素敵な夢になりますように…
go on 17
Name change
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「…、ハンジさん、来ないですね」
「…そうだね…」
待てど暮らせど頼みの綱であるハンジが来る気配は全く無く、NAMEはさすがに遅すぎると思い始めた。
「もしかして…、モブリットさんが資料探してること忘れちゃってるんじゃ…」
「うーん…、必要な資料だと言っていたから無いと困るはずなんだけどな…。まあでもあの人の場合、別のことに夢中になってしまってる可能性もなくはないね…。」
「そんな…」
「でも、リヴァイ兵長も資料を探しに来るんだろ?」
「…そ、その筈なんですけど…」
と、NAMEが外の様子を伺おうと立ち上がり、扉に近付いたその時だった。
隙間風により、辛うじて部屋を灯していた蝋燭の灯りがフッと消え、部屋は一瞬で真っ暗闇となってしまった。
「っ!!ひゃあ!!!」
NAMEは、周りに何も無いのが不安でたまらず、パニックであらぬ方向へと走り出した。
しかし、闇雲に動いた為周りの木箱に躓き、その勢いのまま本棚へと激突してしまい、その振動で上からバサバサと資料が落ちてきてしまう。
「きゃあ!」
「NAME!?う、動いちゃダメだ!今行くからそこにいて!」
モブリット自身もほぼ何も見えていないが、音だけを頼りにNAMEのもとへと駆け寄る。
すぐに見つけたモブリットはNAMEの肩に手を置き、もう片方の手を頭に優しく置いた。
「大丈夫、俺はここにいるから落ち着いて」
「モブリットさん…」
NAMEは、モブリットのその優しい声に落ち着きを取り戻してきたのだが…
ーバサッ
「っひっ!!!」「っわ…!」
背後からの物音に思わずNAMEはモブリットにガバリと抱き付く。突然のことでバランスを崩したモブリットは、抱き付いてきたNAMEごと倒れ、尻もちをついた。
「NAME、大丈夫。本が落ちただけだから」
「ご、ごめんなさぃ…、痛かったですよね」
「ふっ…。ははは。怖がりだなぁ、NAMEは。」
「わ、笑わないでくださいよぅ…!こ、怖いものは怖いんですっ////」
そんなやり取りをしていた時だった。
ーバキィッ!!!
「「っ!!!?」」
突如扉が壊され、廊下の明かりに照らされたリヴァイが現れたのだ。
「っ!?」
「あ、兵長…!」
「え、リヴァイ、さん…!よ、良かった!モブリットさん、やっと出られ…」
「おいNAME」
「、は、はい」
「俺はお前に今日は休めと言ったはずだ。…こんなとこへ来ていいとは言ってねえ」
「っ、…は、はい…。…あ、あのでも」
「ハッ。…俺はどうやら、お前を買いかぶっていたようだな」
「え…」
「てめえにはガッカリした」
「へ、兵長!NAMEはただここの清掃を」
「んなもん俺は頼んじゃいねえよ。モブリット、お前もこれ以上俺に口出しするな」
有無を言わせないその言葉に、モブリットは口を噤むしか出来ない。
そしてNAMEは、リヴァイが心底軽蔑したという眼差しで自分を見下ろしているのを、何も言えずにただその目から逃げ出したい気持ちで床を見つめることしか出来なかった。
「兵長〜!鍵持ってきまし…ってあぁ!兵長扉壊しちゃったんですか!?」
部屋が冷たい空気で静まり返ったその時、廊下から明るく朗らかな声が響く。
その声に視線を向けたNAMEだったが、視線を上げたことをすぐに後悔した。
「ペトラ!戻るぞ」
「ええ?で、でも」
「あいつの思い違いだろう、ここに用はねえ。鍵は戻しておけ」
リヴァイは一切こちらを見ることなく、そうペトラに言いながら部屋を後にした。
外からペトラの明るい声が聞こえてくるが何も耳に入ってこなかった。
ただ、パタパタと床を濡らす涙が零れ落ちるだけだった。
「NAME…!っ…、兵長とちゃんと話をしなくていいの?」
「っ、話、なんて…、出来ません…、私が、悪いんです」
「君があんな言われ方をされるようなことする訳ないじゃないか。兵長はきっと何か誤解して」
「ち、違うんです…!私が、出しゃばったマネしてしまったんです…、」
「NAME…」
そうだ…。リヴァイさんは私を気遣って命令しなかったのに…。
なのに私は良かれと思って…、
ううん、それも違う…!
