素敵な夢になりますように…
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「…ど、どうしたの?どこか痛むの?」
そう聞くハンジさんも、他の人達も心配そうに私を窺っている。目つきの悪い人は相変わらず無愛想だが。
多分、悪い人達ではないのは分かる。
…きっと、世界では何かあの地震のような恐ろしいことが起こってて、それを調べてる人達なんだろう。そして、どういうわけかこのなんとか団の本部まで辿り着いてしまった私から、話を聞きたいだけなんだ、きっと…。
泣いてないでちゃんと協力しなければ。
私が怪しい者じゃないと分かってもらえれば、きっと私のことも助けてくれるはずだ。
そう思いながら涙を拭った。
落ち着こうとしている私に気づいたハンジさんは、少しほっとしたように息を吐いて、そして私のスマホに目を向けた。
すると、思いっきり目を見開いて声を上げる。
「なっなにこれ!!え!?ど、どういうこと!?」
「なんだハンジ!何か分かったのか?」
「エルヴィン!みんな、これ見てよ!この中にこの子がいる!!」
「…本当だな」
「一体どういう仕組みだ、これは」
「奇怪だな」
私の写真に信じられない反応をするこの人達を見て、私の涙は一気に引いた。
写真の概念もここでは無いの?
相当遅れている地域のようで、私の不安はますます加速する。
そんなことが本当に起こるのだろうか
でも、さっきから私の話が伝わらないのもそれなら多少納得できる…
私は、遙か昔のどこかにタイムスリップしてしまったのでは。と…
「へー!ほー!」と唸りながら、ハンジさんを筆頭に写真に興味津々の人達。
それを見ながら、私は別でうーんと悩んでいた。
タイムスリップだとして…
一体何年前に来てしまったのだろう。
しかも日本じゃないようだし…
なのに言葉が分かるのはなんでなんだろう…
神様の気まぐれなのか…
まあそこは有難いとしといて、そんな突拍子も無い話をどうやって信じてもらえばいいのか。
声も出ない、文字も伝わらないのに…
「隣のこの人は君のお姉さん?」
ハンジさんの声に、私は悩んでいた思考をストップさせた。
母の事を聞いているようだ。
私は首を横に振る。
するとハンジさんは「え!まさかお母さんとか!?」と驚いた顔をしながら聞いてきた。
私はコクリと頷く。
「へー!!若くて綺麗なお母さんだね!」
純粋に、母を褒めてもらえたのが嬉しかった。
私は無意識に笑っていたらしい。
急に、目の前にいた人達の目が大きく見開く。あの、目つきの悪くて思い切り私を睨んでいたあの人も。
「笑った…!うわー!やっぱり君も、笑うと美人がより増すね!!この中にいる君もすっごく可愛いけど!」
そう言いながらスマホと私を交互に見るハンジさん。初めて会う人にそうストレートに褒められるとなんだか恥ずかしくて居心地が悪い。
私は恥ずかしさを紛らわすために、スマホを貸してくれとまた両手を出した。
スマホを受け取ると、そこにいる全員にこっちに来てくれと手招きをする。
「え?なに?ここに来いってこと?」
私はうんうんと頷く。目つきの悪い人はなんでこいつの指図を受けなきゃならねぇんだとか文句を言っているけど、ハンジさんがいいから早くしなよと促してくれている。
うん。ここなら逆光にもならないし、みんなおさまる。
「え?なにこれ!鏡になってる!へー!これは鏡なのかー」と騒ぎ出すハンジさん。「なんだくだらねぇ」と、鏡を見せる為だけに呼んだのかとその場から離れようとする目つきの悪い人を、私は思わずジャケットの袖を掴んで引き止めた。
「…なんだ」
怖い…。
振り返ったその人の目はとても訝しげにこちらを見ていてやっぱり怖いと思ったけど、それでも、この人の目は何故か離せなくなるようなそんな不思議な感覚にもなった。
私は、ここにいて。と身振り手振りでなんとか伝える。その人もなんとなく理解したようで、「何をする気だい?」と優しく聞いてくれる団長さん達に、カメラを見るようにジェスチャーした。
