第三章
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5.
「……ん。すみません、少し。連絡が入ったので」
お留守番のぼーさんから連絡が入ったらしい。
ナルがケータイを持って席を外す。
そしてそれを見送る私。産砂先生。笠井さん。
ドアが閉まってからふと気づいた。
あ、退出するタイミング逃したな、と。
もう話は聞けたのだから退出してもいいはずだった。
ナルに合わせて席を立ち、「あ、じゃあこの辺で!失礼しました~」とへこへこでていけばよかったのである。
かといって今さら立つのも、なんだかおかしいような…
これはナルに呼ばれるまで待つしかないのか…
ただの連絡だし、数分もかからないだろうが……なんせ、この沈黙である。
「ねぇ」
「……ん?私?」
「そう。アンタは……超能力とか、霊能力とかあるの?」
「うんにゃ、全然。からっきしない。ただの事務員で雇われたハズのバイトさん」
手と首を振って即座に否定。
私は事務専門である。あと来客対応。
特記事項と言えば前世の社会人の記憶と、係累がいないみなしごハッチな身の上くらいだ。
これで前世が天才陰陽師とかだったらもうちょっと役にも立つだろうけど、残念ながら普通の会社員だったもので。えーと、電卓のブラインドタッチができます。とか。
あ、でも電卓はメーカーや製品によってかなりキーの並びに差が…以下略
「なら、どうして」
笠井さんの目が揺れた。
「どうして、あの人の超能力を信じることができるの?」
どうして、自分の超能力は周囲に認めてもらえないのだろう。
その裏返しの質問といえるだろう。
カラ、とドアを開けて戻ってきたナルを視界の端に映しながらも、言葉を選んで口にした。
「えー…と、信じる信じないっつーか…うーん…正直、アレが嘘でもホントでもどーでもいい」
私は別に、嘘は悪だとか思っているわけじゃないし。
虚言に付き合わされるのがめんどうなだけデス。
「はぁ!?」
バッ、と笠井さんが身を起こす。
選んだ割にコレか、と。いやいや、オブラートの上から春巻きの皮を巻いたくらいに包み上げましたが?
困惑と怒りの色がありありとわかる。わかりやすい子だなぁ。
単純で素直なのは、子供の内は美徳にもなりうるが…年を重ねるうちに諸刃の剣となるだろう。
人間、いつまでも「アホ可愛い」じゃすまされないのだ。
ここは一つ、身をかわすという生き方を教えておくべきだろう。
「うーん…そうだな。私ね、縄跳びハヤブサできるんだよー。しかも連続。すごいっしょ?」
「…は?」
ぽかんとする笠井さん。ドアの前で「ナニソレ?」といった表情をみせるナル。
ハヤブサってのはあやとびの二重跳びだ。二重跳びよりちょっと難しい。
「って、言われたら、ソレが嘘でもホントでもどーでもいいでしょ?そんな感じ」
確かにできたらすごい。みんながみんな、できることじゃない。
かといって、別に賞賛しようとも思わない。
「だって正直言ってそんなことは私に関係ない。ま、ソレができるからあなたとは違うんですって顔されたらムカツクけどね~」
まずこの子に教えなければいけないのは、その「特別」から出てくること。
出てこなくてはいけないということ。
微笑みを作る。でも、目だけは真剣に笠井さんを見据えた。
私は今は「大人」ではない。けれど、だからこそ。誰よりも「子供」の目線で「経験」を伝えられるはずだ。
「できたところを見たことないで、『昨日はできたけど今日は出来ない』って言われたら、そりゃ『なんだ嘘か~』って思うよ?」
「ッ…」
笠井さんが息を飲む。
いくつもの猜疑的な視線は、彼女の弱い心に小さな傷をたくさんつけたんだろう。
『嘘』というキーワードが、きっとその傷を苛んでいる。
「でも、ソレが何?」
「え…?」
だからこそ、教えようじゃあないの。
諦めと、開き直りと言うある意味ダメダメな道を!
不安げに揺れたまま私を見つめる迷える子羊に、自信満々に笑ってみせた。
「信じてもらえんくても、本当ならそれでいいんじゃないの?ってかわざわざ超能力だって騒いだり糾弾したりする意味わかんないわー。しかもスプーン曲げ。そりゃね、透視とかだったらテストの時の不正的な意味で問題かもしれないけどね?べっつにうっかりポルターガイスト起こしちゃう困ったちゃんなわけでもあるまいに…」
ペラペラとしゃべくり倒す私と、ぽかんとそれを聞いている笠井さん。
呆れた様子で、ナルが肩を竦めた。
諦めたらそこで試合は終了である。
諦めちゃダメなのである。
でも、どうしようもなくなって、痛くて辛くて苦しくて腹立たしくて、とてもつらいなら。
その時くらいは、自分に負けを許してやってもいいでしょう?
