素敵な夢になりますように…
go on 12
Name change
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「それは是非参加してもらわないといけないな」
「…おい。エルヴィンよ、てめぇの頭はとうとうイカレちまったか?」
NAMEを自分の執務室へ送り届けた後、すぐさまその足で団長室へとやってきたリヴァイは、先程の件のあらましを手短にエルヴィンに説明した。
しかしエルヴィンの答えは、リヴァイが考えていたものとまるっきり正反対のものだった。
「あいつを夜会に連れ出す気か?内地に行けば憲兵にも目に留まりやすくなるだろうが」
「ああ、そうだな。リスクは承知の上だ」
「…呼び出してるのはあいつの裸体に興奮してる豚野郎だぞ…」
「…どうした、リヴァイ。珍しいな、お前がそこまで夜会に口出しするのは。」
エルヴィンは、やれやれといった風に眉尻を下げながら依然自分を睨みつける部下に微笑んだ。
「てめぇだろ。あいつの監視を命じたのは。面倒事をこれ以上増やしたくないから言ってる」
「確かにな。…だがなリヴァイ。今回の被検体殺害事件はすでに憲兵にも伝わり、内地にまで波及しているだろう。」
「…」
「調査対象の実験体をこうも易々と奪われた調査兵団に、次回の壁外調査への成果を期待し、資金を提供してくれると思うか?」
「…つまりてめぇは、あいつを貴族のクソ野郎共から金を出させる為のパイプにしようって言いてぇのか」
リヴァイがそう問えば、エルヴィンは苦笑しながら「まあ、そういうことだ」と続けた。
「メンフィス家は貴族の間でも一目置かれる名家の一つだ。繋がりを持っていて損はない。それに、ゾウマは家督を数年前に継いだばかりの青年で悪い噂も聞かない」
「だから問題ないと?」
リヴァイがそう苛立ちを隠さずに言えば、控えめなノック音が団長室に響く。
エルヴィンが入室を許可すると、モブリットがハンジに任された書類を提出に来たようだった。
「モブリット、丁度よかった。NAMEをここへ呼んできてくれるか」
「は!」
モブリットから書類を受け取り、彼が出ていくのを見届けたエルヴィンは、ゆっくりとリヴァイに向き直る。
「そう睨むな。…しかし、NAMEに随分入れ込んでいるようだな。」
「…さっきも言ったろうが。面倒事を増やしたくないだけだ」
「ふ。そうか。…まあNAMEが嫌がるのなら私も無理強いはしないよ」
そう言って微笑むエルヴィンを、リヴァイは本当に食えない男だと心の中で毒付いた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜〜・〜・〜
「い、行きます」
「私の頼みだからといって無理はしなくていいんだ。正直に、嫌ならそう言ってくれて構わないよ」
団長室に呼び出されたNAMEは、エルヴィンの正面のソファに腰掛け、夜会へ参加してくれるか問われた。
即座に答えたNAMEにエルヴィンは優しく諭すが、NAMEはチラリとエルヴィンの、斜め後ろの壁に背を預けているリヴァイを見遣り、すぐにエルヴィンへと視線を戻す。
「お気遣いありがとうございます。でも、私に出来ることがあるならお手伝いしたいと思ってます。
私がお役に立てるかは分かりませんが…、ぜひ、行かせてください」
その返答に、リヴァイは呆れたように息を吐き、エルヴィンは優しく微笑んだ。
「ありがとう。そう言ってくれて我々も助かる。まあそんなに心配しなくて大丈夫さ。今回の夜会には元々我々も参加するつもりだからね。何かあってもすぐ対処できるはずだ」
「本当ですか。それは、心強いです。夜会というものには今まで縁がなかったので…」
「はは。NAMEなら礼儀もしっかりしているから、その辺は心配してないよ。」
「…はぁ。(…?じゃあ何の心配だろ…??)」
リヴァイにも言われたように、お子さまが夜会などという場違いなところへ出向いて粗相をしてしまうことを危惧していたNAMEだったが、エルヴィンはソコではないと言う。
