素敵な夢になりますように…
go on 14
Name change
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「ほう?では君は先日の巨人騒ぎの被害者ということか」
「は、はい…、あまり、そのあたりの記憶は曖昧なんですが…」
こう言っておけば追及されない、よね…。
ていうか、なんだろう…。さっきからなんかクラクラしてきてるような…
エルヴィンの指示通りに伝え、NAMEは深掘りされないよう間引きをする。
しかし、伝え方が悪かったのか、マフィスは逆にNAMEへの興味を強くし、NAMEの腰を引き寄せて反対の手で手首を掴む。
驚いたNAMEは、ドリンクを少し自分の胸元に零してしまった。
「きゃ…!」
「そうかそうか、それは可哀想な境遇だ。それで行くあてもなく、調査兵団なんぞに入ってしまったわけか」
「あ、あの…恐れ入りますが、離していただけますか。ジュースが零れてしまったので拭きたいんです」
「お?なに、どこにジュースを零したって?」
「あ、自分にです。ドレスがシミになってしまうので早く拭かないと…」
「ああ、ここだね。私が拭いてあげよう、じっとしてなさい」
そうマフィスが言葉を発した直後、NAMEは思わず持っていたグラスを落とした。マフィスが、ジュースの零れたNAMEの胸元をベロリと舐めとったからだ。
突如訪れた不快感に、NAMEはグラスを割ってしまった申し訳なさよりも、とにかく離れたい一心でマフィスを押し退けようとするが何故か腕にも足にも力が入らない。
「や、やめてくださいっ…!」
「待て待て暴れるな。せっかくのドレスが汚れてしまうぞ。今綺麗にしてやるからな」
「結構ですっ…!」
「それにどうだ?身体が熱くなったりしてこないか?」
「な、なりません…っ、離してくださいっ(や、気持ち悪い…!助けて…、リヴァイさんっ)」
「ぐあっ!?」
再びくる気持ち悪さに耐えようと目をぎゅっと閉じた瞬間、マフィスの苦痛の声が上がり、NAMEは閉じた瞳をゆっくりと開けた。
するとそこには、まさに今、助けを求めたリヴァイが、NAMEの手を掴んでいたマフィスの手首を捻り上げているところだった。
「貴族ってのは随分と下品なマネするんだな。伯爵さんよ」
「リヴァイさん…!」
「ぐぅっ…き、貴様は…リヴァイ…!ええい放せ!ーっいてててて!はっ放さぬか、ぶぶ無礼者め!」
捻り上げた手首を乱暴に振り解くと、マフィスはリヴァイの背後へ隠されたNAMEを見遣りながら目の前のリヴァイを睨みつけた。
「わ、私にこんな事をしてただで済むと思っているのか…!!」
「あァ?…俺の補佐に手を出すことは無礼じゃねえってのか?」
「ハッ、零れたものを拭ってやっただけだろうが。そんなことぐらいで何を大袈裟な」
「おや、これはこれはドレット伯爵、お久しぶりですね」
「あ?」
「…」
「…?」
NAME達の前に現れたのは、綺麗なブロンドヘアの背の高い青年だった。
リヴァイは群がる貴族に適当に相槌を打ちながら、NAMEがどこかへ連れていかれないよう注視していた。しかし、マフィスは急にNAMEの身体を引き寄せたかと思えば胸元を舐めずり回し始めた。リヴァイは一気に虫唾が走り、NAMEがグラスを落とす前にはもう走り出していた。
グラスの割れる音でエルヴィンも気付いたようだったが、そんな事よりもリヴァイはマフィスを絞めあげることしか頭にない。
手首を捻り、NAMEが離れたのを確認して手を放してやれば、NAMEは今にも泣きそうな瞳でリヴァイを見つめていた。
こんなことなら初めからNAMEを連れ戻しておけばよかったとリヴァイは心底思った。
こちらに向かってくるエルヴィンにそう文句を言ってやろうと思ったが、それよりも先に声を掛けてきた男に、リヴァイは思わず目を見開く。それは、ファーランによく似た男だったのだ。