あの時、オーサさんは私が行くと言ってくれたのに、オーサさんの手を煩わせるわけにはいかないという建前でその申し出を断った。
本当は、リヴァイさんからの仕事を他の人に取られたくなかった。
リヴァイさんの、「助かる」や「良くやった」の言葉を誰にも掛けてほしくなかった。
全部自分の為だ…
…なにが、なにがこれ以上望まないだ…。
こんなにも独占欲が強くて、ペトラへの信頼度がさらに高くなることに恐怖を感じるほど嫉妬深い。
なんて浅ましく醜い人間なんだろう…
結局清掃なんてこれっぽっちも出来てないし、むしろ余計に散らかしてさらにはモブリットさんの足も引っ張ってる…。
『てめえにはガッカリした』
「っ…、」
そう言われて当然だ。
泣くな…!私は泣いていい立場じゃない!
泣くな…!…泣くな…!!
お願い、止まって…!
じゃないとモブリットさんが心配してしまう…!
これ以上、周りの人に迷惑掛けたくない…!
涙止まって…!
「あれ?ちょっとモブリット、なに扉壊して…っておおお!?」
「!分隊長…!」
「っ!」
ようやく現れた待ち人だったが、NAMEはパッと顔を隠す。だが、今の驚きのお陰で涙が止まり、急いで零れた分を拭った。
「な、なんだよ〜、帰ってこないと思ったらNAMEとイチャついてただけか!」
「は?何を言ってるんですか分隊長!」
「だぁってさー、モブリットってばそんな大事そうにNAMEのこと抱きしめちゃって!」
「いや、これはそうじゃなくてですね」
「いいっていいって恥ずかしがらなくてさ!!ねえねえ、もうキスはした!?それとももうその先まで…」
「分隊長!いい加減にしてください!」
「あれ?NAME、泣いてた…?…っ!もしや!!モブリットに無理矢理!?」
「分隊長!!」
「ハンジさん、違います。モブリットさんは明かりが消えて躓いた私を抱きとめてくれたんです!」
「え?そーなの?」
「はい。転んだ時に本棚から資料とか落ちてきちゃって、その時当たったのが痛くて涙が出ちゃったんです」
そう笑って誤魔化すNAMEに、ハンジは「なーんだ」とつまらなそうに返した。
「それよりも分隊長、あなたが探せと言っていた資料、全然見つかりませんでしたよ。本当にここにあるんですか?」
「あ。あー、はははは。アレね。アレ、実は私のデスクに眠っててさ!」
「………。はぁ…。そんな事だろうと思いましたけど…。それならそうと呼びにきてください」
「ごめんごめん、無いって分かったら戻ってくると思ってたんだよ!しばらくは研究に没頭しちゃってさ!でもさすがに遅すぎるからこうして様子を見にきたんじゃないか」
「遅すぎます!!」
尚もごめんごめん、と楽しそうに笑うハンジを一瞥すると、NAMEは徐に立ち上がった。
「、NAME…?」
「私、先に戻りますね。清掃は明日しておきます!リヴァイさんも資料必要無くなったみたいですし…。だから、あの、ここ、このままにしておいてください。それじゃ、お疲れ様です!」
「NAMEっ」
「…?」
逃げるように立ち去るNAMEの背を、モブリットは追いかける事は出来なかった。
「なんかあった??…あ!変な意味じゃなくてさ!」
「…、実は、さっきまでこの部屋に閉じ込められてしまってまして」
「えええ!?なにそれ!てか男女二人が密室に!?おおお、そんな最っ高に滾るシチュエーションでナニして…」
「何にもしてませんから!まったく…その悪趣味な思考をなんとかしてくださいよ」
モブリットはやれやれと、我が隊の隊長に呆れた視線を向けるのであった。
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