素敵な夢になりますように…
go on 17
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書庫へ向かう間、俺は焦っていた。
アイツは、自分から男を誘うような奴じゃないのは分かっている。
だから、もしあの兵士の言う事が本当なら、同意の上か襲われてる可能性があるということだ。
後者は無いと信じたい。この調査兵団組織の中で、そんなクソみたいなことをする奴がいるなんて考えたくもねえ。
だが、前者ならどうだ…。
…チッ、とにかく、確認が先だ。
リヴァイは、鍵を持ってきます!と言うペトラに目配せだけ返し、書庫を目指した。
階段を上り、ようやく書庫がある階に辿り着くという時、微な物音と悲鳴が俺の耳に入ってきた。
間違いなくNAMEの声だった。
やっぱり襲われてやがるのかと頭に血が上った俺は、脇目も振らずに書庫の扉を目指した。
そして扉を蹴破る直前、中から楽しそうな声が入ってきたのに気付いたのだが、俺の脚は止まれなかった。
暗闇の中見えてきたのは、嬉しそうに見つめ合う、抱き合った二人だった。
…ああ、そうか。モブリットだったか。
俺はその組み合わせに妙に納得した。
こいつらは、俺が居ない間もいつも一緒にいた。
特別な感情が芽生えていてもおかしくはねえ。
なのになんだ、この言い知れぬ苛立ちは…
俺はこいつに惚れてるのか…?
いや…、確かに、俺には無いと思っていた好みのタイプが、実際は有るんだと気付かされた女だった。
異世界という訳の分からねえ場所から来た変な女だと思った。
だが、こいつの歌声は悪くないと思ったし、仕事に対する勤勉さも評価に値するものだった。
…昨夜、こいつを抱いた時、俺は柄にもなく興奮した。
地下にいた時は散々娼婦を抱いてきて、女に興奮なんてしたことなかったのにだ。
…いや。違うな、…それは、そういう対象として見ていなかったからだ。だから興奮しただけだ。
そうだ。俺はこいつに休めと言った。
それは乳くりあってこいなんて意味じゃねえ。
「てめえにはガッカリした」
気付いたら言葉が出ていた。
何かモブリットが言い訳してるようだったが、雑音にしか聞こえねえ。
NAMEは何故何も言わねえ。否定しろよ
『明日、お前も一緒に来るか?』
この言葉を、執務室で言い出しそうになったが言わなくて正解だったな…。
プライベートな時間をどう過ごそうが俺にとやかく言う権利はねえ。
そうだ、俺はこいつに、特別な感情なんて持っちゃいない。
「ペトラ、戻るぞ」
邪魔して悪かったな。せめて他の奴にはバレないようにしといてやる
俺は向かってくるペトラを制止させ、資材の確認へと戻った。
「思い違いで良かった、ですね?」
「…黙っていろ」
「あ、は、はい!……そ、そういえば、明日NAMEは旧本部へ連れていかれるんですか?」
「あ?連れて行くわけねえだろ。あいつは事務補佐だ。旧本部では必要ねえ」
「そ、そうですよね。すみません」
「余計な話は終わりだ。早く鍵を戻してこい。俺は先に下に行ってる」
「はっ!」
ペトラと別れた後、途中でハンジとすれ違い何か声を掛けられた気もしたのだが、リヴァイは構わず素通りした。
ハンジは、そんなリヴァイを見て何かあったのかな?と不思議に思ったが、数分後、その理由を知ることとなるのだった。
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ードンっ「きゃ…!…、っご、ごめんなさい、ちゃんと前見てなくて…ぁ…オ、オーサ、さん」
駆け足で部屋に向かっていたNAMEが角を曲がると、そこにはオーサが冷たい笑みを向けて立ち塞がっていた。
「あら、NAMEさんじゃない。書庫の清掃、終わった?」
「あ、…い、いえ。それが…」
「まあ出来るわけないわよねぇ。モブリットさんとこの時間までずっと二人っきりだったんですものね」
「え…、な、なんで、それを…?」
「ねぇ、親戚同士でヤルのってどうなの?興奮するの?」
「な、何を…!そ、そんなことしていません!それより、何故二人っきりだったと知っているんです」
「何故って。そりゃあ、…、私が閉じ込めた張本人ですもの」
「………え…」
「あんたに、リヴァイ兵長が掃除を頼んだってのも真っ赤な、ウ・ソ」
「……っ!?」
オーサは口の端をニタリと持ち上げ、不気味な笑みを浮かべながら答えた。
「な、なんで…、なんで、こんなこと…」