「ドレット伯爵、お久しぶりです。」
「む、お前は…。メンフィス侯爵んとこのせがれか」
「おやおや、ドレット伯爵。お久しぶり過ぎてご存知なかったのですね。2年前、このゾウマが父から爵位を世襲しております。」
「な…⁉︎(こ、こんな青二才がワシより上だと…!?)」
「せっかく調査兵団の団長殿と兵士長殿がいらっしゃってるのです。伯爵ともあろうお方があまり粗野な態度をとられない方がいいかと存じますが?」
「くっ…」
「ああ、それと。申し訳ないがそちらの女性は僕が招待させていただいたんです。先程のような卑しい行為は勿論のこと、二度と彼女に近付かないでいただきたい」
ゾウマがそうひと睨みすると、マフィスは付き人を呼び立て、逃げるようにその場を後にした。
「お見事ですね、メンフィス侯」
「やあ、エルヴィン団長。お久しぶりです」
「リヴァイ、NAME、紹介しよう。彼がメンフィス侯爵家のゾウマ氏だ」
マフィスと入れ替わりでやってきたエルヴィンに紹介され、ゾウマはブロンドの髪をなびかせてにこりと微笑む。
「はじめまして、メンフィス侯爵家の当主、ゾウマです。リヴァイ兵士長ですね。お会いできて光栄です。先程のドレット伯爵との立ち回り、素晴らしくカッコよかったです。」
「…あぁ。」
あまりにもキラキラとした目で握手を求めてくるゾウマに、リヴァイは気抜けしながらそれに応えた。
そして、リヴァイの背後で気まずそうに立っているNAMEに気付くと、ゾウマは悲しげに微笑みながらハンカチを差し出した。
「NAMEさん、ですね。先程は不快な思いをさせてしまって本当に申し訳ないです。」
「えっ、こ、侯爵様は何も…!お顔を上げてください…!」
「…、これをお使いください。水で濡らしてあります。こんなもので不快感は取れないと思いますが…、少しでも消していただければと思います」
ゾウマの厚意を素直に受け取り、NAMEは礼を伝え舐められた胸元を拭き取ると、いくらか気持ち悪さは緩和した。
「NAMEさん、少しお時間をいただいてもよろしいですか。無理にとは言いませんが…」
「…、は、はい。勿論です」
ゾウマの申し出に、多少不安が残るNAMEはチラリとエルヴィンとリヴァイの方を見遣ると、エルヴィンは優しく微笑み、リヴァイも大丈夫だと言うようにコクリと頷いたためほっとしながら承諾をした。
「エルヴィン団長、リヴァイ兵士長、少しの間NAMEさんをお借りしますね。NAMEさんには指一本触れませんのでご安心を」
「お気遣い感謝する。」
エルヴィンの一言に礼儀正しくお辞儀をすると、ゾウマはNAMEを案内しながら中庭へと移動していった。
「リヴァイ、騒動は控えてもらわないと困るな」
「…てめぇ何言ってやがる…、俺が止めなかったらあのクソ野郎にアイツは手籠めにされてただろうが」
「止め方があるだろう…。メンフィス侯がうまくやり過ごしてくれたから事なきを得たが…。まったく…、NAMEが絡むとお前ですら冷静さを失うのだな」
「チッ…。うるせぇな。俺は初めから、こんなクソみてぇな場所で冷静になんて居られねぇよ」
「…フ。…ところで、彼の印象はどうだ」
エルヴィンの言葉にリヴァイは何も応えなかったが、確かに貴族特有の優雅さはあるものの、ゾウマには人を見下すような下卑た態度や横柄さは微塵も感じなかった。
何より、第一印象から変わらず、自分と共に暮らした家族に等しいあのファーランと雰囲気は勿論、声もよく似ていた。
「彼は少し、お前と一緒に入団したあの男と似ているな」
「…覚えてるのか」
「まあな。俺だって命を狙ってきた相手くらい覚えるさ」
「フン…。ほんとにてめぇは食えねえな」
エルヴィンは「褒め言葉として受け取っておこう」と言って笑った。
「招待しておきながら遅れてしまって大変失礼しました」