正しくはないかもしれないけれど、一度負けて、初めて見えてくる道もある。
山で遭難した時は下るな、登れ。という。
すそ野は広いが、山頂は狭いためだ。
……うーん…ちょっと違うか。
あ、
「でも、車のキー曲げられちゃった先生、その日どうやって帰ったんだろう…」
そういえば、タカちゃんは笠井さんが車のキーを見事に曲げたと言っていた。
曲げてみせろと言ったものの、本当に曲がる鍵。
もちろん鍵穴には入らない。先生オワタ。
「………」
無言・無表情のナルが、どことなくしょっぱい表情に見えたが気のせいだろう。うん。
「…………」
同じく、無言の笠井さん。
こっちは目が泳いでいる。泳ぎまくっている。活きがいい。
今時スマートキーなら鍵穴はいらないが…常識的に考えて、そのタイプなら曲げれば粉々。修復不可能だ。
キーレスタイプでロックとアンロックだけリモコンなのもあるよね。
どっちにしろ、エンジンはかけられそうにない。
…これは、「カッとなってやった。今は反省している」で許される奴だと思うよ。多分。
やれって言ったのあっちなんだからねっ!
俺は悪くぬぇー!先生が悪いんだっ!
「…一応、謝っておいたほうがいいんじゃない、かな…」
「…そうかも」
心証を良くしておくためなんだからねっ!決して反省してとかじゃないんだからっ!
「麻衣、原さんたちが到着したらしい」
「えっ?もう呼んでたの?」
「ああ、さっきぼーさんに頼んでおいた。人手がほしかったからな」
「ってことは全員集合か。さっすがナル、手が早い」
あれ?なんか違う意味になった。
違うよ褒めたんだよ。だから睨まないでよナル。
「もう話が終わったなら戻るぞ」
「あ、うん。じゃあ、お騒がせしましたー…あ、笠井さん」
頭を下げてドアをくぐり、思い出して一歩戻った。
笠井さんに声をかけてニッコリと笑う。
「原真砂子。知ってるかもしれないけど、来てるから。着物の美少女を見かけたら話しかけてごらん。きっと、私とはまた違う"道"を見せてくれるよ」
それだけ言い置いて、ドアを閉めた。
真砂子は強い。それに正真正銘の高校一年生。
笠井さんより年下の少女が、しっかり足を踏みしめて前を見据えているのだ。話してみて損はない。
まあ、二人とも我が強くてぶつかりそうだけどね。
「…なぜ原さんを?」
「何故って?」
「ぼーさんや、松崎さん…ジョンもいるだろう」
ナルがメンバーの面々をあげる。
みんな、"特別"な人だ。それぞれに思いがあり、信念があり、生き方があるだろう。
「んー、そうね。年が近いのが一点。私たち"子供"には、大人は"できて当然"って気持ちが大なり小なり有る」
何故、と言われるとちょっと困る。ほとんど思い付きのようなものだ。
自分の思い付きにロジックを探しながら言葉にしていく。
「それから、メディア露出が多い日本人の真砂子が、一番嘘だのホントだの言われてきたと思うから」
「…ふうん。じゃあ、僕は?」
「え?」
ナルはすっかり"特別"を持つ人の選択肢に入れてなかった。
というか、なんだかいろいろ規格外すぎて彼に人生相談を持ち掛けろだなんて言う気にはなれなかった。
とか言ったらご機嫌崩れるかな。
見上げた虹彩の色素が薄めの瞳は、多分純粋な興味の色に染まっている。
「うーん?…ナルは高校生って感じがしないし、周りに何を言われても黙らせる力を持ってそうだから、別…かな?」
「………ふうん。そうか」
17歳って感じはするが、男子高校生と言う感じは全くしないのだ。わかるかな、このびみょーなニュアンス。
黙らせる力は口撃とも、威圧感とも、実力ともいえる。
そういう意味を含めて応えれば、肯とも否ともとれる反応を返して、歩き出してしまった。
…そこはかとなく意味ありげな反応に思える。
「え、何?ナルは何で特別なの?顔?頭?さっきのスプーン曲げ?全部?っていうか、さっきのマジックじゃなくて念力なの?」
おーい、と呼び止めながらねぇねぇねぇねぇと若干うざいくらいに質問攻めにすれば、ナルは振り返ってニヤっと笑った。
「ひみつ」
む。なんだそれ。このミステリアス美人さんめ。
笑顔がふつくしいんだよこのこのっ。
さっき誰かさんがしたように肩を竦めてみせて、すたすたと長いコンパスを惜しげもなく見せつけてくれるナルに駆け寄る。
特に気にした風もないナルが、話を切り替えたようで私の名前を呼んだ。
「麻衣」
「はーい?」
なんざんしょ。と見上げる。
この身長差は、近くにいればいるほど首の角度が鈍角になる。
真正面を向いた状態で向き合えば、目ではなく黒い物体と会話する事態になるだろう。
「さっきのこと、みんなには秘密にしておけ」
「え、ナルの顔と頭がよくて特別だった話?」
「馬鹿」
「はいはい、スプーン曲げね。なんで?」
「なんでも。特に、リンには言うな」
「やるなやるなは?」
「今度プリン買ってやるから」
「どんだけ安上がりだと思われてるの私!!乗った!焼きプリンねっ」
なんとも言えない目で見られた。
本気でプリンに釣られたとでも思ったのか?
