【ハガレン】ロイエド【全年齢】
私には、エドワード・エルリックという未成年の恋人がいる。
未成年の彼と付き合う事になるまでに色々な葛藤や苦悩はあった。両思いだとわかっても一歩踏み出せなかった私の背を、エドワードが押してくれたのだ。年下の彼が、強引に事を進めてくれなければ今の関係はない。愛おしく、大事にしたいと思う感情のまま彼に接してきた。旅ぐらしのエドワードと過ごす時間は短いながらも充実していたのだ。心から満足のいくもので、幸せだった。
だが、自分はそう感じていても、相手はそうは思っていなかったらしい。私にとってエドワードとの交際は真剣そのものだった。そのため大事にしすぎたらしい。
「ねぇ、オレって魅力ないの? 子供だからダメなの? それとも男だから?」
大きな瞳を釣り上げたエドワードに、ロイは迫られていた。
ロイは執務室のソファの背もたれに押し付けられてる。エドワードがロイの膝の上に乗り上げ、両手は背もたれについた状態だ。逃げられないように拘束されている。
なんてことだ。これはえっちな事へのお誘いということか? だが彼は未成年、まだ手を出したくはない。いや、出したいがそれよりも大事にしたいのである。なんとか誤魔化したい。
「鋼の、なんの話だ。君は十分魅力的だよ。子供だとか男だとか、そんなことはもう考えていない。大事な恋人として扱っているつもりなのだがね」
彼の長い金髪に手を伸ばし、毛先にひとつ口付けを贈る。
エドワードも重くなったな。また少し背が伸びたのかな。などと思考を放棄し、成長を喜んでいる場合ではない。彼を宥めるのが先だ。
「そーゆーキザな手で誤魔化されねぇから。きちんと答えろ。なんでオレに手、ださねぇの?」
彼は周りくどい言い方を早々にやめたらしい。背中に嫌な汗が伝う。
更に瞳を釣り上げて眉間に深い皺を寄せたエドワードは、納得のいく答えをロイに吐露させるまで拘束を解く気はないのだろう。
「落ち着きたまえ……鋼の」
「オレは落ち着いてるけど? 落ち着いてねぇのはアンタのほうだろ!」
エドワードから視線を逸らす。口調こそ冷静ではあったが心臓は早鐘を打っているし、変な汗が大量にでていた。
ごくりと生唾を飲み込んで頭を回す。なんとかして目の前の恋人を納得させる方法はないだろうか? 下手な誤魔化しが通用するような相手ではない。こういう時、エドワードの頭の良さを恨む。
少しの間が空く。相変わらずエドワードはロイを睨み付けたまま口を開くのを待っている。一分二分と過ぎ、先に沈黙に耐えられなくなったのはエドワードの方だった。
「はぁ……」
大きなため息と共に軍服の前を開けられた。早業すぎて思考が追い付かない。
エドワードはそのままロイの着ていたシャツに手をかけ、乱暴にボタンを外し始めた。
「ま、待て、鋼の」
「待たねぇ! オレがガキだから駄目なのか、そもそも男相手だから駄目なのか……試させてもらうぜ」
それが全ての理由ではないが、どちらかといったら前者です。とは勿論言えず、ロイはあわてふためく。
無理矢理開かれたシャツから首筋が露出する。エドワードは躊躇わずにそこへ唇を寄せた。強く吸い上げられて赤い所有の印が付けられる。舌先で印を舐められびくりと体が跳ねた。
「鋼の、やめなさい……」
「やーだね」
エドワードは左手の手袋を外し、指先を首筋から正中を通って脇腹をくすぐった。
