短編
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審神者を辞めた。審神者が嫌になった訳ではない。刀のみんなが嫌いになった訳でもない。むしろみんなは私の事を慕ってくれていたし居心地もよかった。でもそれ以上に怖くなった事がある。
“燭台切光忠”
彼の私に対する愛情が怖くなった。最初は主である私の事を主として慕ってくれているのだと思っていた。私は優しくてかっこいい彼に恋をしていた。片想いだと思っていたある日、燭台切から“恋仲になりたい”と伝えられた。私も燭台切の事は好きだったからその思いに答えた。でもそれが違う感情になりだしたと気づいた時にはもう引き返す事のできない愛情になっていた。愛情というより嫉妬に塗れた執着に変わっていた。
「・・・・・君の事が好きなんだ」
『うん、私も光忠の事は好きだよ?どうしたの?』
「君と僕の好きは違うと思うんだ」
床に力強く押し倒された。衝撃で一瞬息ができなかった。腕を動かしてもびくともしなかった。
『ッ!!』
「僕だけの主になって?他の刀と話さないで?他の刀に笑いかけないで?僕だけと話して僕だけに笑いかけてよ。君の世界には僕はだけでいいし僕の世界にも君だけでいいんだ」
ドス黒い何かが燭台切から出ていた。きっとそれに呑まれたら私は神隠しに合うのだと直感で分かった。審神者と恋仲になり闇堕ちしてしまう刀がたまにいると聞いてはいたがその“たまに”にあたるなんて思ってもいなかった。でも神隠しを行うためには私の名前を知らないとできないはず。
「光坊!!?何をしてるんだ!!」
丁度遠征から帰ってきて報告にきた鶴さんに助けられた。
そのまま私は怖くなり審神者を辞めた。あの出来事が怖すぎて話そうとすると震えが止まらなくなってしまうためちゃんとした理由を政府にも刀達にも話せなかった。
『母親が病で倒れたの・・・・・最期は一緒にいてあげたいから審神者を辞める事にしました』
嘘をついた。初期刀の清光と辞める理由になった出来事を目撃していた鶴さんは私の異変に気づいていた。だから二振りには話をした。何度も言葉に詰まって手も震えてた。辞めるまでの数日間は二振りがずっと側にいてくれた。燭台切が何度も私の元に来てはいたが会わないように守ってくれた。
「俺、主が主じゃなくなっても大好きだと思うよ」
『清光、ありがとう。新しい審神者の人とも仲良くしてね?』
「うん、主・・・またね」
「あいつの異変に気付けていれば主は辞めることなく今も続けられていたはずなのに・・・・・すまない」
『鶴さんのせいじゃないから。私が弱かっただけだよ』
「主は強い。現世では守ってやれないから変な男に引っかかったりするなよ?」
燭台切を刀解しなかったのは怖くてもまだどこかにあの優しかった彼が好きだという気持ちがあったからだと思う。
現世に戻って一人暮らしを始めた。仕事もすぐ見つかり順調だった。職場はいい人ばかりで助かった。
家に帰れば1人。数ヶ月前までは刀のみんながいてわいわいしてて静かな時なんて全くなかったのに今は静かな時間しかない。田舎の実家に帰ることも考えたけど仕事を探すなら都内の方が絶対いい。
テレビをつけると今日のニュース一覧がやっていた。茶番劇だと思うような政治のニュース、動物園でライオンの赤ちゃんが生まれたニュース、芸能人の結婚報告、窃盗事件・・・・・様々なニュース。
その夜に夢を見た。燭台切が出てきた。
「主、今日のご飯何がいい?」
『オムライス?』
「主はオムライスが本当に好きだね」
『光忠の作るオムライスは美味しいからね』
「デート?それはどう言ったものなの?」
『一緒に色んなところにお出かけするの。お家デートっていうのもあるけど私は出かける方が好きかな』
「主・・・・・キスしてもいい?」
『別にわざわざ聞かなくていいんだよ?』
「抱きしめる時も?」
『うん』
まだ幸せが溢れていた時の夢。あの頃は幸せだったのに。いつからおかしくなってしまったのだろう。
それからというものよく夢を見るようになった。絶対燭台切が出てくる。いつも私と燭台切2人だけしか出てこなかった。
