素敵な夢になりますように…
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文字の読み書き問題が思わぬ展開で解決したお陰で、今が850年、そしてここはウォールローゼという壁の中にある調査兵団の本部、だということまでは分かった。
私がここにいる理由は自分でも分からないこと、そして調査兵団という組織やウォールローゼという壁の話を聞いたことがないことを伝えた為、皆さんは意識がまだ混乱してるか、記憶に障害が起きているのかもしれないからと、回復を見ていこうと話している。
そして一番驚いたのは、この人達調査兵団の兵士は、壁の外で巨人という生物と戦っているという事実。
ハンジさんが興奮気味に巨人の話をしてくれていたけど、回復に支障が出る、と言って途中で引きずられるように強制解散させられた。
今ここには私一人で、部屋の外にはニファさん、という人が見張りに立ってくれているらしい。
一人になって色々悩み整理した結果、私はある信じがたい結論にたどり着くしかなかった。
これはタイムスリップではなく、異世界に飛ばされてしまったんだと…。
・ー・ー・ー・ー・ー
翌日、午前中に私のもとへ来たのはハンジさんとモブリットさんの二人だった。昨日いた団長さんや目つきの悪い人、そして大きい髭の人は他の職務で忙しいらしい。
部屋の外にはハンジさんの部下が数名いるらしく、私が暴れ出したりしてもハンジさんの班員だけで対処できるだろう、ということになったようで。
暴れ出したりなんかはもちろんしないけれども。
それでも、少しは警戒を解いてくれたようでほんの少し安心した。
ひとまず、あの物騒な人は来ないみたいなのでホッとした。
だってあの人怖すぎるんだもん。
でも、私を一番に発見して、あちこち傷だらけの私を医療棟と呼ばれるここへ連れてきてくれたのもその人だとハンジさんが教えてくれた。
「君を抱きかかえて、医療班を呼べ!って本部の廊下をダーって走ってたんだよ」
「分隊長は訳が分からなくてキョロキョロしてましたね」
「だっていきなりビックリするじゃないか!見たこともない服着た女子をあのリヴァイが抱いてるんだから!まあ、結局モブリットがすぐに医療班を呼びに行ってくれたし、怪我も目立つのは掌の傷だけで他は軽い擦り傷だけだったみたいだから安心したよ」
なんだかすごく迷惑を掛けてしまっていたらしい…。あの人にも感謝しなくては。
「声の調子はどう?」
そう聞かれ、私はようやく順番がきたと思った。
「もう、出るようになりました」
「お」
「え!!喋れるようになったの!?なんだ!早く言ってよ!」
「いえ、言おうと思っていたんですけど…、その」
「分隊長、ここに来るなりずっと喋り通しでしたもんね」
モブリットさんの言葉に、私は少し申し訳ないようにハンジさんを見て笑った。
昨日の夜、私はここの人に頼んでお湯とタオルをもらいしばらく喉を温めた。
寝る時もタオルをマスクのようにして睡眠を取ったら、朝には万全ではないにしろ、声が出るようになったのだ。
ハンジさん達が来てくれた時に挨拶をしようと思っていたのに、扉を開けた瞬間からマシンガントークが始まってしまい、大きな声はまだ出せない私はひたすら聞き役に回っていた。
「そうだった?ま、何にせよよかった!あとはその手の傷だけだね」
「はい。色々と、すみません。ご迷惑をお掛けして」
「何言ってるのさ!NAMEのお陰で、こっちは朝から君の話を聞くのが楽しみでしかたなかったんだから!」
その割には全然話させてくれなかったな。などと思ってしまい私は思わず声に出して笑ってしまう。
でも、今は笑っている場合ではない。
なんとか、私のこの状況を伝わるように説明しなくては…。
「あの…ハンジさん、実は聞いてもらいたいことがあるんです」
「うん、なに?ここにどうやって来たのか思い出した?」
「それなんですが…私、一時的な記憶喪失ではないんです。多分、ですが…あの、ほんとに、頭がおかしいんじゃないかって思われる、かもしれないし信じてもらえるかも分からないんですけど…」
「うん、大丈夫。ちゃんと聞くよ」
しっかりと私の目を見て優しく微笑むハンジさんに安心し、私は自分の身に起こった現象と仮説を出来る限り丁寧に伝えた。
「…ふーん…なるほどね…。君のいた世界とは別の世界か…」
「ぶ、分隊長…本当にそんなことが起こりうるんでしょうか…」
