そのた
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荒川河川敷のとある昼さがり。
菜園で野菜の手入れをしているP子の
隣に、下流から足を
伸ばしたねえむの姿。
雑草をむしりながら、
二人がそろえばもっぱら他愛のない
おしゃべりで時間は過ぎて行く。
この日も本当ならそうなるはずだった。
「P子はよく皆のこと
野菜に例えるじゃない、
私って何の野菜なの?」
ふと、ねえむが切り出したその
話題こそ問題へ繋がる発言だったのだ。
ねえむの疑問に、P子は
勿体つけてひとりで頬を緩ませている。
「ちょっとおP子、
笑ってないで教えてよ~。
まさかリクみたいに疫病のナスとか
言われないよね!?」
「もー、間違っても
言わないわよそんなこと!
もっと繊細で、でも強かで、
すっごく素敵な野菜だと
思ってるんだから!」
だからそれを教えてってば、と
膝についた土を払いながら
ねえむが立ちあがった。
自分は彼女の育ててきた中の
どの野菜なのだろう、
菜園を見渡すと目に入る
瑞々しい野菜たちを見て
少々ながら期待をしてしまう。
「ねえむはねぇ、白菜よ!
それも、黒い斑点が
いーっぱいついたやつ!」
嬉しそうなP子の口から出たのは
そんなねえむの少々の期待を
跡形もなく打ち砕くほどの
衝撃を持っていた。
「え…っ?何それ、
なんか気持ち悪いじゃん!
私の事そんな風に思ってたのP子!!」
「気持ち悪い!?どういうことよ!
白菜に謝んなさいよ!」
「いやむしろ私に謝ってよ!!」
「おい二人とも何そんな
ヒートアップしてんだ」
ふらりと現れたのは活動時間と
居場所を間違えてはいないだろうかと
疑うような黄色い頭部の持ち主。
「星、聞いてよねえむが白菜のこと
気持ち悪いとかいうの!
しんじらんない!!」
「それはP子が私を野菜に例えたら
黒い斑点がいーっぱいついた白菜とか
言ったからでしょ!?」
「え…お、おい、ちょっと…!」
通りがかったタイミングが
まったくもって悪かった。
目の前でお互い凄まじい形相をして
言い合いをする二人に、星は
口を挟めず慌てるばかり。
そこへ 上流から優雅に流れてきた
人影が川からあがり、菜園へと
近づいてきた。
「話は大方聞かせて貰ったぜ。
まあ、落ちつけよ二人とも」
「村長!」
(どこから聞こえてたんだろう…)
星の素朴な疑問はさておき、
びしゃびしゃなスーツ、
否、皮膚のまま
ねえむの肩に手を置き
父のように諭す村長。
「ねえむ、P子にもきっと
ワケがあってそう言ったんだろうさ。
聞いてやんな。」
「……うん。」
村長はP子にも同様に話しかける。
彼の肘のあたりからは
猛烈に水が滴っている
というか流れ出て、P子に
かかっている状態だが、
この場にそれを気にするものはいない。
「P子もどうしてねえむのことを
わざわざ黒い斑点がついた白菜なんて
いったんだ?」
村長の手が触れていることに
気を取られて舞い上がりつつも、
ねえむと白菜に向けた
気持ちを涙まじりにぽつぽつと
こぼしたP子。
その心情を表すように、
いつもは活力溢れる彼女の
赤い髪の束も、悲しそうに萎んで
下を向いていた。
「私は、ただ…黒い斑点のある白菜は
栄養分が高くて美味しいから、
見た目は淡白だけど
中身は女の子らしくて
かわいいねえむにぴったりだと
思って、素直に褒めた
つもりだったのよ」
「そうだったんだ…!
ご、ごめんね私、
野菜の知識もないくせに
いきなり怒ったりして…」
P子の様子を見て、ねえむは
理由も聞かずにただ彼女に怒りを
ぶつけた自分を後悔していた。
両手で口元を覆い、泣き出しそうな
ねえむの背中に、P子の腕が
柔らかくまわる。
「ううん、いいの。
私も説明が足りなかったもの!
ごめんね?ねえむ。」
「P子…!私これから
もっと野菜のこと勉強する!
P子が鍬なら私が鋤になるから!!」
「ねえむ…!嬉しい!!」
喧嘩はまたひとつ友情を育み、
本人たちとそれを見守る大人たちにも
笑顔を残して、丸く収まったようだ。
ことの始まりからさして時間は
経っていないが、涙ながらに
抱き締め合う少女らの背景には
夕陽のセットが見えたという。
「うんうん、友情だな。」
「よかったなー!二人とも!」
「一見いい話に見えますが、
まず会話の内容が
不自然だとは思いませんか。
あとお前スーツ絞れよ
水出ちゃってんぞ」
「皮膚だよ、皮膚!
ケチつけるなよオチ担当リク!」
「誰がオチ担当だ!」
end
