素敵な夢になりますように…
go on 4
Name change
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「じゃあとりあえずは私のを貸してあげるよ!」
そのハンジの言葉に、リヴァイとモブリットは揃って眉間に皺を寄せる。
「おい…まさかてめぇの部屋にある服を着させる気か?」
「分隊長、それはさすがに可哀想です!」
「なっ!ほんと失礼だな君達!!」
「あんな汚ぇ部屋に落ちてる服なんか着せて、寄生虫でもこいつについたらどうする気だ。俺の執務室にも湧いてくるようになるだろうが」
ハンジという人間は、どうやら女子力は皆無らしい。ということをここの会話で学んだNAMEは、虫が湧くというハンジの部屋を想像して少し身震いしていた。
「じゃーどうするんだよ!今NAMEを知ってるのは私達幹部と私の班員だけだし、ニファは今日丁度ウォールシーナに出張だし…あ!そっか!それがいい!」
「…今度は何を思いついたんですか」
「リヴァイの服を貸してあげればいいよ!」
「ええっ」
「…何故そうなる」
目を丸くするモブリットに驚きの声を上げるNAME、そして眉間の皺を濃くするリヴァイは続くハンジの言葉に耳を傾けた。
「だってリヴァイの服なら当然清潔だし、なんてったって服のサイズがここにいる誰よりも丁度い…」
「本当に削がれたいようだな」
「ぎゃ!待って待って!これは悪口ではなくて合理的に判断しただけだって!」
片手でハンジの胸倉を掴むリヴァイは、持ち上げた腕をゆっくりと緩めた。
「…チッ…。おい、ついて来い」
「え…」
「あ、分かってくれたみたい。よかったー。ほらNAME、行っといで!私達は馬車準備して下で待ってるから!」
そうハンジに急かされ、NAMEは困惑しながらもスタスタと先を進むリヴァイの後を追った。
リヴァイに入れ、と言われた部屋に恐る恐る入室すると、そこには、とても綺麗に整理された部屋が広がっていた。
廊下を歩いている間、リヴァイと二人になることが初めてだったNAMEは些か緊張してしまい、会話もろくにせずここまでやってきたのだが、この部屋を見るなり「わぁ…」と感嘆の声を上げた。
「すごく、綺麗なお部屋ですね」
「…普通だろ」
「…ハンジさんも言ってましたが、リヴァイさんは本当に綺麗好きなんですね。…わっ」
NAMEが部屋をキョロキョロと見ている間に寝室のクローゼットから適当な服を取り出していたリヴァイは、NAMEに無愛想な表情のままその服を押し付ける。
「あのクソ眼鏡がどんな話をしたか知らねぇが、忠告はしといてやる。俺の前でナメた掃除はするんじゃねぇぞ」
「は、はい!…掃除は、嫌いじゃないのでしっかり務めさせていただきます!」
NAMEのその言葉に満足したのか、リヴァイは深くしていた眉間の皺を緩め、言葉を続けた。
「お前の部屋は隣だ。それに着替えてさっさと買い物に行ってくるんだな。明日からはのんびり街に行く暇なんてしばらくねぇぞ」
「は、はい!…あ、あの、リヴァイ、さん」
「なんだ」
「あの、服、もそうですけど、倒れていた私を運んでくれたのもリヴァイさんだと聞きました。…色々と、ご迷惑をお掛けして本当にすみませんでした。…それと、ありがとうございます」
「…ああ、しょうがねぇからな」
「あ、あと…」
「なんだ。とっとと言え」
「あのっ…明日から、あなたの補佐、だというのも聞きました」
「あぁ…みてぇだな」
「わ、私に、その…務まるのでしょうか…」
はぁと息を漏らしたリヴァイに、NAMEは目線を落として問い掛けた。リヴァイは少し眉根を寄せてNAMEを見遣ると、すぐに視線を戻して口を開いた。
「さぁな。…そんなもん知らねぇが、やるしかねぇだろ。てめぇがここに居ることを望んだ結果だ。ただし、使えねぇ人材だと俺が判断すれば、即刻ここから追い出す」
「ーっ…」
リヴァイの射抜くような瞳に見つめられ、NAMEは身体を強張らせる。
「そうなりたくねぇんなら、まぁせいぜい、そうならないように励むんだな」
「は、はい…。明日から、宜しくお願いします…」
それに返答はしないリヴァイは、早く行け、というように手を動かした。
NAMEは、こちらを見ないリヴァイの背中にペコリと一礼をし、部屋を出て行った。
ーリヴァイさんの言う通りだ…。
ここで働かせてくれと無理を言ったのは私だ。
ちゃんと、ここに居ることを認めてもらわなければならないんだ。怖い、とか、出来るか不安、なんて情けないことを言ってるようじゃダメだ。だってここの人達は、みんな命をかけて、死と隣り合わせで戦っている人達なんだ…!
