素敵な夢になりますように…
不死鳥の隣 2
Name change
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夜には島に着くっつうのに…。ほんとにどいつもこいつも宴が好きだよい。
甲板で飲めや歌えやの宴が繰り広げられている中、少し離れたところで酒を煽るマルコはその宴の中心で次々と酒を注がれるNAMEに目を向けた。
…あの女、…ワノ国出身ってのは十中八九ウソだ。…能力者でもない、なんの力も持たない平凡な女が、いくら協力者がいたとしてカイドウの目を搔い潜って出国出来るはずがねぇ。
分からねぇのは、なんでそんなすぐバレるウソをついたかだ。
それに、この世界に無知過ぎるのも引っかかる…。今時白ひげ海賊団を知らねぇやつがいるか…?…本人は無知なことをバレないようにしてるが…一体何のために…?
…考えられるのは、俺達を信用してないってとこか…。
まぁ、危うく奴隷にされそうになったんだ、白ひげと聞いてもピンときてねぇ人間からしたら、どんな奴にも警戒はするか…。
…どんな理由があるにせよ、あの女の警戒は怠らないつもりだが。まぁ見た限り、力は島の子供と同等レベル。多少放置しても問題はねぇだろうが。
そんなことをマルコが考えているとは全く思っていないNAMEは、ふとマルコと目が合い、ぺこりと会釈をしてまた酒を注いできた仲間に何か声をかけている。
「まーだうちのNo.2はNAMEちゃんを警戒してんのかよ」
「サッチ…。当たり前なこと聞くなよい。俺はオヤジに危害を加えるような奴を見逃さねぇようにしてるだけだい」
「あの子がそんなことするような子に見えるかよ?万が一やろうとしたとして、どう考えたって新入りが寝てても倒せるレベルだろ」
「お前だってあの女がウソついてる事くらい分かるだろい。目的が分からねぇ以上は警戒は解かねぇよい」
「ヘイヘイ、ったく相変わらず真面目だぜお前は」
「お前が不真面目過ぎるんだよい」
「…まっ、否定はしねぇ!」
ハッハッハと豪快に笑うサッチを、呆れながらもそこがこいつの良いとこでもあるか、とマルコは心の中で思った。
それから他愛のない話を続けていると、控えめに2人を呼ぶ声が耳に届き2人は徐に振り返る。
「マルコさん、サッチさん、あの、向こうで皆さんがお2人と飲みたいみたいです…」
そこには、振り返って目が合った途端にパッと視線を逸らすNAMEが立っていた。
「お。NAMEちゃん、わざわざ主役が呼びに来てくれたのか!ありがとな!」
「あ、いえ、…、じゃあ、お話の途中にお邪魔しました」
「!おい」
返事をして早々に宴の中心へ戻っていったサッチをNAMEは横目に見送り、まだ動こうとしないマルコへお辞儀してその場を離れようとしたところで、マルコに呼び止められる。
「は、はい、なんでしょう、か?」
「お前さんが主役だろい。戻らねぇのかい?」
「(う…、)」
普段から会社の飲み会などを避けてきたNAMEにとって、見知らぬ人間達との宴会ほど苦痛なものはなかった。
その為、少しでも1人になりたくて輪を抜けてきたのだが、目ざといマルコに指摘されてしまう。
「、ちょっと飲み過ぎちゃったので休憩がてら向こうで風にあたろうかと…」
「そうかい。なら付き合うよい」
「え、あ、でも、皆さんマルコさんを呼んでて」
「あいつらとは別にいつでも飲めるし、島に戻ってからもどうせ宴だ。あとで回ってやるよい。お前さんも1人じゃ暇だろい」
「あ、りがとう、ございます(うぅ…1人になりたいのに…!)」
NAMEの気持ちとは反対に見張るつもりでついていくことにしたマルコに対し、NAMEは、やや面倒くさい気持ちが出てしまい思わず顔が引き攣る。
「(…まぁ大人数よりかはいっか…)…ふぅ…。」
「…飲み過ぎかい?…あんまり酔ってるようには見えねえが…」
船縁に凭れかかり、海に向かって息を吐きだすNAMEを見て、同じくマルコもそこに背中を預け話し掛ると、NAMEは目線を海に向けたまま伏し目がちに答えた。
「…私、元々顔に全然出ないタイプで.…。飲み会とかに行くとまだいけるだろ、ってグイグイ勧められちゃうんです。…なので酔わないように休憩しておこうと思って」
「自制してんのか。偉いねい」
「いえ、そんな、大層な理由でもないんですけど…。酔うと寝てしまうので…、人に迷惑、掛けたくなくて」
そう言って、海に背を向けて立ち直したNAMEに一瞬視線を向けたマルコは、すぐに視線を戻し、正面を向いたまま口を開く。
「…それはほんとに迷惑かけたくないってだけかい?」
「え…」
その言葉を聞き、NAMEはマルコの方へ視線を向けた。同じくこちらを向いていたマルコと目が合うと、マルコはそのまま言葉を続ける。
「…そのあとの人間関係が面倒とかじゃねえのかい」
「っ…、」
ギクリとした。
今はそこまで考えていなかったのに、自分の中の深層心理を言い当てられたようだった。
「…苦手なんだろい?人付き合いってのが」
