだ。キミが慣れようとしているのは見ていてわかっているさ。」
小竜景光の言葉に審神者はおそるおそる顔をあげた。小竜景光は優しく微笑んでいた。
「ほら、泣いてたら俺が虐めているみたいじゃないか。」
そう言って小竜景光は手を伸ばし、審神者の涙を指で拭った。
「小竜…。」
「人数が多いから中々慣れないんだろ?まずは俺から慣れるっていうのはどうだい?俺でよければ付き合うぜ?」
小竜景光はどうする?と言って審神者に笑いかけた。
「…よろしくお願いします…。」
審神者が意を決して頭を下げると、小竜景光は破顔した。
「よくできました。さて…まずは俺と2人でこのまま花見なんてどうだい?」
小竜景光が立ち上がり、審神者の隣に立ち手を差し出す。審神者は1つ頷くと手を握り返した。
「行きたい。」
「よし、そうと決まれば長船の連中とは別の所へいこうか。…あぁ穴場を教えてあげるよ。」
小竜景光は楽しそうに、審神者をエスコートするかのように手を引き審神者を部屋から連れ出す。
そして小竜景光のおすすめする穴場で2人並び団子を食べつつ審神者がふと問いかけた。
「そういえば、よくわかりましたね。」
審神者の問いに小竜景光は微笑みながら首を傾げた。
「なにがだい?」
「私が本当は誘いを受けたかった、とか。人見知りしている…とか。」
審神者の問いに小竜景光は笑みを深め、答えた。
「ずっとキミを見ていたからね。」
「えっ…?」
小竜景光は続ける。
「キミの事が好きだからつい目で追っていたのだけど、ある日気づいたんだ。山姥切国広には態度が違うなってさ。…これからは俺も彼と同じ位置に置いてもらえるように頑張って慣れてくれるんだろう?楽しみにしているよ。…ね?主。」
小竜景光の突然の告白に審神者は暫く呆然としていたが、言葉を飲み込んだ途端一気に顔を赤くした。そんな審神者の様子を見て小竜景光は満足そうに微笑んだ。
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