どこで覚えてきたのか、官能を引き出すような触れかたにロイは咄嗟にエドワードの肩を掴んだ。
「駄目だ!」
引き剥がして真っ直ぐにエドワードの目を見た。彼はショックを受けたような表情を浮かべ下唇を噛む。
「鋼の。私は君を……」
「大佐の馬鹿!!」
左手ではなく、右手で平手打ちをされた。脳が揺れる。手加減はされていたようで、痛みを感じるくらいで済んだ。猛烈な頬の痛みの直後、膝の上が軽くなる。まずいと思った。
叩かれた瞬間、エドワードは今にも泣き出しそうな表情だったのだ。
今執務室から出て行かれたら、すれ違ったまま何ヶ月も会えなくなるだろう。
「エドッ……」
ほぼ反射といっていいスピードでエドワードの左腕を掴んで引き寄せた。抱き込むようにしてすっぽりと抱え込む。こういう時、彼の背がまだまだ低い事に感謝する。大きくなればこんな拘束などできなくなるからだ。
「ッッツ!! 離せよ!」
案の定、抱き込まれたエドワードはロイから逃れようと暴れる。それを押さえ込んでロイは囁いた。
「落ち着きなさい鋼の。わかるかね」
そう言ってロイは下腹部をエドワードに押しつけた。するとぴたりとエドワードは暴れるのをやめる。
「マジ……?」
顔を上げたエドワードは頬をほんのり赤く染めて、視線を揺らしている。
「マジだ。だが、私は君を大事にしたいと思っている」
今だって、こんなに密着して何も感じていないわけがない。ここは執務室と己に言い聞かせ、まだ未成年だと理性で押さえ込んでやっとである。
「大事にすんのと、先に進まないのは別だろ!」
そう噛みついてくるエドワードは本当に可愛い。子供だから抱いてもらえないのだと拗ねているのだ。それだけが理由ではないとわかってもらいたい。
エドワードが納得できるようにと願いながら、ロイは口を開く。
「私は、君が成人するまで待ちたいと思っている」
「ッツ!? なんで……」
「君に、後悔してほしくはないから。私が君の最初の相手でいいのかちゃんと考えてほしい」
「……いいって、思ったから襲ったんだろ」
「じゃあ、こうしよう鋼の。君に、私の自宅の鍵を一本預ける。私が帰るまでに君が部屋にいれば合意と取ろう。その時は逃さない。いいね」
「わ、わかった……鍵、くれよ」
すっかり大人しくなったエドワードを離して、事務机の引き出しを開ける。スペアの鍵を取り出してエドワードに手渡した。
「今日の帰宅時間は九時を過ぎる」
「あっそ……」
「まだ時間はある。よく考えたまえ」
そう言って、シャツの前を閉める。これで時間はできた。後はエドワードが怖気づいてくれることを祈るばかりだ。
「……夕飯、食ってくるの?」
ぼそりと呟かれた言葉にロイは目を見開く。エドワードの方を見ると、ぎゅっと鍵を握りしめて、恥ずかしそうにそわそわとしていた。
「た、食べてくる……つもりはない」
「ふーん……じゃあ、シチューでいい?」
不自然なまでにそわそわとしているエドワードが可愛くて、抑えた理性が切れそうだ。
「待ちたまえ。ちゃんと考えてからにしなさいと言ったはずだ」
「答えなんて襲った時に出てるんだよ! バーカ!!」
捨て台詞を言い残して、エドワードは部屋を出ていった。
残されたロイは思う。今日、帰らなくてもいいだろうか? ここに泊まっても良いだろうか? 今から書類の仕事は増えないだろうか? 中将に確認してきた方がいいのではなかろうか?