何かあっても対処する、というのは何に対してなのか、NAMEにはこの時はサッパリ分からなかった。
「同行するのは私と、そしてリヴァイだ」
「あ?ちょっと待て。いつもはミケだろうが。」
エルヴィンの発したその言葉に、聞き捨てならないとリヴァイが低い声で口を挟む。
「今回は貴族側からたっての要望でね。ぜひ一度、人類最強の兵士長殿にお会いしたいそうだ。
NAMEも兵士長補佐として行くんだ。丁度いい。頼むぞ、リヴァイ」
「…チッ。…了解だ、エルヴィン」
「よし。では早速メンフィス侯にはこちらから承諾の返事をしておこう。夜会は3日後だ。それまではいつも通り、日々の業務を頼むよ、NAME」
「はいっ、かしこまりました」
話を終え、団長室を後にしたNAMEはリヴァイと共に執務室へ向けて歩き出した。
「……」
「……」
…き、気まずい…。。。
明らかに不機嫌なオーラを身に纏うリヴァイに、NAMEは一歩後を歩きながら話しかけるタイミングを窺っていた。
しかし、予想に反して先に口を開いたのはリヴァイだった。
「おい。…分かってんのか」
「え?あ、はい、なんでしょうか」
虚をつかれた為、NAMEはリヴァイの言葉を聞き逃す。
丁度執務室の前に着いた二人は、扉の前で向き合った。
「夜会ってのはな、貴族の豚共のクソみたいなパーティーだ」
「そ、そんなに、酷いものなんですか…?」
「ああ、そうだ。油断したら簡単に足元をすくわれる。」
「…」
「俺達調査兵団は、慢性的な人手不足と資金不足だ」
「…はい。…承知しております」
「俺達はこのクソみてぇなパーティーで、豚共に媚びへつらい、壁外調査への資金提供を促す。…意味がわかるか?」
「はい…、分かっております」
「理不尽な要求にも応えなきゃいけねぇ。その意味が分かるかと聞いている」
「は、はい、十分に、理解しております」
「いいや…、お前は何も分かっちゃいない」
「え…、わっ」
凄みを増していくリヴァイに尻込みしそうな自分を、なんとか毅然とした態度で装っていたNAMEだったが、執務室へぐいと引き込まれ、扉に押しつけられるのと同時にそれを勢いよく閉められた。
背中には扉、目の前にはリヴァイ。両手をNAMEの顔の両側についている彼は、その肘を曲げて徐にNAMEの顔へ自分のそれを近づけていく。
NAMEは訳も分からず、ただただ息を呑む。すると、近づいてきたリヴァイが一瞬視線を落とし、NAMEのブラウスの一番上のボタンに片手をかけた。
「脱げ」
「っ!?」
その耳を疑うような台詞に、NAMEは一瞬言葉を失った。
「聞こえねぇか?脱げと言っている」
「リ、リヴァイさん…なに、何を…」
「理由なんてどうでもいい。早くしろ。俺の命令には従うんだろ?」
「っ…、」
外されていた視線が戻り、冷たい眼差しで自分を見つめるリヴァイにNAMEは瞳を震わせ、ゆっくりと、今度は自分から視線を落とした。
「…、わ、かり、ました…」
そう言ってからぎゅっ、と目を瞑り、ブラウスのボタンを上から一つ、そしてもう一つ開けたところでリヴァイの手がNAMEのそれを優しく包み込んだ。
「バカ。冗談だ、真に受けるな」
「…え、…ええ?な、なん、…じょ、???」
「…いいか。今みてぇのが理不尽な要求だ」
するりと自分から離れソファに座ったリヴァイは、まだ混乱しているNAMEに問答無用で言葉を続ける。
NAMEは一瞬考え、すぐに先程の話の続きだったのだと理解して姿勢を正した。
「いくら貴族で俺達より身分が上の奴らだとしても、金を出してくれるスポンサーだとしても、無理難題を無条件に受け入れるな。」
「…で、でも、もしそんなことがあったとして、貴族の方がお怒りにでもなったら…」
「その為に俺やエルヴィンがいるんだろうが。お前はそこまで気にしなくていい」
その言葉に、NAMEはようやく先程のエルヴィンの、何かあったら対処するの意味が腑に落ちた。