それなのに今日は違った。
「君は僕の事好きなの?」
「好きだよ?」
「そっか」
「君の長い髪、とっても綺麗だね」
「手入れ頑張ってるんだよ」
「私と光忠って恋仲ってやつでいいんだよね?」
「君がそう思ってるならそうなのかな?」
知らない女の人が隣にいた。胸がざわついた。燭台切の事が怖いはずなのに。好きだった時みたいな気持ちが込み上げてくる。
やめて、他の女の人に触れないで。触らないで。燭台切は・・・・・彼は私の好きな人なんだよ。
眠るたびに燭台切と女の人の距離が近くなる眠りが浅くなる。顔色も悪くなる。職場の人達が心配してくれる。
「本当に大丈夫?」
『大丈夫ですよ〜』
「俺、やっときますから早退した方がいいと思います。心配ですから」
最近よく声をかけてくれる女子人気の高い榊原さんに念を押されて帰る事にした。気遣いのできるイケメンはさぞモテるだろう。
明日から大型連休だ。流石にゆっくりしたいので明日の朝イチで実家に帰る事にした。両親に連絡を入れたらすごく喜んでくれた。新幹線のチケットもすぐ買った。1席だけ奇跡的に残っていた。地元の友達にも連絡を入れて会う約束をした。
『準備するかー』
準備が捗り寝るのは怖いが明日の朝イチの新幹線に間に合わすために眠った。
夢は見なかった。久しぶりにすっきりとした朝が迎えられた。
実家に帰ると久しぶりの私の帰省に親戚一同が集まっていた。
「名前ちゃん、久しぶりだね」
「「「「名前ちゃん!!」」」」
歳の離れた兄2人の甥っ子姪っ子も大きくなっていた。その日の夜は宴と言わんばかりと豪勢なご飯だった。両親も久しぶりに私が帰ってきてすごく喜んでいるのが伝わる。末っ子で女の子だから尚更なんだろう。
今日も夢は見なかった。
次の日は友人と会ってオールで飲み明かした。
「やっぱ田舎だといい男いないんだけど!!」
「「結婚してる私達勝ち組」」
『東京居てもそうそういい男いないしいい男はみんな結婚してるのがオチだから』
「名前ぐらいの美人でも無理とか私絶対無理じゃん!?」
その日は二日酔いで死んでいた。
帰るのは連休が終わる1日前に帰る事にしていたので予定通り帰る事にした。
「またいつでも帰ってきてよ?お母さん寂しいから」
「次帰ってくる時は婚約相手でも連れてこいよ」
『はいはい、気が向いたら結婚するつもりだから。じゃあ、またね〜』
あっという間に東京に着く。思えば実家にいる間は変な夢を見なかった。久しぶりによく眠れた。
新幹線から降り家に帰るために電車を待っていたら声をかけられた。
「苗字さん?」
『榊原さん?』
偶然に榊原さんに出会った。
「夜ご飯ってまだですか?」
『あー、まだですね』
「もし良ければ一緒にいかがです?」
たまにはこんな日もあってもいいだろう。
榊原さんとのご飯は結構楽しかった。
『榊原さんって結構お話されるんですね』
「よく言われます」
『ギャップあっていいと思いますよ、絶対女子は好きですよ』
ご飯を食べ終えて家に帰る。
『・・・・・ん?』
少し部屋の中が荒れている気もする。
『・・・・・まぁ、準備して片付けしてなかったし荒れてるか』
片付けをしていたら普通なら落ちていない物が落ちていた。
『桜の花びらかな?なんでこんなの落ちてるんだろ・・・・・なんでもいいや。さっさとお風呂にして寝よーっと』
久しぶりに夢を見た。
「ねぇ・・・・・光忠って私の事好きって言ってくれた事ないよね?」
「どうして?」
「だって私達付き合ってるんでしょ?それなのに好きって言ってくれないから心配になって・・・・・」
「君が勝手にそう思ってるだけなんだし好きなんて言う訳ないでしょ?」
燭台切は笑っているけど目は笑っていない。
「前に君が恋仲かどうか聞きいてきた時に君がそう思ってるならそうなんじゃないかなって僕は答えたよ。君がそう思うのは自由だよ。ただ僕はそうは思ってないから」
「・・・・・じゃあどうして私の事抱くの・・・・・?」
「うーん・・・・・練習台?」
「練習台って何?」
「そのままの意味。だって僕が好きなのはずっと」
『・・・・・ッ!!』
飛び起きた。これ以上の言葉は聞きたくなかった。
『・・・・・なんなの・・・・・』
