「looking for you」▽×○ ▽side
時々、本当にたまに、だけど。
しげが、いなくなる時があるんだ。身体自体はそこにあって、だけど上の空で。急に立ち上がって、フラフラどこかへいなくなった後で戻ってくると治ってる。みたいな。
それはいつも、俺と二人きりの時だけだったのに──。
□「シゲ、シゲ、シゲちゃん?ねぇ、っ」
楽屋にて、突然糸が切れた操り人形みたいに力を失って、ソファから転げ落ちたのだ。
□「…どうしよう、」
♡「息もしてるし心臓も動いてるのに…」
今はソファに横にさせているが…。
□「あ、ちょっと連絡してきたほうが、」
▽「…やめろ」
小山の手首を強く握った。
▽「ダメだ」
□「でも、」
▽「ダメなもんはダメなんだよ!!!」
ぱっと手を離して、シゲの頬に触れる。
▽「しげは今、いないんだから…ここには」
♡「…ね、慶ちゃん。だからやめておこう?」
静かになる楽屋。
俺はシゲの顔を覗き込み、頬をつついた。それでも起きない。
▽「しげちゃん…、」
人として大きくて、優しいから。
▽「溜め込みすぎ、なんじゃないかな。加藤成亮くん」
□「…まっすー」
子供の頃から、しげはちゃんとしていた。立派な子供だった。憧れてたんだ。
▽「しげはいい子だよ。すごく優しくて謙虚で、気遣いもできて、全然怒らないもんね。辛いことも嫌なことも、俺たちにぶつけたりしないもんね。偉いよ。だからさ、これからは1人で全部抱えないで?」
しげのソファに体重をかけて寄りかかる。
▽「俺も、小山も手越も、ここでしげのこと待ってるよ。きっと、まだ辛くて悲しくて寂しくて…どこか痛いところでも、あるのかな。俺たちにはわからないけど、きっとそうなんでしょう?」
何も返事はない。
▽「しげは、すごくすごく…がんばったよ」
どく、と心臓の音。
しげの目が、そっとそっと、ゆっくり開いた。
○「ひ、っ、…ましゅ、っ!」
▽「ふふ、よーくがんばったね。ほら、泣いていいんだよ」
しげの身体を抱き上げて、隣に座った。しげは叫ぶように泣いて──俺を抱きしめた。
▽「しげのこと見つけられて、よかったよ」
○「っ、まっすーなら…見つけてくれるって、…信じてた」
きっと、彼は彼なりに、どこかへ行ってしまう自分が怖かったんだと思う。
知らぬ間にストレスを溜め込んで、知らぬ間に爆発して。そして気づいたら記憶はない。どんなに頑張って耐えようとしても、意識は飛んでしまうなんて。
○「…これからも、おれのことさがして、みつけてくれるよね、」
子供みたいに無邪気な笑顔に頷かない訳にもいかず。
▽「もちろん。どこまででも探しに行くよ」
その時はまた、小山と手越も一緒に。地球の裏側にまでも行ってやる。
愛する君のためならば──