素敵な夢になりますように…
go on 19
Name change
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「NAMEーっっ!!!」
NAMEがその声を認識した瞬間にはもう、自分の身体は巨人から離れ抱き抱えられ、巨人の歯と歯が噛み合わさる音が遠くで聞こえた。
誰かなんて、確認しなくても分かる。
「…、リ、ヴァイ、さん…」
リヴァイは隣の家屋に飛び移りNAMEの身体をそっと下ろすと、NAMEの瞳から零れた涙を優しく親指で拭う。
「安心しろ、もう大丈夫だ」
リヴァイの力強い瞳に見つめられたNAMEは、その言葉を聞いてリヴァイの背後のオーサを窺った。
隣の屋根にはエルドとグンタが到着していて、巨人は討伐され、オーサも無事のようだった。
「お前が光を出してくれたお陰ですぐ見つけられた。…よく、頑張ったな」
「そ、んな…、わた、私、何も出来なくて…」
「何も出来ないくせに、よく戦った。…俺達は、仲間を1人失わずに済んだ。ありがとうな」
「ーっ…、そんな…、もったいない、お言葉です…」
思いがけないリヴァイからの言葉に、NAMEの瞳からは再び涙が溢れ出す。
「…悪いが、俺達はまだやる事がある」
「あ、は、はい…!私なら、もう1人でだいじょう…」
「馬鹿か。お前を1人にさせるわけねえだろうが」
「へ…、で、でも」
「お前をハンジのところへ連れていく。しっかり掴まっていろ」
「え、え、掴まれって」
「いいから黙って掴まってろ。舌噛むなよ」
「ひゃあ!」
リヴァイは片手で軽々とNAMEを抱き抱えると、そのまま立体機動装置で空へと飛び上がる。
その瞬間、以前、立体機動装置の訓練を見て自分も空を飛んでみたいと言った時、『俺がお前を連れて飛んでやる』と言ってくれたリヴァイの言葉をNAMEはふと思い出した。
しかし今はそんな状況じゃないと頭を横に振り、しっかりとリヴァイの身体にしがみついた。
「お前ら、先にエレンのところへ行け」
「「はっ!」」
リヴァイが飛びながらエルドとグンタにそう指示を出すと、2人は自分達の進行方向とは逆へ飛んでいく。
「これから巨人化したエレンと壁の穴を塞ぐ」
「すごい…、エレン、もうちゃんと戦力なんですね」
「…今のところはな。…壁を塞ぐまでの間、俺達は他の巨人共を討伐する。お前は壁が塞がるまでハンジと一緒に居ろ」
「は、はい!」
力強く頷くNAMEに、リヴァイは「よし」と小さく答えたところで丁度ハンジの元へと辿り着いた。
「NAME!!良かった、無事だったんだね!」
「ハンジさん…、ご心配をお掛けしてすみません」
「ハンジ!NAMEを頼む。俺達は壁に向かう」
「ああ、分かったよ。そっちは頼んだよ」
「リヴァイさん、き、気をつけて」
「…。…NAME」
「?はい…、」
「…、いや、何でもない。俺が戻るまでハンジから離れるなよ。ハンジ、頼んだぞ」
そう言い残し、颯爽と飛び立っていくリヴァイを見送るハンジは微笑を浮かべ、肩を支えていたNAMEの方に視線を移した。
「さ、NAME、もう少し高い建物に移動する…、ってNAME!?ちょっ、しっかりして!」
この数時間で、体験したことのない出来事があまりにも一気に起きて、緊張の糸が切れたNAMEはリヴァイを見送った瞬間に意識を手放した。
その場では、「NAMEー!」というハンジの声が響いていた。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「…ん…、、…?」
NAMEが目を覚ますと、そこは見覚えのある部屋のベッドの上だった。
「…旧、本部…?」
―…、私…なんでまたここに…、
「…、っ、そうだ、巨人…!」
気を失う直前の状況を思い出し、NAMEはガバリと起き上がると部屋の扉をゆっくりと開けて辺りを見回した。
「(…誰も、居ない…?)…と、とにかく、状況を確認しなきゃ…」
靴を履き部屋から出たNAMEは、以前教えてもらった端のリヴァイの部屋を目指して歩き出す。
すると、その部屋から話し声がするのを感じ取り、NAMEは歩くスピードを緩め恐る恐る部屋の前まで近づいた。
「・・・・だけ、・・・が、あります…。」
「(…この声…、は、ペトラ?……やっぱり…ペトラと…リヴァイさん…。二人とも無事だったんだ…)」
不用心に開いている扉の隙間から見えたのは、ペトラとその正面に立つリヴァイの姿だった。
ひとまず二人の無事を知り、ほっと息をついたのも束の間、ペトラの続く言葉を聞き、NAMEは二人に声を掛けることが出来なくなってしまう。
「…、だ、抱きしめて…ほしい、です」
「(え…!?)」
「…………………わかった」
「(―っ…!)」
少し離れていた二人の距離が、リヴァイが歩を進めることで見る見る縮まっていく。
ペトラの目の前に立ったリヴァイは、ゆっくりと両手を伸ばし、自分より小さなその身体を引き寄せ優しく抱きしめた。
「…兵長…、」
「……なんだ」
「…ちゃんと、好きだって…言ってほしいです」