喉が渇いたのでキッチンにお茶を飲みに行く。すごい量の汗をかいていた。喉も渇くはずだ。スマホの時刻は2時丁度。丑三つ時。
『なんか嫌な時間に目覚めたな・・・・・』
キッチンの電気を消してベッドに戻る。
「あれ?寝ちゃうの?」
この部屋には私1人なのに声が聞こえる。恐る恐る振り返る。
『・・・・・なっなんで・・・・・どうして・・・・・っや』
燭台切がいた。ベッドの側。私に目線を合わせてしゃがんでいた。
「君に会いたくて来ちゃった」
怖くて声が出ない。
「嬉しくて声も出ないの?」
私の頬を愛おしそうな手つきで撫でる。
「僕すっごく嬉しかったんだ」
息が苦しくなる。
「主が“やめて、他の女の人に触れないで。触らないで。燭台切は・・・彼は私の好きな人なんだよ”って言ってくれて」
『・・・・・え』
「君に嫉妬してほしくて好きでもない今の主と仲良くして夢を見てもらってたんだ」
全て、燭台切の仕業だったんだ。
「僕、すっごく頑張ったんだよ。現代風で言えば
セックスだっけ?」
すごく嫌な予感がする。
「主とはシた事なかったでしょ?だから主とシた時にガッカリされないよにいっぱい練習したんだ」
怖い・・・・・逃げないと・・・・・。
力を振り絞り燭台切を押し玄関の方へと走ろうとした。
私の弱い力なんかで燭台切が退くわけない。あっさり捕まってそのまま腕の中だ。
「主の力は弱いんだからこんなので僕が押し退けれるわけ無いでしょ?」
『・・・・・いや・・・・・やめて・・・・・私は、ちが・・・・・』
「何が違うの?・・・・・もしかして僕じゃなくてあの男が好きなの?」
あの男?
「さっきまで夜ご飯食べてた優しそうな彼のことが好きになっちゃった?それだったら僕嫌だなぁ・・・・・殺しちゃうかもしれないな」
『ちがっ・・・・・』
「それならよかった」
燭台切が私の髪の毛先をくるくると弄ぶ。
「ねぇ、主?」
甘い声が私の耳元に落ちる。
「僕の事好き?」
ここで直ぐに嫌いと返せない自分が嫌になる。怖くてもやっぱりどこか好きな気持ちがちらつく。
「“名前”は僕の事好き?」
燭台切の口から私の名前が出た。驚きで燭台切を見た。
「やっと目、合わせてくれたね」
『どうして・・・・・私の名前・・・・・』
「苗字 名前が君の名前でしょ?君がいない間いっぱい探したんだよ。そしたらあったんだ」
燭台切の手には社員証があった。私が家に帰って来た時の荒れていた違和感はそう言う事だったのか。刀剣男士は審神者の名前を一般的には知らない。噂だと神隠しに遭うらしいから。
『・・・・・やだ・・・・・やだ!!』
「何が嫌なの?」
『私は・・・・・』
私は何がしたいんだっけ?働いて・・・・・いい人見つけて結婚して・・・・・両親を安心させたいの?
「ねぇ、こっち向いて?」
『・・・・・いやだ』
「仕方ないよね」
顎を持ち上げられ無理矢理顔を上げさせられたと思ったらキスをされた。しかも深いキス。付き合っていた時もこんなキスはした事がない。逃げようにも後頭部に手が添えられていて逃げれない。苦しい。
「上手になったでしょ?」
酸欠になり力が入らない。そのままベッドに押し倒される形になる。
『・・・・・やめて・・・・・お願いだから・・・・・』
燭台切が私を愛おしそうに見つめる。
『・・・・・わ、私・・・・・燭台切に「光忠って呼んでよ」
『お願いだから、優しい光忠に戻ってよ』
精一杯の力で声を出した。
「優しい僕って何?本当の僕はこれなんだよ?君に好かれたくて君の彼氏になりたくて君の側にいたかったから優しい僕を偽ってただけだよ?」
もう何をしても何を言っても彼には届かないと察した時に考える事をやめた。
「これからはずっと2人でずっと一緒にいようね・・・・・大好きだよ」
光忠から前に見たドス黒い何かが私を飲み込むように覆い被さる。私はそのまま意識を手放した。
◯月××日。都内某所のアパートにて一人暮らしの女性が行方不明となりました。会社に出勤してこなかったため女性に連絡をとったところ繋がらず不審に思った会社が警察に連絡したとの事です。アパートの玄関には鍵がかかっており室内も争った形跡はなくアパートの防犯カメラにも不審な自分は映っておらず女性の行方の捜査の方が慎重に進められています。
