素敵な夢になりますように…
不死鳥の隣 1
Name change
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「お姉ちゃんっ」
「あ、君は…」
「僕ラウス!さっきは助けてくれてありがとう!!」
「(か、かわいい…)ううん、私お礼言われるようなことなんにも出来なかったから。」
「でも、お姉ちゃんが来てくれたから僕怖くなかった!ありがとうっ」
「…そっか。確かにあんな怖い目にあったのに一度も泣かなかったもんね。ラウスくんはすごいね」
「へへへ。あ!おじさん鳥の人でしょ!お姉ちゃんっ、このおじさんすごかったんだよ!僕見てたんだ!あのでっかいイカをドカーンってぶっ飛ばしちゃったんだよ!」
「え、あのイカを…?」
「そうっ!そんであの兄ちゃんがボーンって燃やしたの!!」
「ええ…?」
「おじさん達も助けてくれてありがとうっ!僕たちを島に送ってくれるんでしょ?みんなに聞いたんだっ」
俄には信じられないラウスの説明に困惑はするものの、嬉しそうに喜ぶその姿にNAMEはほっこりとした気持ちになった。
しかし、そんな気持ちは束の間で。急に自分の体がふわりと浮いた。
「っ⁉︎え、あ、えっ」
「じっとしてろい。…NAME、だったな。まず足の手当てと他に傷がないか診てやる」
「あー!おいマルコ!NAMEちゃんは俺が連れていこうと思ってたのに!」
「どうせ診るのは俺だ。お前らは後始末頼むよい」
「へいへい、分かりやしたよ。ったく!…おーい、お前らとっとと俺達の船に移動しろー、この船沈めっから」
なんとも物騒な言葉を聞きながらも、NAMEは自分を横抱きにするマルコにどうしていいか分からず、なるべく負荷がかからないように大人しく縮こまった。
「…冷えてるな」
「え?」
「身体。足を診る前にまず風呂だよい」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
ー………えーと。。
これはきっと、これを着てこい、てことだよね?
奴隷船からモビーに移動すると、マルコは有無を言わさず風呂場へとNAMEを押し込んだ。痛めた足はなるべく温めないようにしろと言われ、船の中の大きな風呂場に驚きつつもひとまずシャワーだけを使う。
思った以上に冷えていた身体に、NAMEは借りてよかったと強引なマルコの行動に少し感謝した。
だいぶ身体も温まり、恐る恐る脱衣所へと出れば、タオルと着替えは用意しておくと言われた通りそこにはその一式が置いてあった。
「…お、大き過ぎる…」
とりあえず用意してもらったシャツを広げてはみるものの、男物、と言うにもサイズがケタ違い過ぎるためにきっと着たらワンピース状態だ。
ーハーフパンツも用意してくれてるけど絶対落っこちちゃうな…。ていうか私下着の替えなんて持ってない…。せっかく温まったのにまた濡れたのなんて着たくないけど、妥協して濡れたままのを着たとしても…結局服も濡れてまた透けちゃうし…。
マルコって人は、なんとなくだけど濡れたやつまた着ろって言わなそう…。てことは、ノーブラノーパンでこれ着ろってことなのかな…
うぅ、どうしたら…
「おい、上がったのかい?湯冷めしたら意味ねぇから着替えたら出てこいよい。」
「!はっはいっ」
扉の外からの声に、NAMEは身体が飛び跳ねるほど驚いたが、この困った状況を打破すべく、意を決してタオルを巻いた状態で少しだけ扉を開け、マルコに声を掛けた。
「あ、あの…」
「ん?…んなっ⁉︎ふ、服着てから開けろよい!」
「あ、ご、ごめんなさい///あの、その…下着の替えを持って、なくて、ですね…」
「あ、あぁ、分かってるよい。だからその服は直に着ちまっていいよい。上着出してあるから、シャツの上はこれを着れば隠れんだろい」
そう言って、マルコはNAMEから視線を外したまま、手に持っている大きめのパーカーを見せてくれた。
