ふしぎサスペンス
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ここは警視庁刑事部捜査一課、人々の生活を守るため、日夜悪と戦っている・・・
柳「星宿警部、お茶がはいりました♪」
星「いつもありがとう」
お茶を淹れてきたのは柳宿刑事(通称・オカマデカ)
見た目は女性そのものだが、れっきとした男である。
優雅にお茶をのんでいるのは星宿警部(通称・デンカ)
警視総監を父に持ち、将来を約束された身である。
翼「なぁ、柳宿。たまには俺らにも茶淹れたってくれへん?」
鬼「そうだぜ、いっつも星宿警部ばっか」
関西弁でガラが悪いのは翼宿刑事(通称・キバデカ)
元ヤンキーの変わった刑事である。
一方、見た目はかっこいいのだが、どこか不運そうなのが鬼宿刑事(通称・ドケチデカ)
交通課の婦警、美朱との間に4人の子供がいる。
柳「いやよ、飲みたいんなら、自分たちで淹れなさいよ」
翼「チッ!これだからオカマは・・・」
言い終わらないうちに翼宿刑事は柳宿刑事に殴られた。
(ちなみに柳宿刑事は「怪力デカ」というあだ名もある)
鬼「それにしても、今日は暇だなぁ。なんか事件の一つでもあればいいのに」
星「鬼宿刑事!何を言っておる。事件など、ない方が良いではないか」
と、言っていた矢先に所轄からの連絡が入る。
《事件があったのは3日前。
被害者は田中久子、56歳女性。古びたアパートの管理人をしている。
深夜2時の就寝中、頭部を鈍器で殴られており、
3日間生死の境をさまよったが治療の甲斐なく先ほど死亡。
殺人事件となったので捜査一課が捜査にあたることになった。》
星「そうか、分かった…。柳宿、行くぞ!!」
柳「はい!」
受話器を置いた星宿は柳宿に声をかけるやいなや、スーツの上着(刑事とは思えぬブランド物)をはおり、飛び出して行った。
呼ばれた柳宿も上着(こちらは、刑事とは思えぬ派手なスーツ)を持って、星宿の後を追った
ーーー
ーー
「最期の言葉といっても、田中さんは意識不明のまま亡くなられましたから…」
星「そうですか」
二人は被害者の遺族の話しを聞きに、病院を訪れていたが、
被害者の最期に居合わせた看護師からは特に有力な情報は得られなかった。
柳「星宿様、息子さんがいらっしゃています」
「所轄の刑事さんにも話しましたが、母は人に恨まれるような人間ではなかったですし、私もなぜ母がこんな目にあったのか分からないんです」
24時間経営の飲食店で働いているという息子は、徹夜明けの仕事と看病で疲れきっている様子だった。
星「そのように聞いております。ですが、逆恨みというのもありますし、交遊関係など伺えないかと」
「そう言ってもご近所さんぐらいじゃないでしょうか…あとアパートの人の面倒はよくみていたようですが」
「そういえば、アパートに住んでいる若い男性がよくお見舞いにいらっしゃってましたよね」
傍らで聞いていた看護師が頷きながら続けた。
「付きっきりで看病なさっていたから、始めはその方が息子さんかと思ったんですよ。何でも、司法試験を目指している一人暮らしの浪人生だそうで。たまに食事なんかを頂いていたみたい」
「本当になんでこんなことになったのか…刑事さん、お願いします、犯人を捕まえて下さい!」
息子も母が恨まれるような人物ではないということが分かってもらえただろうという様子で訴えた。
柳「こちらも、何とかして突き止めたいと思っていますので」
一通り聞き込みを終え、二人は病院を後にして、現場となったアパートへ向かった。
星「金品目的の強盗犯か…」
柳「そうですね、財布にあった数万円が盗まれていますし…人に恨まれている様子はありませんしね」
星「それどころか、面倒見も良く、人に慕われるタイプではないか」
柳「息子さんも仕事中でアリバイがありますし、犯行は無理ですね。ご主人には先立たれています」
捜査は強盗犯の仕業でカタがつきそうであった。
しかし、念のため詳しく捜査することにした二人は改めて近所の聞き込みを始めた。