“燭台切光忠”
彼の私に対する愛情が怖くなった。最初は主である私の事を主として慕ってくれているのだと思っていた。私は優しくてかっこいい彼に恋をしていた。片想いだと思っていたある日、燭台切から“恋仲になりたい”と伝えられた。私も燭台切の事は好きだったからその思いに答えた。でもそれが違う感情になりだしたと気づいた時にはもう引き返す事のできない愛情になっていた。愛情というより嫉妬に塗れた執着に変わっていた。
「・・・・・君の事が好きなんだ」
『うん、私も光忠の事は好きだよ?どうしたの?』
「君と僕の好きは違うと思うんだ」
床に力強く押し倒された。衝撃で一瞬息ができなかった。腕を動かしてもびくともしなかった。
『ッ!!』
「僕だけの主になって?他の刀と話さないで?他の刀に笑いかけないで?僕だけと話して僕だけに笑いかけてよ。君の世界には僕はだけでいいし僕の世界にも君だけでいいんだ」
ドス黒い何かが燭台切から出ていた。きっとそれに呑まれたら私は神隠しに合うのだと直感で分かった。審神者と恋仲になり闇堕ちしてしまう刀がたまにいると聞いてはいたがその“たまに”にあたるなんて思ってもいなかった。でも神隠しを行うためには私の名前を知らないとできないはず。
「光坊!!?何をしてるんだ!!」
丁度遠征から帰ってきて報告にきた鶴さんに助けられた。
そのまま私は怖くなり審神者を辞めた。あの出来事が怖すぎて話そうとすると震えが止まらなくなってしまうためちゃんとした理由を政府にも刀達にも話せなかった。
『母親が病で倒れたの・・・・・最期は一緒にいてあげたいから審神者を辞める事にしました』
嘘をついた。初期刀の清光と辞める理由になった出来事を目撃していた鶴さんは私の異変に気づいていた。だから二振りには話をした。何度も言葉に詰まって手も震えてた。辞めるまでの数日間は二振りがずっと側にいてくれた。燭台切が何度も私の元に来てはいたが会わないように守ってくれた。
「俺、主が主じゃなくなっても大好きだと思うよ」
『清光、ありがとう。新しい審神者の人とも仲良くしてね?』
「うん、主・・・またね」
「あいつの異変に気付けていれば主は辞めることなく今も続けられていたはずなのに・・・・・すまない」
『鶴さんのせいじゃないから。私が弱かっただけだよ』
「主は強い。現世では守ってやれないから変な男に引っかかったりするなよ?」
燭台切を刀解しなかったのは怖くてもまだどこかにあの優しかった彼が好きだという気持ちがあったからだと思う。
現世に戻って一人暮らしを始めた。仕事もすぐ見つかり順調だった。職場はいい人ばかりで助かった。
家に帰れば1人。数ヶ月前までは刀のみんながいてわいわいしてて静かな時なんて全くなかったのに今は静かな時間しかない。田舎の実家に帰ることも考えたけど仕事を探すなら都内の方が絶対いい。
テレビをつけると今日のニュース一覧がやっていた。茶番劇だと思うような政治のニュース、動物園でライオンの赤ちゃんが生まれたニュース、芸能人の結婚報告、窃盗事件・・・・・様々なニュース。
その夜に夢を見た。燭台切が出てきた。
「主、今日のご飯何がいい?」
『オムライス?』
「主はオムライスが本当に好きだね」
『光忠の作るオムライスは美味しいからね』
「デート?それはどう言ったものなの?」
『一緒に色んなところにお出かけするの。お家デートっていうのもあるけど私は出かける方が好きかな』
「主・・・・・キスしてもいい?」
『別にわざわざ聞かなくていいんだよ?』
「抱きしめる時も?」
『うん』
まだ幸せが溢れていた時の夢。あの頃は幸せだったのに。いつからおかしくなってしまったのだろう。
それからというものよく夢を見るようになった。絶対燭台切が出てくる。いつも私と燭台切2人だけしか出てこなかった。
それなのに今日は違った。
「君は僕の事好きなの?」
「好きだよ?」
「そっか」
「君の長い髪、とっても綺麗だね」
「手入れ頑張ってるんだよ」
「私と光忠って恋仲ってやつでいいんだよね?」