「…………ああ。……………、、好きだ」
「…、ふふっ…。やっと、言ってくれた…。兵長、ありがとう」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「あっ!NAME!」
「…、ハンジ…さん…?」
いつの間にか広間に降りてきていたNAMEは、自分に気が付きガタっと椅子から立ち上がり駆け寄ってくるハンジに呼び止められた。
「良かった、気が付いたんだね。身体の調子はどう?痛いとことか、違和感のあるとこはない?」
「あ、は、はい。だいじょう…、っ、そうだ、巨人はっ、ま、街はどうなって…」
「落ち着いて。大丈夫だよ。被害はもちろん出てしまったけどエレンのお陰で開いた穴は塞げたし、中に入った巨人も全て倒した。被害は予想よりかなり抑えられたよ」
「そ、そうですか…」
NAMEはほー、と安堵の溜息をつく。
「NAMEがジャンに託した小さな子供も助かってね。親御さんから感謝されたよ、お礼を伝えといてくれってさ」
「そんな!私結局何もしてませんし、ジャンのお陰です」
「そんなことないって。それに、NAMEがジャンに指示してくれたお陰で憲兵の不正も見つかったんだ。勝手に扉を閉めようとしたってね。これで暫くは憲兵からうるさく言われなくてすむよ!」
ハンジはニカっと笑い、お茶でも飲むかい?と言ってNAMEを椅子に座らせると、お茶の準備をしながらNAMEが旧本部に来た理由を話し出した。
NAMEの怪我は大したことなく、他の重傷者達にベッドを空ける為と、今後の話を落ち着いて話す為にここへ連れてきたと。
この旧本部には、今はリヴァイとリヴァイ班のメンバー、そしてハンジとモブリットが滞在しており、皆は各々お風呂やら部屋で休んだりしているとのことだった。
「…、ハンジさん」
「ん?なに?」
コトリ、とお茶の入ったカップを置き、ハンジは優しくNAMEの声に応える。
「さっき…、私をここに連れてきたのは今後の話をする為だと、言ってましたよね」
「…うん、そうだね。…まぁ、ほとんどリヴァイの独断で…」
「私、今働かせてもらってる場所があって…。そこの方に何も言わずにここに来てしまったので、そちらに先にお話しをさせていただけませんか」
「ダメだ」
「っ!…リ、リヴァイさん…」
NAMEの話に返事をしたのは、丁度広間にやってきたリヴァイだった。
「ま、まぁまぁリヴァイ。別に話をしてくるだけだろ?ちょっとくらい」
「ダメなもんはダメだと言ってんだろうが」
「兵長、部屋にNAMEが居な…、あ、ここに居たのね、…て、あれ?」
そこへ、上から降りてきたペトラが広間に顔を出したが、只ならぬ雰囲気を感じ、思わず口を噤む。
「あ、あの、心配を掛けてると思うので…私が無事だということだけでも伝えたいんです」
「んなもん、お前はもうあそこに行く必要がねぇんだ。意味ねぇだろ」
「っ…」
「ちょっとリヴァイ!その言い方はないんじゃないの?」
「チッ、うるせぇな。いいか、お前が勝手にチョロチョロすることで毎回厄介ごとが生まれる」
「…!」
「…大体、お前みたいなガキにここ以外で何が出来る。余計なことは」
「リヴァイ!」「へ、へいちょ…」
―――パァンッ
「っ!?」
「え”…」「あ…」
言い過ぎを止めようとしたハンジとペトラの声も虚しく、その場に乾いた破裂音が響き、一瞬の静寂を生む。
まさかNAMEから平手打ちが飛んでくると思っていなかったリヴァイは珍しく一瞬身体が硬直したが、当の平手打ちを繰り出した本人が今にも零れそうな涙を堪え震えている姿が視界に映り、リヴァイはさらに目を見開いた。
「…こ、ども…扱い…、しないでください…!…た、確かに、私は…皆さんに迷惑ばかり掛けて…お荷物で…、足手まといです…。
…っ、けど!…、それを、どうしたらいいか…考えてるんです!守られるだけにならないように…、、、、
っ、……、こんな癇癪を起すのは、やっぱり…子供…です、ね…。…、すみませ…、一度、頭を冷やします…!」
「あっ、NAME、待って!」
NAMEは、大きくぺこりと頭を下げると、ペトラの制止も聞かずバタバタと自分の部屋へと走って階段を駆け上がっていった。
「…あーあ。…ほんとにバカだな。君こそ冷静になるんだね。何の為にここへ連れてきたのさ。まったく…。
NAMEのことは私が見てくるから。ペトラからも言ってやってくれよ!もう!バーカバーカ。リヴァイのバァーカ!」
それこそ、小さな子供のようにあっかんべーの顔を作りながら、ハンジは後ろ向きに階段を上っていった。
それを見遣り舌打ちと溜息が同時に出たような息を吐き椅子に座るリヴァイに、ペトラは眉を下げながら声を掛けた。
「…私も、…ハンジ分隊長の意見に同意です。…ちゃんと、お話、してくださいね」
「…ああ…。悪かった…」
「私に言っても仕方ないじゃないですか」
「……。」
冷たいペトラの返しに、複雑な気持ちでリヴァイは天井を仰いだ。
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