「そうなのよ~とにかく面倒見がよくってね。家の前の道路なんかも毎朝掃除されてるし。自分の所に住んでいる浪人生にご飯をよく届けてたわよ。ほっとけない性格なのね、きっと。そういえば、こないだ隣の娘さんが結婚されたんだけどね、それも田中さんが紹介したとか。それにしても…今時の刑事さんってかっこいいのね~まるでどこかの貴族様。おばちゃんもあと30歳若ければね~」
星「そんな…よく言われますけど」
長話に少々うんざりしていた星宿だったが、最後の方のセリフで機嫌をよくしたようだ。
柳宿は柳宿で、30若けりゃなんなのよ、といった顔をしている。
それにしても、下町のおばちゃん達というのは話が長く、思うように聞き込みが進まない。
星「次はがい者のアパートの住民だな」
「話と言っても、大家さんとは挨拶をするくらいで…特には何も」
被害者を付きっきりで看ていたという、アパートの住民である男は面倒臭そうに答えた。
柳「でも、田中さんを付きっきりで看病していらしたとか」
「はぁ」
柳「何でも良いので、田中さんに変わった様子とかありませんでした?」
「特には何も…あの、僕、司法試験の勉強中で。これで失礼していいですか?」
柳「それはごめんなさい。では些細なことでもよいので何か思い出したら連絡下さい」
「はあ」
柳「結局何も分かりませんでしたね」
星「…」
星宿はそれには返事をせず、角を曲がると立ち止まり、男の部屋を見つめた。
星「柳宿、おかしいとは思わぬか?」
柳「いえ、私達、とってもお似合いだと思いますが」
星「そうではない、先程の男だ」
キラキラとした顔で答える柳宿に星宿は呆れた様子でため息をついた。
星「司法試験は確か、5月の中旬だったはず。そんな大切な時期に挨拶程度の人間のために、付きっきりで看病するだろうか」
柳「確かに…変ですね」
星「面倒だったから親しいのを隠したのか、それとも、二人の間に何かあったのか…」
柳「あの男が犯人かもしれないと?」
星「それは分からぬ。が、どうしても気になる」
柳「しかし、どういたしましょう?今の段階でしょっぴくのは無理かと思いますが…」
星「うむ、こいうのはどうだろうか?」
そう言って柳宿に耳打ちした。
------
-----
---
コンコン
「先程の刑事さん…まだ何か?」
星「はい、先程犯人が捕まりまして、そのご報告にきました」
「えっ?そうなんですか?」
星「別の家へ空き巣に入った男がこの辺りの家にも盗みに入っていたようで。事情聴取中ですが、田中さん宅の強盗も間違いないかと。」
「へぇ…」
星「とにかく、ご協力ありがとうございました。しかし、油断せずに戸締まりはしっかりなさって下さい」
「はい、ありがとうございます」
-----
---
深夜の下町は思った以上に暗く、薄気味悪い。
男は軽く周りを見回してからアパートを出た。
星「動いたな」
柳「はい」
星「ったく、もっと早い時間にしてほしいものだな」
柳「本当に…睡眠不足でお肌が荒れちゃいますよね」
星「ま、その位では私の美貌は損なわれぬがな」
そんな会話をしている内に男は道路に降りてきていた。
手には紙袋を提げている。
星「行くか」
柳「はい!」
星「こんな夜更けにどちらへ行かれるんですか?」
「ひゃっ!」
いきなり声をかけられた男は何とも情けない声を出して振り向いた。
「えっ?あ、刑事さん。いや、今からちょっとコンビニへ行こうかと…」
星「男性といえども危ないですよ。ところで、そちらの袋は?」
「えっ?えっと…服やら何やらです」
柳「ちょっと見せてくれる?」
「な、何でですか!?」
柳「いいから見せなさいよ!」
柳宿が袋に手を伸ばそうとした時、突然男が走り出した。
とっさに柳宿は男の腕を掴む。
男は振り払おうとするが、この刑事のどこにそんな力があるのか、ビクともしない。
「は、離せ」
柳「ばかね、離すはずないじゃない」
星「やはり…これが田中さん殺害の凶器だな」
「知らない!僕は預かっただけだ」
柳「話はじっくり暑で聞かせてもらうわよ」
始め、言い逃れをしていた容疑者の男も、観念したのか自供をしはじめた。
柳「なんで田中さんを殺したりしたの?」
「このままだと将来あのババアにたかられると思ったんだ」
柳「弱みでも握られてたの?」
「そんなんじゃない」