その人達の足手まといになんてなりたくない!
NAMEはそう決意しながら、隣の自分のだという部屋に入った。
「…ここが、私の部屋か」
今出てきたリヴァイの部屋と同じ間取りのようなその部屋は、NAMEにとって少し広過ぎるように感じた。
自分には必要のなさそうな立派なデスクに、来客用の大きなソファ。リヴァイの部屋と違うのは、ビシッと綺麗に並んだ本が入っていた棚や、ソファの前に置かれていたローテーブルが置かれていないことくらいだった。
奥に進むと寝室があり、中には一人で眠るのに十分なサイズのベッドとクローゼットがあった。その横には洗面台、そしてシャワールームだ。
…シャワーは使えないって言ってたな。
お風呂やトイレの場所は聞いたし、問題は無さそうだ。
そんなことを思いながら、NAMEは受け取った服に手を掛けた。
リヴァイが渡した服は、白シャツに黒のスラックス、そして黒のジャケットだった。
「…リヴァイさん、小柄だけどやっぱり男性、だもんなぁ…」
全て着てみたはいいが、やはり体格の差はあるようで、全体的にダボダボとしている。
ベルトは一番キツくしてみても、ずり下がってしまい腰でかろうじて引っかかっている状態だ。裾も袖も余ってしまうので、NAMEは両方とも捲り上げた。
……石鹸と、…紅茶…?の匂い…。
裾を捲るために屈むと、ふわりと清潔な香りと甘い香りが鼻腔を擽った。
紅茶…が好きなのかな…
私と同じだ…
好みが一緒だと思うと、心なしか親近感を持ってしまう。ほんの少し心が穏やかになったNAMEは、下で待つハンジとモブリットのもとへと急いだ。
「お待たせしました…!」
「さあ、行こうか!」
手配した馬車に乗り込み、NAMEはハンジとモブリットと共に街へと向かった。
車内では、NAMEの服を見てハンジが苦笑いをする。
「やっぱり、リヴァイのでも大きかったか」
「はぃ…。でも、さっきの格好よりは目立たないと思いますので有難いです」
「そうだね。あれで街へ行ったら変な輩にすぐ捕まっちゃうよ」
「そうでなくても、NAMEは綺麗だから人の目を引くだろしね」
「え、そんな…!」
「おやぁ?」
「な、なんですか」
「モブリット、君はもしかしてNAMEを狙ってるんじゃ」
「なっ何を言ってるんですか!」
そんな他愛もないやり取りをしながら街に到着した三人は、早速立ち並ぶ店へと入っていく。NAMEは、洋服やタオル、生活雑貨などもハンジとモブリットに言われるがままどんどん買っていった。
「さてと!じゃあ次は下着だね!あ、モブリットも一緒に選ぶかい?」
「いいえ。それは遠慮しますのでどうぞごゆっくり」
「あはは!そんな真面目に返さなくたって分かってるって!」
「…分隊長、そーゆーことばっかり言ってるとNAMEが困惑しますよ」
「ごめんごめん」とハンジはNAMEの背中をバシバシと叩きながら笑う。それにつられてNAMEも声を出して笑った。
しかし、ランジェリーショップに入った途端鼻息を荒くして興奮するハンジを見た瞬間に、NAMEはやっぱりモブリットの方が幾分か良かったのではないかと思った。
「NAMEっ!!これ!これはどう!?」
「もっもう!ハンジさん、なんでそんな際どいものばかり薦めるんですか//////」
「いやあー!下着って面白いね!!NAMEならなんでも似合うんじゃないの!?ほら、これとか!勝負下着ってやつかな!」
「ふ、普通のでいいんですっ////勝負することなんてないですからっ」
「えー。似合うと思うのになぁ…。…そういえばさ、NAMEは元の世界に恋人とかはいなかったの?」
店内でそんな恥ずかしいやり取りをしてると、ハンジが急に冷静なトーンで話し始めた。
「…いたことはありましたけど…今一番大切な人は母でしたから」
「…そっか」
「ハンジさんは??…リヴァイさんとか、モブリットさんとかとお付き合いされてたりするんですか?」
「ええっ!モブリットはまだしもなんでリヴァイ?」