軍服を着直したところで、ロイは真っ先にドアへと向かった。仕事の追加をもらいにリザの元へ行くためだ。なんとしてでも家に帰るというイベントを避けなければならない。大事に大事にしてきたエドワードを抱くという覚悟がまだないのだ。
ドアノブに手をかけた瞬間。ドアが再び開かれた。目の前には出ていったはずのエドワードが仁王立ちしていた。
「アンタが考えそうなことなんてお見通しなんだよ。帰ってこなかったら迎えにくるからな!」
ピシャリとそう言い残して今度こそエドワードは去っていった。この分だと、本当にシチューを用意して家で待っているに違いない。
「まいったな……」
覚悟が必要なのは自分のほうだ。
幸いにもまだ時間はある。事務机の上にある書類の山をちらりと見て、ため息をつく。
どう考えても、約束の時間には余裕で終わりそうな量だった。むしろ、早く帰れるかもしれない。とりあえず、ドアを閉めて椅子に腰をかけた。
「デザートでも、買って帰るか……」
書類の山を崩しながら、ロイは少しずつ覚悟を決めていった。
未成年の彼と付き合う事になるまでに色々な葛藤や苦悩はあった。両思いだとわかっても一歩踏み出せなかった私の背を、エドワードが押してくれたのだ。年下の彼が、強引に事を進めてくれなければ今の関係はない。愛おしく、大事にしたいと思う感情のまま彼に接してきた。旅ぐらしのエドワードと過ごす時間は短いながらも充実していたのだ。心から満足のいくもので、幸せだった。
だが、自分はそう感じていても、相手はそうは思っていなかったらしい。私にとってエドワードとの交際は真剣そのものだった。そのため大事にしすぎたらしい。
「ねぇ、オレって魅力ないの? 子供だからダメなの? それとも男だから?」
大きな瞳を釣り上げたエドワードに、ロイは迫られていた。
ロイは執務室のソファの背もたれに押し付けられてる。エドワードがロイの膝の上に乗り上げ、両手は背もたれについた状態だ。逃げられないように拘束されている。
なんてことだ。これはえっちな事へのお誘いということか? だが彼は未成年、まだ手を出したくはない。いや、出したいがそれよりも大事にしたいのである。なんとか誤魔化したい。
「鋼の、なんの話だ。君は十分魅力的だよ。子供だとか男だとか、そんなことはもう考えていない。大事な恋人として扱っているつもりなのだがね」
彼の長い金髪に手を伸ばし、毛先にひとつ口付けを贈る。
エドワードも重くなったな。また少し背が伸びたのかな。などと思考を放棄し、成長を喜んでいる場合ではない。彼を宥めるのが先だ。
「そーゆーキザな手で誤魔化されねぇから。きちんと答えろ。なんでオレに手、ださねぇの?」
彼は周りくどい言い方を早々にやめたらしい。背中に嫌な汗が伝う。
更に瞳を釣り上げて眉間に深い皺を寄せたエドワードは、納得のいく答えをロイに吐露させるまで拘束を解く気はないのだろう。
「落ち着きたまえ……鋼の」
「オレは落ち着いてるけど? 落ち着いてねぇのはアンタのほうだろ!」
エドワードから視線を逸らす。口調こそ冷静ではあったが心臓は早鐘を打っているし、変な汗が大量にでていた。
ごくりと生唾を飲み込んで頭を回す。なんとかして目の前の恋人を納得させる方法はないだろうか? 下手な誤魔化しが通用するような相手ではない。こういう時、エドワードの頭の良さを恨む。
少しの間が空く。相変わらずエドワードはロイを睨み付けたまま口を開くのを待っている。一分二分と過ぎ、先に沈黙に耐えられなくなったのはエドワードの方だった。
「はぁ……」
大きなため息と共に軍服の前を開けられた。早業すぎて思考が追い付かない。
エドワードはそのままロイの着ていたシャツに手をかけ、乱暴にボタンを外し始めた。
「ま、待て、鋼の」
「待たねぇ! オレがガキだから駄目なのか、そもそも男相手だから駄目なのか……試させてもらうぜ」
それが全ての理由ではないが、どちらかといったら前者です。とは勿論言えず、ロイはあわてふためく。
無理矢理開かれたシャツから首筋が露出する。エドワードは躊躇わずにそこへ唇を寄せた。強く吸い上げられて赤い所有の印が付けられる。舌先で印を舐められびくりと体が跳ねた。
「鋼の、やめなさい……」
「やーだね」
エドワードは左手の手袋を外し、指先を首筋から正中を通って脇腹をくすぐった。
どこで覚えてきたのか、官能を引き出すような触れかたにロイは咄嗟にエドワードの肩を掴んだ。
「駄目だ!」