柳「じゃ何があったっていうのよ、田中さんはあなたの面倒をよく見ていたそうじゃないの」
「面倒?はっ!そんなんじゃないですよ。あれやこれやと口出ししてきて、息抜きにパチンコ行っただけで、そんな暇があるなら勉強しろだの、実家の両親には連絡取っているかだの…」
柳「でもそれはあなたのことを心配してるからでしょ」
「違う、違う、きっと恩を着せて将来俺に金の無心でもしようとしたんじゃないんですか?だいたい、息子だって不況でリストラにあって、今はバイト暮らしでしょ?その程度なんですって。親もそんな奴らと関わるなって言ってますしね」
柳「その程度ってあんたね~」
柳宿の手が怒りで奮え、今にも机を叩き壊しそうな勢いだ。(正確にいうと、過去何度も壊しているのだが)
星「柳宿!まて」
星宿が柳宿の肩を押さえた。「きゃっ」と言って顔を赤らめる柳宿を無視して星宿は容疑者の男を睨んだ。
星「貴様は両親からそんなことしか教わらなかったのか」
「そんなことって…?」
星「職業で人を判断したり」
「あ~。ま、指標ですよ。一般的なね。やっぱ普通の親ならそう言うんじゃないんですか?学歴もそうだけど、文系なら弁護士辺りで理系なら医者辺りを目指せって。そういったのについてけないなはカスですよ。」
ガンッ!!今年5台目の机が柳宿の拳によって昇天した。
星宿はため息を一つ落とし、これ以上特に話そうとしなかった。
-------
------
----
柳「はぁ~それにしても星宿様、今回も素敵だったわ~」
翼「けけけ、オカマが何言うてんねん。相手されとらんやんけ」
頬杖をついて、窓の外を眺めながら黄昏れている柳宿に翼宿は笑って言った。
いつもならここで柳宿の拳が飛ぶのだろうが、「また」机を壊したことを気にしてか、グッと堪えたようだ。
鬼「星宿警部?どうされたのですか?」
何か考え事をしている星宿に鬼宿が心配そうに尋ねた。
星「私の母も権力欲の強いお方だが、私にはそなた達を始め、私を指南してくれる良き仲間がいる。あの若者にはいなかったのだな」
柳「それは星宿様のお人柄が良いからです。ああいう奴は周りの忠告を聞かないんですわ」
翼「柳宿も忠告を聞いたほうがええで~」
鬼「そうそう、警部に近づく婦警をいじめるの、やめた方がいいぜ」
柳「何言ってんの!恋は戦いよ」
これは何を言っても無駄だな、と鬼宿と翼宿は思った。
おしまい
→あとがき
えーと、
いかがでしたでしょうか(;^_^A アセアセ・・・
自分でもとんでもないものに手を出したものだと思っております;
管理人はサスペンス・推理小説が大好きなんです!
これはもう、母の影響でしょうね。
とは言っても、トリックなんかを考える力はございませんので、参考にさせてもらったものがございます。
乃南アサさんの『嗤う闇』という短編集にある「その夜の二人」という作品です。
こちらは被害者が死んだりしないし、逮捕までの道筋も違うのですが。
(かっこいいという理由で警視庁にしちゃったので、被害者には亡くなってもらうしかなかったのです;)
この方の作品は警察官の姿や日常が本当によく現されています。
有名なのは音道貴子シリーズが有名ですが、私は個人的に『結婚詐欺師』が好きです。
なんだかなぁ、本当に良く女の心理が描かれています。
今回参考にさせていただいた作品も、現代にしてはちょっとお節介な人と、人の優しさを素直に受け止められない男の話でした。
今回は100%男が悪いのですが、人付き合いって難しいですよね;
私、下町?に住んでいて、ちょっと泣かされたこともあるので、どちらかと言うと都会のさっぱりした付き合いの方が楽だったりします;
っと、ふし遊からズレてます!
今回七星士は4人しか出ていないのは
私としては、張宿は科捜研、
軫宿は監察医、の予定だからです。
井宿はなぁ・・・
警察を辞めてしまった「探偵」か
警察を辞め喫茶店の店長をするが元同僚から協力を求められ、事件に巻き込まれる人か
時効事件を扱う部署か
で悩んでいる最中です。
ま、喫茶店の店長が一番動かしやすそうではありますね;
といっても!!
このシリーズ、続くかわかりません!!!
