素敵な夢になりますように…
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―ああ…もう、疲れちゃったな…
「っしっかりしなきゃ…!…さ、がすんだ…!」
私は歩き出した。
方向なんて何も分からないけど、とにかく歩いた。
母が諦めるなと言ったんだ。
絶対に助かる!
立ち止まっちゃダメだ…!
しかし、歩けど歩けど誰も見つからない。
あれから一体何時間経ったのだろう…
どうして誰もいないのか。
私のように助かった人は誰もいないのか。
もう足も限界だった。
何時間も瓦礫の上を歩き、何度も転んだ。
その度に掌の傷が起き上がれと叱咤する。
でも、もう気力も体力も無くなってしまった。
声も出ない。
出したところで誰もいない。
この世界に、たった一人ぼっちになってしまったように
喉、痛い…
これじゃ、歌なんか、歌えない…
別にいいか…どうせ歌手になんかなれないし…
このまま、私もお母さんのところへ…
そう思った瞬間、目の前が真っ白な光に包まれた気がした。
ああ。私死ぬのか。
そんな風に、漠然とただ思った。
『あーほらほら!あんたはすぐそうやって悪い方に考える!やってみなきゃ分かんないんでしょうが!』
『お母さん!!助かったの!?』
『何言ってんだ!あたしはもう死んだの!』
『え、だってここに…』
『あんたがいつまで経ってもシャキッとしないから活を入れにきたんだよ。いい加減、あたしに甘えてないでちゃんと立ちな!そんなんじゃ、これから生きていけないよ!』
『…いいよ。…お母さんのいない世界なんてなんの未練も』
『あああうっざ!!あんたね!もう19になんでしょ?来年は成人だぞ?いつまでマザコンなのよ全く!』
『そ、んなんじゃ…ないけど…でも、私、一人でなんて…』
『大丈夫!!』
『…』
『NAMEは一人じゃないよ』
『…一人だよ…』
『今はそうかもしれないけど、大丈夫。必ずNAMEの味方になってくれる人は絶対現れるから』
『…絶対?』
『ああ!絶対。あたしが言うんだから間違いない』
『…お母さんは…?』
『…ごめん。あたしは傍にいてあげられない』
『…』
『あんたを残してしまってごめんね。… NAMEの歌を、傍で聴いてあげることができないのが一番の心残りだ』
『…傍にいてよ…!行かないでよ!!一人にしないで!!…お母さんが来れないなら私が行くから』
『来んな!!』
『…っ』
『NAMEの歌はさ、あたしの癒しだった』
『…』
『今は難しくても、NAMEの歌に癒される人はたっくさんいるよ!!…あんたの歌を求める人は、絶対に現れるから。なんてったってあたしの娘なんだし!』
『…』
『だから、NAMEは生きて、歌い続けて。あんたの歌は、傍にいなくてもあたしに聴こえる』
『…ほんと…?』
『ああ!ほんとさ!!あたしに届くように、ちゃんと歌ってよ?』
『…わ、かった…歌う』
『うん。NAMEは本当にいい子だね。あたしの自慢の娘だ』
『…お母さんも、私の、自慢の母親だよ』
『美人をつけなよ!美人母!ったく!!あーあっやってらんないよ!まだまだ若い男つかまえて遊びたかったのにさ!!あんたもあたしに似て美人なんだからさー、もっとこう派手に遊べばいいのに』
『わ、私はいいのっ!そういうのは!』
『へーえ?』
『お母さんだってお父さん一筋だったくせに』
『あったりまえでしょうが!あんたの親父はね!世界一カッコイイ男だったんだから』
『はいはい。じゃあそんなこと言ってるとお父さんに怒られるんじゃないの?』
『あ、そっか!あたしあの人に会えるんじゃん!やっだ、嬉しー!』
『…』
『ってことで!あたしはこっちで仲良くやるからあんたは邪魔しに来ないこと。夫婦水入らずで楽しむんだからさ』
『…ふっ…もう、お母さんってば…バカらしくって涙も出ないよ』
(…あ!ねえ、今笑った?)
『泣いてどーすんのよ!…あたしは元気だから、あんたも元気にやるんだよ。』
『うん』
『NAME、大好き』
『私も、大好き』
(ほら、動いた!)
『ずっと、見てるからね』
「…ん…」
「!!気付いた!!!」
「…?…」
閉じていた目を開けると、そこに母の姿はなく、私の顔を覗き込む人達が目に入ってきた。どうやら私はベッドの上にいるらしい。
…ここは、病院…?
目をきょろきょろと動かしていると、お医者さんのような人が、私と、周りを囲んでいる人達に声を掛けた。
「もう安心していいだろ。脈も正常だし、怪我も大したことなさそうだ。あとは、しっかりと休んで水分と食事を摂っていれば回復するだろう」
「っ…!…?!っ…」
「!まだ動いちゃ…、どうしたの?」
「…っ、…ぁ…???」
「…喋れないの?」
―声が出ない。
生きていた人がいた。
他に助かった人がいるか聞きたかった。
ここはどこで、東京はどうなっているのか。
聞きたいことは山ほどあるのに、私の声が出ない。
叫び続けていた所為なのか、まだ喉が痛い。
『あたしに届くように、あんたは生きて、歌い続けて』
歌えない…
どうしよう。ずっとこのまま声が出なくなってしまったら…
「わ!え、どうしたの!?どっか痛む!?」
恐ろしい考えに、思わず涙が零れた。
一番近くにいた眼鏡をかけた女性が、慌てている。会ったこともない人間になんて優しい人なんだろうと思った。
すると、お医者さんらしき人が「どれ、見せてごらん」と私の喉を確認した。
少し腫れているが、無理に声を出したりしなければ数日で治ると言われた。
ああ、また悲観的に考えてしまった。
絶対、お母さんはまたブツブツ言ってるだろうな。
そんなことを思いながら、私は改めて周りにいる人達に目を向けた。
そもそも、この人達は誰なんだろう…
なんで私しかいない病室に知り合いでもないこの人達がいるのか不思議だった。
普通、お見舞いなら知り合いのところへ行くものだ。
会ったこともない人に心配される義理はない。
でも、もしかしたら助かったのはここにいる人達だけなんだろうか…
そう考えれば辻褄は合う。
生き残った私達だけで、力を合わせよう、とかそういうことなんだろうか…。
…よく見ればこの人達は同じ服を着ている。
まさか、一致団結!ってことでもうお揃いのユニフォームを作ってしまったのだろうか。なんて気の早い人達だろう。
そんな、数秒の間にどうでもいいことも考えていた私は、眼鏡の人が「空気でも入れ替えようか」と、カーテンを開けた先のその景色を見て、思わずベッドから身を乗り出した。
…ここは、どこ…?
to be continued...
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