素敵な夢になりますように…
go on 18
Name change
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本部へ緊急招集命令がくだり、リヴァイ、ハンジ、モブリット、そしてエレンらリヴァイ班のメンバーは馬を走らせ本部へと戻ってきた。
リヴァイは、自分の執務室と隣のNAMEの部屋の窓にチラリと目を向けるが、今はそれどころではないと頭を切り替え、NAMEのことを思考から追い出した。
「!、戻ってきたか」
「エルヴィン!超大型巨人が現れたって」
「ああ。クロルバ区が突破されてすでに1時間は経過している。事態は深刻だ。手短に話そう」
団長室にノックもせずに入るハンジに、エルヴィンは咎めもせず話を始めた。リヴァイや他の者達もその話を真剣に聞く姿勢に入る。
「今言った通り、クロルバ区は悲惨な状況にあり、壁を塞がない限り巨人は侵入し続けてくる。つまり、我々調査兵団がやる事は二つ。
侵入している巨人の討伐、そして壁の封鎖だ」
「住民の避難は」
「駐屯兵と憲兵も動いている。避難誘導は彼らの仕事だ。…すでに本部にいた兵士達は現地に向かった。…エレン」
「はっ、はい!」
「壁を封鎖するには君の力が必須だ。硬質化の実験は進展したと聞いたがまだ可能性は低い。幸い、クロルバ区にはトロスト区と同様の大岩があったはずだ。その岩でもう一度壁を塞いでほしい」
「は、はいっ!!!」
エルヴィンの言葉に、エレンは胸を張って返事をした。
「つまり私達は壁を塞ぐ間、エレンを守れってことだね」
「そうだ。まだ鎧の巨人は現れていない。それにも注意しながら壁を塞がねばならない」
「なるほどね。了解」
「すぐに向かう!準備を急げ!」
「「ハッ!!!」」
「リヴァイ、ハンジ、モブリット。お前達にはまだ話がある」
敬礼をし、団長室を出て行くエレン達を見送り、エルヴィンに声を掛けられた三人は団長室に残った。
「今回の襲撃、エレンの出方を探る為か…もしくはエレンを奪うことが目的かもしれん」
「前に話してたやつだね…。次の壁外調査で巨人化の力を持った敵が仕掛けてくる可能性があるって」
「ああ。それの先行計画かもしれない。十分注意してエレンを守れ」
「了解」「…了解だ」
「…それとだ…。リヴァイ、落ち着いて聞いてほしいんだが」
「…なんだ。気持ち悪ぃな、さっさと言え」
「…最悪なことに、そこに…、クロルバ区にNAMEがいる」
「なんだと…!?」「えっ!?」「なっ、なんで…?」
予想だにしないエルヴィンの言葉に、リヴァイは勿論、モブリットやハンジも耳を疑う。
「どういうことだエルヴィン」
「…お前達が旧本部へ行った翌日だ。NAMEはここを出てクロルバ区へ…、っリヴァイ!」
リヴァイは踵を返し、団長室を飛び出す。背後からハンジの「NAMEは調査兵団を辞めたってこと!?」という声が聞こえてもきていたが、リヴァイは脇目も振らずにNAMEの部屋へと駆けた。
リヴァイは無遠慮にバン!と勢いよく扉を開けたが、部屋はもぬけの殻だった。
元々荷物の少ないNAMEだが、部屋には夜会の時に着ていたドレスしかハンガーに掛けられておらず、他に服など見当たらなかった。
ふと目に留まったのは、デスクの上に畳まれて置いてあるジャケットに、クッキーが入った小袋、茶葉、そして置き手紙だ。
リヴァイの心臓がドクンと音を鳴らす。
…なんだ、これは…
嫌な汗が額を伝い、リヴァイはその手紙を恐る恐る開いた。
『リヴァイさんへ。
別の場所から来た私を受け入れてくれて、そして親切にしてくださり本当にありがとうございました。
リヴァイさんには迷惑ばかり掛けて本当に申し訳なく思っています。
ですが、私はリヴァイさんや、皆さんに会えて本当に幸せでした。
感謝してもしきれません。
リヴァイさんに直接伝えず行くことを、どうか許してください。
私には何も出来ませんが、エレンの実験が成功し、人類に平和が訪れることを心から願ってます。
そして、リヴァイさん達調査兵団の皆さんが無事に生きてくれることを心からお祈り致します。
リヴァイさんに渡したかったクッキーと茶葉です。中々渡す機会がなくて…。
もらってください。ジャケットもお返しするのが遅くなってごめんなさい。
洗ってあります。ありがとうございました。』
「……、あの、馬鹿が…」