「君がそう思ってるならそうなのかな?」
知らない女の人が隣にいた。胸がざわついた。燭台切の事が怖いはずなのに。好きだった時みたいな気持ちが込み上げてくる。
やめて、他の女の人に触れないで。触らないで。燭台切は・・・・・彼は私の好きな人なんだよ。
眠るたびに燭台切と女の人の距離が近くなる眠りが浅くなる。顔色も悪くなる。職場の人達が心配してくれる。
「本当に大丈夫?」
『大丈夫ですよ〜』
「俺、やっときますから早退した方がいいと思います。心配ですから」
最近よく声をかけてくれる女子人気の高い榊原さんに念を押されて帰る事にした。気遣いのできるイケメンはさぞモテるだろう。
明日から大型連休だ。流石にゆっくりしたいので明日の朝イチで実家に帰る事にした。両親に連絡を入れたらすごく喜んでくれた。新幹線のチケットもすぐ買った。1席だけ奇跡的に残っていた。地元の友達にも連絡を入れて会う約束をした。
『準備するかー』
準備が捗り寝るのは怖いが明日の朝イチの新幹線に間に合わすために眠った。
夢は見なかった。久しぶりにすっきりとした朝が迎えられた。
実家に帰ると久しぶりの私の帰省に親戚一同が集まっていた。
「名前ちゃん、久しぶりだね」
「「「「名前ちゃん!!」」」」
歳の離れた兄2人の甥っ子姪っ子も大きくなっていた。その日の夜は宴と言わんばかりと豪勢なご飯だった。両親も久しぶりに私が帰ってきてすごく喜んでいるのが伝わる。末っ子で女の子だから尚更なんだろう。
今日も夢は見なかった。
次の日は友人と会ってオールで飲み明かした。
「やっぱ田舎だといい男いないんだけど!!」
「「結婚してる私達勝ち組」」
『東京居てもそうそういい男いないしいい男はみんな結婚してるのがオチだから』
「名前ぐらいの美人でも無理とか私絶対無理じゃん!?」
その日は二日酔いで死んでいた。
帰るのは連休が終わる1日前に帰る事にしていたので予定通り帰る事にした。
「またいつでも帰ってきてよ?お母さん寂しいから」
「次帰ってくる時は婚約相手でも連れてこいよ」
『はいはい、気が向いたら結婚するつもりだから。じゃあ、またね〜』
あっという間に東京に着く。思えば実家にいる間は変な夢を見なかった。久しぶりによく眠れた。
新幹線から降り家に帰るために電車を待っていたら声をかけられた。
「苗字さん?」
『榊原さん?』
偶然に榊原さんに出会った。
「夜ご飯ってまだですか?」
『あー、まだですね』
「もし良ければ一緒にいかがです?」
たまにはこんな日もあってもいいだろう。
榊原さんとのご飯は結構楽しかった。
『榊原さんって結構お話されるんですね』
「よく言われます」
『ギャップあっていいと思いますよ、絶対女子は好きですよ』
ご飯を食べ終えて家に帰る。
『・・・・・ん?』
少し部屋の中が荒れている気もする。
『・・・・・まぁ、準備して片付けしてなかったし荒れてるか』
片付けをしていたら普通なら落ちていない物が落ちていた。
『桜の花びらかな?なんでこんなの落ちてるんだろ・・・・・なんでもいいや。さっさとお風呂にして寝よーっと』
久しぶりに夢を見た。
「ねぇ・・・・・光忠って私の事好きって言ってくれた事ないよね?」
「どうして?」
「だって私達付き合ってるんでしょ?それなのに好きって言ってくれないから心配になって・・・・・」
「君が勝手にそう思ってるだけなんだし好きなんて言う訳ないでしょ?」
燭台切は笑っているけど目は笑っていない。
「前に君が恋仲かどうか聞きいてきた時に君がそう思ってるならそうなんじゃないかなって僕は答えたよ。君がそう思うのは自由だよ。ただ僕はそうは思ってないから」
「・・・・・じゃあどうして私の事抱くの・・・・・?」
「うーん・・・・・練習台?」
「練習台って何?」
「そのままの意味。だって僕が好きなのはずっと」
『・・・・・ッ!!』
飛び起きた。これ以上の言葉は聞きたくなかった。
『・・・・・なんなの・・・・・』
喉が渇いたのでキッチンにお茶を飲みに行く。すごい量の汗をかいていた。喉も渇くはずだ。スマホの時刻は2時丁度。丑三つ時。
『なんか嫌な時間に目覚めたな・・・・・』
キッチンの電気を消してベッドに戻る。
