どうも社畜です。G5に強制連行されました🙏
「ここも」
「…はい」
また始まった。
「ここも、ここもだ!お前、デスクワーク始めて何年だ?あ?言ってみろ」
「...12年です」
「これが10うん年もやってる人間の仕事かァ!?」
同僚も先輩もみんないる部屋での怒鳴り散らしタイム。返事をして素直に答えておけば早いんだけど今回は長くなりそうな匂い。あれだな、愛人となんかあったなこりゃ。
「明日までに終わらせろ。明日の朝までだ」
「…は、い」
流石に机に積もるこの量を明日の朝までに終わらせて提出はエグい。
怪我のせいでデスクワークが多めになったけど俺は案外アウトドア派なんだぞ!!
戦いは…うん。ね?
「なにか文句があるのか?言ってみろ」
「…特には」
「ハ…相変わらず辛気臭ェツラだ。それもどうにかしてこい」
俺の返事も聞かずに出て行った💩上司様の背を見送り、ぐったりととイスの背にもたれかかった。
机上に残る山のような書類を見つめながら。
「大丈夫すか?オルダさん」
「この量はないですよ!私もやりますから!」
「俺も手伝うぞオルダ」
「先輩まで…」
オルダと呼ばれた海軍本部少将こと俺。年下にも慰められ中なのだが、これでも少将です。
皆からの思いやりに感動しつつも脳内ではもう1人のオルダくんが『手伝わせちゃダメ!!犠牲者を増やすのか!?』と喚いていた。
確かにどーにも他人に迷惑をかけることは自分が許さない。
咄嗟に大丈夫だと言葉を吐いた。
「大丈夫だよー。みんなに💩の矛先向くのは嫌だし…それにもう定時過ぎてるしー」
「これ1人でやる気かよ」
「んー…まぁ、ね…ほら!帰った帰った!!」
後輩の背中は勿論のこと先輩まで押してコートを着せて帰らせる。同僚に深いため息をつかれたが軽く手を振って、パタンと扉を閉めた。
その足で栄養ドリンクを飲もうと部屋にある冷蔵庫を開けたが空っぽ。どこにも見当たらない。
「あ゛ー…昨日ので最後かぁ」
1人の部屋に声が響く。帰らせたのは自分のくせに虚し過ぎて胸が詰まる。すでに通算三徹目。寂しくなるのは歳だろうか。
買いに行くにも時間が勿体なくて自分のデスクに戻り、伸び放題の髪を結び直す。
「ハァーーー、やるか」
ポツポツと灯りの消えていく本部の建物を横目に、すっかり使い込んだ羽ペンをインク瓶から持ち上げた。
・・・
「ぉぃ…おい!オルダ!」
「ハゥッ!?なに!?」
揺さぶられる身体と耳に飛び込んできた低い声に勢いよく顔を上げた拍子にぐらりと歪む視界。いつの間にか寝てしまっていたらしい。
目の前に立っているはずの友人は、ぼやぼやして見える。
「大丈夫か?」
「アハハ…うん、うん…だいじょうぶ」
「はぁ」
やれやれと言いたいのだろうが別段内容は口にせず、彼は俺の額にひんやりとした栄養ドリンクを当てた。
そういえば何時だろう。腕を見るが時計の姿はなく、数日前に苛立ちから壁に殴りつけて割ったことを思いだした。
「スモーカー」
「午前2時48分」
「よく分かったね!俺が聞きたいことーアハッハ」
「ネジ外れてんな。外にでも出たらどうだ」
「ダメだよ。まだやらないと」
「…その大量の書類はどこから送られてくんだ」
「うえ」
天井を指差してまたデスクに突っぷす。バランスよくギリギリで保っていた書類の山が床へと雪崩れ落ちた。
慌てて拾おうとするとスモーカーが手袋をつけた手で制してくる。1枚1枚、裏表をじっくり吟味しながら拾ってまた元のような山に戻してくれた。
「ありがとぉ…」
「お前がやらなくてもいいんじゃねぇか?」
ピラピラと指でつまんで俺の鼻の先で振る。
💩上司がパワハラの頭が固い古株だからか、単なる嫌がらせか。自分でやらなきゃいけないデスクワークをこっちに回してきて、夜は繁華街で過ごしてる。
空いた時間を家族のためとかならまだしも愛人のために使ってるってんだから嫌になる。
だがこのご時世、目の前にいる白猟のスモーカーくんとは違って平穏に正義を全うしたい俺は上司に口出しするなどできない。黙ってた方が早く話も終わるし。
「んー。仕方ないというかなんというか」
やっと光に目が慣れてスモーカーの方へ顔を上げる。
葉巻を咥えた厳つい表情。
そういえば半年前にG5に行ったはずなのになんでここにいるんだろうか。ぼんやり考えていると手袋を外した、暖かい手が俺の目の下を撫でる。
「クマが酷い。寝ろ」
「むりむりぃ」
「なら運ぶぞ」
えー?どこにー?とチャラけて返そうとしたがその前に体が椅子から浮く。いきなり抱き上げられて落ちそうになるのをスモーカーの太い首に手を回して防いだ。
運ばれた先は仮眠室。投げるようにベッドに放り込まれて毛布をかけられる。
「だめなんだって。朝までのもあるんだ」
「気絶させた方が早いか」
辺りに煙が舞い始めて、大きく拳を振り上げるスモーカーさん。嘘だろいま殴られたら同じくロギアの俺でも死ぬわ。
「わーかった!分かったよぉ…じゃあ1時間したら起こして」
「あぁ」
「…そういえば久しぶりに顔を見た気がする。電話はしてたから声は久しぶりじゃないけど」
「あ?そりゃあ半年ぶりだからな本部に来るのは」