そんなの8割くらいしかない。ちゃんと2割は、悪戯した子供みたいな表情を見た上での判断だ。
どうやら、バレるとリンさんに大目玉くらう内容らしい。
ま、弱味一個握ったと思って、黙っておいてあげましょう!
なんだかんだと言っているうちにベースに着いた。
扉を開けるとそこには
「おつかれさーん」
さっき覗いた時より幾分くたびれたぼーさんと、相変わらず無言のリンさん。だけ。
「あれ?他のみんなは?来てるんじゃないの?」
「さっきのナルちゃんの指示でなー。今は校舎の中…特に怪談があったところ中心に見て回ってるぜ」
「ぼーさんも麻衣と交代で頼む」
「おっし」
「まじか」
つーことは、リンさんとナルの無愛想コンビと三人でお留守番か…
「僕もリンと調査を続ける」
訂正。ぼっちでした。
ある意味気が楽だけども。
****
「霊はいませんわ」
「はぁああ?なぁに言っちゃってんのよ真砂子ちゃん!」
「いないわけないでしょうがっ!どう考えても」
進捗状況の報告、兼、打ち合わせに一旦集合したときの真砂子のセリフ。
そして噛みつく年長者二人。いつもの光景である。
「ぜんっぜんいないわけねぇだろ!」
「いませんでしたわ。学校中を見てまわりましたけれど、どこにも」
「例の席にはいて当然だ。四件も事故が続いてんだぜ!?」
ぼーさんは、結構先入観で判断することがある。
というか、「いない」と真砂子が言っているのに「いて当然だ」と食らいついてもしょーもない気がする。
真砂子がそんなことで嘘をつくはずがないのだから。
「あたくしたちは騙されてるんですわ」
「ちょ、真砂子さんや…」
「学校の連中ぜんぶに!?ジョーダンじゃねぇぞ!」
真砂子は真砂子で、頑なすぎる。
あまりにとんでもない理論にぼーさんが頭を抱えている。
むしゃくしゃしてがなってるぼーさんを「まあまあ」と諌めるジョン。
仕方ないので私も二人の間に手を広げた。
「はいはいクールダウンクールダウン。とりあえず、今の段階で真砂子には何も見えない」
「視えないんじゃありません。いないんですわ。いないものは視えません」
「真砂子。あんたが霊視にプライド持ってるのは知ってるけど、これは意見を出し合う場なの。あんたの意見も一つの意見。ぼーさんの意見も一つの意見よ」
「………視えない人にはわかりませんわ」
プイッとそっぽを向いてしまう。
まったく、やれやれ…霊視とか超能力とかあるとその代りに人の意見聞かなくなるんだろうか。
…特別視とか異端視とか、されなれてしまうってことなんだろーかね。
笠井さんにオススメしちゃったけど、だいじょぶかな真砂子。
「少なくとも、今日一日相談を受けていたぼーさんの方が真砂子よりこの学校の状態がわかってると思うよ」
「………」
「真砂子を否定するわけじゃない。少なくとも、真砂子は校内で霊を見なかった。今のとこ事実はコレだけ」
学校ぐるみで騙している、霊はいるはず、というのは根拠のない憶測。
こういうのは事実と憶測、推測を分けて考えないと簡単なものを見逃して面倒になる。
グループワークの基本基本。
「…厄介な事件だな」
まだ納得いかなそうにしていた真砂子も、呟いたナルの一言に私を睨むことをやめた。
「訴えられた証言の内、いったいいくつが事実だと思う?」
みんなの視線が、意識がナルに集まる。
ナルはいつだって冷静で、論点を見失わない。
だから指針にする。注目する。耳を傾ける。
彼は、本当に上に立つのに向いていると思う。
向いている、だけでできそうかと言えばそうではないが…
この性格が形成されたってことは、誰か緩衝材役の人が近くにいたと思うんだけどな。
ここでナルが指摘した問題点…というか疑問点?論文にするならば問題提起とでもいえるのか…はとにかく「数の多さ」。
発生件数の多さ、ということではないだろう。
あまりに種類が多すぎる。そういうことだ。
学校という限られた範囲の中で、なぜこんなにも多くの現象が、しかも突然起こりだしたのか。
これには理由があって然るべきであろう。
が、まずその理由からして皆目見当もつかないってんで
「原さんの霊視だけが頼みの綱なんですが――」
「霊はいませんわ」
「そう、おっしゃるわけだ」
霊はいない。
これが、霊媒の霊視結果なわけだ。