「フフッ…、ククク…、あはははは!!!」
そのまま、心底愉快そうに高笑いするオーサをただ見つめることしかできないNAMEは、ギリギリと胸が痛んだ。
オーサはさらに続けた。
「なんでかって?あんたが気に食わないからに決まってるじゃない。あんたと本気で仲良くなろうとしてると思った?あはは!ほんとおめでたいわね」
「…っ、」
「あんなに忠告してあげたのに相変わらず夜は兵長の部屋に出入りしてるみたいだし、呼んでもないのに巨人の実験場にノコノコ現れて役にも立たずに足を引っ張る。
挙句貴族のパーティーにまで分をわきまえず参加して、酔い潰れたんだかなんだか知らないけどあの兵長に抱き抱えられて帰ってくるなんて…。」
「っ…!、」
「兵長に誤解されたとでも思ってる?ハッ。馬鹿言わないでよね。それがあんたの正体でしょ?いい気味だわ!」
「……」
「…目障りなのよ。あんたなんか…、巨人に喰われちまえばいいのに」
何も言わず俯くだけのNAMEにそう吐き捨て、オーサはわざとNAMEの肩にぶつかりその場を去っていった。
ぶつかった衝撃で壁によろめいたNAMEは、そのままズルズルとしゃがみ込んだ。
…オーサさんが、仕組んだことだった…。全部、嘘だった…。
っ、リヴァイさんに説明を…
………、でも、本当にオーサさんの、所為なの…?
違う…。全部、私の所為だ。
オーサさんは、何も間違ったこと言ってない…。部外者の私が、周りの人の優しさに甘えた結果だ。
なのに…モブリットさんまで巻き込んだ。
全部、私の…
「私の…、っう、うぅ…っ」
人の居ない静かな廊下で、NAMEは声を押し殺して涙を流した。
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翌日、旧本部へと到着したリヴァイ班一行はハンジ到着後にエレンの実験を開始する為、ハンジが来るまでは各自清掃を言い渡された。
「ペトラさん、あの…、兵長、今日どうしたんでしょうか…」
草むしりを行なっていたエレンは、窓を拭いているペトラに問い掛けた。
「…機嫌が悪そう、てこと?」
「あ、はい…、あ、いえ、なんか、元気が、無いように見えまして…」
「…エレンにもそう見えるのか」
「え?」
「ううん、…、多分、兵長自身も気付いてないのかもね。自分の気持ちに」
「…?は、はあ…。」
ペトラのよく分からない応えにエレンは首を傾げる。
「…私も、そろそろ覚悟を決めないと」
「?…ペトラさんも何か悩ん…」
「おいエレン!ハンジさんが来たぞ!くっちゃべってねえでさっさと集まれ!」
「!はっはい!!」
呼びに来たオルオの声に、エレンとペトラの雑談はそこで終了となった。
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「エレンは?」
「庭の草むしりだが、お前が来たら食堂に集まるよう伝えてある」
「あそ。……ねえ、昨日のこと聞いたんだけどさ、」
「あ?何の話だ」
「とぼけないでよ。書庫での話さ」
「…その話なら俺のいないとこでやれ」
「違うって!別にモブリットとNAMEのひやかしをしたいんじゃなくてさ!リヴァイがきっとまた誤解してるって話をしたいんだ」
「…誤解も何もねえだろうが。あいつらは互いに」
「ああ、ほら。なんでリヴァイってNAMEのことになると早合点しちゃうかなぁ。まあ理由は分かってるけどさ」
ハンジのニヤリとした笑みに、リヴァイはさらに苛立ちを覚える。
「あ?なんでてめぇが俺の事情に詳しい」
「まあまあ、そこは置いといてさ!昨日の一件、NAMEは何も悪くないし、あの二人も別に想い合ってるわけじゃないみたいよ!(モブリットは分かんないけど)」
「…どう言う意味だ」
やっとまともに話を聞くようになったか、とハンジは一呼吸おいて話し始めた。
「昨日、あの二人は書庫に閉じ込められていたみたいだよ。誰かによってね」
「…なんだと」
「まず、私がモブリットにある資料を探すようあの書庫へ行かせたんだ。そこへ清掃しにきたと言うNAMEが来て閉じ込められたらしい」
「…俺は昨日、あいつに部屋に戻って休めと言った。何故あんな場所を掃除する必要がある」
「そこなんだよ!しかも鍵をかけられたのはNAMEが部屋に入ってすぐだったらしい。これはさ、NAMEを狙った手口としか思えないよ」
「…動機はなんだ。あいつを閉じ込めて誰が得する」
