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【ワートリ】迅ヒュ【全年齢】

『流れる水滴』

「大丈夫かー」
迅は冷感マットの上で倒れているヒュースに向かってうちわで風を送る。ここ最近の急激な暑さにやられてしまったらしい。
「おのれ、玄界め……」
「玄界っていうより日本だね」
エアコンも支部の建物が古いせいで効きにくい。そこそこ冷えているとはいえヒュースには耐え難い暑さだろう。
太い血管を保冷剤で冷やしているというのに、ヒュースの顔は赤く、額や首筋から汗が伝う。とろりと溶けた瞳を揺らして暑さに耐え忍ぶ姿が艶かしい。
「あつい……ニホンの神はどうなっているんだ……寿命なのか」
「日本……というより玄界は近界とは違う原理でできてる世界だから……他の国に行けば温度も湿度も全然違うよ」
迅がヒュースの問いに答える。しかし暑さで頭の回らないヒュースは首を傾げるばかりで迅の言葉を飲み込むことはできなかった。
迅から見たヒュースは『あつい』という感覚に思考の九割ほど支配されているように見えた。
「今は理解できん……」
「だよねぇ。とにかくヒュースは無理しちゃダメだよ。今ボス達が暑さ対策グッズ買ってきてくれてるから……ほら、麦茶飲んで……」
ヒュースを無理やり起こしてグラスを手渡す。ぼんやりとしながらもグラスを受け取って飲み干した。熱中症手前のヒュースから飲み終えたグラスを受け取って迅はうちわで扇ぎ続ける。
ヒュースは無意識に迅の送る風をうちに入れようとシャツを掴みバサバサとさせ空間を作る。
「涼しい……もっと強く扇げ、迅」
「了解」
力を強めてパタパタと扇ぐとヒュースは気持ちがいいのか目を細めた。
バサバサとシャツをひらめかせるものだからヒュースの薄い腹がチラチラと視界に入る。上から流れてくる汗が見えて迅はごくりと喉を鳴らした。
先程から弱ったヒュースがえろくてしょうがない。
火照った身体と紅く染まる頬。とろんと溶けた瞳。首筋を伝う汗がやたらと美味しそうに見える。
正直、我慢の限界だった。
「……ヒュース、塩分、補給しよっか」
うちわを置いて傍にあった塩飴の袋を破ると自分の口の中に放り込んだ。
「迅……? んぅ!?」
暑さで頭の回っていないヒュースの唇を素早く奪う。半開きだった口内に舌を突っ込んで飴をころりと移した。
驚き目を見開くヒュースが可愛らしい。突然キスをされて完全に思考が停止してしまったのだろう。無抵抗で迅を受け入れ、されるがままだ。
舌を絡めて飴を溶かし合う。甘辛いはずなのに、甘さだけを感じる。流されるままヒュースもたどたどしく舌を絡めて答えてくれるのが堪らない。
「ふっ、ンンッ……あ」
ヒュースの漏れる息遣いも愛おしくて、迅は欲張った。彼の肩に手を置いてそっと押し倒す。シャツを捲り汗ばんだヒュースの肌に触れた。脇腹を擽るように指先を滑らせるとピクリと腰が揺れる。
「ごめん……ヒュース」
ヒュースの上に乗り上げた迅は汗が伝う腹に舌を這わせて吸い付いた。
「やっ……! 迅ッ」
薄い腹に花を咲かせて、迅は満足そうな表情でヒュースを見た。
「あ、あつい……」
そこには先程よりも顔が真っ赤になったヒュースが、息を切らせて具合が悪そうに脱力していた。
迅の全身から血の気が引いていく。
ヒュースが熱中症で倒れるのはまずい。角があるから救急車など呼べないのだ。だからこそ、玉狛所属の数人が慌てて家電やら寝具やら小物なんかの暑さ対策グッズを買いに出かけたというのに。
迅が下心でヒュースの具合を悪化させたと知ったら説教どころでは済まない。
「ごめん!! マジでごめん!!」
反射的にヒュースから降りて、うちわを使って風を送る。
「おい……この冷たいやつの換えはないのか?」
「保冷剤ね! 待っててすぐに持ってくるから」
ぬるくなった保冷剤を回収して、迅はキッチンへ向かう。冷凍庫から新しいものを取り出し、ぬるくなったものをしまった。
「迅……続きは、夜ならしていい。涼しいから」
力無く呟かれた声を迅は聞き逃さなかった。振り返ってヒュースの方を見る。姿は見えないが、きっと羞恥で顔を隠しているに違いない。
「夜なら、いいんだ」
「エアコンつけるのと、くっついて寝ないのが条件だ」
「最後のは了承できかねるなぁ」
両手に保冷剤を抱えて、迅はヒュースの元へ戻る。案の定両腕で顔を隠したヒュースが保冷剤を待っていた。
さて、くっついて寝ないことを条件に突きつけてきた恋人をどう説得するか……
迅はヒュースの世話しながら頭を働かせた。まずは日本の夏の洗礼を受けたヒュースを元気にするところからだ。
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