第二部~明日の私を信じたい~
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名前の目がうっすらと開く
「柳娟、、、」
「名前」
さっき拳が握られていた手で優しく頬を撫でられる
「ごめんね」
「なんで謝るのよ」
「分かんない、分かんないけど困らせちゃった」
「私こそ、ごめん」
「柳娟こそなんで謝るの?」
「・・・」
それには答えず柳娟は名前の頬から手を離した
時間にしてみれば少しの間であったと思う
実際よりも長く感じた時の後
名前が小さく深呼吸した
「さっき話したこと、、、康琳との記憶はなくなっちゃうかもしれないって」
「会ったのね、朱雀に」
「うん。でもその朱雀の神様のことも忘れちゃうかも」
ははっと、少し笑って名前が両手で顔を隠した
「康琳との思い出がなくなって、柳娟との繋がりもなくなるんじゃないかとか」
「正直やっぱり柳娟がここにいてくれて、私を好きだって言ってくれるのは私がそう願ったからなんじゃないかとか」
「もっと言えば・・・」
今度は布団を頭までかぶって言った
「私が巫女になれてたら「柳宿」とも出会えてたのにって、、、今日、あれからずっとずっと黒くって嫌な感情が私の中にあって」
「嫉妬なんて言葉以上のものに支配されてるの」
「そんな自分を存在ごと消してしまいたい」
時間にしてみれば少しの間であったと思う
実際よりも長く感じた時の後
「私、、、」
「私こそね、名前の話を聞いてた時、嬉しかったの」
「目の前で名前が苦しそうにしているのによ?最低でしょ?」
「名前が黒くて嫌な感情っていうなら私の方よ。一緒に暮らしてるだけじゃ物足りない。名前の全部が欲しいの。私としか会話してほしくないし、私の声だけ聞いててほしい。名前が着るもの食べるもの全部知ってたい。名前が生まれた瞬間から出会って、死ぬまで一緒にいたいの。名前が嫉妬なんて言うなら名前の家族に名前のことを語られるのも嫌。私の知らない名前を知っているのがたまらなく嫌なのよ」
「なのに、、、」
「なのに、、、」
「今日、私は名前の手を振りほどいて仲間のところに行っちゃった」
「最低よ・・・」
「私の方こそ消えるべきだわ」
二人の間に長い時間が流れる
名前が布団から顔を出すと、いつも自信たっぷりで、明るくって、強気の姿とは正反対の柳娟がいた
「柳娟、柳娟も弱気になることあるの?」
「あんたはさ、私をいったい何だと思ってるの?」
やっぱりいつもとは正反対の力ない調子で柳娟が答えた
「これって何なのかしらね、こんなにも自分が分からなくなるなんて」
「うん。頭で考えてることと、気持ちがバラバラで。今喋っていることもちゃんと伝えられてるか、そもそも合ってるのかも分からなくなる」
「本当ね」と言って柳娟が目元を手で覆った
「カッコ悪いでしょ?私」
「私こそめんどくさい女じゃない?」
「いいえ、大好きすぎて怖いくらい」
「柳娟は子どもみたいに見えて、よしよしってしたくなる」
「何よそれ、やっぱりカッコ悪いってことじゃない」
「分かんないけど、私も大好きすぎて怖い」
「カッコ悪いっていうのは否定してくれないの?」
「ふふ、、、カッコ悪い柳娟も大好き」
名前の言葉を聞いて柳娟が少し寂しげな笑顔になる
そんな柳娟に名前が手を広げて「おいで」と言った
そこに柳娟がぽすっと収まる
「仕事も家事も完璧でマメで美人で実家がお金持ち・・・」
「何それ」
「この前会社の子が言ってたの」
「そ、、、」
いつもなら「当然よ」なんて言って返しそうなのに、今は私の腕の中で小さく抱かれている
力も強くって、何でもできる相手にこんなに守ってあげたいと思うなんて、、、
繊細なガラス細工に触れるように、そっと柳娟の頬に触れる
「なんかさ、なーんにもない所で2人で暮らしちゃいたいね」
「私、食べ物と寝るとこと柳娟がいたらそれでいいや」
「本当に柳娟以外は何もいらないの」
名前の手の中で柳娟が泣きそうな顔になる
「名前」
「ん?」
「名前を抱きたい」
「うん」
「でもちゃんとできない」
「大丈夫、大好きだよ」
名前は柳娟をギュッと抱きしめた
ーー
ー
名前が「おいで」って言ってくれたから・・・
名前をがむしゃらに抱いた
愛を囁いたり、名前の喜ぶようなことをしたり、目を合わせて微笑んだり、、、
そんなこと、一切できずにわがままに抱いた
これじゃその辺の男と一緒じゃない
でも名前が「おいで」って言ってくれたから
『その後ダメになっちゃわないか不安なんだよね』
いつか名前が言ってた言葉が浮ぶ
今なら分かる気がする
こんなことして嫌われたらどうしよう
ただ、どうしても、、、
どうしようもないこの感情を受け止めてほしかった
だって名前が「おいで」って言ってくれたから
ーー
ー
目を覚ますとすでに起きていた名前がいる
「おはよ」
「おはよう」
今何時だろう、チェックアウトの時間もある。明日は会社もあるしいつまでも寝ていられない
「ご飯食べて支度しましょうか」
「もう一泊しちゃう?」
「そういうわけにはいかないでしょ」
名前は特に返事をせずに柳娟の頭を撫でている
「ねぇ、もう一回やっちゃう?」
ニシシと言った顔で名前が言う
そんなことを言う名前にかなりビックリして顔を見てみると、耳の辺りが赤い。
昨夜の行為を私が気にしないようにと、照れながらも気遣ってくれているのが分かった
「女の子が「やる」とか言わないの」叱るように言って枕に顔を埋めた
(ふしぎな気持ちだわ)
昨日までは名前の全てを自分のものにしたくって、、、
仕事なんか辞めさせて、誰とも会わずに私だけを見てればいいのにと思っていた
(今は、名前を取り巻く全てが愛おしい)
世界が変わるなんて、セリフがあるけど、今なら分かる気がする
「すんごく惹かれる申し出だけど。すごくすごく名前を抱きたいけれど、、、起きて私たちの家に帰るわよ!」
顔を上げた柳娟の顔は何だかすっきりした顔をしている
「はーい」
名前は変わらない笑顔で返事をした
fin…2024.10