treasure
「ミウ、大丈夫ですか?」
「………!! シアル君!」
その声で我に返り、目の前の人物の名前を口にする。
「何で?どうしてシアル君がここにいるの?お兄ちゃんは?ねえ!! 」
ミウも良く知る兄の友人。
ミウが旅に出る前、よくこの家を訪れミウも懐いていた。
質問責めにされたシアルが足元にいたマッチをミウの頭に乗せた。
「…まあ、ミウが驚くのも無理ないですよね。落ちつけと言われてもそりゃ…」
ため息をつきながらシアルの手がマッチを撫でる。
「…何から話せば良いですかね。…まず…キミのお兄ちゃん、ソラはここにはいません。正しくは暫く前から帰ってきてません。」
「しばらく…?…え、でも私…」
旅から帰るとミウは少し前、兄にメールで伝えていた。
きちんと返事も来た。
だから、ミウは兄がこの家で自分を出迎えてくれると思っていたのだ。
なのに自分を出迎えたのは兄ではなく兄の友人のシアル。
「ミウが帰って来るのは知ってましたから。だから僕が来たんですけど…」
わけが分からない。
「…とりあえずメールでは連絡できるんですが、居場所が全く分からないんですよ…。連絡といっても向こうから一方的ですし。…とりあえず生きてはいるんでしょうけど。」
「お兄ちゃん…どこ行っちゃったの…?」
「それが分からないからみんな困ってるし迷惑してるんですよ。現にミウも困ってるでしょう?」
呆れ顔でシアルが首を横に振る。
ミウが旅立ってすぐ、兄はこの家を出たらしい。
連絡はつくのだがメールだけ。
今どこにいるのか全く分からないという。
シアルが淹れてくれたココアを飲んでいるうちに、ミウも少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「自分勝手なのは子供の頃から全く変わりませんよ、ホント。」
「お兄ちゃんだもの。」
兄は自由奔放な人。
じっとしていられないのだとミウも聞いていたからよく知っている。
これは血だから仕方ないのだ。
兄と同じような人間をミウはよーく知っている。
誰も縛る事なんかできないのだ。
「気分屋さんだから、じっとしてられないの。父さんとおんなじ。」
「ああ…そうでしたね。たしかに。」
シアルが何度も頷いてコーヒーを啜る。
「…それで、僕がここに来たワケなんですが…」
「お兄ちゃんに頼まれた…とか?」
「違います。」
即答されてしまった。
兄は自分の事など考えてくれていなかったのかな、と改めて思うと悲しくなってしまう。
「ぶいぶー…」
マッチがミウの膝を軽く叩いた。
「…ミウが帰ってくると連絡してきたのはソラで間違いないんですが、迎えに行ってほしいと僕が頼まれたのはソラにではありません。」
「どういうこと?」
「…キミを迎えに行ってほしいと僕に頼んできたのは…しんじゅさんなんですよ。」
その名前にミウは驚いた。
存在は知っているが、実際には会った事の無い兄嫁。
ミウの義姉。
住んでいる町も違うし、ミウも物心ついた時から家族であちこち転々としていたので会う機会が今まで無かった。
「今、ミウの居場所になってあげられるのは自分しかいないからって…」
居場所…。
たしかに今のミウには行く所が無い。
家族もどこを旅しているのか分からない。
兄の行方も分からない。
「言っておきますが、ミウに拒否権は無いですからね。わざわざ僕が迎えにきたんですし。」
「………みうぅ…」
シアルのニャース、ユウがシアルに冷めた視線を送る。
「…ま、まあ!とりあえずミウには一緒に来てもらいますから。でなきゃ僕がしんじゅさんに怒られますし。」
「…怒られる?…怖い人なの?その…しんじゅさんって…」
まだ見ぬ相手に不安になった。
「あ?ええと…怖い人ではないです!大丈夫大丈夫!ね、ユウ!」
「にゃあ。」
慌てるシアルを見てますます不安になったが、他に選択肢はない。
一体これから自分はどうなってしまうのか…
押し寄せる不安でミウはその夜、寝付く事ができなかった。
