素敵な夢になりますように…
go on 2
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「うーんと、まずは自己紹介からしようかな!私はハンジ!よろしくね。そして、こちらはエルヴィン。まあさすがに分かると思うけど我が調査兵団の団長。あぁ、あと、こっちも有名だけど見たことない人もいるだろうね。隣の目つきが悪いのがリヴァイ。リヴァイ兵士長だ。そんで、その隣の大きい男が分隊長のミケ。最後に私の補佐をしてくれてるモブリットだよ!」
「目つきが悪いは余計だろうが」
「あは。ごめんごめん」
「…」
ハンジさん、という人は今ここにいる全員を紹介してくれた。
有名だとか、知っていて当然のような紹介の仕方にかなり違和感を覚えた。
だって私は誰の事も知らないから…。
でも、それを伝えられなくてもどかしい…
「声出すなって医療班が言ってたからね。筆談にしようか!モブリット」
モブリットさんという人は、ハンジさんの補佐、と言っていた。秘書みたいなものかな?そんな気がするほど、手際よく私に紙と羽ペンを渡してくれた。
羽ペンなんて初めて使う…。
「じゃあまずは、君の名前は?」
書き慣れないペンを使い、私は自分の名前を書いた。
みんな外国人なのかな。日本人の名前ではないし、顔立ちも違う。日本語はめちゃくちゃ上手だけど。
ハンジさんが紹介してくれた皆さんは名前だけのようだったので、私も苗字は書かずに名前だけ書いて見せた。
すると、そこにいた全員が眉間に皺を寄せてその名前を食い入るように見つめた。
目つきの悪い人は最初から皺は寄っていたが。
…な、なんだろう…そんなに私の名前って珍しい?
「…ご、ごめんよ。ちょっと読めない、みたい…」
あ。そっか!英語じゃないと読めないのか!みんな日本語話してるから読むのも出来ると思ったけど…。
てか英語で通じなかったらどうしよう。名前は伝わると思うけど、それ以外はフランス語とかドイツ語とか絶対分かんない…。
でも、なんだか物凄く申し訳なさそうな顔をハンジさんがしているのはなんでなんだろう。日本語で書いてしまった私が悪いのに…。
そして、私は英語…というかローマ字で書き直してもう一度見せた。
しかし、同じように全員顔を顰める。
あれ?…なんだか空気が張り詰めたようにおかしくなった。
「…君、もしかして文字が書けないのか?」
さっき、なんとか団の団長さんと言われていた人がとてつもなく失礼なことを聞いてくる。でも、そう思っているのはこの人だけではないらしく、ハンジさん達も同じように思っているようだった。
私は思い切り首を横に振って、紙にペンを走らせた。
ここはどこですか?
地震が起きたのは東京だけ?
東京はどうなってるの?
助かった人達はどこにいるの?
どうしてあなた達は私を見舞ってるの?
書き終わった紙をバッと見せるが、全員先程と同じように顔を顰めるだけだった。
「字が下手なわけじゃなかったんだね…これは私達には読めない文字だ」
ハンジさんのその言葉で、なるほど。さっきの申し訳なさそうな顔は私の字が汚くて読めないと思っていたからなのか、とふと思った。
しかし問題はそんなことではない。
ここでは、私の書く文字が伝わらない。
声も出せないのにどうやって意思疎通をはかればいいのだろう。
途端に不安になる私に、さっきの目つきの悪い人が提案をしてくれた。
「イエス、ノーで応えられる質問をすればいいだろう」
「なるほど」
ハンジさんの声と、私の心の声が一致した。
しかし、そちらの質問には答えられるけど、私が質問したい場合はどうしたらいいのだ。
私は控えめに手を上げてみる。伝わるかどうかは分からないけど。
「ん?なに?あー、困ったね。君からの質問に答えるのは難しいな」
質問したいという意図は伝わったようだ。
「ごめんね、君の質問には、君の声が出るようになったら答えるよ。それまではこちらの質問に答えてくれるかな?」
そう優しく聞かれたので、私はこくりと頷いた。
「よしっじゃあ早速質問!君はどうやってここに侵入したのかな!?」
「…」
「分隊長、それではイエス・ノーで答えられません」
「馬鹿が」
「そうだった!!!!!」
私は目を丸くしていた。
それは、ハンジさんの質問の仕方がおかしいからでも、目を輝かせながら私の答えに興味津々そうなのが気になるからでもなく。
どうやって侵入したの?