というか、書けるか分かりません(笑)
私に能力があったらなぁ
心宿とか青龍側も出してさ、
警察組織はたまた政界を巻き込んだ長編でさ、
心宿も幼少期の恨みからの行動だったりして。
んでもって、余裕ができたら夢小説にして、
浅見光彦シリーズみたいにヒロイン登場させたりさ・・・・
野望というより夢のまた夢ですね;
そんなん書けません(;-_-) =3
というか、クレームに怯えております。
でもでも、クレームが無かったら次回も頑張ってみようかとも思っております^^
2011.9.19
柳「星宿警部、お茶がはいりました♪」
星「いつもありがとう」
お茶を淹れてきたのは柳宿刑事(通称・オカマデカ)
見た目は女性そのものだが、れっきとした男である。
優雅にお茶をのんでいるのは星宿警部(通称・デンカ)
警視総監を父に持ち、将来を約束された身である。
翼「なぁ、柳宿。たまには俺らにも茶淹れたってくれへん?」
鬼「そうだぜ、いっつも星宿警部ばっか」
関西弁でガラが悪いのは翼宿刑事(通称・キバデカ)
元ヤンキーの変わった刑事である。
一方、見た目はかっこいいのだが、どこか不運そうなのが鬼宿刑事(通称・ドケチデカ)
交通課の婦警、美朱との間に4人の子供がいる。
柳「いやよ、飲みたいんなら、自分たちで淹れなさいよ」
翼「チッ!これだからオカマは・・・」
言い終わらないうちに翼宿刑事は柳宿刑事に殴られた。
(ちなみに柳宿刑事は「怪力デカ」というあだ名もある)
鬼「それにしても、今日は暇だなぁ。なんか事件の一つでもあればいいのに」
星「鬼宿刑事!何を言っておる。事件など、ない方が良いではないか」
と、言っていた矢先に所轄からの連絡が入る。
《事件があったのは3日前。
被害者は田中久子、56歳女性。古びたアパートの管理人をしている。
深夜2時の就寝中、頭部を鈍器で殴られており、
3日間生死の境をさまよったが治療の甲斐なく先ほど死亡。
殺人事件となったので捜査一課が捜査にあたることになった。》
星「そうか、分かった…。柳宿、行くぞ!!」
柳「はい!」
受話器を置いた星宿は柳宿に声をかけるやいなや、スーツの上着(刑事とは思えぬブランド物)をはおり、飛び出して行った。
呼ばれた柳宿も上着(こちらは、刑事とは思えぬ派手なスーツ)を持って、星宿の後を追った
ーーー
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「最期の言葉といっても、田中さんは意識不明のまま亡くなられましたから…」
星「そうですか」
二人は被害者の遺族の話しを聞きに、病院を訪れていたが、
被害者の最期に居合わせた看護師からは特に有力な情報は得られなかった。
柳「星宿様、息子さんがいらっしゃています」
「所轄の刑事さんにも話しましたが、母は人に恨まれるような人間ではなかったですし、私もなぜ母がこんな目にあったのか分からないんです」
24時間経営の飲食店で働いているという息子は、徹夜明けの仕事と看病で疲れきっている様子だった。
星「そのように聞いております。ですが、逆恨みというのもありますし、交遊関係など伺えないかと」
「そう言ってもご近所さんぐらいじゃないでしょうか…あとアパートの人の面倒はよくみていたようですが」
「そういえば、アパートに住んでいる若い男性がよくお見舞いにいらっしゃってましたよね」
傍らで聞いていた看護師が頷きながら続けた。
「付きっきりで看病なさっていたから、始めはその方が息子さんかと思ったんですよ。何でも、司法試験を目指している一人暮らしの浪人生だそうで。たまに食事なんかを頂いていたみたい」
「本当になんでこんなことになったのか…刑事さん、お願いします、犯人を捕まえて下さい!」
息子も母が恨まれるような人物ではないということが分かってもらえただろうという様子で訴えた。
柳「こちらも、何とかして突き止めたいと思っていますので」
一通り聞き込みを終え、二人は病院を後にして、現場となったアパートへ向かった。
星「金品目的の強盗犯か…」
柳「そうですね、財布にあった数万円が盗まれていますし…人に恨まれている様子はありませんしね」
星「それどころか、面倒見も良く、人に慕われるタイプではないか」
柳「息子さんも仕事中でアリバイがありますし、犯行は無理ですね。ご主人には先立たれています」
捜査は強盗犯の仕業でカタがつきそうであった。
しかし、念のため詳しく捜査することにした二人は改めて近所の聞き込みを始めた。
