素敵な夢になりますように…
go on 16
Name change
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執務室の前に到着すると、ようやくリヴァイが「入れ」と声を掛けた。NAMEは中に入り、リヴァイが扉を閉めたのと同時に言葉を発した。
「あ、あのリヴァイさん」
「なんだ」
声を掛けた瞬間、即座にくる返事と若干冷たさを感じるその声にたじろぎつつNAMEは続ける。
「ゆ、昨夜のこと…、なんですが…」
「…昨夜のことは忘れろと言ったはずだ」
「あ…、えと、そう、なんですが、でも」
「俺も忘れた。この話は終わりだ。仕事にかかれ」
「っ…、は、はい…」
…お礼も、言わせてもらえないの…?
…そりゃ、そうか。リヴァイさんにとっては、面倒で煩わしい時間だったに違いない…。
ただでさえモテる人なのに、私まで好意を持ってるなんて知られてしまったらきっと嫌われる…。こうやって、傍になんていられなくなってしまう…。
有無を言わせない態度のリヴァイにNAMEは落ち込むとともに、自分の気持ちは絶対に知られてはいけないと思った。
リヴァイに告白しては振られたという話は何度か耳に入ってきたし、その度にイラついているリヴァイを何度か見掛けた。そして、頭にちらつくのはペトラだ。
彼女がリヴァイを好いているのは明白で、周りも応援しているしリヴァイを狙っている者達でさえ、ペトラなら、というムードでもある。
なにより、NAME自身もペトラが大好きで幸せになってほしいと思っているのも事実だ。リヴァイとの進展を心から応援できるかと言われればそれは嘘になるが。
だが、どうしたって自分の出る幕がないことは分かっていた。
NAMEは、自分に出来ることだけに集中し、リヴァイとの関係は今まで通り、これ以上を望まないよう自分を律することにした。
・-・-・-・-・-・-
その後、余計な話は何一つせずNAMEは書類整理に没頭した。
その甲斐あってか、夕方には頼まれていたすべての仕事が片付いた。
「ふぅ…」
「…、終わったか」
「、はい。確認、お願いします」
「ああ。」
リヴァイはここに置けというふうに視線を自分のデスクに動かす。
NAMEはその目配せ通りに、書類を置きに立ち上がった。
「……丁度いい、お前はもう部屋に戻れ」
「え、でもまだ」
「いいから休め。…ろくに寝てねえんだろ?ひでえ面だぞ」
そうリヴァイに言われ、NAMEは思わずパッと両手で顔に触れる。
確かにリヴァイの言う通り、随分早くに目が覚めてからはその後眠りにつくことが出来ずにいたため、目の下には濃いクマが出来ていた。
「で、では…、お言葉に甘えて今日は失礼、します」
「ああ」
今日は一段と冷たく感じるリヴァイの態度に精神的にダメージを受けるも、きっとこれもリヴァイの優しさだろうし、自分でこれ以上を求めないと誓ったばかりなのだから迷惑は掛けたくないと思った。
「明日…」
「え?」
「…いや、いい」
「…?」
部屋から出ていく直前、リヴァイが一瞬声を掛けたがすぐに書類に向き直ったため、NAMEは首を傾げつつ「お先に失礼します」と頭を下げ部屋を出た。
「…、先にご飯済ませちゃおうかな…。」
執務室から出て隣の自室に入ろうとしたNAMEだったが、少し早いが混み合う前に夕飯を済ませてしまおうと踵を返す。
そして食堂に着く直前、背後から声を掛けられたNAMEは、呼び止めたその人物を見て一瞬目を見開いた。
「オーサ、さん…」
そう、彼女は以前、NAMEに突っかかってきた兵士だった。
「な、何か、御用でしょうか」
散々なじられ、馬鹿にされていたNAMEは無意識に身構えてしまう。しかし、彼女から発せられる言葉は予想外の物だった。
「この間は、酷いこと言ってごめんなさい」
「え…」
「反省したの。悪かったわ…。」
彼女からのその言葉に、NAMEは身体の内側からぶわっと嬉しさがこみ上げてくるのを感じた。
「い、いえ…。私も、オーサさん達に言われてその通りだな、って思ったので…。だから気にしないでください」
そう微笑みかければ、オーサも「そう言ってもらえてよかったぁ」と笑顔になった。
「あ。そうだ!お昼の時なんだけど、リヴァイ兵長から言伝もらったの」
「?私に、ですか?」
「なんか旧本部へ持っていく資料があるらしいんだけど、それが北の棟の書庫にあるから掃除だけしておいてほしいって。」
「え、でもさっきまで一緒にいましたけどそんなこと一言も…」
「あー、まだ言われてなかった?じゃあ自分でやっぱり探すのかな?なんかあんたが疲れてそうだから頼むかどうか悩んでそうだったけど」
