素敵な夢になりますように…
go on 9
Name change
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そして、NAMEは周りの兵士達に視線を移してみた。ここにいる兵士は、調査兵と制服は同じだが紋章が違う。
…薔薇の紋章…あれは確か…駐屯兵団だ。
NAMEはこの1ヶ月、頼まれている事務仕事以外の時間は、この世界のことを本で読んだり、モブリットの空いてる時間に教えてもらったりと、出来る限り勉強の時間に費やしていた。
その為、この世界のことは大分もう理解できるようになっていたのだ。
…調査兵以外の兵士も、この実験には参加するんだ…。
と、恐怖に身体が強張りながらも頭だけは冷静になろうとしていた。そんな時だ。駐屯兵団の兵士の中に混ざって見知った顔を見つけた。
数日前、NAMEに絡んできたあのオーサ達だ。今日はこちらでの任務についていたらしい。
「NAME、一人で立てる?」
「え…あっ、ご、ごめんなさい。だ、大丈夫です」
「ごめん、ハンジさんのところへ行ってくる。あの人すぐ危ないことするから…。すぐ戻るよ」
モブリットがそう言い、NAMEの肩から手を離した時だった。
オーサ達は、怯えるNAMEを見てヒソヒソ、と見せかけながら、「だっさ」「捕まってる巨人ごときでビビってんの?」「調査兵団の面汚しね。恥ずかしいったら。」「ていうか何でここにいるわけ?」「どうせまた、隊長や兵長の気を引くためなんじゃないの」と、わざと聞こえるような声で笑っていた。
それはモブリットの耳にも聞こえ、振り返って睨もうとするモブリットの腕をNAMEはぎゅ、と掴み直して「いいんです」と微笑んだ。
「そんなことより、早くハンジさんのとこに行ってあげてください。私は大丈夫ですから!」
そう言って無理に笑顔を作り、心配そうなモブリットを送り出した。
しかし、やはり怖いものは怖い。本当は不安で仕方なかった。いくらハンジやモブリットが目の届く範囲にいるとしても、周りには兵士がたくさんいるとしても。それよりも、この目の前にいる2体の巨人が本当に不気味で恐ろしかった。
NAMEは震える身体にしっかりしろ!というように、両手の拳にぎゅう、と力を入れた。
「NAME!どう!?こっちがソニーで、こっちがビーン!!今は、うなじ以外に弱点がないかの実験中なんだよ」
ハンジがこちらに振り返り、そんな説明をしている時だった。
1体の巨人が、ハンジに向かってその大きな口を開いて噛みつこうとしたのだ。
「ぶっ分隊長っっ!!!!!!」
「!きゃあああああああ!!!!」
ガチィンッ!と歯が合わさる音が響き渡る。
巨人はガチンガチンと上下の歯を合わせ、それを見ながらハンジは腹を抱えて笑い出した。
「あははは!!危な!!惜しかったね、ビーン!!あははは!」
「あんたいい加減にしてくださいよ!!」
巨人に噛み砕かれるギリギリのところで躱したハンジは、モブリットに怒鳴られても笑い続けていた。この異様な光景と、恐怖と安堵で、NAMEはフッと腰から崩れ落ち、その場にぺたんと尻をついた。
…よ、よかった…ハンジさんが食べられなくて…
また震えだす身体を抑えるようにしてNAMEが自分の腕を両手で擦っていると、肩にトンと誰かの手が乗り、NAMEはビクと肩を揺らして振り返った。
「おい…何故ここにいる」
「!リ、リヴァイさ…」
振り返ると、そこには鬼のような形相をしたリヴァイが立っていた。
思わずNAMEがチラリとハンジの方へ目を泳がせると、リヴァイは忌々し気に舌打ちをした。
「あのクソ眼鏡…」
しかし不思議だった。
リヴァイがどんなに鬼のような恐ろしいオーラを醸し出していようが、さっきまでの身体の震えはピタリと止まっていたから――。