「…ごめんなさい…馬鹿げてますよね」
「あ、いや、ごめん!君の言ってることを怪しんでるわけではないんだ。…ただ、そんなことって本当にありえるのかなと…」
当たり前の反応だ。
私だって未だに信じられない…。
でも、文字のことやこの世界の話のこと…どう考えても大昔の話でもなければ未来の話でもなさそうだ。異世界、と考えるしかない…。
「…確かにぶっ飛んだ話だけど、この世界には人間を喰う巨人がいるんだ。ありえない話なんてないのかもしれないよ、モブリット」
ハンジさんの言葉に、モブリットさんは何も言わなくなった。でもよかった…。ハンジさんはこんな話を信じてくれたようだ。
そう安堵していると、ハンジさんが不思議そうな顔をして尋ねてくる。
「でもさ、NAMEが異世界からここに飛ばされた話が本当だとしたら、なんで君はそんなに落ち着いているの?」
「…」
「だってそうだろう?そんな訳わかんない世界に飛ばされて、巨人だっていていつ殺されるか分からないんだよ?自分がいた世界に戻れるかも分からないのに。普通ならもっと、どうしよう!!とかってパニックにならないのかな?」
ハンジさんの疑問はもっともだ。
「…確かに、今この世界のことが全く分からなくて不安な気持ちはあります。巨人…のことは、まだ見たこともないのであまり実感がないというのはありますが…。…ただ、このまま元の世界に戻れなかったらどうしよう…という気持ちはそこまで無いと思います」
私の答えに、ハンジさんとモブリットさんは顔を見合わせた。
「どうして?帰りたくないの?」
「…帰っても…、あの誰もいない場所に戻るくらいなら…巨人がいる世界でもいいから誰かと一緒にいたいです…」
彷徨い続けた瓦礫の上。
叫んでも、歩いても、生きている人には誰にも会えなかった。会えても亡くなった人だけ…。
孤独で頭がおかしくなりそうだった。
寂しくて、諦めないと誓ったお母さんに会いに行きたくなってしまった。
「目の前が真っ白になった時、私死んだのかなって思ったんです。でも、夢の中でお母さんに、生きてって言われました。…そして目が覚めたら皆さんがいた」
「…」
「私、やっと生きてる人に会えたって思って嬉しかったんです。…だから…。
…いつか元の世界に戻ることが出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。でも、それが私の運命だと思うんです。私は、その運命に従います」
「…そっか。…はは!なんか君はすごいね。若いのにしっかりしてるよ!ね、モブリット!」
「はい…。」
「あ、いえ…!そんな、ことはないんですけど…なんだったらもう、投げやり、というか」
「そんなことないさ!まあでも、うん、そうだよね。帰れるか帰れないかなんて、結局誰も分からないし、いざその時がきたら受け入れるしかないもんね」
私はゆっくりと頷いた。
それは、もうこの世界で生きていく、という決意の表れでもあった。
「よし!そうと決まれば君の今後の生活をどうするかだね」
「…あ、あの、そのことでお願いがあるんです」
「ん?なんだい?」
「あの…、ほ、本当に迷惑だと承知してるのですが…私を、こちらに置いていただくことはできますでしょうか…」
「ああ、迷惑だな」
その一言に私の身体はズゥンと沈むように重くなった。
「ちょっとリヴァイ!なんでだよ!」
ハンジさんは私がこの話をした時「大歓迎だよ!!」と言ってくれたのだが、一応昨日いたメンバーにも了承を得よう、ということで団長さんとミケさん、そしてあの怖いリヴァイさんがやってきたのだ。
異世界から来た話をハンジさんが皆さんに伝えてくれて、半信半疑ながらも一応は理解をしてくれたらしい。そして、私がここでお世話になりたい話をすると、リヴァイさんに即行で却下されてしまったわけで…。
「兵士でもなんでもない奴を置いておく意味がねぇだろ」
「でもさ!NAMEのいた世界の話を聞けば何か巨人を倒すヒントだってもらえるかもしれないよ!!ねえエルヴィンもそう思うだろ!?」
「ふむ…」
「ミケはどう思う!?」
「俺はエルヴィンに従うだけだ」
「あのっ…」
私は、自分の事で迷惑を掛けているのは分かっているが他に行くあてもない。なんとしても置いてもらう為に思わず口を挟む。
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