そうオーサに言われ、ハタとNAMEは思い出した。
…そういえば…、部屋を出る直前、リヴァイさん何か言いかけてたような…。
旧本部へ持っていくのなら今日中に探したいはずだ。…きっと私の顔色を見て命令しなかったんだ…
「あんたが疲れてるなら私がやっておくけど」
「いえ!大丈夫です。これから行ってきます。オーサさん、教えてくれてありがとうございます!」
NAMEは「鍵なら開けてあるから」と言うオーサに礼を言い、北の書庫を目指した。
・-・-・-・-・-・-
本部の北の奥まったところに位置し、普段から人の往来がほとんどないその書庫へとNAMEは足を踏み入れた。
確かに、ホコリがかなり溜まっているこの部屋にはリヴァイは近づきたくないだろうなと思った。
ある程度の掃除道具を途中で準備したNAMEだったが、薄暗いその部屋を見て燭台も必要だったと感じ、一度戻るかと身体を反転させようとした瞬間、部屋の奥から馴染みのある声が聞こえた。
「あれ?NAME?どうしてこんなとこに…」
「モブリットさん!」
部屋の一つ目の本棚の裏で脚立を使っていたモブリットが、NAMEの出す物音に気付き棚の上から声を掛けたのだった。
モブリットに気付いたNAMEはすぐさま本棚の裏へと回った。
しかしその時、部屋の扉から出たカチャリという微かな音に、二人は全く気付かなかった。
「探し物ですか?」
「そう、分隊長に頼まれてね。ただあまり使われてない書庫だし、しまい方も乱雑で見つからなくてさ」
「そうなんですね。私はここの清掃をしに来たんです。丁度良かったから私も掃除しながら探すの手伝いますね」
「ありがとう。…でも大丈夫かい?今朝も様子がおかしかったし顔色も良くないみたいだけど」
「ちょっと寝不足なだけで体調は全然大丈夫ですよ。それに、明日から2.3日はリヴァイさんは旧本部に行かれるので私はほとんど仕事がないので」
「だから明日しっかり休みます」と言って笑顔を向けるNAMEに、モブリットは眉を下げなら微笑んだ。
「あ、先に明かり持ってきますね。もうすぐ陽も暮れますし」
「ああ、助かるよ。俺が持ってきた明かりだけじゃ見えづらくなってきたとこだったんだ」
そう伝えたモブリットは部屋にある唯一の小さな窓に視線を移し、こんな小さな窓では月明りもほとんど入らないだろうと思った。
そんなことを考えていると、扉の方から「あれ?」という声が聞こえてくる。
「?NAME?どうかした?」
「…、モ、モブリットさん…、か、鍵が…掛かってます…」
ガチャガチャとドアのレバーを動かすNAMEの姿とその言葉に、モブリットは一瞬思考が止まった。
「押す…?引く…?だ、ダメです…あきません…っ」
「NAME、代わるよ。古い扉だから建付けが悪いのかもしれない」
少々パニックになっているNAMEを宥めるように、脚立から降りたモブリットはNAMEの肩に優しく手を置いてドアのレバーを握った。
「うーん…、確かに鍵が掛けられてるな…。おかしいな…。鍵は所定の位置に無かったし俺が来た時も開いてたけど…。NAME、ここに来る前鍵は開けた…っ!?NAME!?」
モブリットは現状を確認し鍵の状況を伺おうと振り返ると、ガタガタと震えているNAMEに気が付きギョッとした。
「ど、どうしたの?顔が真っ青じゃないか」
「…わ、い…んです…」
「え?」
「こ、怖い、んです…暗い、所…。ど、どうしよう…で、出られなくなったら…」
「NAME、」
「こ、こんな奥まった所、誰にも気付いてもらえないかもしれない…」
「NAME、一度落ち着いて」
「叫んでも…、きっと聞こえない…!蝋燭もすぐ消えて真っ暗に」
「NAME!」
信じられないくらい恐怖を感じ、今にも泣き出しそうなほど悲壮な顔で震えるNAMEを、モブリットは優しくその身体を抱きしめた。
「っモ、モブリットさん…?」
「…大丈夫だから。…こうしていれば、少しは怖くないだろ?…大丈夫さ。俺が中々戻らなければハンジさんが様子を見に来てくれるから」
だからもう少しの辛抱だよ、と言って抱きしめながら頭をポンポンと優しく触ってくれるモブリットに、NAMEは幾分か落ち着きを取り戻した。
「…そ、そうですよね。リヴァイさんも資料を取りに来るみたいですし…。ごめんなさい、取り乱してしまって…。」
「落ち着いたなら良かったよ。…どうする?離れる?それとも、怖いならこのままでいようか?」
「あ////、だっ、大丈夫ですっ!す、すみません…!」
そう言って、NAMEはモブリットの胸に両手を置いてパッと離れる。
