TMNT
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ふたりきりになりたい、なんて
少し わがままだったかも
しれない でも
でもね。
あなたのおうちはいつだってにぎやか。
だから、
「わあ、きみの家なんて来たの初めてだ」
「うん、ごめんね こんなところまで
足伸ばさせちゃって」
申し訳なく思って つい
謝ってしまったけど
「ううん、呼んでくれて嬉しい。」
そう言ってくれるあなたの
照れた頬に、わたしも嬉しくなる。
とくにケーキだとか
たくさんのごちそうが用意できた
わけじゃないの。
ただひとつ、
喜んでほしくて
いっしゅうかん悩んだ
おくりものを
この手からあなたへ
ちょくせつ渡したかっただけなの。
木製の扉の閉まる音に
少しだけ緊張が高まる。
今はもう二人だけだよって
教えられたみたいで。
自宅と違うカーペットの感触を
足の裏で楽しむドナテロを
「どうぞ」 ソファまで促して、
私も隣へ腰掛ける。
ああ失敗した。
距離が近い。
慣れてる家のはずなのに、
大好きなひとが来ただけで
まるで生き物。
いつもだったらこんな
距離感の間違いなんてしない、
のに。
「ご、ごめんね」
「いや そんな、気にしないで」
二人で声が上擦る。
私だけじゃない事に安心した。
ドナテロと目線が合わない。
当たり前、二人ともきっと
お互いの膝を見てる。
うちのソファ、合皮じゃなくて
よかった。
汗で太ももが張り付いて
べり、なんて音がする。
そんなことがなくて良い。
そうじゃない。
何をしに家へ呼んだの。
何よりひとつ。
「これ、」
「あ」
私が知ってるドナテロの誕生日。
本当に生まれた日は
もしかしたら違う日。
だけど、私が一緒にお祝い
出来る1年の中の貴重な1日。
「お誕生日おめでとう、ドナテロ」
長方形の包みを手から、手へ。
ドナテロは胸に空気を溜めた。
肩が少し持ち上がって
頬で下瞼が押しあげられる。
溜めた息を静かに吐いて、
「ありがとう」
聴きたかった言葉。
して欲しかった笑顔。
きっと私の方が嬉しい、
自信あるもの。
ドナテロはちらりと包装紙の
リボンと私を交互に見た。
「ねえねえむ、これ
中身は何だい?開けてもいい?」
「がっかりしないって約束!」
「するする」
歯を出していたずらっぽく笑う。
同じ表情をしたから、更におかしい。
「じゃあ」そう言って
リボンをほどいて
銀色の中身を包装紙から
そろそろと取り出す。
わあ、って感嘆はまた私を嬉しくさせた。
「新しいレンチ。この間ピザマシン作ってて
1本どっかいったでしょ?」
「あーそうだった、助かるよ。
でもさ、これって『スパナ』じゃない?」
「お店じゃ『レンチ』って
書いてあったけど」
「そうなの?」
完璧にこんがらがった物言いは
終着点なんてない。
でも、今日は喧嘩なんてする気分じゃ
ないし、できるわけもない。
「アハハ、レンチだってば」
「スー パー ナ!ふふ!」
言い合いの振りをしてみても
目尻はしっかり下がっているし
もうお腹は捩れそう。
結局その工具の名前がどっちかなんて
ことはどうだっていいんだよね。
笑いすぎて力が入らないからだを
二人して凭れさせて
喉が渇いたね、なんて。
お茶しながら、にぎやかなあなたの
おうちを もっとにぎやかに
するために、すてきなおくりもの
考えなくっちゃ。そうでしょう?
じゅうぶんふたりきりを楽しんだら
おうちに帰してあげなきゃいけないもの。
かえってまた みんなと特別な1日を
すごしてね。ドナテロ。
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