素敵な夢になりますように…
go on 16
Name change
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「あ!おはよー!NAME!こっちこっち」
「お、おはようございます。お二人とも早いですね」
朝、食堂に顔を出せば、ハンジとモブリッが早朝にもかかわらず一緒に朝食をとっていた。NAMEはハンジの隣にスープの乗ったトレイを置き、ゆっくりと腰掛ける。
「今日からまたエレンの実験再開だからね!気合い入りまくりさ!」
「分隊長…、あまり気合いを入れ過ぎるとまたリヴァイ兵長に怒られますよ」
ーガチャンッ
「リヴァイ」という名前に、思わず反応してしまったNAMEは、飲もうとしていたスープのスプーンを落としてしまい二人から大丈夫か?という視線を向けられた。
「す、すみません。手が滑りました」
「ねえ、それよりさ!昨夜の夜会はどーだった!?資金集まりそう?変な奴とかいなかった?あ!メンフィス侯爵ってどんな貴族だった!?」
「分隊長、そんな矢継ぎ早に…。NAMEも困りますよ」
「だって昨夜随分遅くに帰ってきたんだろう?話聞きたかったのに中々帰ってこないからさ。今日聞けるの楽しみにしてたんだ!」
そうワクワクとした瞳を向けられ、NAMEはパッと視線を自分のスープに向けた。
「あ、ごめんなさい…、実は私、酔っ払ってしまって…、それに途中から寝てしまったみたいでお部屋を借りて休ませてもらってたんです」
「えー!?そんなお酒飲んだの!?二日酔いとか大丈夫!?」
「の、飲んだのが初めてだったので…でも少ししか飲んでないので大丈夫です」
「それは大変だったね。きっと慣れない場所で疲れも出たんだよ。…今日はゆっくり寝てなくていいの?」
「はい!昨夜ろくに働けてないので今日はしっかり働かないといけないので…」
「相変わらず真面目だなぁ。ちょっとくらい休んどきゃいいのにさ」
ハンジとモブリットに心配され、NAMEは後ろめたさを感じながらスープを啜った。
…目が覚めた時、私は自室のベッドだった。
外は薄暗く、朝なのか夜なのかも一瞬分からなかったけど、スマホで時間を確認すればまだ朝の4時前だった。
スマホは、こちらの世界に来て随分と経つのに不思議と充電が減ることもなくそのまま使えている。
とは言っても相変わらず圏外で、使える機能はカメラやライト、電卓、そして時間を確認したりするくらいだ。
散々ハンジさんに色々と調べられたり聞かれたりしたけど、巨人を倒す要素は見つからなそうだった。
……なんて、現実逃避でそんなことを考えるくらい、昨夜の出来事は本当に夢だったんじゃないかと思いたい。
でも、勿論夢じゃないことも分かってる。自分の姿を見れば元通り綺麗にドレスを着てはいるが、ブラもショーツも身につけていないし、代わりに男物のジャケットを羽織っていた。
それが誰のものなのかなんてすぐに分かった。
だって、ずっと見ていたから。
会場で女性達に囲まれてる時はすごくソワソワした。
時折り、露出の激しい女性が腕に絡みつき、その豊満なバストを押し付けているのも見えてひどく動揺した。
やめて…、そんな厭らしい手つきでその人に触らないで…
お願い、他の人に微笑みかけないで…
私は醜く嫉妬をし、そして、あの伯爵に触れられた時、真っ先に思い浮かんだことでようやく気が付いた。
私はリヴァイさんが好きなんだと。
ーガチャンッ
「っ!?NAME?大丈夫?」
「あ…」
再びスプーンを落としたNAMEに、「やっぱり疲れてるんじゃないの?」と声を掛けるハンジと心配そうに見つめるモブリット。
NAMEはガタリと立ち上がると、先に戻りますと伝えて食堂を後にした。
残された二人は「大丈夫かなあ」とこぼしながらNAMEの後ろ姿を見送った。
……いや、いやいやいや、私、私ってば、好きだと気付いたばかりの人とあんな、あんな…
兵舎の廊下を歩きながら昨夜のことを思い出したNAMEは、みるみる顔が赤くなっていく。
…ど、どうしよう…、、一体、どんな顔して会えばいいの?