モブリットはフ、と笑うと、「じゃあ真っ暗になる前に分隊長の目当てのものだけでも探しとかないとな」と再び本棚の裏へ戻ろうと身体を反転させた。
しかし、モブリットが進もうとした瞬間兵団服のジャケットの裾を掴まれ、身体がクン、と引かれる。
疑問符を浮かべながらゆっくり振り返れば、NAMEが小さな身体を更に縮こまらせ、申し訳なさそうに、それでいて恥ずかしそうにモブリットのことを見上げていた。
「…そ、傍には、…いてもらってもいいですか…?」
「っ…//////!」
その魅惑的な表情と言葉の破壊力の凄まじさたるや。
モブリットは「も、もちろん」と返事をしながらも慌てて視線を逸らした。
…この子は…。これが無意識なのだから困ったものだ…。
モブリットは、どきりと跳ねた心臓と熱の篭り始めた下半身を落ち着かせるように一度大きく息を吐くと、NAMEの手を握って笑顔を向けた。
「俺は資料を探してるけど、近くにいるから離れないで」
「モブリットさん…、はい、ありがとうございます。」
モブリットの優しい笑顔にほ、と安心したNAMEは、そのまま一緒に資料を探すのを手伝った。
・-・-・-・-・-・-
閉じ込められてからどのくらい経ったのだろうか。陽はとっくに暮れ、手元も見えない上に辺りには木箱などが散乱していた為、この状態で歩き回るのは賢明でないと判断したモブリットは、資料を探すのは諦め、NAMEの手を引き空いたスペースに腰を下ろした。
「大丈夫かい?」
「はい…。いきなり暗い所に入ったり一気に真っ暗になったりするとパニックになってしまうんですけど少しずつ目が慣れてきました。…それに、モブリットさんが居てくれるので…、一人じゃないって思ったらそこまで怖くないです」
暗がりでも分かるNAMEの明るい笑顔に、モブリットは素直に可愛いなと思った。
・-・-・-・-・-・-
「リヴァイ兵長、明日運ぶ資材の準備、完了しました!確認お願いします」
「ご苦労だった、今行く」
ペトラから報告を受けたリヴァイは、資材の確認に外へ向かう。すると、前から来る一人の兵士に呼び止められた。
「兵長!お疲れ様です、あの、申し伝えたいことが!」
「あ?…お前は確か」
「だ、第6班、オーサ・バッロです!」
「なんだ。手短に言え」
「は、はいっ!じ、実は、北の棟の書庫にて如何わしい声を聞きまして…!」
「あぁ?北の書庫だと?」
リヴァイは告げられた場所を思い浮かべ、フンと鼻を鳴らした。
「…んな誰も寄り付かねえ場所からそんな声が聞こえてくるなら兵士同士がよろしくやってんじゃねえのか」
「へ、兵長、も、もう少し言い方を」
「チッ…、そもそも、そんなことをいちいち俺に報告すんじゃねぇ。お前の班の班長にでも言って解決してもらえ」
「…、NAMEさん、の声だったと思うんですよね…」
ペトラに物言いを諭されたリヴァイは、不機嫌さを露わにしながらオーサの横を通り過ぎる。
しかし、背後から聞こえたオーサの言葉に、リヴァイは思わず立ち止まりゆっくりと振り返った。
「夕方頃、北の棟を清掃している時に見たんです。書庫に入っていくNAMEさんを。…そのあと、少ししてから忘れ物を取りに戻ったら、書庫から、その、厭らしい声が聞こえてきまして」
「…ほんとにそれはNAMEだったのか」
「はいっ!見たのは間違いなく!…業務時間中でしたので注意しようと思ったんですが鍵が掛かっていて。…その時扉の奥から、NAMEさんだと思われる声が」
「兵長っ」
それを聞いた途端、リヴァイは踵を返しツカツカと歩き出す。ペトラはそのあとを慌てて追い掛け、残されたオーサは更にその背中へ向けて言葉を放つ。
「私が邪魔しに上官に告げ口したと思われたくないので、名前は伏せておいてくださいー!」
オーサのその言葉に、ペトラは一瞬振り返ったがリヴァイは何も答えずただ真っ直ぐ北の棟へと向かって行った。
…フっ。これであの女の信頼も地に落ちたわね。
本当はあの女だけ閉じ込めて自分の立場を分からせてやるつもりだったけど…
まさかモブリットさんが居るなんて。
…フフフっ。急遽思い付いたにしてはイイ考えだったわ。今何もしてないとしても、一回ヤッた後だと思うでしょうしね。
「アハハ!ザマァみなさい。あんなに警告してやったのに調子に乗って貴族のパーティーにまで行った報いよ」
誰も居ない廊下に、オーサの高笑いが暗く響き渡った。
to be continued...
2022.3.14
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