「いえ、そんな…!それよりも、先程はありがとうございました。侯爵様のおかげで大事にならずに済みました」
「ゾウマと、呼んでいただいて結構ですよ」
「ゾ、ゾウマ様…」
中庭を歩きながら、ゾウマは自分の家柄のこと、NAMEからは調査兵団での役割などを聞き、ひとしきり会話を交えたところでNAMEにベンチに腰掛けるよう促す。
NAMEの隣へ自分も腰掛けると、ゾウマは笑顔のまま言葉を続けた。
「今回は急な呼び立てをしてしまって驚かせてしまいましたね。使いの者から聞いたかもしれませんが…あなたをあの古城でお見かけし、どうしても一度お会いしたかった」
「こ、こちらこそ招待していただいて、それにドレスも…ありがとうございます。でも、私、すみません…はしたない姿をお見せして…」
そう恥ずかしそうに答えるNAMEに、ゾウマは真剣な顔で声を大にした。
「いえ!あなたは女神の様に美しかった!今日も改めてお会いして、僕の目は節穴ではなかったといえます!」
「そ、そんな…」
「そして、何より惹かれたのはあなたの歌だ」
「え…」
ゾウマのその一言に、NAMEは俯いていた顔を上げ、真っ直ぐに自分を見つめるゾウマと目を合わせる。
「僕は鳥のさえずりがとても好きなんですが…、鳥の歌声にも負けないあなたの透き通る様な声に、誘い込まれる様にあの城に辿り着いたんです」
「私、の歌を…」
「美しい歌声を追って辿り着いたところにあなたがいて、僕は衝撃を受けました。」
「…、」
「あなたはもっと大きな舞台に立つべきだと、そう思ったんです!その為なら、僕はどんな支援もしましょう!」
「そんな、もったいないお言葉です…!」
「…何より、僕があなたの歌を聴きたいんだ。」
「ゾウマ様…」
「NAMEさん、…僕のそばで歌ってくれませんか」
「ゾウマ様…、私は」
「断る」
「!君は…」
「っリヴァイさん…」
バルコニーからずっと二人を見ていたリヴァイだったが、エルヴィンも会場内へと戻り、いい加減待つのに飽きたリヴァイは二人の前に現れた。
「こいつは調査兵団に欠かせない存在だ。ただでさえ俺達は人員が足りない。悪いが引き抜きは他所の兵団からにしていただこうか」
「…、…リヴァイ兵士長からそう言われてしまっては…、今回は引き下がるしかないようですね」
眉尻を下げながら笑うゾウマの手に、NAMEは上からそっと触れて言葉を発した。
「ゾウマ様、私の歌を気に入ってくれてありがとうございます。本当に、嬉しいです」
「NAMEさん…」
「でも、私は調査兵団で、人類が安心して暮らせる世界が来るまで頑張りたいんです。巨人のせいで苦しんでる人や、命懸けで闘ってる人がいるのに、私だけ好きなことするなんて考えられないんです」
NAMEのその言葉に、ゾウマも、そしてリヴァイもただNAMEを見つめた。
「いつか平和な世界になって、その時もまだ私の歌を聴きたいと思ってくださった時は、お声をかけていただけたら光栄です。…、なんて、とても図々しい言い分ですね」
「…、分かりました。NAMEさん、あなたは本当に素晴らしい方です。僕の人を見る目は間違っていないようだ」
「そ、そんなことありません…!私なんかよりも、調査兵団の皆さんの方がもっと素晴らしい方達ばかりなんです」
「ええ。あなたがそう言うならきっとそうなんでしょう。…今後も、調査兵団には頑張ってもらいたいと思ってるんです。ぜひこれからも支援させていただきます」
「…!あ、ありがとうございます…!」
「長いことNAMEさんをお借りしてすみません。飲み物をもらってくるのでゆっくりしていてください」
そうリヴァイに言い残し、ゾウマは会場へと戻っていった。
to be continued...
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