「あれ?寝ちゃうの?」
この部屋には私1人なのに声が聞こえる。恐る恐る振り返る。
『・・・・・なっなんで・・・・・どうして・・・・・っや』
燭台切がいた。ベッドの側。私に目線を合わせてしゃがんでいた。
「君に会いたくて来ちゃった」
怖くて声が出ない。
「嬉しくて声も出ないの?」
私の頬を愛おしそうな手つきで撫でる。
「僕すっごく嬉しかったんだ」
息が苦しくなる。
「主が“やめて、他の女の人に触れないで。触らないで。燭台切は・・・彼は私の好きな人なんだよ”って言ってくれて」
『・・・・・え』
「君に嫉妬してほしくて好きでもない今の主と仲良くして夢を見てもらってたんだ」
全て、燭台切の仕業だったんだ。
「僕、すっごく頑張ったんだよ。現代風で言えば
セックスだっけ?」
すごく嫌な予感がする。
「主とはシた事なかったでしょ?だから主とシた時にガッカリされないよにいっぱい練習したんだ」
怖い・・・・・逃げないと・・・・・。
力を振り絞り燭台切を押し玄関の方へと走ろうとした。
私の弱い力なんかで燭台切が退くわけない。あっさり捕まってそのまま腕の中だ。
「主の力は弱いんだからこんなので僕が押し退けれるわけ無いでしょ?」
『・・・・・いや・・・・・やめて・・・・・私は、ちが・・・・・』
「何が違うの?・・・・・もしかして僕じゃなくてあの男が好きなの?」
あの男?
「さっきまで夜ご飯食べてた優しそうな彼のことが好きになっちゃった?それだったら僕嫌だなぁ・・・・・殺しちゃうかもしれないな」
『ちがっ・・・・・』
「それならよかった」
燭台切が私の髪の毛先をくるくると弄ぶ。
「ねぇ、主?」
甘い声が私の耳元に落ちる。
「僕の事好き?」
ここで直ぐに嫌いと返せない自分が嫌になる。怖くてもやっぱりどこか好きな気持ちがちらつく。
「“名前”は僕の事好き?」
燭台切の口から私の名前が出た。驚きで燭台切を見た。
「やっと目、合わせてくれたね」
『どうして・・・・・私の名前・・・・・』
「苗字 名前が君の名前でしょ?君がいない間いっぱい探したんだよ。そしたらあったんだ」
燭台切の手には社員証があった。私が家に帰って来た時の荒れていた違和感はそう言う事だったのか。刀剣男士は審神者の名前を一般的には知らない。噂だと神隠しに遭うらしいから。
『・・・・・やだ・・・・・やだ!!』
「何が嫌なの?」
『私は・・・・・』
私は何がしたいんだっけ?働いて・・・・・いい人見つけて結婚して・・・・・両親を安心させたいの?
「ねぇ、こっち向いて?」
『・・・・・いやだ』
「仕方ないよね」
顎を持ち上げられ無理矢理顔を上げさせられたと思ったらキスをされた。しかも深いキス。付き合っていた時もこんなキスはした事がない。逃げようにも後頭部に手が添えられていて逃げれない。苦しい。
「上手になったでしょ?」
酸欠になり力が入らない。そのままベッドに押し倒される形になる。
『・・・・・やめて・・・・・お願いだから・・・・・』
燭台切が私を愛おしそうに見つめる。
『・・・・・わ、私・・・・・燭台切に「光忠って呼んでよ」
『お願いだから、優しい光忠に戻ってよ』
精一杯の力で声を出した。
「優しい僕って何?本当の僕はこれなんだよ?君に好かれたくて君の彼氏になりたくて君の側にいたかったから優しい僕を偽ってただけだよ?」
もう何をしても何を言っても彼には届かないと察した時に考える事をやめた。
「これからはずっと2人でずっと一緒にいようね・・・・・大好きだよ」
光忠から前に見たドス黒い何かが私を飲み込むように覆い被さる。私はそのまま意識を手放した。
◯月××日。都内某所のアパートにて一人暮らしの女性が行方不明となりました。会社に出勤してこなかったため女性に連絡をとったところ繋がらず不審に思った会社が警察に連絡したとの事です。アパートの玄関には鍵がかかっており室内も争った形跡はなくアパートの防犯カメラにも不審な自分は映っておらず女性の行方の捜査の方が慎重に進められています。
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