ハンジに向かって怒鳴るリヴァイを見上げるNAMEの顔は、紅く染まっていた。
「げ。リヴァイ!」
「おいクソ眼鏡。…何故NAMEがここにいやがる…てめぇが連れてきやがったな」
「分隊長…、やっぱり兵長めちゃくちゃ怒ってますよ…どうするんですか」
「おっかしいなぁ。今日はこっちに来ないと思ってたんだけど…」
ヒソヒソとハンジとモブリットが話している間も、リヴァイはNAMEの後ろでハンジを睨みつけながら立っている。NAMEは、リヴァイとハンジ達を交互に見ながらオロオロとしていた。
…う。。やっぱり私が来たらマズかったんだ…。ど、どうしよう…。
最後は俯き、やっぱり今すぐ帰るべきなのでは…とNAMEが思案していると、隣にしゃがみ込む気配がするのと同時に、ふわりと風が吹いた。
「立てるか?」
「(っ、ち、近い…!/////)…、あっはいっ!立て、ま…す、?…っ。」
「……腰が抜けたのか」
呆れたように発せられた言葉に、NAMEは今度はサーっと血の気が引くような思いだった。
…い、今、絶対呆れられてる…!…うぅ…みっともない…。恥ずかしい…。
ズゥン、と落ち込むNAMEをよそに、明るい声を出すハンジが二人の元へと駆け寄ってくるとリヴァイは眉根を寄せながら立ち上がった。
「やあリヴァイ!今日はこっちには来ないかと思ってたよ!どうしたの?」
「どうしたもクソもねぇ。てめぇが言ったんだろうが。あのクソガキの体力が戻ったら連絡をしろと。んでてめぇがこっちに実験に戻ってくると聞いてわざわざ来てやったんだ」
「あー、はは、そうだったね。…てことは、エレン、元気になったの!?」
「…そんなことよりもだ」
「ぐっ」
「あっへ、兵長、乱暴は…!」
元々あった眉間の皺をさらに深くしたリヴァイは、ハンジの胸倉を無理矢理掴んで引き寄せた。
「なんでここにNAMEがいるのかと聞いている。答えろ、ハンジ」
「!リっリヴァイさんっ、私が見たいと言ったんです…!」
「あ?」
苦しそうに顔を歪めるハンジよりも、それを見て慌てるモブリットよりも、怒りのオーラを纏った鬼の質問に答えたのは依然、腰を抜かしたままのNAMEだった。
「わ、私が…巨人を見たいと言ったんです…。す、すみません…勝手なことをしてしまって…め、迷惑かとは、思ったのですが…」
NAMEの言葉を聞いたリヴァイは、掴んでいたハンジの胸倉を放し、解放されたハンジはケホッと咽ながら喉を押さえた。
「…なんで巨人なんて見てぇなどと思った」
上から見下ろしながらリヴァイは訊ねる。ハンジとモブリットは一瞬、その様子をただ見ていた。
「…私、知らないんです…。まだ、なんにも…。…ただ安全な場所にいて、皆さんによくしてもらって…。同じ、仲間のはずなのに…。だから、戦ってるものがなんなのかくらいはちゃんと知りたい、って…思ったんです…。」
そんなNAMEの言葉に、リヴァイは再び呆れたように息を吐いた。
「だからってな…危ねぇだろうが。訓練もしたことねぇ奴が、いくら捕まってる状態だとはいえ巨人の目の前に来るなんてのは。」
「はい…すみません…!何も考えずに、勝手なことをして…」
「勝手じゃないよー!エルヴィンにはちゃんと許可もらってるんだし!それに、私がNAMEが来てくれればエレンもリラックスして巨人化の力を発揮出来ると思ってお願いしたんだから、NAMEを責めないであげてよ!」
二人の会話に割って入ってきたハンジを、リヴァイはイラついたようにギロリと睨んだ。
「黙れクソ眼鏡。こいつを責めるつもりなんざねぇよ」
「…え…?」
「ああ、そうだよね、NAMEが心配なだけだもんね。リヴァイは意外と過保護な…ったぁ!!痛いよリヴァイ!!」
「黙れっつってんだろうが!」
ハンジの言葉を遮り、リヴァイはハンジの腿の裏を強めに蹴り上げた。