「………!! シアル君!」
その声で我に返り、目の前の人物の名前を口にする。
「何で?どうしてシアル君がここにいるの?お兄ちゃんは?ねえ!! 」
ミウも良く知る兄の友人。
ミウが旅に出る前、よくこの家を訪れミウも懐いていた。
質問責めにされたシアルが足元にいたマッチをミウの頭に乗せた。
「…まあ、ミウが驚くのも無理ないですよね。落ちつけと言われてもそりゃ…」
ため息をつきながらシアルの手がマッチを撫でる。
「…何から話せば良いですかね。…まず…キミのお兄ちゃん、ソラはここにはいません。正しくは暫く前から帰ってきてません。」
「しばらく…?…え、でも私…」
旅から帰るとミウは少し前、兄にメールで伝えていた。
きちんと返事も来た。
だから、ミウは兄がこの家で自分を出迎えてくれると思っていたのだ。
なのに自分を出迎えたのは兄ではなく兄の友人のシアル。
「ミウが帰って来るのは知ってましたから。だから僕が来たんですけど…」
わけが分からない。
「…とりあえずメールでは連絡できるんですが、居場所が全く分からないんですよ…。連絡といっても向こうから一方的ですし。…とりあえず生きてはいるんでしょうけど。」
「お兄ちゃん…どこ行っちゃったの…?」
「それが分からないからみんな困ってるし迷惑してるんですよ。現にミウも困ってるでしょう?」
呆れ顔でシアルが首を横に振る。
ミウが旅立ってすぐ、兄はこの家を出たらしい。
連絡はつくのだがメールだけ。
今どこにいるのか全く分からないという。
シアルが淹れてくれたココアを飲んでいるうちに、ミウも少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「自分勝手なのは子供の頃から全く変わりませんよ、ホント。」
「お兄ちゃんだもの。」
兄は自由奔放な人。
じっとしていられないのだとミウも聞いていたからよく知っている。
これは血だから仕方ないのだ。
兄と同じような人間をミウはよーく知っている。
誰も縛る事なんかできないのだ。
「気分屋さんだから、じっとしてられないの。父さんとおんなじ。」
「ああ…そうでしたね。たしかに。」
シアルが何度も頷いてコーヒーを啜る。
「…それで、僕がここに来たワケなんですが…」
「お兄ちゃんに頼まれた…とか?」
「違います。」
即答されてしまった。
兄は自分の事など考えてくれていなかったのかな、と改めて思うと悲しくなってしまう。
「ぶいぶー…」
マッチがミウの膝を軽く叩いた。
「…ミウが帰ってくると連絡してきたのはソラで間違いないんですが、迎えに行ってほしいと僕が頼まれたのはソラにではありません。」
「どういうこと?」
「…キミを迎えに行ってほしいと僕に頼んできたのは…しんじゅさんなんですよ。」
その名前にミウは驚いた。
存在は知っているが、実際には会った事の無い兄嫁。
ミウの義姉。
住んでいる町も違うし、ミウも物心ついた時から家族であちこち転々としていたので会う機会が今まで無かった。
「今、ミウの居場所になってあげられるのは自分しかいないからって…」
居場所…。
たしかに今のミウには行く所が無い。
家族もどこを旅しているのか分からない。
兄の行方も分からない。
「言っておきますが、ミウに拒否権は無いですからね。わざわざ僕が迎えにきたんですし。」
「………みうぅ…」
シアルのニャース、ユウがシアルに冷めた視線を送る。
「…ま、まあ!とりあえずミウには一緒に来てもらいますから。でなきゃ僕がしんじゅさんに怒られますし。」
「…怒られる?…怖い人なの?その…しんじゅさんって…」
まだ見ぬ相手に不安になった。
「あ?ええと…怖い人ではないです!大丈夫大丈夫!ね、ユウ!」
「にゃあ。」
慌てるシアルを見てますます不安になったが、他に選択肢はない。
一体これから自分はどうなってしまうのか…
押し寄せる不安でミウはその夜、寝付く事ができなかった。