「……、…、」
リヴァイさんは優しい人だからああ言ってくれてたけど…、結局はあそこに居れば誰とでも寝ると思われてもおかしくないよね…
「……、」
違うの…!居てくれたのがリヴァイさんだから…、だから、……、でも、そんなこと…言える、わけないし…。
言えたとしても…ダラシなく求めたのは私だ…。軽蔑されても当然…
「NAME」
ーびくっ「はっはいっ!!」
急に肩をつかまれ、驚いたNAMEが大きく返事をすると、そこには同じく驚いたエルヴィンが立っていた。
「驚かせてすまない。何度か声を掛けたんだが」
そう言って微笑むエルヴィンに、NAMEは慌てて頭を下げた。
「す、すみません!…考え事を、していて」
「気にしなくていい。昨夜は大変だったからな」
その言葉にどきりとした。エルヴィンは一体どこまで知っているのだろうかと。
エルヴィンは「おいで」と言うように目配せをして歩き始める。NAMEはそのあとに続いた。
「ドレット伯に薬を盛られ休んでいたとリヴァイから聞いたよ。…もう体調は大丈夫か?」
「あ、は、はい…。もうなんとも、あり、ません」
「そうか。それなら良かった。怖い思いをさせて悪かったね」
「いっいえ…!私こそ、…殆どお役に立てなくて…」
エルヴィンの口ぶりから、あの情事については伏せられているのだと悟り安堵するとともに、今度は、自分がそんな事をしている間に本来の目的を果たしていないではないかと途端に青ざめていく。
青い顔で謝ると、エルヴィンはぽん、とNAMEの頭を撫でて言葉を続けた。
「…良い知らせがある。」
「え?」
「まず一つは、ドレットが憲兵に連行されたことだ」
「…!」
「メンフィス侯が奮闘してくれてね。ドレットの財産も全て差し押さえられた。」
「ゾウマ様が…。」
「また会える機会はあるが…礼を伝えたいなら手紙を書くといい。私が出しておいてあげよう」
「はい…!エルヴィン団長、ありがとうございます」
「こちらこそ礼を言わねばな。…NAME、君のおかげで資金がかなり集まった」
「え…?」
「メンフィス侯が多額の寄付を約束してくれたよ。ありがとう」
「いえ、そんな!私、というよりゾウマ様が徳の高いお方でしたので…!」
「確かに彼は、とても優れた人格の持ち主だった。だが、その彼が、NAMEのように心が美しい人が尊敬する調査兵の皆さんを支援したいと言っていた。
君がそう伝えてくれたからだろう?…それと、他の貴族からも君のように美しい団員がいるならぜひ応援したいとも言われてね。君が来てくれたおかげで予想以上の成果が得られたよ。感謝する」
「そそ、そんな…!私はほんとに何も…!エルヴィン団長やリヴァイさんがしっかり交流してくれたからで…」
「ハハ。そうだな、確かにリヴァイも来てくれたおかげで女性からの支援は多分に増えたな。」
「あ、…そう、ですよね」
「…。…まあ、君達のおかげなのは変わりない。ありがとう」
リヴァイに女性のファンがついてしまったことにツキリと胸が痛み、一瞬だけ反応してしまったのをエルヴィンは見逃さなかった。
そのままエルヴィンはNAMEの頭をもう一度撫でると、いつの間にか着いていた団長室へと招き、書類の束をドサリとNAMEに渡す。
「これをリヴァイに持っていってくれるか?明日からまた旧本部だからな。その前に仕上げてもらいたい書類だと伝えてくれ」
「あ、旧本部…。承知しました、伝えます。」
書類を受け取ると普段通りの真面目なNAMEに戻り、エルヴィンはほんの少し悪戯心が芽生える。
徐にNAMEに近付くと、両手の塞がっている彼女の肩に手を添え、耳元で優しく囁いた。
「昨夜、リヴァイは優しくシてくれたか?」
ーバサバサバサッ「…っ!!?」
思わず持っていた書類を全て撒き散らしたNAMEに、エルヴィンはクスリと小さく笑った。
「エっエルヴィン団長っ、な、な、なにを…!//////」
「すまない。カマをかけただけなんだが、予想以上の反応だな」
「…!!!(私のバカ…//////)」
NAMEは自分の反応で昨夜の情事を露呈してしまったことにズゥン、と落ち込んだ。
しかしエルヴィンは、それを咎めたり嘲笑ったりなどせず、穏やかな口調を続けながら腰を落とし、散らばった書類を拾い集める。
NAMEはそれにハッと気付き、自分も慌てて屈み書類を集め始めた。
「誤解しないでほしいんだが、私は君を責めてるわけではない。媚薬を盛られたんだ。仕方のないことさ。…それよりも、そんなツラい状況を回避出来なくてすまなかった」
「エルヴィン、団長…。…、いえ、私の危機感が足りなかっただけです。エルヴィン団長は何も…」