優しく微笑みながら自分を見てくるマルコに自分の恥ずかしい部分を見透かされている気がして、NAMEは途端にカァと赤くなった。
「…、そ、そんなに分かりやすい、でしょうか」
「ん?、あァ、まあそうだねい。会ってからほぼ目も合わねえし、話してても一歩引いてる気がするからな」
「す、すみません…。無自覚、でした。」
「別にそれが悪いって言ってるわけじゃねえ。人間なんて苦手なことの一つや二つ持ってるもんだろい」
「…」
「克服したいわけじゃねえなら無理することはねえよい。…ただ、俺達と一緒に航海するってんなら話は別だな」
「え、あ、そ、そう、ですよね…。仲間になりたいって言ったくせに人付き合いが苦手なんて…」
「いや、まあそれは追々慣れてくもんだとして。俺が聞きてえのは、本音を話すつもりがあるかどうかだよい」
「…え?」
急に真剣な眼差しに変わったマルコに、NAMEの胸がドクンと音を立てる。
たった数秒の沈黙がいやに長く感じ、気付けば身体中に冷や汗が流れていた。
「…人付き合いが苦手なのは構わねぇが、嘘をつく奴は信用できねぇ」
「…、」
「俺を騙せると思ったかい?」
「だ、騙すなんてそんな…、、…、いえ、そう、ですね。ごめんなさい…、助けていただいた方を…利用しようとしてました…。」
「…まあ、お前さんに利用されるなんてのは、大したことねぇとは思うがな」
「…、正直に…、お話、します。…、あの、もしよかったら、さっきの、えっと、」
「ああ、サッチか」
「あ、はい。サッチさんにも…説明、させてください…。」
先程話を聞かれ、作り話にも感銘を受けてくれていたサッチに後ろめたさもあったNAMEは、マルコに3人で話せる場所に連れてきてもらった。
「改まって話ってなんだい、NAMEちゃん?」
「……、さっき、私は嘘をつきました。…ごめんなさい」
「あん?」
「わ、私、…わ、ワノクニ?という国の出身では、ありません。私の出身は日本です」
「「ニホン??」」
聞きなれない国名に、思わず2人の声が重なる。
「信じてもらえるか分からないのですが、多分…、私は、この世界の人間では、ありません」
「…は?」
「え?この世界じゃない…?え?え?どういうこと?なに?何かの能力者系な話?…いや、でも海に入ってたもんな…?」
「私も、まだ半信半疑なので…、どう説明すればいいか分からないのですが…、」
NAMEは、自分の身に起きたことを時系列ですべて話した。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「…異世界からきた、か…なるほど?だからこの世界に無知だったってことかよい」
「ふーん、そんなこともあるんだな。オヤジなら何か知ってるかもな」
「あぁ、そうだねい」
「え…、し、信じて、くれるんですか…?」
あまりにも突拍子もないことを言っている自覚があるが、この世界の性質なのかマルコやサッチに関しては特段驚いている様子はなかった。
「さっきの作り話よりは信用できるよい。話してくれてありがとうな」
「いえ、そんな…、こちらこそ、聞いてくれてありがとう、ございます」
「俺達はNAMEちゃんを売り飛ばしたりなんてしねぇから安心してくれよな」
「サッチさん…。」
「NAME、改めて、歓迎するよい。よろしくな」
その時、初めてマルコからちゃんと名前を呼ばれた気がして、NAMEはドキッと鼓動が鳴ったのを隠すように俯き、小さな声で「よろしくお願いします」と答えた。
それを見ていたサッチは、ニカッと笑いながら「よしっ、んじゃ飲み直すか!新しい酒とツマミ持ってくるから待ってな」と言って立ち上がった為、NAMEも慌てて立ち上がる。
「サッチさん、お酒とおつまみなら私が持ってきます!」
「いーからいーから。主役は座って待ってなって」
「だ、ダメです!隊長さんなんですよね?隊長さんに持ってこさせるなんて絶対ダメです!」
頑なに譲ろうとしないその物言いに、普段の彼女を知っている者なら何も驚くことはないのだがマルコとサッチはNAMEの生真面目な部分を初めて目にし、一瞬目を丸くした。
「…。よし分かった!サッチさんと一緒に行こうぜ」
「えっ、いえ、サッチさんはここで…」
「いーのい一の。俺はNAMEちゃんと仲良く取りいきたいのよ」
「あ、おい…」
ガシッと肩をサッチに掴まれ、有無を言わさず連行されていくNAMEをマルコが一瞬引き留めようとしたが、まあいいか、とそのまま見送った。
…少し可哀想かと思ったが…。まあすぐ帰ってくんだろ。
そう思いながらマルコは残った酒を口に含み2人の後ろ姿を見ていると、宴の喧騒の中から飛び出してきた4番隊の隊員にNAMEがビクついてサッチの背後に隠れる様子が映り、思わずクスッと笑った。
しかし、当の本人達は実はそれどころではなかった…。
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