リヴァイはその手紙を内ポケットに乱暴にしまいながら再び駆け出した。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
約2時間前…。
「おばさま、ただいま戻りました!」
「NAMEちゃん、ご苦労さん!丁度今お得意さんから菓子をもらったんだよ。お茶でも飲みながら休憩しよう」
「わあ、私も頂いていいんですか?」
「当たり前だよ!昨日NAMEちゃんが届けに行ってくれたとこのお客さんでね。すごく喜んでくれてわざわざ持ってきてくれたんだ」
「そうですか、喜んでもらえたなら良かったです」
ここはクロルバ区のとある花屋。
NAMEは、2日前からここで住み込みの従業員として働き始めていた。
母と娘で営んでいた小さな花屋であったが、地域から愛される店で昔から利用する客も多い。
年頃の娘は先日結婚をし、今はこの家を出ている為母親一人で経営を続けていたのだが、先週腰を痛めてしまい、急遽住み込みのバイトを募集していたところだったのだ。
いつも利用する茶葉店の店主からたまたまその話を聞いた為、NAMEはここで働かせてほしいと、エルヴィンに伝えたのだった。
「いやあ、ほんとに助かったよ。先週から思うように身体が動かなくてね。NAMEちゃんが来てくれたお陰で配達の遅れもなくなって感謝してるよ。ありがとうね」
「そんな!微力しかお役に立てずで」
「何言ってんだよ!謙遜ばっかな子だね!調査兵団の新人だなんて聞いてたからどんな変人が来るんだと思ってたよ」
その言葉に、NAMEは苦笑いをしながら答えた。
「私は調査兵団にいましたが兵士ではなかったです。事務作業してるだけで、そこでも大して役には立てませんでしたし…」
「…そうなのかい?…こんな真面目で働き者なんだ、役に立ってないなんて事はないさ」
「…、ありがとうございます。…それと…、調査兵団の人は、変わり者だと思われてるんでしょうか…?」
「そりゃ、わざわざ巨人のいる外に行こうなんて、変わってるとしか思えないね。現に壁の外に行く度に何人も死んでるんだ。結果何も分からないしね。外へ行く意味が私らには到底理解できないよ」
「…」
女店主の言葉に、NAMEは確かに一般市民から見たらそう見えてしまうのだろうと納得した。
それでも、どうしても理解してほしくて、NAMEは「よっこらせ」と茶を汲みに行く女店主に言葉を掛けた。
「確かに、壁外調査へ行く度に多くの犠牲が出てしまってます」
「ん?」
「でも、それでも、調査兵団の皆さんは死のうと思って外へ行ってるんじゃないんです」
「NAMEちゃん?」
「外の世界、おばさまは見たことありますか?…この壁の中もとても広いとは思います。…、けど、世界はもっともっと、信じられないくらい広いんです!」
NAMEの真剣な眼差しに、女店主は口を挟むのをやめてただ真っ直ぐNAMEの話を聞くことにした。
「壁の中でなら自由なんて、そんなの自由なんて呼べません。人は、生まれながらにしてみんな自由なんです。どこへ行ったっていいんです!理由もないのに閉じ込められるなんておかしいです。
…、だから、調査兵団の皆さんは、その理由を調べて、人類の自由を切り拓く為に外へ行ってるんです。皆さん、意味もなく亡くなってるわけではないんです。…それだけは、分かって、ください…」
思わずポロ、と出てしまった涙をぐいと拭って、NAMEは「え、偉そうにすみません!」と笑顔を作った。
女店主はふぅ、と息を吐くと、NAMEの頭をお盆でポンと叩く。
「悪かったね。あんたみたいに若い子に諭されてちゃ大人失格だよ」
「あ、いえ、そんな」
「私らもさ、調査兵団が嫌いなわけじゃないんだよ。ウォールマリアも巨人に奪われて、いつここも…って不安になるし。調査兵団には頑張ってもらいたいってみんな思ってんのさ。
ただね、巨人には敵わないって思うと…」
「そんなことないです!だってリヴァイさんが居るんです!おばさま、立体機動装置で飛ぶリヴァイさんを見たことありますか!?本当に鳥みたいなんですよ!巨人の討伐数だって物凄くて!あ、それに、エレンって言う巨人化の力を持った子も仲間になって希望が見えてきてて」
「あはは、分かった、分かったよ。兵士長さんだろ?あの人は昔から有名だしね!確かに全く歯が立たないわけではなかったね。それにそうそう、そのエレン・イェーガーって子だね?そのニュースはみんな驚いたよ」
笑顔を見せた女主人に、NAMEもほ、と笑顔を漏らす。
「さ、お菓子でも食べながら話を聞かせとくれよ」