「いや、君がドレットに誘われた時、リヴァイはすぐに君を追い掛けようとしていた。それを私が止めてしまったんだ」
「え、リヴァイ、さんが…?」
「ああ。あいつはいち早く危険を察知していたのかもな。…リヴァイがあのまま君のもとへ行っていればそんなことにはならなかったかもしれない。」
書類を集めながら、エルヴィンは「すまない」と言葉にした。
「いえ、結果リヴァイさんは助けに来てくださいましたし、あの時すぐにリヴァイさんが来ていたらドレット伯爵の悪い部分を見る事が出来ずにいたかもしれません。
それに、あの人は調査兵団のことを良く思っていなかったみたいなので…。だから、今は憲兵団に捕まったとのことで結果オーライです!」
そう笑って答えれば、エルヴィンもほっとしたように笑った。
「君は強いな。…全く知らない世界にたった一人で来てしまって不安でしかたないだろうに」
「…それは…、エルヴィン団長やリヴァイさん、ハンジさんやモブリットさん、ここの方達が居てくれるから安心して過ごせてるんです。本当に、感謝してもしきれないです。」
「…そうか。」
エルヴィンは微笑みながら、拾い集めた書類をトントンと綺麗にならし、同じく集め終わったNAMEに自分の分を手渡した。
「…ところで、さっきの話に戻るが…」
「…?はい、」
「リヴァイのセックスは乱暴ではなかったか?」
どの話?と疑問符を浮かべたNAMEは、エルヴィンの一言で再び書類をぶち撒けてしまう。
「ああ、…図星かな?」
「あ、ごっごめんなさい!…あ、いえ、そうじゃなくてっ、リヴァイさんは乱暴になんて全然っ…むしろ優しくて…、、////あっえっ、あ、ち、違くて…っああっ、も、もうっエルヴィン団長っ!」
「ハハハハ!…すまない、揶揄いすぎたな」
面白いくらいに動揺するNAMEに、エルヴィンは珍しく声を上げて笑った。
焦りながらも必死に書類を集めるNAMEの前に再び屈み、エルヴィンは話を続けた。
「ここからは真面目な話だ、NAME。…今回のことは致し方ない対処だったとは思う。ただ、今後そういったことで不安になることや、恐怖や不快感を感じることがあればいつでも相談してほしい」
「…団長…」
「…そうだな、例えば…味をしめたリヴァイに性行為を強要されたり、セクハラをされたり、とかな」
「…っ//////……、エ、エルヴィン団長…、また揶揄ってますね。…さ、さっきのエルヴィン団長の発言こそセクハラですよっ////」
ニヤリと笑うエルヴィンに気付いたNAMEがプクリと頬を膨らませて負けじとそう言い放てば、エルヴィンはまた声を上げて笑った。
「すまなかったね。まあ、心配をしているのは本当だよ。何か少しでも他の者には言いづらいことや不安があればいつでも相談してくれ」
「…はい。ありがとうござ」
「おい。いつまで遊んでやがる」
「っっ!」ーバサバサッ
エルヴィンが集めた書類をNAMEに渡し、そのまま彼女の頬をその手で触れ、親指で肌をなぞらせたその時、開いていた扉に寄りかかりながらリヴァイがドスの効いた低い声を掛けた。
それにより、今日一番の心臓の跳ねた音と共に全身が硬直し、三度NAMEは書類をぶち撒けたのであった。
「やあリヴァイ、早いな。ちょうど今、お前に渡す書類をNAMEに頼んでいたところだ」
「…書類ってのは、そこに散らばってやがるやつか」
リヴァイの声に、NAMEの心臓はドッドッドッと痛いくらいに早鐘を打ってくる。
散らばった書類をもう一度集め始め、ある一枚を拾おうとしたところで後ろから伸びてきた手と触れた。
その手がリヴァイのものだとすぐに分かったNAMEは、思わずパッと手を引く。
リヴァイは引かれた手を目で追い、そしてそのままNAMEの顔に視線を向けると一瞬目を見開き、すぐにNAMEから顔を背けて口を開いた。
「おいエルヴィン、随分と書類が多いようだがこれはいつまでだ」
「……」
…あ、れ…。今、視線外された…
目が合った瞬間、おはようございます、と挨拶をしようと口を開きかけたNAMEだったが、それよりも早くリヴァイが顔を背けた為その言葉は出ることは無かった。
二言三言、エルヴィンと会話を交わしてリヴァイは部屋を出るそぶりを見せた為、NAMEもエルヴィンにお辞儀をし、リヴァイを追って団長室を後にした。
…、リヴァイさん…何も、言わないな…。
前を歩くリヴァイの背中を見つめながら、NAMEは離れないよう後についていく。
気まずさを感じつつも何を発したらいいのか分からず、終始無言のままリヴァイの執務室までの道のりを歩いた。
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