「そうなのよ~とにかく面倒見がよくってね。家の前の道路なんかも毎朝掃除されてるし。自分の所に住んでいる浪人生にご飯をよく届けてたわよ。ほっとけない性格なのね、きっと。そういえば、こないだ隣の娘さんが結婚されたんだけどね、それも田中さんが紹介したとか。それにしても…今時の刑事さんってかっこいいのね~まるでどこかの貴族様。おばちゃんもあと30歳若ければね~」
星「そんな…よく言われますけど」
長話に少々うんざりしていた星宿だったが、最後の方のセリフで機嫌をよくしたようだ。
柳宿は柳宿で、30若けりゃなんなのよ、といった顔をしている。
それにしても、下町のおばちゃん達というのは話が長く、思うように聞き込みが進まない。
星「次はがい者のアパートの住民だな」
「話と言っても、大家さんとは挨拶をするくらいで…特には何も」
被害者を付きっきりで看ていたという、アパートの住民である男は面倒臭そうに答えた。
柳「でも、田中さんを付きっきりで看病していらしたとか」
「はぁ」
柳「何でも良いので、田中さんに変わった様子とかありませんでした?」
「特には何も…あの、僕、司法試験の勉強中で。これで失礼していいですか?」
柳「それはごめんなさい。では些細なことでもよいので何か思い出したら連絡下さい」
「はあ」
柳「結局何も分かりませんでしたね」
星「…」
星宿はそれには返事をせず、角を曲がると立ち止まり、男の部屋を見つめた。
星「柳宿、おかしいとは思わぬか?」
柳「いえ、私達、とってもお似合いだと思いますが」
星「そうではない、先程の男だ」
キラキラとした顔で答える柳宿に星宿は呆れた様子でため息をついた。
星「司法試験は確か、5月の中旬だったはず。そんな大切な時期に挨拶程度の人間のために、付きっきりで看病するだろうか」
柳「確かに…変ですね」
星「面倒だったから親しいのを隠したのか、それとも、二人の間に何かあったのか…」
柳「あの男が犯人かもしれないと?」
星「それは分からぬ。が、どうしても気になる」
柳「しかし、どういたしましょう?今の段階でしょっぴくのは無理かと思いますが…」
星「うむ、こいうのはどうだろうか?」
そう言って柳宿に耳打ちした。
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コンコン
「先程の刑事さん…まだ何か?」
星「はい、先程犯人が捕まりまして、そのご報告にきました」
「えっ?そうなんですか?」
星「別の家へ空き巣に入った男がこの辺りの家にも盗みに入っていたようで。事情聴取中ですが、田中さん宅の強盗も間違いないかと。」
「へぇ…」
星「とにかく、ご協力ありがとうございました。しかし、油断せずに戸締まりはしっかりなさって下さい」
「はい、ありがとうございます」
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深夜の下町は思った以上に暗く、薄気味悪い。
男は軽く周りを見回してからアパートを出た。
星「動いたな」
柳「はい」
星「ったく、もっと早い時間にしてほしいものだな」
柳「本当に…睡眠不足でお肌が荒れちゃいますよね」
星「ま、その位では私の美貌は損なわれぬがな」
そんな会話をしている内に男は道路に降りてきていた。
手には紙袋を提げている。
星「行くか」
柳「はい!」
星「こんな夜更けにどちらへ行かれるんですか?」
「ひゃっ!」
いきなり声をかけられた男は何とも情けない声を出して振り向いた。
「えっ?あ、刑事さん。いや、今からちょっとコンビニへ行こうかと…」
星「男性といえども危ないですよ。ところで、そちらの袋は?」
「えっ?えっと…服やら何やらです」
柳「ちょっと見せてくれる?」
「な、何でですか!?」
柳「いいから見せなさいよ!」
柳宿が袋に手を伸ばそうとした時、突然男が走り出した。
とっさに柳宿は男の腕を掴む。
男は振り払おうとするが、この刑事のどこにそんな力があるのか、ビクともしない。
「は、離せ」
柳「ばかね、離すはずないじゃない」
星「やはり…これが田中さん殺害の凶器だな」
「知らない!僕は預かっただけだ」
柳「話はじっくり暑で聞かせてもらうわよ」
始め、言い逃れをしていた容疑者の男も、観念したのか自供をしはじめた。
柳「なんで田中さんを殺したりしたの?」
「このままだと将来あのババアにたかられると思ったんだ」
柳「弱みでも握られてたの?」
「そんなんじゃない」
柳「じゃ何があったっていうのよ、田中さんはあなたの面倒をよく見ていたそうじゃないの」
「面倒?はっ!そんなんじゃないですよ。あれやこれやと口出ししてきて、息抜きにパチンコ行っただけで、そんな暇があるなら勉強しろだの、実家の両親には連絡取っているかだの…」