「あ、ありがとうございます…、あのでも、ハーフパンツは多分大き過ぎて落っこちちゃって…」
「ん、あー、そうかい…弱ったねい」
「あ、で、でも、上のシャツがかなり大きいのでワンピースとして着させてもらえれば問題ないので大丈夫です」
「…悪いな。今は俺ら3隊長とその隊員達しかいねぇんだ。ナースを含めた他の奴らはみんなあの奴隷にされてた島民の島で待ってんだが…、夜には着くから我慢してくれるかい?」
「(ナース…?)は、はい!全然、大丈夫ですので…むしろお借りしてしまってすみません」
「ま、とりあえず着替えて出てきてくれよい」
NAMEは、そのまま自分を見ずにソファへ座るマルコに無言で会釈をし、扉を閉めて着替え始めた。
裸にシャツ一枚は心許ないが、背に腹は変えられず、脱いだ服や下着はタオルに包んで脱衣所から出た。
すぐに上着を渡してくれたマルコに礼を言ってそれを羽織ると、医務室へ案内するから服とタオルはひとまずそのへんに置いておけと言われ、あとで回収するのを忘れないようにせねばとNAMEは心の中で思った。
その直後、急に浮遊感が訪れ思わず声が上がる。先程と同じように抱きかかえられていると気付いたNAMEは、抵抗の意思を示した。
「あ、歩けますからおろしてください…!」
「すぐ着くから大人しくしてろい」
「で、でも、」
「極力動かさないのが治りが早いんだよい。これでもおれは船医だ。言うこと聞いておけよい」
「(よい…)て、えっ、船医?お、お医者さんなんですか?」
「そう言っただろい」
「ええ…?い、言ってましたか…?」
「…………言ってなかったか」
抱き抱えられたままそんな会話をしているうちに医務室と呼ばれる場所に到着し、マルコはその部屋の丸い回転イスにNAMEを優しく座らせた。
NAMEの目の前に腰を落としたマルコは、腫れている左足首をスッと持ち上げる。
しかし思った以上に高く持ち上げられた為、Tシャツの裾が膝下から太ももへスル、と持ち上がってしまい、慌ててNAMEはその裾を押さえた。
「あっ、わっ//////////」
「あ、悪ぃな。…見えてねぇから安心しろよい」
「(なんか今、間があった!/////////)」
「…(…っぶねぇ…見えかけ…、)………。」
「…?あ、あの…?」
マルコはつい無意識にNAMEの太ももに視線が向いてしまったが、特に気にしてないそぶりを見せながら改めて足首に目を向ける。
しかし、あることをふと思い出し、自分を見ながら眉を顰めるマルコにNAMEは首を傾げた。
「…下着、付けてねぇんだよな?」
「あ、は、はぃ…」
「…絶対に、それ他の奴には言うんじゃねぇよい。特に、さっきのリーゼント野郎にはな」
「い、言いませんよ!//////////////」
NAMEは改めてノーブラ・ノーパンを意識してしまい、そんな状態で人と接しているこの状況にとてつもなく自分が異常者に思えてきてしかたなかった。
しかし、目の前のこの男はそんなことは大したことでもないかのように、その話は早々に切り上げ、持ち上げている足首に自分の右手を当てる。
その瞬間、右手から青い炎が現れNAMEはぎょっとして声を上げた。
「え⁉ちょ、あのっ」
「慌てるな。再生の炎だ、熱くねぇよい」
「さ、再生の炎…?」
確かに熱くはなく、心地よい温かさを感じるその炎に、心なしか足首の痛みが和らいだように感じ、NAMEの頭の中は疑問符でいっぱいになった。
「よし、これでちったぁ痛みも治まるよい。3日以内には完治するだろ」
「あ、りがとうございます(…不思議…。民間療法的なもの、なのかな…?)」
「……、一つ聞いていいかい?」
「?、はい」
「お前さん、ワノ国の出身だろい?…なぜあの島にいた?」
「え…」
急に真剣な話に切り替わり、NAMEは戸惑い、そして思い出した。
そう、色々なことがいきなり起き過ぎて忘れていたが、一体ここはどこで、どうやってここに来たのかが分からないのだ。
…そういえば…ワノクニ…って、さっきの悪い人達も言ってたような…?