しんにゅう?
侵入って、泥棒…的な意味の侵入??
…えっと…何を言ってるんだろう
私はこの病院に運び込まれた患者なんじゃないのだろうか
そんな私の頭の上には?マークが沢山浮いているはずだ。
ハンジさんは、質問の仕方を変えて聞いてくる。
「ここが調査兵団の本部だってこと、知ってて侵入してきたの?」
私はイエスもノーも答えられなかった。
だって侵入なんてした覚えがこれっぽっちもないのだから。
ノーと答えたとしても、ここをそのなんとか団の本部と知らずに侵入したと思われてしまうではないか。
私は考え、とりあえず首を傾げる。
「うーん。なんて聞いたらいいんだろう…ここは一般市民が簡単に入って来られるところじゃないんだよなー。門兵も君の姿は確認してないって言うし…」
「こいつ、憲兵のスパイじゃねぇだろうな…」
「…心当たりはあるかい?…まあ、スパイかと聞いてそうだと答えるスパイはいないと思うが」
目つきの悪い人の睨みに多少怖さはあったけど、団長さんの優しい問い掛けに私はブンブンと大きく横に振った。
けんぺいという響きに聞き覚えはないが、スパイではない。確実に。
「じゃあお前は民間人でいいのだな?」
背の高い髭の男の人の問いに、私は頷いた。
民間人…。なんだろう、この人達は警察とかそういう関係の人達なのだろうか…。じゃなきゃ学生や一般人のことを民間人とは言わない気がする…。
…あ。もしかして災害があったから事情聴取的なやつなのか、これ!!
でもなんで私がこの場所に侵入したことになっているんだろう。
もう本当に分からない…。
「なんで民間人が、調査兵団本部へ許可もなしに、しかも誰にも気づかれずに勝手に入って来れるんだ」
「落ち着けリヴァイ。彼女は怪我もしている。もしかしたら何か事件に巻き込まれたのかもしれない」
「…どうなの?誰かにここに連れてこられたの?」
目つきの悪い人と団長さんの会話が、私を少しずつ恐怖へと導いていく。
自分の身に、地震以外にも何かとんでもないことが起きているような気がしてどんどん不安が募っていく。
ハンジさんの質問にはフルフルと横に振った。
そして、「じゃあ自分でここに来たの?」と続く質問にも私は首を横に振る。
うーん。と頭を抱え出すハンジさんにならって私も抱えたい。
とにかく整理をしよう。
外の景色を見る限り、ここは私がいた東京ではなさそうだ。下手したら日本でもないような気もする。てことはなんだろう、私は気を失ってる間に飛行機にでも乗せられたのだろうか。そんな馬鹿な。さすがにそれはない気がするし、あんな災害があったのに飛行機が飛ぶだろうか。
…ニュースが見たい。この部屋はテレビがない。そういえば薄暗いけど電気もない。そうとう田舎の貧しい場所にいるのだろうか。
そう思った時、ハッと私は思い出したように掛けていた布団を捲った。
私の突然の行動にそこにいた皆さんは急に構えだしたのが気になったけど、それどころではない。私の格好は制服のままだ。よかった。
そう、制服のポケットに入ってるはずのスマホだ。
どうして忘れていたのだろう。これさえあれば今が何時で、ここがどこかもすぐに分かるはずだ。
あった…!!