掛け声も掛けられないので、みんながカメラを見た瞬間にシャッターを押す。
カシャ!という音は出た。
その音に全員がバッと距離を取り、めちゃくちゃ不審がってスマホを見据えている。
私は、その反応がおかしすぎて思わず声も出ないのにクスクスと笑ってしまった。
「あ。また笑った。なになに?今なにしたの?」
すぐにニコニコと笑顔になったハンジさんに、私は今撮った写真を見せてあげた。
「え…!ちょ、まっ…!?」
「なんだハンジ」
「す、すごい!!これ!!みっ見てよ!!これ!今の!私達だよ!!!」
「!!?」
「ほ、ほんとですね…一体どういうことでしょうか」
「奇怪…」
「ほう…すごいな…。瞬間を残せる機械なのか…」
「面白い!すっごく!!うほーーー!すっっげえええこんな機械があったなんて…!!てかなにこの顔!みんな不細工だなあ!あははは!!」
それぞれの反応が面白くて、私はまた自然と笑顔になる。科学の進歩ってすごいんだなぁと改めて感じてしまう。
「ねえねえ!これ借りてもいい?色々調べてみたいんだけど!!」
そう興奮気味にハンジさんが聞いてきた。
貸してあげたいのは山々だが…いつ充電が切れるかも分からないし、お母さんとの写真を誤って消してしまわれても困る。
出来れば手元から離したくない。
そんな私の心情を察したのか、団長さんはハンジさんに声を掛けた。
「まあ調べるのは、彼女の声が回復したらでいいんじゃないか?大切な物のようだしね」
その優しい微笑みに、思わずどきりとした。
でも気持ちを分かってもらえて良かった。これで私の口から説明するまで待っててもらえそうだ。
ハンジさんもそれで納得してくれた。
「とにかく、彼女から敵意は今のところ感じない。これ以上は回復を遅らせるだろう。…ひとまず今日は解散し、明日以降、回復の様子を見ながらまた質問させてくれるかな」
最後は私に尋ねてきたので、私は頷いた。
「申し訳ないが、見張りは立たせてもらうよ。もちろん、何か気になる事があればその者に伝えてくれてもいい。」
「…」
「ああ、そうか。伝える術がないんだったな」
…そうなんです。
トイレ行きたい時とかなんて言えばいいんだろう…などと、緊張感の無い考えが浮かぶ。
でも必要な事だし。
すると、ハンジさんがテレパシーのように私の心情を汲み取ってくれた。さすがは女性だ。
「そうだよ!トイレに用を足しに行きたいときなんかどーするんだ!股間を開くわけにもいかないよね!」
なんだかその言い方がすごく恥ずかしい。
思わず赤くなってしまう。
ハンジさんはうーん、と悩んだ結果、よし!と言って紙に文字を書き出した。
「はい!ここにトイレって書いたから、行きたくなったらこれを見張りに見せればいいよ」
なるほど。その手があった。なんて感心していると、私はふと違和感を感じる。
…あれ?
なんか、トイレと読めなくもないような…
文字が似てる、だけ?…あ、あっ!?
私はハンジさんの紙をバッと奪い取ると、その紙を上下逆さまにした。
読める。
トイレだ…
そうか、ここでは反対にすれば読めるんだ…!!
大発見!!と思った私は、自分の名前を紙に書こうと思った。急いでペンを貸してくれと手を出す。
緊急性を感じたのか、ハンジさんはすぐさま私にペンを渡してくれた。
ここではカタカナだけなのかもしれないから、とりあえずカタカナで書いてみた。
ワタシノナマエハ、NAME
私は書き終わった後、それを逆さまにして全員に見せた。
するとどうだろう。さっきまで皺を寄せていた眉間は緩み、みんな目を見開いている。
「NAME…!それが君の名前なんだね?」
ハンジさんの言葉に、私は笑顔でブンブンと力強く頷いた。
to be continued...
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