出身…ってことは国名だよね…?そんな国聞いた事ない、けど…ニュアンス的に日本っぽいような…。ワノクニ…和の国??
とにかく、ここは日本じゃないのは確か…なんだよね、きっと…。
私…、一体どうやってここに?…話の流れからすると、奴隷にされてた人達の島に私もいて、そこであの悪い人達に捕まった、てこと…のはず…。
…、ダメだ、全然思い出せない…。そもそも捕まった記憶もない…。気付いたら船の上だったんだもの。
その前の記憶は…、いつもの図書館でいつも通り読書をしてて…。…、あ、違う、いつも読んでるような物じゃなくて、今日は違うジャンルを見つけてみようって思って…
確か…、現実世界から異世界へ行ってしまうトリップ小説…、、ん?…あれ…?…そういえば…序章のページにあの図書館の館内とよく似た描写が出てきて…
図書館の地下室へ行ける階段という文章を読んで、確か私もその階段を見つけて…、降りた先の扉を…開けて…
「まさか…!」
「、おぉ、どうしたい、急に大声出して」
「え、あ…、その…」
自分の記憶を辿り、ありえない推測にたどり着いてしまったNAMEは、目の前の男を見ながら頭の中の混乱をなんとか落ち着かせようと必死に考えを整理する。
…そうだ、扉を開けた瞬間、目の前が眩しくて、目を開けられないほどの光が全身を包んだところまで覚えてる…。
きっとそのまま私は気を失った…。
あの扉が異世界への入り口だとしたら…。私はこの世界に飛ばされ、どこかの島で気絶していたところを奴隷商人に拘束された…?
そんなこと…本当にありえるの…?
…、でも、じゃないと、この状況の辻褄が合わない…。
「…、どうした?何か、大変な目にあったのかい?」
「…、」
…この人も、すごく親切だし…奴隷にされてた人達がこの人達に感謝もしてたけど…、私が異世界から来た人間だと知ったらどうなる…?
この世界の常識とか何も分からないけど、奴隷売買が横行してるような世界だ。異世界の人種なんてそれこそ珍しくて売り飛ばされてしまったり、何かの研究の材料とかにされてしまうかもしれない…
そんな恐ろしい想像をしてしまい、思わず身体がブル、と震えた。
この人達がそんなことをするとは思えないけど…簡単に人を信用しちゃいけないのは現実世界で身についてるんだ。
なんとか…、隠しきらなくちゃ。…けど…、どうやって…
「…なんか事情があるっぽいな。…まぁ今すぐ教えろとは言わねぇけどよい、ワノ国に帰るんだったら送ってやろうと思ってな。
余計なお世話っつうんなら、あいつらと一緒にあの島におろすよい。島に着くまでに答えてくれりゃ…」
「お、おろさないでください!」
「あん?」
あ。しまった。まだ考えがまとまってないのに…!
