第四話「支えられる者と支える者」
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「検非違使?」
「けびいしってなんなんですか?」
短刀達から疑問の声が多く上がる。上の刀達は黙っているが、その目は那緒を真っ直ぐと見ている。
「正しい歴史を護る者である私達や、歴史を変えようと目論む者である遡行軍。そのどちらもが行う、歴史への干渉行為そのものを断じて赦さず刈り取ろうとする―――それが現時点で把握出来ている情報だ。そして、その強さは遡行軍を瞬く間に殲滅させるほどであるとも」
そこで言葉を切った那緒は仲間であり家族である彼らを見渡す。
戦々恐々とする普段から大人しい者。強敵が現れたと知り嬉々とする好戦的な者。皆様々な表情で近くにいる者と話をしている。
「主、その検非違使とやらはこの「国」には確認されていないのか?」
側に控えている三日月が問うと、那緒は頷いた。
「幸い、まだ遭遇している部隊はいないと聞いている。だが、私達が出会わないという確証もない。練度の高い者達が低い者を守る形で部隊編成を行う。遠征や討伐に出ない訳にもいかないし、刀としての本分を忘れてはならないが、何よりも。皆が折れること無く、私の元に帰ってきてくれるならそれでいい。それ以上は望まない。これからも変わりなく、出撃の機会は回ってくる。だがその度にどうか思い出してくれるか。部隊の誰一人、折れずに帰るという事を。必ず、この家に帰ると。私や、家族が待つ場所に帰るのだと。傷も負ってほしくはないが、土台無理な願いだろう。だからせめて、誰一人欠ける事無く、この脅威を共に乗り越えよう」
那緒の言葉にその場にいた皆が団結の声を上げた。
その後、いつも通りの内番や遠征などの振り分けが行われ、個々は与えられた仕事へ向かった。
那緒は近侍の三日月に今日の分の書類をまとめるように命じてから大広間にまだ残っていた者たちに声を掛けた。
「蜻蛉切と日本号はこっちに」
「はい」
「おう」
二人が近寄って来たのを確認してから、那緒が口を開く。
「蜻蛉切に暫くの間、日本号の世話を頼みたいんだが頼めるかな。人の身を得てそんなに経っていないし、戸惑う事も多いだろう。同じ槍同士、気も合うんじゃないかと思ってね」
「私は構いません」
「俺も、どっちかっていうと槍仲間の方がありがたいね」
彼等の言葉を聞いて、那緒は微笑んだ。
「なら決定だね。じゃ、よろしく頼むよ蜻蛉切」
「はい、主様」
またあとで、と手を振り去っていく背中をじっと見つめている日本号に声を掛けようとして蜻蛉切は固まった。
(かような目で、主様を見る者がいるとは)
大人に置いていかれ、心許なく寂し気な子供のように。
本当は寂しいよ、置いてかないでと縋りたいのに、けれども厭きられたくもないから踏みとどまるしかないような、そんなもどかしさを隠せない子供のような顔をするのだ、この本霊は。
「蜻蛉切さん、ちょっと」
「燭台切?どうした?」
慌てて、小さな声がした方に振り向くと、廊下に燭台切光忠がいた。
「長谷部君が呼んでたから。その間だけ、僕が彼の世話を代わるよ」
「そうか、かたじけない。では、少しばかり頼む」
蜻蛉切と入れ替わりで日本号の隣に近づいた燭台切は大きな息を吐いた。
「主の事、想ってくれてるんだね」
「……え?」
突然言われた事に上手く反応出来なかった日本号は呆けた声を出して、隣の燭台切を見た。
「僕、長谷部君とそんなに違わない時期に来たから―――主の事良く知ってる。主が誰が好きなのかも」
「長谷部も言ってたぜ、おんなじこと」
「ならよかった。僕も同じ気持ちだよって、言っておきたかったんだ。絶対、応援するから!」
「ありがとよ、燭台切」
心強い味方が増えた日本号ははにかんだ。
第四話 END.
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