「そっかぁ…あ、もしかして俺に会いたかったとか?前は宿舎が同部屋だったから毎日顔を見てたもんねー」
「やっぱ殴るか」
再度、握った拳を振り上げようとするスモーカーを両手で必死に止める。
「やめてください」
「寝ろ馬鹿野郎」
スモーカーは俺の髪を留めていたゴムを取るとぐしゃぐしゃ乱暴に頭を撫でた。すっごく雑だが大きな手から伝わる体温が心地いい。
「きもちい」
「そうかよ…話を聞いたが、お前の上司クズだな」
「いつかあいつの部屋にラフレシア咲かせてやるんだ」
「面白そうだな。おれも手伝ってやるよ」
「えへへ…スモーカーの面倒見いいとこ俺、好きだよ」
「…そうか」
「ん…」
そのまま今まで寝てないこともあってか吸い込まれるように眠りについた。
1時間たっただろうか。重たい身体を起こしてカモメの鳴く小さな窓をみた。ん?カモメの声??それに外が青い…青いぞ。
側に置いてある目覚まし時計に恐る恐る目を向けて、俺は軽く悲鳴を上げた。…起きたのは1時間後どころではなく朝の10時。
寝たのは深夜3時だったから7時間睡眠ととっても健康的な睡眠。わーいと喜べるはずもなく、普通に考えても就業時間的にアウトだ。
「起きたか」
とんでもねぇ失態をしちゃったくせになんの悪気もなく腕を組んで、葉巻を吸って、仁王立ちしている同期さん。
「あほ」
「あ?なにがだ?」
「遅刻だし、書類も間に合わない!なんて言い訳すれば…あぁその前にタイムカードも切ってない!」
「おら」
ドスンと床に置かれる俺の出張用のでかい鞄。
そして目の前に出される1枚の紙。
もう朝から意味がわからない。あれか、除隊通知かな?ンーーー???
「『G5に移動を許可する』…………………え?」
「行くぞ」
「いや待って。ちょっと、は?」
「今日、お前は本部からG5に移動だ。そんでもっておれの部下になる」
なに得意げにドヤ顔してんだよ。G5ってあれじゃん。海軍の島流しって言われてる部隊じゃん。
「なぜ?」
「おれが上に言った」
なーーんで許可しちゃうんだサカズキさん!!
あの人地味に甘いんじゃないのー!!!?
脳内で叫びまくる俺を置いて、スモーカーは俺の鞄を持って先に部屋から出て行ってしまう。
書類にも書いてあったように今日から俺の上司はスモーカーとなった。となると、着いて行かない訳にいかない。
「あぅ…持ちますよ?スモーカーさーん」
様子を伺いつつ横から覗き込むと俺を見たスモーカーはグッと眉間にシワを寄せ、心底不機嫌な顔をした。
「なんで敬語だ。気持ち悪りぃ」
「だって上司でしょ?お持ちしますよー」
その手から荷物を取ろうとするが、ひょいひょい避けられてなぜか、俺がたくましい腕で脇に抱えられる。
「下ろしてください」
「ふらふらじゃねぇか。飯も食ってねぇだろ」
「書類さばきに勤しんでおりまして、4日間ほどカ○リーメイトで過ごしておりました」
「…敬語を直したら飯おごってやる」
「え、マジ?すもやん」
「投げるぞ」
投げられそうになるのを必死に肩にしがみついて食い止める。
まるで最初から決められていたように手続きなしで本部から出ることができて、素早く港の軍艦に乗せられる。
あ、元だけど上司に挨拶しなかったな。
そんなことを頭のすみで考えながら久しぶりの海に硬くなった体を伸ばす。彼は部下に指示を出すため、さっさと中に入ってしまった。
船に乗ったとき寒いだろうと中に手招きされたが海風を堪能したくて生返事をし、甲板の手すりに頬杖をついて流れる波を眺めていた。
「...おそとだ」
深呼吸をすると潮の匂いがする。波の音も。
ついでに板の上を走る音も感じられて、振り向いた。
「コーヒーお持ちしました!シフォンケーキも!!」
赤いメガネのたしぎちゃんがコーヒーとケーキをトレーに乗せて甲板に上がってきていた。
いいなぁ。こんないい子が側についてくれて。
「たしぎちゃん。久しぶりだねー」
「おひさしぶりです!!」
甲板で2人。コーヒーを飲みながら、他愛のない話をしていると気がついたように俺の異動の話になった。
「そういえば、大変だったんですね」
「何が?」
「直々の上司から酷いパワハラを受けていたと聞きました。」
「誰から聞いたのそれ」
「G5に本部の状況や指令を伝えてくれる伝達係の人からです。周りから見ても目に余るパワハラだー。って。昨日の夕方だったんですけどその伝達を聞いた瞬間、スモーカーさん出て行っちゃいまして」
「急ぎの仕事でもあったのかな?」
「そうなんでしょうか?あと、古株の中将の方が軍費を横領したとかで解雇されたみたいですよ」
「へー」
「本人はやってないって言ってるみたいですけど」
「ふーん…わ、このケーキおいし」
生クリームののったシフォンケーキを口に運ぶ。しゅわしゅわと溶ける生地と甘いクリームがいいバランスだ。
たしぎちゃんのG5に関する愚痴をそれがまるで他人事のように聞き入れて、まったりとした時間を過ごした俺だった。
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