「特別」▽×○ ▽side
もしかしたら聞き間違いかもしれないよ?だけど、確かに聞こえてしまったんだ。手越のことを名前呼びするしげ。
俺のことを「たか」なんて呼んでるところ、見たことないのに。
▽「しげ、さっき手越のこと名前で呼んだでしょー?」
いつも通りいつも通り。面白いまっすーでいなくちゃ。
「えーそーなの!」とニコニコする小山。手越はエマちゃんの頭を撫でてやりながら声を上げて笑った。
♡「そうなのよー!もっかい!もっかい祐也って言って?」
○「えぇ、恥ずいからいいよぉ…」
いつもの調子で、しげも笑っていた。
…別に、しげが手越や小山を名前で呼んだっていい。祐也、慶一郎、なんて言ってたって気にしない。だけど、俺のことを名前で呼んだことなんて1度もないのに…そんなの、ずるいだろ。
▽「俺のことも名前で呼んでほしいなぁ」
○「やだー」
▽「なんで!?」
俺恋人だろ、俺は“しげ”って呼んでるじゃんか。
♡「あ、あたし場所代わります?増田さん」
▽「さんきゅ」
○「え、やだ、行かないで」
エマちゃんを抱えて立ち上がった手越の服の裾を、ぎゅっと引っ張るしげ。自然と上目遣いになっていて、手越はデレデレしている。
♡「だーめ」
□「エマちゃ〜♡」
小山と手越はいいや。エマちゃんと遊んでてもらおう。
しげは2人に助けを求めてるけど、それさえも嫉妬。俺はしげに馬乗りになった。
▽「どこ見てんの?」
○「へ、」
ちゅ、と額に口付けた。
▽「余所見は厳禁だよ?」
シゲかわいい、とどちらかが呟いた。どっちが言ってるのかわかんないぐらい、俺はもうシゲに夢中になってたんだよ。
唇を押し付けて、はむはむとその甘みを味わう。
○「んっんっ、やめ…ッ、んん…!」
酸素を求めて唇を開いたしげ。舌を入れれば自然に絡めてくる。
○「っ…ふ、んん……ゃら…、ぁ、」
▽「ッは…!何?そんなにとろとろにされて反抗してんの?」
くす、とかわいいなぁと2人が笑う。
○「う、…〜っ!」
ぎゅっと俺の胸に顔を埋めて抱きついてきた。
▽「え、なに?どうし、」
○「…ふたりがみてるの……はずかしいから…やだ、」
…なにこの子。煽ってんのかな。逆効果だよ?
しげは、俺の胸のなかで小さく呟いた。
○「…たか、ひさ」
へ?と間抜けな声を漏らしてしまったのは。
○「だ…って、名前で、呼んで、って」
▽「もっかい!ワンモア!!」
○「…たかひさ、…すきだよ」
やばい。その顔反則だろ。…しげはキョトンてしているけど。
俺はしげの耳元に唇を寄せる。
▽「…明日の朝、身体中痛くなったらごめん」
○「はぇ?」
▽「今日の夜…覚悟しとけよ?」
瞬時に真っ赤になると、バタバタと騒がしそうに俺を押し退けて立ち上がった。口元を左手で覆って、その大きな潤む瞳で俺を見つめる。
○「な…っ、ぁ…ぁ……ば、か、ばかひさっ!」
ぎゅーっと目を瞑りそう叫ぶと、外へ飛び出していってしまった。向こうのほうで、ぺたんと蹲ってるのが見える。
□「何あれ、超かわいい」
♡「…シゲちゃんやべぇな」
だろ、とニッと笑ってみせる。
…さて、真っ赤なままのかわいい俺のお姫様を早くここに戻さなきゃ。じゃないと企画にならないもんね。ほら、ここにおいで?
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