心霊現象は起こっている。それぞれ違う現象だ。当然、たくさん霊がいると考えていた。
それを根底からひっくり返す、真砂子の発言。
うーん…
「ねえ、真砂子。浮遊霊とか視るのは苦手だって言ってたよね」
「……ええ。それが?」
「おいおい、麻衣。いくらなんでも浮遊霊の仕業ってこたないだろよ」
「かな?『真砂子に見えない心霊現象』の可能性を考えてみたんだけど…」
「真砂子が正しいとは限らないんじゃないの?」
「松崎さんよりは正しいつもりですわ」
「どーおっだか!」
…確かに、厄介な事件だと思う。コレ。
すっかりお決まりとなった綾子と真砂子の口喧嘩を眺めながら、長く息をついた。
「………ンがいたら」
「へ?」
考え事でもしていたのだろう。
窓の外へ視線をやっていたナルがポツリと呟いた。
反射的に聞き返す。
「なんでもない。信頼できる霊視の能力者がいたらと言っただけだ」
おおう。
なんだか何もできなくてすまないねぇ。
思わず苦笑が漏れた。
その言い方じゃ、まるで真砂子が信頼できないみたいじゃないか。
本人にそのつもりはないんだろうけど。
「信頼してあげてよ」
「…ある程度、信用はしているさ。リン、作業に戻ろう」
これまた微妙な言い回しをもってくる。
真砂子の能力を信じていないわけじゃない。
だけど、真砂子がいないと言ったからいないと判断できるほどの信頼ではない。
そういうことだろうか。
まあ、どうも、よほど信頼できるんだろうな。その「霊視の能力者」さんは。
ええと、「ディーン」?「ジーン」?
なんでいないんだろ。ケンカでもしたのか?
ナルたちに続いて、もう一度校内を見に行くというメンバーを見送る。
出かける前からケンケンしている綾子・真砂子チーム。
ぼーさんと綾子、ジョンと真砂子チームに変えればいいのに。
「あんま校内でケンカしないでね~、ハズかしいから」
「うっさいわねっ!アンタもサボんじゃないわよ!」
「へいへ~い。行ってら~」
入口の前で見送って、ドアを閉めた。
ベース内はとたんにシンと静まり返る。
運動部の生徒の掛け声、ホイッスル、ブラスバンドだか吹奏楽だかの楽器の音が遠くに聞こえる。
これが、最終下校時間になるとひと気はなくなるわ、校内は西日で赤く染まるわで結構ブキミになるんだよね。
とりとめもないことを考えながら椅子を引いた。
さぁーて、お仕事お仕事っ…と。
お仕事、と言っても相談者は大分ハケているようだ。
なのでお留守番を兼ねて、ぼーさんがとりあえずメモりまくった証言をまとめていく事務作業に没頭する。
場所ごとにわけ、校内の見取り図に概要を書き込む。
と、言っても、場所に起こるものばかりではない。…むしろ、個人に「ついてきている」証言の方が多いようだ。
自宅までついてくる、ノックする手。
行く先々に見える首つりロープの影。
準備室に出ていた霊が、病室にまで出る。etc...
原因を探るのに、場所に共通点がないとすると…あとは人の共通点、かな。
とは言え、証言メモにはせいぜい証言者の名前、良くて学年とクラスくらいしか書いていない。
案の定バラバラである。
うーん…比較的、一年生は少ない、かも?
証言メモから読み取れるのはここまでだ。
事案に対してのどーのこーのはプロに任せるに限る。
とりあえず、私は私でわかったことを自分用ノートにまとめておく。
証言メモからのこと。
真砂子が「霊はいない」と言ったことに対する考察。
それから、笠井さんの超能力について。
偽善教師のエサになってるらしいこと。
それから、少し迷って個人データのページに付け足した。
ナルのところに、「スプーン曲げ(超能力?)」である。
一応、協力者全員分のわかっているデータはメモをとってある。
考察も含め一人半ページずつ。
当然、それぞれの「できること」がほとんどだ。主に、霊能力的な意味での。
真砂子が浮遊霊見るのは苦手だとか、綾子はお札くらいしかアテにできないとか、ぼーさんは真言宗だとかそんな内容である。
ナルが信頼してるらしい霊媒のこともメモっておくか。ディーンだかジーンだか。
****
その夜、夢を見た。
ナルもどきの夢だった。
学校に青白く灯った炎を、彼は鬼火だと言った。
とても嫌な感じのする炎だった。
恐いのとは少し違う。
とても、不快な感じだった。