…リヴァイさん…心配、してくれたんだ…。なんだ、よかった…
「ふふっ」
「…。」
痛い痛いと騒ぐハンジとそれを宥めるモブリットを横目にしながら、リヴァイは柔らかく、嬉しそうに笑うNAMEを眺めていた。
…さっきまであんなに怯えてたくせに…こいつは俺の気も知らねぇで呑気に笑いやがって…。
リヴァイは、ここで怯えているNAMEの背中を見た瞬間に無意識に歩く速度が上がっていた。NAMEの顔を確認した直後には、ハンジがNAMEをこんなところに連れてきたことも、怯えるNAMEを放置してることにも腸が煮えくり返る思いだったのだ。
しかし、NAMEのその笑顔を見て、リヴァイは一瞬でそんなことどうでもよくなっていた。
「…とにかく、俺は旧本部へ戻る。ハンジ!てめぇはどうするか知らねぇが、こいつは連れて行くぞ」
「あ!待ってよ、私達も行くってば!」
「NAME、行くぞ」
「あ、…は、はい…」
リヴァイがハンジに言葉を投げ掛けNAMEに視線を移すと、リヴァイの言葉に答えながらも目線を泳がせるNAMEに、リヴァイは息を吐いた。
「…まだ立てねぇのか」
「す、すみません…!っすぐ、立ちますので…!」
「え?NAME、もしかして腰抜けちゃった?」
なんとも情けない自分に改めて恥ずかしくなるNAME。これでは、オーサ達には勿論、他の兵士達にも笑われて当然だと思った。
そんな落ち込むNAMEに、モブリットがすかさずフォローするようにしゃがみ込んだ。
「だからNAMEをここへ連れてくるのは刺激が強いって言ったじゃないですか…。NAME、俺がおぶるから乗って」
「えっ///だ!大丈夫です!ちょ、ちょっとだけ、待っててもらえれば…!!(そんなとこ見られたらオーサさん達にまたなんと言われるか…!)」
NAMEはモブリットの厚意に感謝しつつも、やはり先日の一件の所為でそのへんが敏感になっていた。なんとか立とうと気合を入れるも、その意気はリヴァイの行動で一瞬にして崩れた。
「…モブリット、どけ」
「えっ」
「おおっ!?」
「ひゃあ!?」
―ザワッ
「時間の無駄だ、行くぞ」
その一言と同時にNAMEの身体はふわりと浮いた。
所謂、お姫様抱っこと言われる状況に、NAMEはこれ以上ないくらいに慌て、モブリットは目を丸くし、ハンジはニヤニヤとしている。
「リリリっリヴァイさ…!?///////あ、あのっ私、あ、歩けます、からっ、お、下ろしてください////////」
「それを待つ時間がもったいねぇと言ってる。いいから黙ってろ、グズが」
「う…、す、すみません…」
必死の抗議もリヴァイに一蹴され、NAMEはリヴァイの腕の中で、なるべく目立たないように身体を小さくしていた。しかしそんなものは何の意味もなく、他の兵士達からもしっかりと注目の的になっているのだが。
勿論、オーサ達もその光景を悔しがりながらしっかりと見ていた。
・-・-・-・-・-・-・-・-
「NAME!?どうしてここに??」
馬に乗せられ旧本部へと着いたNAMEは、早速ペトラ達から驚きの声を受け、気まずそうににこりと微笑んだ。
「み、皆さん、お久しぶりです…。」
「やー!リヴァイ班のみんな!NAMEは私が呼んだんだ。イマイチ力が発揮出来ないエレンの助けになると思ってね!」
「お、俺の為に、ですか」
「わ、私なんか大してお役に立てないと思いますが…!ど、どうぞよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げるNAMEに、リヴァイ班のメンバーは互いに目を合わせながら笑い合った。
to be continued...
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