でも…なんの情報もないままその島におろされても行く当てもない…。どこかへ行くにしても手段がわからない…
とにかく…現実世界へ帰る道を探さなくちゃ…
「わ、私も一緒に、連れていってくれませんか」
「…連れてくってどこにだよい」
「、(何か…何かいい言い訳を…)…、わ、私…、父を!父を探していて」
「…父親?」
「は、はい!…幼い頃に、離別して。…母と2人で暮らしていたんですけど、その母は私を捨てて家を出てしまって。」
「…」
「父は、どこかで生きてると思うんですけど…何も情報がなくて…。ひ、一人でとりあえず探してみよう、って思って国を出てみたんですが…、悪い人に捕まってしまい…。も、もし、お邪魔じゃなければ、情報を集めるためにこの船に乗せていただけない、でしょうか…」
「…」
「…、(う…やっぱり、怪しいかな…。でも、一時期お父さんを探したのは本当だし…全部が全部嘘でもないし…)」
「聞くが…ワノ国は鎖国中だがどうやって外界に出たんだい?…違法なのは知ってるだろい」
―ギク「(え"、鎖国…⁉一体どんな時代なの…?…でも、これを利用すれば…!)、あ、えっと…、それは、その、き、協力者が、おりまして…、詳しくは、言えないんですけど、助けてもらいながら、出国…しました。」
「…その協力者ってのは今は一緒じゃねぇのかい」
「は、はい。出るのを協力してもらっただけで、その人は出ていないので…。」
「…なるほどねい」
「さ、鎖国していたのもあって、そ、外のこと、何も知らなくて…。考えなしに外に出たのは無謀だと思ったんですが…、その、どうしても探し、たくて…。」
しどろもどろになりながらも、NAMEはなんとかそれらしい説明を必死に伝えるが、マルコは特に表情が変わらない為、何を考えているのかはNAMEからは全く読み取れない。
「…、もう一つ聞くが、親父さんがワノ国に居ねぇのは確かなのかい?」
「あ、は、はい…。居ない…と思います…」
「ふーん…」
「(や、やっぱ変かな…?日本に居ないかって聞かれたら日本には居るだろうし…、うぅ…、ダメだ、こんな怪しい人物置いておくなんて無理に決まってる…)…、すみません、厚かましいお願いを…。やっぱり皆さんと一緒に島でおろし」
―バンッ「そのお願い、引き受けたぜぇ!!」
「ひゃっ」
「サッチ…やっぱり立ち聞きしてたのはお前だったか」
いきなり医務室の扉が勢いよく開き、リーゼント頭のサッチが満面の笑顔と大声で現れるとNAMEの身体は思わず跳ね上がり、マルコは呆れたような視線をサッチに向けた。
「感動しちゃうじゃないの。幼き頃に分かれた父親を探して何も分からない外の世界にたった一人で飛び出すなんてよ」
「…、」
うるうると涙ながらにそう話すサッチに、NAMEは少し罪悪感を感じた。
「俺は大賛成だぜ!オヤジだってダメとは言わねぇよ!」
「それはそうだが」
「長男坊は何をそんなに渋ってんだよ。かわい子ちゃんが助けを求めてんだぜ?男なら手を差し伸べてやるもんだろうがよ!ましてや急ぐ旅でもねぇし」
「いや、そもそもNAME、お前は俺達のこと何か分かって…」
「え?」
「おーいサッチ!!マルコ達まだ来ねぇの?腹減った!」
何かを言いかけたマルコの言葉を遮り、今度はエースが医務室へとやってきた。
「やべ!忘れてた。ナワバリ奪還成功の前祝いの宴だ!甲板で始めるからさっさと来いよ!ついでにNAMEちゃんの仲間入りも祝わねぇとな!」
そう言ってニカっと笑い、サッチはエースと共に甲板へと向かっていった。
残された二人のいる医務室は一気に静かになり、マルコのハァ、というため息がやけにNAMEの鼓膜に響く。
「あ、あの…、いい、んでしょうか…私なんかが、仲間入りなんかして…」
おどおどとするNAMEに目を向けたマルコは、先ほどまでの真剣な表情とは違い柔らかく微笑む。その表情に、何故かNAMEの胸がドキンと高鳴った。
「俺達はかまわねぇよい。別に今さら人助け稼業をするつもりはねぇが、断る理由もねぇしな」
「あ、ありがとうございます」
「ただ、ほんとに俺達の仲間になるつもりかい?」
「…?、え、…、あの、皆さんが…いいのであれば…」
「…。NAME、多分分かってねぇようだから言っておくが、…俺達は白ひげ海賊団。海賊だ」
「…、へ?(しろひげ…かいぞくだん…?)」
「俺達の仲間になるっつうことは、お前も海賊になるってことだが、覚悟はできてんのかよい」
「(かい、ぞく…海賊…?)え…、!!!?」
マルコからの全くの想定外のワードに、NAMEは驚きのあまり言葉を失うのであった。
to be continued...
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