刀さに
朝、審神者は目が覚めると最初に必ず行う事がある。
「おはようございます。」
机の上に飾ってある1枚の写真に向かって挨拶をする事である。
写真には、今現在本丸にいる刀達皆と皆に囲まれて幸せそうに微笑む己が写っている。
写真に挨拶をした後は支度を整え、自室を後にする。
「今日も1日、頑張るとしますか」
自室をでた審神者は1人小さな声で呟くと、朝餉の為に大広間へと足を踏み出した。
審神者の私室から大広間まではそれ程離れてはいないが、やはり本丸自体が大きいため、どうしても時間は少しかかる。
普段は多くの刀剣男士が生活しているため賑やかな廊下も本日はまだ、朝が早いためとても静かである。
審神者は偶に早起きをして、この静かな時間を楽しんでいた。
自室をでて、はじめの曲がり角を曲がると少し先を歩く1人の男士の背中が見えた。
「おはようございます。」
審神者が後ろから声をかけると男士…鶴丸国永が振り向いた。
「なんだ、主じゃないか!?…今日は早起きなんだな?」
鶴丸国永は驚いた顔をした後、嬉しそうに話しかけてきた。
「たまに早起きして、静かな本丸を楽しんでるんです。鶴丸さんも今から大広間に向かうところですか?…良ければ一緒に大広間に向かいませんか?」
審神者の問いに鶴丸は良い笑顔で頷いた。
「いいね。君は人気者だからな、偶には俺が独占させてもらうとするか!!…構わないだろう?」
鶴丸国永は嬉しそうに、楽しそうにそう言って審神者の顔を覗き込んだ。
「もう、鶴丸さんはまた私をからかって…!!」
審神者は急に近づいた美しいと称される顔のせいで少し赤くなった頬を隠すように歩き出した。
「冗談ではないんだがな…。主、置いていかないでくれ。」
鶴丸国永は小さく呟くとこちらを見ずに歩き始めた審神者の後をゆっくり追いかけ始めた。
「今日の朝餉は何でしょうか?」
鶴丸国永と共に歩きつつ話題の一環として、審神者は本日の朝餉の話を振り、鶴丸国永は朝餉が楽しみだと言わんばかりの審神者の様子を愛おしそうに見つめ、厨当番の燭台切光忠が話していた内容を教える。
「今日は確か…」
審神者を思いがけず朝から朝餉を食べる間も言葉通り独占する事ができた鶴丸国永はその日1日、とても機嫌が良かったし、とても調子が良かったようだ。
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