柳「でもそれはあなたのことを心配してるからでしょ」
「違う、違う、きっと恩を着せて将来俺に金の無心でもしようとしたんじゃないんですか?だいたい、息子だって不況でリストラにあって、今はバイト暮らしでしょ?その程度なんですって。親もそんな奴らと関わるなって言ってますしね」
柳「その程度ってあんたね~」
柳宿の手が怒りで奮え、今にも机を叩き壊しそうな勢いだ。(正確にいうと、過去何度も壊しているのだが)
星「柳宿!まて」
星宿が柳宿の肩を押さえた。「きゃっ」と言って顔を赤らめる柳宿を無視して星宿は容疑者の男を睨んだ。
星「貴様は両親からそんなことしか教わらなかったのか」
「そんなことって…?」
星「職業で人を判断したり」
「あ~。ま、指標ですよ。一般的なね。やっぱ普通の親ならそう言うんじゃないんですか?学歴もそうだけど、文系なら弁護士辺りで理系なら医者辺りを目指せって。そういったのについてけないなはカスですよ。」
ガンッ!!今年5台目の机が柳宿の拳によって昇天した。
星宿はため息を一つ落とし、これ以上特に話そうとしなかった。
-------
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柳「はぁ~それにしても星宿様、今回も素敵だったわ~」
翼「けけけ、オカマが何言うてんねん。相手されとらんやんけ」
頬杖をついて、窓の外を眺めながら黄昏れている柳宿に翼宿は笑って言った。
いつもならここで柳宿の拳が飛ぶのだろうが、「また」机を壊したことを気にしてか、グッと堪えたようだ。
鬼「星宿警部?どうされたのですか?」
何か考え事をしている星宿に鬼宿が心配そうに尋ねた。
星「私の母も権力欲の強いお方だが、私にはそなた達を始め、私を指南してくれる良き仲間がいる。あの若者にはいなかったのだな」
柳「それは星宿様のお人柄が良いからです。ああいう奴は周りの忠告を聞かないんですわ」
翼「柳宿も忠告を聞いたほうがええで~」
鬼「そうそう、警部に近づく婦警をいじめるの、やめた方がいいぜ」
柳「何言ってんの!恋は戦いよ」
これは何を言っても無駄だな、と鬼宿と翼宿は思った。
おしまい
→あとがき
えーと、
いかがでしたでしょうか(;^_^A アセアセ・・・
自分でもとんでもないものに手を出したものだと思っております;
管理人はサスペンス・推理小説が大好きなんです!
これはもう、母の影響でしょうね。
とは言っても、トリックなんかを考える力はございませんので、参考にさせてもらったものがございます。
乃南アサさんの『嗤う闇』という短編集にある「その夜の二人」という作品です。
こちらは被害者が死んだりしないし、逮捕までの道筋も違うのですが。
(かっこいいという理由で警視庁にしちゃったので、被害者には亡くなってもらうしかなかったのです;)
この方の作品は警察官の姿や日常が本当によく現されています。
有名なのは音道貴子シリーズが有名ですが、私は個人的に『結婚詐欺師』が好きです。
なんだかなぁ、本当に良く女の心理が描かれています。
今回参考にさせていただいた作品も、現代にしてはちょっとお節介な人と、人の優しさを素直に受け止められない男の話でした。
今回は100%男が悪いのですが、人付き合いって難しいですよね;
私、下町?に住んでいて、ちょっと泣かされたこともあるので、どちらかと言うと都会のさっぱりした付き合いの方が楽だったりします;
っと、ふし遊からズレてます!
今回七星士は4人しか出ていないのは
私としては、張宿は科捜研、
軫宿は監察医、の予定だからです。
井宿はなぁ・・・
警察を辞めてしまった「探偵」か
警察を辞め喫茶店の店長をするが元同僚から協力を求められ、事件に巻き込まれる人か
時効事件を扱う部署か
で悩んでいる最中です。
ま、喫茶店の店長が一番動かしやすそうではありますね;
といっても!!
このシリーズ、続くかわかりません!!!
というか、書けるか分かりません(笑)
私に能力があったらなぁ
心宿とか青龍側も出してさ、
警察組織はたまた政界を巻き込んだ長編でさ、
心宿も幼少期の恨みからの行動だったりして。
んでもって、余裕ができたら夢小説にして、
浅見光彦シリーズみたいにヒロイン登場させたりさ・・・・
野望というより夢のまた夢ですね;
そんなん書けません(;-_-) =3
というか、クレームに怯えております。
でもでも、クレームが無かったら次回も頑張ってみようかとも思っております^^
2011.9.19