「…まあ、大方の予想はつくけどね」
「なんだ。スカしてねえで言え」
「まあ待ってよ。モブリットがNAMEから聞いた話によるとだ。ある兵士に、リヴァイからの言伝であの部屋の清掃を頼まれたみたいなんだ」
「俺の言伝だと…?そんなことした覚えねえぞ」
「うん。だと思ったよ。あなたならそんな回りくどいことせず直接言うもんね。ま、とどのつまり、その兵士がNAME達を閉じ込めた犯人だと思うんだ!」
「誰だそれは」
「そこまではNAMEは話さなかったらしいけど…、心当たりならある」
「なに?」
顎に手を添えながらハンジは続けた。
「以前、NAMEが3、4人の兵士に突っ掛かられてたっぽいとこに遭遇してさ」
「あ?いつだそれは」
「いつだったかな…?確か…前回ここに来るよりもちょっと前くらいだったような…」
「なんであいつが兵士に突っ掛かられる」
「いや、実際は分かんないよ?NAMEは怪我してたけど否定もしてたし」
「怪我だと?…、…おい、それは腕の傷か?」
「ああ、そう!それ!」
「自分で転んだと言っていたぞ」
「そりゃリヴァイには本当のことなんて言わないと思うよ。私らにだってそう言って誤魔化してたしさ」
「…ならどうしてお前はそうじゃないと思う」
「んー?女のカンってやつだね」
「チッ」
「そりゃさ、突然調査兵団に入ってきた女が兵士じゃなくて事務員でさ、しかもいきなりリヴァイの補佐だなんて聞かされてみなよ。どんなルートを辿れば一般市民が憧れの兵士長の側近になれるんだって思うだろう?」
「くだらねえ…そんなこと気にしてる暇があるなら…、、!」
「しかもあーんな美人だし、リヴァイに恋焦がれてる子達からしたらそりゃあ目障りだったん…」
「そうか…それが」
「えっ?なに?」
『…ある兵士の方達に、咎められたんです』
『その…、私の存在が受け入れられない、ようで…』
あいつが言っていたのはそのことだったのか…
「どうかした?」
「いや、…他に思いつくことはねえのか」
「うん。モブリットが聞いたみたいなんだけど、前にソニーとビーンのとこにNAMEを連れてきただろ?」
「ああ」
「あの時、駐屯兵に混じってうちの兵士達も何人か来てもらっててさ」
「…」
「NAMEが怖がっているのを嘲笑い、調査兵団の面汚しだとか罵る子達がいたそうなんだ。
モブリットが注意しようとしたけど、NAMEから、大丈夫だからハンジさんのところに行ってあげてと笑って言われたんだって」
「…」
話を聞きながら、リヴァイは沸々と怒りが込み上げてくる。
NAMEをバカにする兵士にもだが、そんな屈辱にどれだけ耐えてきたのか気付きもしなかった自分にも腹が立ったのだ。
しかし、次の言葉で絡まった糸がピンと解けた気がした。
「モブリットがその時見たのは、サムスン班のオーサとラッツとヤーニャだったらし…」
「オーサ、だと?」
「うん?…そうだけど、なに?」
「昨日俺に、書庫にNAMEがいるんじゃねえかと声を掛けてきたのがオーサだ」
「ええ?そうなの?なんて言われたの?」
「…書庫から如何わしい声が聞こえると」
「は?」
「注意しようとしたが鍵が掛かっていた。近くで聞いたらNAMEの声だった気がすると言っていた」
「…。なるほど。そーいうことね。それであの二人が居たらそりゃ勘違いもするか」
「…つまり俺は、まんまと踊らされたということか」
「まあ、本当にNAMEの声がそーいう声に聞こえちゃったって可能性も無いわけじゃ無いけど、オーサの策略にハマったという可能性のが高いだろうね」
「チッ…」
「とにかく、あなたはNAMEにすぐ謝りなよ?可哀想に」
「ああ、分かってる。…本部に戻ったらな」
ハンジは、この一件の発端を知りスッキリしたような顔になっていたが、リヴァイは反対に、NAMEを傷つけた自分の不甲斐なさを呪った。
もう憎まれているかもしれないが、それでも話さねば。と強く思うのだった。
そしてそれから約2日、エレンの巨人化の実験は順調に進み、硬質化の実験も進展していた頃だ。
突如現れた超大型巨人の襲撃により、ウォールローゼの西の城外都市、クロルバ区の壁が破壊され巨人が侵攻しているという、旧本部にやってきた早馬によってリヴァイ達は驚愕の事実を知ることとなったのだ。
to be continued...
2022.4.9
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