そしてそれと同時に、ここの人達は本当に優しくて頼もしく、なんて素晴らしい人達なんだろうと思った。これが上に立つ人間の器なのだと、感じずにはいられない。
NAMEはリヴァイの横まで近付き、静かに頭を下げた。
「…リヴァイさん、そこまで心配してくださって本当にありがとうございます。」
…だからさっきも、あんな突き放すような言い方をしてくれたんだ…。
怖いところもあるけど…、やっぱり、すごく優しい人…
「私頑張ります!」
「余計な気を張るな。お前はどんくせぇ」
「確かに…。でも、ご迷惑かけない程度に頑張ります!無理なことはちゃんと失礼のないよう断って、そして資金もたくさん貰えるように!!」
そう言いながら両拳をぐっと握り気合を入れるNAMEに、リヴァイは小さく微笑むと、そのままNAMEの腕を掴んで隣に腰掛けさせた。
「何かあればすぐに俺を呼べ。いいな」
「は、はい!」
「よし…その件はとりあえずこれで終いだ。」
「…?、はい…」
「こっからは、昨夜お前が避けた話をしようか」
「え"…」
「腹は痛くねぇよな?」
逃がさない、そんな視線でリヴァイに見つめられるNAMEは、観念したように口を開いた。
「…実は…リヴァイさんが旧本部へ行く直前、ある兵士の方達にリヴァイさんの部屋に夜出入りしていることを咎められたんです…」
「咎められた?…何故兵士に補佐のお前がここに来ることを咎められる」
「そ、その…、私の存在が受け入れられない、ようで…。」
「…何故だ」
「…やっぱり、兵士でもない、安全な場所にいるだけの人間が、みんなから信頼されているリヴァイさんのお側にいるのが…良く映らないのかと…思います。
モブリットさんや、エルヴィン団長、リヴァイさんに色目を使って取り入ってるんだと、そう思われてるみたいです」
「くだらねぇ」
「あ、いえ…、そう思われても仕方ないというか…」
「違ぇよ。言われたことに納得してるお前がくだらねぇと言っている」
「っ、で、ですが…、気にしないわけには…」
「俺が迷惑だと言ったか?」
「そ、それは…」
「モブリットやエルヴィン、ハンジやエルド達、それにエレンら新兵もお前の存在を認めてる奴なんて山ほどいるだろうが。
一部の兵士の妬みをいちいち気にすんじゃねえよ。」
「リヴァイ、さん…」
「お前がここへ来るのが嫌になったのなら話は別だが…」
「いっ嫌ではありません!」
リヴァイのその一言に、NAMEは思わず声を荒げた。
「嫌じゃ、ない、です…。寧ろ…来たい、です…」
「…なら来ればいい」
「っ、ほんとに、迷惑じゃないですか?」
「さっきからそう言ってる」
「…、良かった…。」
ほっと胸を撫で下ろすNAMEを見て、リヴァイは小さく舌打ちをし、ガシッとNAMEの頭を鷲掴む。
「いっ…!?」
「とっとと俺に報告してればすぐに解決できただろうが。小せぇ頭を悩ますな!バカ野郎」
「いたたっ…ごっ、ごめんなさいぃ〜!」
「…ほんとにてめぇは手が掛かる…」
「すみません…。………ふ、ふふっ…」
解放された頭を撫でながら謝っていたNAMEは、俯いた途端に体を震わせ笑い出す。
それを見ていたリヴァイは怪訝そうに片眉を上げた。
「…なんだ、気でも触れたか」
「いえ、…なんかリヴァイさんと居ると、私ってほんとにしょうもない人間だなっていつも思わされます。馬鹿馬鹿しくて可笑しくなっちゃって…」
「…ようやく気付いたか、ノロマめ。」
「ふふ、すみません。…リヴァイさん、いつもありがとうございます」
毒づかれても笑顔で礼を述べるNAMEに、リヴァイは「紅茶が飲みてぇ」と発した。
それを聞いたNAMEは張り切って「すぐ淹れます!」と準備を始める。その様子を目で追いながら、リヴァイは言葉を続けた。
「夜会が済むまでは
「!はいっ」
NAMEはもう一度にこやかに笑い、元気よく返事した。
to be continued...
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