「キスして、だとか」▽×○ ▽side
▽「中一のぉ、チョウチョをぉ、移動した!」
形のいい眉が顰められる。
▽「中一の、チョウチョを、移動した!」
俺自信あるんだけど、しげにはニュアンスで捉えてもらおう。もしかしたら、少し違ってる可能性もあるからなぁ。
○「…んー、…なんとなくでいい?」
▽「しげ分かったってぇ!」
しげは少し恥ずかしそうにはにかむ。
○「ちゅーしてよ、」
▽「は?」
○「っ、まっすーが言ったのっ!最後まで聞いてっ」
やべぇ、かわいいな…。
○「ちゅーしてよ、…この口、…移動した?」
□「日本語になってないじゃん!あー、お腹痛…」
小山と手越は声をあげてゲラゲラ笑うけど、俺は頬を染めて「ちゅーしてよ」なんて言う自分の彼女が可愛くて仕方なかった。
結局、答えは「築地市場、豊洲移転」だったんだけどね。
▽「ちゅーして、ってそんなにちゅーしたいの?」
○「な、に、言ってっ」
カメラが切られて、スタッフが退室していく。しげは顔を真っ赤にして口をパクパクと動かしていた。
▽「“ちゅーしてよ、この口、移動した”」
俺は自分の唇を指差し、顔を近づけていく。ちゅっ、とかわいいリップ音が鳴った。
○「ぅ、」
▽「…ふふ、顔真っ赤〜。かぁわいい」
しげから離れて、小山のもとに置いてある自身のコーヒーを手にする。ゴクリと1口飲むと、両手で真っ赤な顔を覆うしげが見えた。手越が「どうしたの、シゲ可愛いね」と頭を撫でていた。
○「っ…か…、可愛く、ないっ…!!」
いつも、そうやって否定する癖。自分に自信がないから、って。でも今日は、少し素直だった。
○「…ま、まっすー、」
少し震えた声。
○「…こっち、きて、…あの、」
▽「…ほら、自分で言ってごらん」
俺の腕をぎゅっと引っ張って、耳元で甘ったるい声が囁く。
○「ちゅーしてほしい…な…、」