しかしポケットからスマホを取り出した瞬間、私の目の前には刃が向けられていた。
声が出せれば悲鳴を上げていたと思う。
こんな凶器を人から向けられたのも、本気で刺す、といった殺意の目を向けられるのも初めてだった。
「リヴァイ、下ろせ。拳銃ではない」
「…怪しい動きをしやがったらすぐに削ぐぞ…てめぇは侵入者なんだ」
「リヴァイ、こんな可愛い子が何かすると思う~?しかも調査兵団の幹部達が勢ぞろいの中でさ!」
「てめぇの危機管理能力の低さは折り紙付きだろ」
「それは否定できませんね」
「なんだよモブリットまで!!てかやめなよ!この子怯えちゃったじゃないか!悪かったね、リヴァイは元々ゴロツキでさ!怖かったろう?」
…怖かったどころの話ではない
殺されるかと思った。
なんて恐ろしい人達なんだろう…!
一刻も早くここから逃げ出したい!
「それだろう?見せたかったものって。なんだろう、見たことない形だね」
ベッドの端に逃げるように後退りしていた私に、ハンジさんは不思議そうな声で聞いてくる。私は、さっきの衝撃的な脅され方の所為でベッドに落としてしまったスマホを持ち上げた。
よかった、充電は切れていない。
でもどうやら圏外のようだ…。これではネットも開けないしマップも使えない…。
がっくりと項垂れる私とは反対に、ハンジさんはさっきのように目をキラキラさせながらスマホに興味を示した。
「ねえ!!これなあに!?」
「…」
「分隊長、イエス・ノーで答えられる質問をしないと」
…機種が何かの話だろうか。
…いや、このスマホの持ち方、調べ方は絶対におかしい。初めて見ましたという反応にしか見えない。
…嘘でしょう?
今時、スマホを持っていない人はいるとしても、知らないなんて人がいるんだろうか…
「うわ!なんか動いた!!」
「分隊長!そんな好き勝手にいじらない方が!!爆発したらどうするんですか!」
「…」
「おい。これは爆発するものか?」
私は首を横に振る。
「…言っておくが、デタラメや心にもない事を答えやがったら、分かった時点で削ぐから覚悟しておけ」
もうやだ…。この人本当に怖すぎる。
目が本気だし、スマホが爆発するかもとここの人達は本気で思っている。
なんなの…?
情報が欲しい…
何も分からなくてほんとに怖い…
「これは何をする為の道具なんだい?…あ、イエスかノーかだね!…うーんと…そうだな!これは、巨人を倒すのと何か関係があるもの?」
ハンジさんの言う巨人とは、野球チームのことだろうか…。試合の結果なら調べれば分かるけど、そんなピンポイントな使い方がメインではない。
私は少し考えて、手で電話のポーズをして耳に当てた。これなら伝わるかな。
ついでにもしもし、と口パクをしてみる。
「ん?なにそれ?」
…えぇ…。世界共通のやり方ではないようだ。
私が他に使ってるのは…。
あ!音楽…!
私は両手を出して貸してくださいとジェスチャーする。それは分かってくれたみたいでハンジさんはすぐに渡してくれたけど、目つきの悪い人はまた刃を出そうとしている。モブリットさんという人がハンジさんに言われて必死に抑えてるけど、モブリットさんも怖そうだ。
とりあえず、今すぐ刺されることはなさそうなので私は音楽を聴かせようとアプリを開く。
しかし、そこからは一切音は出てこない。
音楽も聴けないの…?
私の1番大好きな趣味までもなくなってしまった…
どよん、と落ち込む私に、「おい、どうした。辛気臭ぇ面しやがって」と目つきの悪い人が声を掛ける。
いちいち口の悪い人だなこの人は。なんて思った瞬間、私はカメラの機能を思い出した。
急いでアプリを開けば、私の目から涙が溢れ出る。
そこにいた全員がギョッとしているのに気付いたけど、その涙は止まらない。
何故か1枚だけ、そこには残っていたのだ。
最後に撮った、私と母の加工前の写真が。
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