「liar」∞黄×○ 黄side
──泣きながら、君は俺を“嘘つき”呼ばわりしたんだ。
電話がかかってきた23時頃。
泣きながら、俺の名前を呼んだ。
“にしきどくん、にしきどくん”
震えた声は、それでも好きな人の声に変わりなかった。
“…きて、くれませんか”
ごくりと唾を飲み込んで、「わかった」と呟いた。
それから、23時半になった頃に彼の家についた。
○「にしきど、くん」
玄関まで迎えに来たしげは、俺に抱きついて舌を絡めるような濃厚な口付けを交わす。
○「んっ…んん…ふ、ぅ……」
「っ!しげ…泣いて、」
○「…こっち…きて…?」
ぐいぐいと引っ張られ、寝室へ向かう。
ベッドに座らされ、膝の上にしげが乗った。
そのまま、またキスをしてくる。
○「…ふゃ、…ぁ…に、っきど、く…すき、で、す」
「…しげ、」
好きなんやろ…俺のことが…!
俺はしげが好きで、しげも俺が大好きで。
それなのにどうして、素直に好きと言えない恋をしてしまったのだろう。
○「すき…です、…にしきどくん、」
「…しげ、ほんとに…」
○「…抱いてくれないんですかっ、好きだって言った、くせ、にっ」
ぎゅっと優しく抱きしめて、首を振る。
○「……ちがいます、抱きしめてじゃなくて抱いて、ですってば、ぁ」
「しげ、それは俺がすることやない…しげは、綺麗な女の人を抱くのが」
○「抱かれたいのは…にしきどくんにだけ、なんです!なんでっ、ぅ、にしきどくん、おれのこと、あいしてるって!」
悲痛に叫ぶしげを、見ていられないのは。
○「にしきどくんのうそつき!」
ぼろぼろになった心も、泣いていた。
しげは嘘つき、嘘つきと繰り返して首を振った。
○「…うそつき…、」
叶わない恋に溺れて、壊れていくなんて。
しげ。お前を壊したくない。だからこそ──
「しげ、…抱いてやろうか?」
いいの、みたいにきらりと笑ったしげ。
俺はこの恋を食い止めるために、はじめて男を抱いた。
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