夢の国
名前
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ひさびさに地元に帰れる
ことになって、私自分ちよりも
先に、そう真っ先に彼の住む
おうちに走ったの。
よっつ年下の私の
可愛い片想いの相手。
私が街を離れた2年半、
君はどのくらい大きくなって
かわっているのでしょうか?
「マキシー、ただいま!
ねえむお姉さんだよ~」
「ねえむ姉さん!
ひ、久しぶり…元気だった?」
相変わらず迫力のない犬歯をのぞかせて
私しか呼ばない彼のあだ名に
苦笑する、その姿ったら!
前よりもずっと大きくなって
思春期特有の照れ臭さみたいな
ものを醸し出しながら
挨拶をくれるものだから
私も照れ臭くなって、
あえてふざけてみる。
「うん、私から元気とったら美貌しか
残らないし?ちょっと何そのカオ!
あはは、マキシーも元気みたいで、
お姉さん安心したよぉ」
「もう、マキシーなんて呼ぶの
ねえむ姉さんだけだよ?
マックスでいいってば!
なんか女みたいじゃん!」
「えーかわいいじゃん!
それに私だけが呼んでるのが
いいんだもーん」
赤くなって反論するマキシーが
かわいくて、後ろから覆い被さる
ように抱きつくと
「ちょ、ちょっと!やめてくれよ!」
「へっ?…なんで?」
あれれ?突然の拒絶。
いったい、なんたること。
そういえば、って口を開いた
マックスの言葉の
その先を耳をふさいで聞かなければ
私、まだ幸せ気分なままで
いられたのかもしれない。
「言ってなかったかもしんないけど、
オレ彼女がいるんだ。
もしこんなところ彼女に見られたら
おしまいだよ!」
「彼女、」
私が街を離れて、2年と半年。
たったそれだけ
だけどもしかしてそれっていうのは
ひとが成長して変化していくには
充分な時間だって
思い知らされたわ。
「そう、ロクサーヌっていうんだ。
ほらこれ写真!か、かわいいだろ?」
「うん、とっても」
まあとっても美人さんじゃない、
ねえこれって、こんなのって、
ちらつく写真に写るロクサーヌちゃんの
笑顔が眩しくて、
虹彩がおかしくなりそう。
私はきっと今
瞬きを忘れた滑稽な顔をしてるんだわ。
「ねえむ姉さん?」
「あっ、私おじさんに
挨拶してくるね!」
いけない、
今マックスを不安にさせたら。
そう思って、逃げ道である
グーフィーおじさんがいる
家のドアへと駆け寄った。
「うん?
オレこれからPJと遊びに行ってくるけど
ゆっくりしてってよ!」
帰ってきたら、いろんな話きかせてね
かわいらしい声が
まだ私の中でエコーしてる、
マックスに手を振ってそのまま、
ドアも開けられないで
座り込んだ。
こんなことも想定しておくべきだったのね
ああ、泣きそうだわ。
たっくさんトゲが刺さるみたく
頭なんだか胸なんだかが
ずきずき痛いの。
軽快な足音が近づいて
開いたドアから
さっきまで見てた彼にそっくりの
ひょうきんな顔が覗き込んだ。
「あひょ?」
「グーフィーおじさん…」
「ねえむちゃん、きてたの!
ほぉらそんなとこに居ないで
あがってあがってぇ!」
ずいずいリビングまでおされて、
革張りのソファでおじさんの入れる
コーヒーを待つ始末。
あったかいマグカップが手渡されて
思わずほっと肩の力を抜いてしまう。
「男の子の成長って早いんですねぇ」
「どおしたの、あぁ、
マックスのこと?大きくなったでしょ!」
「そう、私が想像もしてないくらい」
「そうだね。ぼくもびっくり、
この間可愛い彼女も紹介してくれたよ」
おじさんの悪気ない言葉にやっぱりどこか
ずきんと痛むけれど、やんわりとした
この空気の中にいると
何故か涙は出てこないみたい。
「あーん…!私もマキシーのこと
大好きだったのになあ。
あと4年若ければ…」
自虐的にふふ、なんてぎこちなく
微笑んで見せれば、おじさんは
きょとんとした後にチチチと
指を振ってそのままその腕で
私の頭を撫ぜた。
「マックスはねえむちゃんの
こと大好きだよ。心配することないよ。」
おじさんのふわふわした喋り方に、
雰囲気に、泣いてしまう程のはずだった
私の傷は癒えていっている気がした。
「おじさん…
ピートおじさんと違って
ほんとに優しいよね…ぐず、
もおー、失恋しちゃったので
慰めてくださあい」
「おーよしよしー、あっひょ!
ありがとうねねえむちゃん」
「え、何が…」
「息子を好きになってもらえるのは、
父さんも嬉しいからね!」
「ふふ、息子さん、モテモテだね?おじさん」
私の失恋は、羽毛のクッションだらけの
坂道をのろのろと転げ落ちるように、
それはそれはゆるやかで
私にクイを打ち込むことなく
また地面に足を付けて歩ける
ようにしてくれた 素敵なものでした。
「ただいまー!どうしちゃったの
二人してにこにこして」
「おかえりマックス。何でもないよ?
ねえねえむちゃん」
「そうそう、ね?おじさん」
だから、しあわせになって、ね。
きっとこんな気持ちは重たいだろうから
本人に言えはしないけれど
そのすきっぱな笑顔を
私ずうっと愛してる。
end