引き剥がして真っ直ぐにエドワードの目を見た。彼はショックを受けたような表情を浮かべ下唇を噛む。
「鋼の。私は君を……」
「大佐の馬鹿!!」
左手ではなく、右手で平手打ちをされた。脳が揺れる。手加減はされていたようで、痛みを感じるくらいで済んだ。猛烈な頬の痛みの直後、膝の上が軽くなる。まずいと思った。
叩かれた瞬間、エドワードは今にも泣き出しそうな表情だったのだ。
今執務室から出て行かれたら、すれ違ったまま何ヶ月も会えなくなるだろう。
「エドッ……」
ほぼ反射といっていいスピードでエドワードの左腕を掴んで引き寄せた。抱き込むようにしてすっぽりと抱え込む。こういう時、彼の背がまだまだ低い事に感謝する。大きくなればこんな拘束などできなくなるからだ。
「ッッツ!! 離せよ!」
案の定、抱き込まれたエドワードはロイから逃れようと暴れる。それを押さえ込んでロイは囁いた。
「落ち着きなさい鋼の。わかるかね」
そう言ってロイは下腹部をエドワードに押しつけた。するとぴたりとエドワードは暴れるのをやめる。
「マジ……?」
顔を上げたエドワードは頬をほんのり赤く染めて、視線を揺らしている。
「マジだ。だが、私は君を大事にしたいと思っている」
今だって、こんなに密着して何も感じていないわけがない。ここは執務室と己に言い聞かせ、まだ未成年だと理性で押さえ込んでやっとである。
「大事にすんのと、先に進まないのは別だろ!」
そう噛みついてくるエドワードは本当に可愛い。子供だから抱いてもらえないのだと拗ねているのだ。それだけが理由ではないとわかってもらいたい。
エドワードが納得できるようにと願いながら、ロイは口を開く。
「私は、君が成人するまで待ちたいと思っている」
「ッツ!? なんで……」
「君に、後悔してほしくはないから。私が君の最初の相手でいいのかちゃんと考えてほしい」
「……いいって、思ったから襲ったんだろ」
「じゃあ、こうしよう鋼の。君に、私の自宅の鍵を一本預ける。私が帰るまでに君が部屋にいれば合意と取ろう。その時は逃さない。いいね」
「わ、わかった……鍵、くれよ」
すっかり大人しくなったエドワードを離して、事務机の引き出しを開ける。スペアの鍵を取り出してエドワードに手渡した。
「今日の帰宅時間は九時を過ぎる」
「あっそ……」
「まだ時間はある。よく考えたまえ」
そう言って、シャツの前を閉める。これで時間はできた。後はエドワードが怖気づいてくれることを祈るばかりだ。
「……夕飯、食ってくるの?」
ぼそりと呟かれた言葉にロイは目を見開く。エドワードの方を見ると、ぎゅっと鍵を握りしめて、恥ずかしそうにそわそわとしていた。
「た、食べてくる……つもりはない」
「ふーん……じゃあ、シチューでいい?」
不自然なまでにそわそわとしているエドワードが可愛くて、抑えた理性が切れそうだ。
「待ちたまえ。ちゃんと考えてからにしなさいと言ったはずだ」
「答えなんて襲った時に出てるんだよ! バーカ!!」
捨て台詞を言い残して、エドワードは部屋を出ていった。
残されたロイは思う。今日、帰らなくてもいいだろうか? ここに泊まっても良いだろうか? 今から書類の仕事は増えないだろうか? 中将に確認してきた方がいいのではなかろうか?
軍服を着直したところで、ロイは真っ先にドアへと向かった。仕事の追加をもらいにリザの元へ行くためだ。なんとしてでも家に帰るというイベントを避けなければならない。大事に大事にしてきたエドワードを抱くという覚悟がまだないのだ。
ドアノブに手をかけた瞬間。ドアが再び開かれた。目の前には出ていったはずのエドワードが仁王立ちしていた。
「アンタが考えそうなことなんてお見通しなんだよ。帰ってこなかったら迎えにくるからな!」
ピシャリとそう言い残して今度こそエドワードは去っていった。この分だと、本当にシチューを用意して家で待っているに違いない。
「まいったな……」
覚悟が必要なのは自分のほうだ。
幸いにもまだ時間はある。事務机の上にある書類の山をちらりと見て、ため息をつく。
どう考えても、約束の時間には余裕で終わりそうな量だった。むしろ、早く帰れるかもしれない。とりあえず、ドアを閉めて椅子に腰をかけた。
「デザートでも、買って帰るか……」
書類の山を崩しながら、ロイは少しずつ覚悟を決めていった。
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