「あ、いえ、親密そうに見えたので…」
そう伝えれば、ハンジは「ないない!」とケラケラ笑いながら答えた。
「仲間意識は強くなるだろうからね。信頼してるけど恋愛にはならないかなぁ」
「そうなんですね…。兵士の方達は皆さんそんな感じなんですか?」
「うーん、どうかな。恋人を作る兵士はいるし…。まあ、私達幹部や隊長陣はあまり作る気は無いかもな」
「どうしてですか?」
NAMEは安易に質問してしまったことを後悔した。
「私達はいつ死ぬかも分からないからね。…明日もこうして話すことは出来ないかもしれない。残った方の気持ちを考えるとね、なんとなくそういう気分にはならないかな」
「(あ…)す、すみません…軽々しく、聞いてしまって」
「あー、いいんだよ!そう言ったって作るやつは作るし、恋人がいることで強くなれることもあるんだ。それに、ただ、愛したいって思う人に会ってないだけかもしれないしね!」
ハンジさんて…なんて強い人なんだろう。
…リヴァイさんやモブリットさん、団長さんやミケさん達もみんなこうして強いんだろうか。
兵士の方達の中には、私よりも若い子達もいた。
…私も、もっとしっかりしなくちゃ…
「NAMEー!これなんかはどう!?」
「だからハンジさんっ!もっと普通ので大丈夫ですから//////」
それから同じようなやり取りを2、3度繰り返しながら、NAMEはようやく下着を購入することが出来た。
「こんなに沢山買っていただいてありがとうございます…!」
「しばらくはこうやって来るのも難しいだろうからね。あとで足りないってなる方が困るから」
「他に何か欲しいものはないの?エルヴィンからもらったお金まだ全然余裕あるよ」
「…」
「遠慮しない!これはNAME用のお金だからさ!」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…もう一つだけ買ってきてもいいでしょうか」
「もちろん!何買うの?」
「紅茶を…」
「紅茶?」
その後、NAMEはハンジとモブリットが案内してくれた茶葉の専門店へとやってきた。
「いらっしゃい」
「わ…」
…すごい…こんなに沢山の紅茶の茶葉見るの初めて…!あ、紅茶のクッキーもある…
「お嬢さん、見かけない顔だな」
「あ、はいっ…えと…」
「彼女は新しい調査兵団の子だよ」
「おお、あんたは分隊長さんじゃないか。それに副隊長さんまで。…随分と綺麗な子が入ったもんだ。勿体ないねえ」
「え…」
「そんなこと言わないでよおじさん!私達だってここのところ頑張ってんだからさ」
「はっはっ、そうだなぁ。しかし久しぶりじゃないか、うちに来るのも。茶会用かい?」
「いや、今日は個人用だよ。彼女が紅茶好きのようでね」
「ほう、そうかい。どんなのが好みかな?」
ハンジ達と顔見知りのようなその店主は、NAMEに向き直り優しく微笑む。ハンジ達は、外で待ってようか、と店の外へと出ていった。
NAMEは、並ぶ茶葉のラベルを見てもやはりまだスラスラとは読めず、元の世界と同じなのかも分からない為不安になりながら聞いてみた。
「あの…何でも好きなんですが、香りが良いものが特に好きです」
「そうか。…じゃあこれなんかはどうだ、最近入ったばかりの物だ」
そう言うと、店主は茶葉を皿に移してNAMEの前に差し出した。
「わ…良い香り…」
「そうだろ?リラックス効果もあるからオススメだ。あとはそうだな、これなんかはリヴァイ兵長も好きだな」
「え?」
リヴァイの名前を聞き、NAMEは思わず聞き返した。
「リヴァイさんも、ここによく来られるんですか?」
「おや知らなかったのかい?…ああ、新入りだったな。彼はかなりの紅茶好きでね。よくうちには来てくれるんだよ。それで新しいのは大体買っていくんだが、よく買うのはこの茶葉だよ」
「…これも良い香り」
…さっき、ちょっと香った匂いと似てる。
やっぱり、リヴァイさん、紅茶が好きだったんだ。
思わずフフ、と笑ってしまい、店主は首を傾げた。