「え?」
「兵士長さんは、NAMEちゃんの恋人なんだろ?」
「えっ////!?ちちち、違いますよ!?」
「なんだ、じゃあNAMEちゃんの片想いか」
「おっおばさま!//////」
「あっはっは!分かりやすい子だねえ!そんなんじゃ兵士長さんにもバレバレだろう?」
「えっ、そ、そんなっ…///で、でも私も、自覚したのは最近、というか…」
ゴニョゴニョと独り言のように話すNAMEに、女主人はまたケラケラと笑った。
「ほら座んな!今お茶淹れてくるから」
「あっ、おばさま、私もう一件お届け頼まれてたんです。それだけ先に行ってきますね」
「あらそうかい?悪いね、」
「いえ!準備してすぐ行ってきます」
NAMEは注文を受けた花を手際よく集めてラッピングをしていく。
たった2日で仕事を覚え、しかも丁寧にそして人当たりの良いNAMEに、女主人はすっかり惚れ込んでいた。
「それじゃ行ってきます!」
「気をつけて行くんだよ。途中変な輩に絡まれたら、私には人類最強の恋人がいるんだぞって言ってやんな!」
「おおおばさまっ!こ、声が大きいですっ////」
店先でそんなやり取りをしていた時だった。
ードオォンッ
「!?」
聞いたことのない地響きと共に、何かが爆発するような大きな衝撃音が街全体に響き渡った。
音のした方角を無意識に振り向いたNAMEは、信じられない光景を目にする。
「あれは…な、に…?巨人…?……っ!!おばさま危ない!!!」
聳え立つ壁に手を掛け佇む、赤い筋肉が剥き出しの顔がそこにあった。
そしてさっきの爆発音から数秒後、悲鳴と共にとてつもない大きな岩や瓦礫が街に降り注いできたのだ。
我に返ったNAMEは、飛んでくる瓦礫に気付き女主人の手を慌てて掴んで引き寄せた。
ーガシャアンッ
「…ッ、」「あ、あ、巨人が、巨人が入ってくる…!!」
間一髪、瓦礫に潰されるのは免れたものの、潰れた店を見て絶句するNAMEに対し、女主人はさらに絶望の表情で口を動かす。
「逃げるんだよNAMEちゃん!」
「お、おばさま!でも、お店が…」
「何言ってんだ!!そんなことより、ここに居たら喰われちまうんだよ!早く内門へ逃げるんだ!!!」
あちこちで瓦礫が落ちてきているのだろう、大きな音が四方から耳に入ってくる。
一大事だと言う事は分かっているのだが、女主人の言葉がイマイチ飲み込めないNAMEは、女主人が大切にしてきた店をまだ見つめていた。
「店はまた建てればいいんだ!調査兵団なら巨人の怖さを嫌ってほど分かってんだろ!?」
その言葉に、NAMEはハッとした。
…そうだ、事務員とはいえ、私は調査兵団の人間だ。1人でも多く内門へ誘導する立場だ…!
NAMEはそう頭を切り替えると、力強く女主人の手を掴み、駆けてくる荷馬車に気が付き御者を呼び止めた。
「おじさん!待って!このおばさまも乗せてください!」
「っ、早く乗んな!!!」
「おばさま早く!」
「ああ!ありがとう。…NAMEちゃん、あんたも早く…」
「待ってくださいっ、私達も、乗せてくれませんか」
女主人が乗り込み、NAMEに手を差し伸べた時だった。同じく逃げてきた子供連れの母親が、荷馬車に乗せてくれと必死の形相で声を掛けてきた。
「っ、これ以上は乗せられねえよ…!あと1人だ!乗るなら乗ってくれ!もう出るぞ!」
「おじさん、私はいいですからこの2人を乗せてあげてください」
「NAMEちゃん!?」
「子供なら、大丈夫だろう、早く乗んな!!」
「早く乗ってください!」
「あ、ありがとうございます、ありがとう」
子供を抱きかかえた母親を荷馬車へ乗り込ませるNAMEに、女主人は腕を掴んで声を荒げる。
「NAMEちゃん!私はいいからあんたが乗りな!」
「おばさま、私は走れます」
「バカ言ってんじゃないよ、若い子が生きなきゃ」
「大丈夫!おばさま、ほんとに大丈夫だから!私には人類最強がついてるんです」
「…、NAMEちゃん」
「もう出すぞ!!!」と御者は馬を走らせた。
ニコリと笑ったNAMEに、女主人は何も言えなくなってしまった。
心配させない為の嘘には違いなかった。だが、どう話し合ってもNAMEは馬車には乗らないと悟ったのだ。
女主人はただただ、NAMEが無事に内門へ辿り着くことを願い、人類最強が助けに来てくれることを祈った。
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