そのた
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昔、ずっとちいさいころ、
かくれんぼをして
誰も見つけてくれなくて
いつもの小川が流れていく
その音が、誰かが手招き
するような音に聞こえて
泣きながら走った。
日の落ちた暗い畦道が、
たまらなく怖かった。
誰かの手招きの音が
止まらなかった。
「ねえむちゃん、
かくれんぼしよう!」
「…いいよ、ちゃんと見つけてね?」
「当り前じゃ!ワシらに見つけられん
やつはおらんけぇ!のう兄弟!」
「うん、ボス!」
「かくれんぼか?私も入れてくれ。」
「ニノ、うんいいよ!じゃあじゃんけん、ぽん!」
「ふむ、私が鬼だな」
もういいかあい?
まあだだよお。
トタン板のすぐ後ろ、
声をひそめて膝を抱く。
むかしもこうして
よく膝を抱いていたっけな。
カラスが鳴くなく、
日が暮れる
みんなはおうちにかえってく
わたしはひとりで
小川の内瀬
「おいどうしたねえむ、
おい、泣くな。ねえむ?」
私を見つけたニノの
声の向こうで
河のせせらぎが夕焼けに
乗って聞こえる。
手招きの音がする
川の底でか向こうでか
私を招く音がする
「ひっ…う、うえ…っ、」
「ほら、見つけたぞ。
名前が最後だ、帰ろう?」
「ねえむは隠れるのが
うまいのうー
次はステラが見つけるけえ覚悟せえ!」
「ねえむちゃん、
どうしたの?寂しかった?」
ばしゃ、ばしゃ、
「おーうお前らー何してんだー?
暗くなっから足元気を付けて帰れよー」
「村長、ああ。
これから皆で帰るところだ。」
招く音は騒がしい声で
かき消された。
川底には、私の恐れていたものはなく
ジッパーがついている
河童が手を振っていた。
あの時一人で駆けだした草むらには
たくさんの足跡が並んでいて
沈みきる前の太陽がうつしたのは
手を握って繋がった一列の影。
「見つけてくれて、ありがとう」
「何言ってるんだ。
見逃すはずないだろう
私もみんなも、ねえむが
好きだからな。」
ありふれた日常の言葉が
幼い記憶を上書きしていく。
もう手招きは聞こえない。
もう、いいよ、ね。
end
